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孫尚香(真・三國無双5)→バシャーモ

  呉の陣営近く、戦の合間の静かな時間。

  孫尚香は愛用の輪刃を肩に担ぎ、退屈そうに空を見上げていた。

  「はぁ……兄様たちの会議、長すぎ」

  その時だった。

  背後の空間が、まるで炎が揺らぐように歪む。

  「――ねぇ」

  軽い、やけに馴れ馴れしい声。

  「誰!?」

  尚香が振り返ると、そこに立っていたのは――

  紫のツインテールを揺らす、見覚えのある顔立ちの美女だった。

  「……なによ。あんた」

  「あたし? 孫尚香って言うの」

  「は?」

  思わず声が裏返る。

  「ちょっと待ちなさいよ!なんであたしと同じ名前なの!?」

  紫髪の尚香は肩をすくめ、楽しそうに笑った。

  「あたしはね、あんたをモチーフにして作られたファーランスト。

  ま、言ってみれば“別バージョンの尚香”ってやつ?」

  「意味わかんないし!ていうか勝手に人の名前使わないで!」

  無双の尚香が輪刃を構えた、その瞬間――

  紫の尚香が、ぱちんと指を鳴らす。

  「ま、口で説明するよりさ。能力、見せてあげる」

  「え――?」

  次の瞬間、尚香の身体を熱が包んだ。

  「な、なにこれ!? 熱っ――!」

  足元から炎が噴き上がり、下半身が紅蓮の羽毛に覆われていく。

  地を踏みしめていた脚は形を変え、鋭い爪を持つ鳥の脚へと変貌していった。

  「ちょっと! あたしの脚が――!」

  羽毛は止まらない。

  腰、背中、肩へと燃えるように広がり、腕は灰色がかった鳥の脚のような形に変わっていく。

  力が――溢れる。

  身体が軽い。重い。熱い。

  蹴り出せば、地面ごと砕けそうな感覚。

  「冗談じゃないわよ……!」

  髪は白みを帯びながら伸び、顔に違和感が走る。

  口元が前に突き出し、視界の端に短い触覚が揺れた。

  変化が止まった時、そこに立っていたのは――

  炎と闘志を宿す、ポケモン・バシャーモだった。

  「……うわぁ、やっぱ映えるね」

  紫の尚香は満足そうに頷き、鏡を差し出す。

  「ほら、見てみなよ」

  鏡に映ったのは、見知らぬ姿。

  だが、立ち姿も、眼差しも――確かに自分だった。

  「…………」

  数秒の沈黙。

  「ちょっとぉぉぉ!!!!!」

  怒号が戦場に響き渡る。

  「なによこれ!! ふざけてんじゃないわよ!!

  今すぐ元に戻しなさい!!」

  バシャーモとなった尚香が地面を蹴る。

  爆ぜるような音と共に、一瞬で距離を詰める。

  「わっ、こわ! さすが尚香!」

  紫の尚香は笑いながら宙に跳び、軽やかに距離を取った。

  「でもさ――その力、嫌いじゃないでしょ?」

  「嫌いに決まってるでしょ!!」

  叫びながらも、尚香は気づいていた。

  この身体は、戦うために出来ている。

  迷いがあれば、炎が揺らぐ。

  ――選べ、と言われている気がした。

  「覚悟、決まったらまた呼んでよ」

  紫の尚香はそう言い残し、炎の揺らぎと共に姿を消す。

  「待ちなさい!!」

  尚香の叫びは空を切った。

  残されたのは、燃える闘志と、制御しきれない力。

  「……絶対、元に戻してやるから」

  そう呟き、尚香は拳を握りしめた。

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