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拍手が広がり、それと共に幕が上がった。
薄暗い劇場の中、壇上の一点のみに明かりが集う。円形に切り抜かれた光の舞台、そこは只唯一のステージ。
拍手が疎らに落ち着いていく。
最後の一拍子の余韻が消えた劇場に、足音が響く。壇上の脇から現れたのは一人の男、と思われる存在。
細身の身体をスーツに隠し、頭は帽子で、顔は仮面で覆われていた。
彼の傍らには大きな楽器ケース。光の元にたどり着いた男だが、円の中心を避けるように動き、傍らの暗がりに置かれていた椅子を寄せて座り込んだ。
そして、その男の手によって楽器ケースが置かれる。光の中に。
劇場の中で一番目立つ場所にて、それはゆっくりと開かれた。
中からでてきたのは、犬獣人の少年であった。
まだ学業についているであろう未成熟な身体が、何も布を纏わぬまま、折り畳まれて納められていた。
劇場の、先ほどまで拍手をしていたであろう者達、その誰もがそれを目にしたであろう。しかし小さな物音はあれど、騒めきまでは至らない。
仮面の男の手によって、少年はゆっくりとケースから取り出される。
いつの間にか近づいていた何者かが、空になったケースを退かす中、少年は男のうでの中に収まるように、その身を光にさらして抱えられた。
未成熟な肉体は未だ大人とはいえないものの、子供の垣根から飛び出しかけたものだった。
ふっくらと柔らかい毛皮の中で、育ち始めた骨と肉が盛り上がり始めたもの。未完成の美しさすら感じるフォルムを目にし、暗がりに息を飲む気配が複数おこる。
少年は裸をさらしているが、意識がはっきりしていない様子で、虚ろに半眼をひらいておりどこも見ていない様相であった。
ただ一つ、その中心は天井を仰いでいた。
少年の股間にある性器は、見えたその時からずっと勃ち続けていた。皮の剥けた先端を輝かせて、まるで針を刺したら破裂しかねないほどに硬く震えていた。
しばし、少年はそのまま晒された。唯一のスポットライトを浴びて、劇場の全ての客の目に焼き付かせるように。力無く画面の男の身体に身をあずけて、抱き抱えられる様を。
さて、徐に舞台がうごく。
響く弦の音、複数。
画面の男の後方に、暗がりの中で背景の如く存在していた者達が、手にした楽器を試奏する。
その音に反応して、少年がピクリと身動ぎする。垂らしていた腕が、脚が、尾が、ほんの少しだけ揺れて、また垂れる。正気の無かった顔にも、何か動きが見えている。少し顔をしかめるように眉根がより、しかし戻っていく。
それはまるで、寝ている者が起きかけている様相に似ていた。
音がまた消え、少年も動きを止める。
そんな少年を抱えた仮面の男が動き出す。
片腕を少年の胸にまわし、そこにある突起物を指にとらえた。まるて摘まむように。
もう片方には、いつの間にか弓が保持されていた。彼の後ろの弦楽奏者達と同じものが。
その張りつめられた弦は、少年の中心に押し当てられた。先端より少し下の箇所に。
舞台が一層の静けさに包まれる。
その空気が濃縮された瞬間に、弓は静かに滑りだした。
「っアアァーーーーーーっ!」
変声期の少年の、艶やかな声が響き渡る。沈黙の空気をかきけしたその声は、犬の少年があげたものである。
一定の音階で伸びるようにあがるそれは、決してぶれないという違和感はあれど、明らかに喘ぎに入る代物。
弓により一物を刺激せれ、その喉から絞り出された叫びである。
ただ、音程は変わらない。
男が均一の早さで腕を動かす間、少年は一定の音を出し続ける。
まるで、楽器のように。
否、まさに楽器であった。
少年は仮面の男により演奏される存在であった。弓をあてる位置、乳首への刺激、それにより音程を操られ、喉からはしたなく唄を響かせる存在であった。
少年の独唱に、次第に演奏が重ねられる。
弦楽多重奏を背景に、一点注目の場にいる少年は音を上げさせられ続ける。
仮面の男により、刺激と呼吸を調整され、自らのシンボルを用いての傀儡の歌が、劇場に広がり観客達の耳朶を打つ。
少年のそこは赤々しさを増し、さらに怒張してみえるが、無駄な震えもなければ先走りは一切なかった。
演奏の邪魔となるものは、何一つなかった。
伴奏の熱が高まっていき、それにともない少年への演奏も激しくなっていく。
少年の様相も変わっていた。力ない肢体の様子はかわらないが、指や尾をピクンビクンと跳ねさせ、しかし演奏の阻害だけは決してしない。
一番の変化は目であった。焦点が定まらぬのはそのままに、しかし完全に開かれた眼は不安的に揺れ動いている。開いた瞳孔を震わせ、口を開け続けている様は、まるで何かに追い詰められているように。
――正しく追い詰められていたのだろう。
その瞬間がおとずれた。
「ァーーーっ、ぁ、ぁが、かっ、はっ!!」
一段と高い音を奏でた喉が、掠れてとぎれる。その瞬間に伴奏が途絶え、そして。
「アっ! ンァッ! アアンっ!!」
弓により、指により、強くはじかれた少年が全身をビクつかせて爆ぜた。
少年の性器がおおきく動いて、光の中に白のアーチを描く。
劇場の全ての存在に、それを魅せるように、つよい光を受けて、何度も何度も。何度も。
仮面の男の腕の中で、舌を口から垂らしながら犬の少年は脱力していた。
その股間が、律動を未だに繰り返すなか、ゆっくりと光がしぼられていく。
それを目にした観客から拍手がわき起こった。
音の波につつまれながら最後に光が当たったのは、白濁にまみれた真っ赤な先端であった。
暗がりに幕が降りるまで、拍手は鳴り止まなかった。
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