Ad
太陽と月をたべる狼
その狼は常に太陽を追いかけていた
食べるために、飲み込むために
その狼は常に月を追いかけていた
食べるために、飲み込むために
ラグナロクの時、狼は太陽と月に
追いつき飲み込んだ
[newpage]
とある深い森の中、
双子の狼が産声をあげた
双子は母狼からたくさんの愛情を
うけすくすくと成長していった
双子が元気に森の中を
駆け回れるようになった頃、
双子は不思議な夢を見た
おにいちゃん狼は太陽を追い回す夢を、
おとうと狼は月を追い回す夢をみた
他の獲物なんか目に入らなかった
食べたい
食べなければいけない
食欲とは違う使命のような集操感
双子は必死に走り続けた
そして、おにいちゃん狼は太陽に追いつき
おとうと狼は月に追いつき
いざ食べようと口をあけた
その瞬間に目が覚めた
目をさました兄弟は母狼にその話をした
『それはとてもすごいね』と、
母狼は優しく兄弟の顔をなめてくれた
兄弟は嬉しそうにしっぽをふった
[newpage]
アイテム番号: SCP-001
オブジェクトクラス: Apollyon
特別収容プロトコル: その性質のため、SCP-001の収容は不可能です。安全な施設にいるSCP-001イベントの生存者はお互いの接触を絶やさないようにしてください。職員が自己判断で何らかの方法でサイト-51サイト-19へ到達することは推奨されます。
野外を移動する生存者は防護のための衣服、可能なら複数の層で体を完全にカバーしなくてはいけません。徒歩は可能な限り避けてください。都市──および人工の構造物は一般に──最高の防御となります。以前は森林だった場所は避けるべきです。航空機による移動が最も推奨されます。
SCP-001に暴露した職員は喪失したものとみなします。負傷した職員は見捨てられます。安楽死は試みられません。
対処困難な大きさのSCP-001-Aの融合体は何としても回避してください。伝導性電撃武器は実例を行動不能にするのに部分的に効果的であると示されており、自衛のために使用可能です。火炎性の武器も同様に働きますが、冷凍兵器が最も効果的です。
試験により、SCP-001-Aは消費しても比較的安全であると示されています。これは他の手段がないときの最終手段としてのみ考慮されるべきです。消化器内での再構成の可能性があるため、閉塞を避けるため一度に少量ずつ消費してください。
サイト-19の職員は別世界の居住地化の研究を行います。シャトルは光が内部に入らないように建造されなくてはなりません。
[newpage]
ある日の朝、兄弟は
洞穴の中で目を覚ました
母親はいない、餌をとりにいっているのだ
そろそろ帰ってくるだろう
兄弟は母親をむかえるために
洞穴から外に出ていった
洞穴を出れば暖かい日差しが、
それに美しくて照らされた
森が見えるはずだった
そこに森はなかった
『!?、!?!?』
兄弟は混乱した
洞穴を出た兄弟の目に
飛び込んできたのは
草一本すら生えてない地面と
いつもより大きすぎる太陽と
そこらへんを這い回る肉、肉、肉
それだけでも異常な光景だが
さらに異常な点があった
這い回っている肉塊は
すべてピンク色の粘性をもった
液体のようになっているのに、
その肉塊たちからは
兄弟達がいつも聞いていた
動物達の鳴き声が聞こえるのだ
[newpage]
説明: 太陽は[システムエラー] データ消失: ec172. システム管理者にコンタクトしてください.のイベント後にSCP-001に指定されました。最初の24時間で~68億人の犠牲者がもたらされ、このイベントはXK-Δ-クラス ”太陽異常化”(Solar Singularity)シナリオに分類されました。
SCP-001の影響は紫外線への暴露の結果ではなく、むしろ可視スペクトル(~390-700 nm)によるものと考えられます。月光も同様の影響がみられます。
太陽から発する可視光線に接触すると、生体は接触した場所から液状化し、その影響は全身へと広がります。外見は溶けたワックスに似ています。これに要する時間は暴露の程度と生体の大きさに依存します。このような再構築にもかかわらず、生体は死亡しません。
これの生体はゼリー状の粘性を帯びます。その流動する生体は成功度は様々ですが、その元々の形態を再現しようと試みます。
植物は典型的には物理的に不活性となり、光合成を行い酸素を産生することが可能です。飛行可能な生物は飛行能力を失います。動物は知覚力があり、集合体に吸収されていない限りは正常時の行動を模倣します。人間はある程度の知性と記憶力を保持しています。
生物である異常存在がSCP-001に暴露された場合も同様に影響を受けます。暴露により発揮していた異常性は消失すると思われます。
その成分ゆえに、SCP-001-A実例同士が接触すると分子レベルで結合し混ざり合います。この過程は痛みや苦しみを伴わないように見えますが、結果として生じた融合物は動きを止めます。SCP-001イベント以降、殆どの実例がこのような集合体に凝集しています。限界量は無いように見えます。
生じた集合生命は不定形で混沌としています。構成する生物は完全な液体から半液体まで変化し、四肢や胴体が周期的に突き出ます。突き出た構成物は短時間で崩壊するか他の構成物に飲み込まれます。
集合実例はその質量を運ぶために並列に配置された付属肢を使って移動します。より大きな実例は、構成する生物から仮足を構成し、アメーバに似た方法で自らを引きずります。
[newpage]
チュンチュン、ピヨピヨ、という鳥の声が
ガルルルという獣の唸り声が
ピンク色の肉塊から発せられている
その異様な光景に恐怖した兄弟は
一目散に洞穴に逃げ戻った
あれはなに!!
あれはなに!?
どうなってるの!?
なにがおこってるの!?
どうして肉塊から
動物達の声がするの!?
どうして森がなくなってるの!?
動物たちはどこにいったの!?
兄弟達は怯えていた
怯えながら母狼の帰りを待った
いつも兄弟達が怖い思いをした時、
母狼が守ってくれたから、
きっと、今回もなんとかしてくれる
兄弟達はそう思い、母狼の帰りを待った
待って
待って
待ち続けて
兄弟がお腹をすかせた頃
母狼の呼ぶ声がした
兄弟は喜んで外に出た
そこに母狼はいなかった
[newpage]
『…!!』
兄弟は呆然とそれをみた
母狼はそこにいた、かろうじて、
母狼だった
だけど、母狼じゃなかった
母狼は首から上はいつもの母狼だった
首から下はそこらへんを這い回っている
肉塊そのものになりはてていた
かろうじてのこる首から上も
色は肉塊の色になり
母狼の形を失いつつあった
母狼は兄弟に近づいてきていた
『ただいま』
『帰ったよ』
『こっちへおいで』
兄弟は寄り添いながら震えた
『どうしたの』
『お母さんだよ』
母狼もどきが近づく
兄弟は恐怖で泣き喚いた
おかあさん
おかあさん
おかあさん
兄弟は助けを求めて泣いた
『にげて』
母狼もどきが言った
兄弟は母狼もどきを見た
『にげて』
『たすけて』
『殺して』
母狼もどきは止まっていた
母狼もどきは泣いていた
瞳の半分はもはや
瞳の形をしているだけの肉と
なっていた
しかし、もう半分はいつもの
母親の瞳だった
その瞳から涙を流していた
『逃げて』
母狼は再びそう言った
兄弟達は動けなかった
兄弟達が見ている目の前で
母狼の唯一残った瞳が肉に成り果てた
『おいで』
母狼もどきが近づく
『いいこだから、かあさんの
ところへおいで』
母狼もどきが囁く
『おかさあさんと
ひとつになりましょう』
兄弟達は泣いていた、空腹と恐怖で
泣き喚いた
こわい
おなかすいた
おかあさん
こわい
おなかすいた
おかあさん
こわい
おなかすいた
おかあさん
こわいおなかすいたおかあさんこわいおなかすいたおかあさんこわいおなかすいたおかあさんこわいおなかすいたおかあさんこわいおなかすいたおかあさんこわいおなかすいたおかあさんこわいおなかすいたおかあさん
『ひとつに、なりましょう』
[newpage]
気がついたら、兄弟狼は
母狼もどきに食らいついていた
母狼もどきは悲鳴をあげた
母狼もどきが叫ぶのもかまわず、
兄弟は母狼もどきの肉を喰らった
母狼もどきの肉はとても美味しかった
母狼もどきをたいらげると
次はそのへんを這い回る
肉塊たちへとびついた
肉塊達も様々な動物の悲鳴をあげた
でも、もはや気にならなかった
お腹すいた
お肉がある
だから食べる
それだけだ
やがて肉塊達を食べ尽くし、
周りが静かになった時
兄弟は我に帰った
我に帰ってまず、
兄弟達は胃の中のものを
吐き出した
消化しきれてない肉がうぞうぞと
なめくじのように逃げていく
喰べないと
兄弟はせっかくはきだした逃げていく
肉片に食らいついて飲み込んだ
口の中で肉塊が悲鳴をあげた
なぜ、自分達はこんな事を
しているのだろう
なぜ、森は、森の動物達は
肉塊になってしまったのだろう
太陽はどうなってしまったのだろう
そして
なぜ、自分達は
肉塊になってないのだろう
そして、自分達はどうして、
いつの間に大人になったのだろう?
兄弟達が産まれてから、
森の中では8週間しかすぎておらず、
兄弟達はまだ幼かった
しかし、周りの肉塊を食べ尽くした今
兄弟の体は生まれてから
すでに2年経過したと
いわんばかりに成熟していた
大人の狼になっていたのだ
兄弟は困惑していた
兄弟は上を見上げた
夜になっていた
夜空に満月が浮かんでいたが、
その満月も変だった
『おつきさま、たべたい』
おとうと狼がつぶやいた
『なにいってんだ、
あんな高いところに
あるのに、食べられるわけ
ないだろ?』
『わかってる、でも食べなくちゃ』
おとうと狼は真剣だった
それをきいてふとおにいちゃん狼は
思い出した
おひさまのことを
思い出した時おにいちゃん狼も
つぶやいた
『たべたい』
『たべなきゃいけない』
そうつぶやいて兄弟はお互いに
顔をみあわせた
森がこんなことになる前に
兄弟は夢をみていた
太陽と月を食べようと
追いかけまわす夢を
ふたたび太陽と月を見上げて
食べたいという欲求と集操にかられて
兄弟はふっと理解した
自分達はそのために産まれたのだと
[newpage]
それから、兄弟達は地上を這い回る
肉を食べた
肉が叫ぼうが喚こうが関係なく
地球の上をかけまわり、肉塊達を
喰らっていった
もうちっとも怖くなかった
肉塊達をたべるほどに、
兄弟の体が大きくなった
成長しても大人狼ほどしかなかったのが
建物をこえるほど大きくなった
そして地球上をはいまわる
肉塊を全て喰いつくした時
兄弟は太陽と月にとどくほどに
大きくなった
太陽が、月が、地球から離れ逃げていく
兄弟狼は追いかけた
おにいちゃん狼は太陽を
おとうと狼は月を追いかけた
邪魔な星空を噛み砕きながら、
おしのけながら
兄弟は太陽と月を追いかけて
走り続けた
そして、兄弟はおいついた
太陽と月よりも大きくなって
兄弟狼は大口をあけて太陽と月を
飲み込んだ
肉塊達よりももっともっと美味しかった
太陽と月を飲み込んだ後
兄弟達は眠くなった
きっと、たくさん走ったから
疲れたのだろう
眠ろう
そう思って兄弟は目をとじた
兄弟は森の中で、母狼と暮らす夢を見た
永遠に醒めない、幸せな夢を
おしまい
Ad