残滓

  0. 敗残者の詩

  まだ生きてゆくために、或いはまだせめて死なないでいるために、残滓でいい、幸せの残り香はありませんか、少し分けてはもらえませんか?

  あなたの懐に包まれていると、嘘ではなく、心底からの涙が溢れ出ます、自分もまだ人間だったようでした、確からしくそう思えます。

  それでも切羽詰まるのです、間に合うでしょうか、私の真心はあなたにちゃんと届くでしょうか?

  私は太ってはいませんでした。それは耐え難いことでした。この世界では、太っていることこそが正義だからです。

  何も知らなかった頃には馬鹿にしたこともありました、本当に悔やまれてなりません。幼かった私のこと、ただ羨ましかったのです。私も仲間に入りたかった、それはもう叶わないこと。

  解っては頂けないかもしれません、私は敗残者ですから。それでもまだ、和解できる可能性、それは少しも残されてはいないのでしょうか?跪いてでも、私はあなた方と、解り合いたかったのです。

  人は時に他人を見下し、或いは差別さえします。私もそうでした、ただ耐え難いことです、もう誰をも傷付けたくはないのです。表す或いは表さないことによって誰かが傷付くことを回避しながら、どうにか生き延びたい。これは我儘が過ぎるでしょうか?

  重々しい空からは、心の周縁部から溢れ落ちた涙のような雨が降り注いでいきます。今まさに私の心は瓦礫になろうとしています。意味のない遣り取りを繰り返し、その積もる言葉はまるで残滓のようで、私は慄くしかないのです。

  滑らかなアールに象られたあなたの胸部と腹部と臀部とにささやかな私の心奥の声を乗せて、繰り返し讃え続けてゆきたい。それはもう叶いませんか?

  私には、それでもその量感は求め得ぬ幻でしょうか。

  *****

  金輪際会わないと決めていたのに、流転の末、あなたの住む街へと辿り着きました。私は、愚かでした。分不相応なことを望んでいました。会うべきではなかったのに、脚が動いていました、駆けていました。

  命の価値に違いがあるなら、この時の私はまさに残滓のようでした。

  あなたは烈火の如く怒りをぶつけてきました、顔も見たくなかったのでしょう。

  路傍の石になりたい、そう思ったことはありますか?私には心当たりが何度でもありました、それは私にとっては、当たり前のことでした。

  せめて一度でいい、人並みの幸せを得たかった。それはけれどもとても難しいことで、途方もないことでもありました。

  母はいつか云いました、“人は人、自分は自分”だと。その通りです、だから救われないのです。誰しも、当然のようにそれは解っています。ただそれはあまりにも残酷で、私は既のところで脳がその理解を拒絶しました。

  幼い頃、あなたのような人に憧れる己のことを不安に思う一方で、幸せの青い鳥はいつか私のところにもやってきてくれると、そう信じていました。それは簡単なようでいて、奇跡のようなことでもありました。

  名もなき抜け殻には掛ける声もなかったのでしょう、あなたは侮蔑しながら私には目もくれずに扉を閉めるのでした。それっきりのことでした。

  もう一度だけ、幸せよ、おいで。私が生まれてこられたことは、奇跡です。だからもう一度、幸せよ、おいで。

  あなたとでなくても構わないから、だから誰か、私の仲間になってはくれませんか?声を聞いては頂けませんか?

  誰とも繋がれなかった私に生きる価値などありません。夢幻泡影、命の値段さえ平等ではありません。それでも私を嘲る相手は、私が決めます。いつかの肩をぶつけておいて黙礼もせずに立ち去っていったピンヒールの女風情などには、私は屈することはないのです。

  今ここに、可能性の全てを賭けて、最後の悪足掻きをしてみます。

  ありがとう、皆さん。

  *****

  晴之はローファーを脱ぐと、以上の文章のしたためられた風変わりな遺書を載せ、コンクリートの手摺りから身を乗り出した。こういう時に都合良く助けてくれる正義の味方など、大抵は現れない。それでも、ここがビルの十階であったとしても、生き延びてしまったら、どうするか。ましてやここは二階のベランダである。隙ができた。これでは死ねまい、死神もそう踏んだようで、晴之は泣き崩れた。誰にも喜ばれなかった残滓の、死ねなかっただけの過ち即ち存在、哀れ今ここに。

  1. Discord

  あれから三日が経つというのに、ぐずぐずと延々、動けないでいた。晴之にとっては、己の肉体は最早忌まわしいものでしかなかった。贅沢だったかもしれない。けれども晴之のささくれだった心は、あの時の横恋慕の相手の形相で、ズタズタに打ちのめされていた。

  心の淵に異物が擦れるかのような感覚を抱きながら晴之は、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を、躊躇もなく枕に擦り付けて蠢くのであった。

  合鍵で妹が入ってきた、玄関から物音がする。同居しているのだ、ここは妹名義で借りている部屋、見捨てるわけにもいかないと、引き摺ってここまで連れてきた。晴之を、妹がだ。

  「ホンっと気持ち悪い男!あんた男のことしか考えてないでしょ、馬鹿みたいね!自殺のふりしてSOSだとか、流行んないからやめなさい!ここはマンションの二階、落ちてもせいぜい複雑骨折ね。とりあえず飯は買ってきた、サンドイッチ!ちゃんと食うのよ、死なれたら夢見が悪いわ」

  疾風のような妹の襲来から五分、それで再び部屋は静まり返る。エアコンの風音が微かに響く。

  連休明け、今日仕事を休むなら、連絡が必要だ。それができなくて、居た堪れなくて、晴之は出社を決断した、どうでるか。

  「晴之さん、具合悪そうっすね、どうしました?始業までまだ間があるから、休んでてください。準備は下働きの連中と全部やっておくんで。」

  古いモルタルの建物は印刷所の工場で、下働きというのはアルバイトのことを指していた。晴之は印刷物に関するオフセット印刷機のオペレーション業務を引き受ける存在であった。

  インクの匂いが鼻に付く空間、椅子にもたれて晴之は、何故今更こんなにも部外者たちばかりが自分に優しいのかが、解らなかった。晴之は歳の割に幼いところがあったのだ、ひと言で云うなら、我儘なのであった。

  切々と、心の底に雪が降り積もるかのような午前中、ルーティンワークの範疇を超える作業でも、晴之はどうにかこなした。仕事はできた。これは生命線であった。

  不協和音は、最も大切な居場所の側で、ぎしりぎしりと不気味な音を立てて晴之を脅しているかのようであった、それはゲイの狭い世界での話。外に出れば関係はないのであった。それでもやはり、堪えた。薄ら寒い予感が、背筋を這い回る。それは的中していた。もう晴之に、ゲイとしての居場所はないのだった。噂が、駆け回っていた。残念な結末ではあった。

  2. 覚悟と、矜恃と

  貯金はあった、今は亡き父からの、相続分であった。実家は既にない。母は特別養護施設に入所しており、そのための費用と相続税とを捻出するために、売却された。ありきたりな話ではある。

  晴之は覚悟を決めた。整形手術を受けるのだ。自分のことを誰も知らない場所に飛んでいきたかった、しかしそれは叶わぬこと。ならばいっそ顔など跡形もなく変えてしまえばいい、それは服を着替えるのと同じこと、それだけだ。

  医師には、一枚のポートレートを見せた。それは好きだったあの人の、確か隼人だったか、その初恋の相手の写真なのであった。

  「結構掛かりますよ、費用。やってやれないこともありませんが、術後、痛いです。それでもいいなら、引き受けましょう。この後、詳しい内容についてのカウンセリングの上、施術日時を決めます」

  その後、一連の手術の流れについてのレクチャーがあり、再び念を押された。

  「後戻りできませんが、いいですかね」

  晴之が黙って頷いて、未知なる未来への扉が、ゆっくりと開いた。

  手術に際して、長期休暇が取れなかったこともあり、退職をすることとなった。顔が一変するのである、その点からも、止むを得なかった。

  執念の体型改造も成功して、半年後、晴之は“あの人”に貫かれていた。夢にまで見た時間、手放したくはなかった。だが晴之は知っていた。そもそもこの人は、一つ所に長々留まっているようなタマではないのだと云うことを、風の噂で。だから初めてのことが済んだ後、晴之はこう云った。

  「気持ちよかったです、ありがとう。またいつかお会いしましょう!」

  別れ際に“あの人”は、嗚咽を漏らしていた。それでいい、ざまあみろ、そう思っていた。

  それからの晴之は、仕事探しもそっちのけで色々な男の上を、専ら騎乗位で乗っかり、時には座位で身悶え、渡り歩いていた。

  飲み屋街では、“騎乗位のハルちゃん”と呼ばれていた。それはまさに、水を得た魚のような日常の到来であったーー。

  そぼ降る雨の中、黒のダービーシューズを履いた晴之は、行きつけの飲み屋に顔を出す。先客はひとり、賑わいがない、しかし雨のせいもある、こんな夜もたまにはいいと、独りごちて、カウンターの端に座った。

  “なぁハルくん”、カウンターの真ん中に座った男が口を開いた。

  「好きにすればいい、ただ、変わったな」

  声で解った。それは間違いない、晴之にとっての初恋の相手であった、名前は健輔、今も面影を残し、愛らしい。

  早速晴之はモーションをかけるのだが、ここで想定外の事態が起こる。

  健介は黙ったまま、動かない。

  五分、沈黙が流れた。そしてようやっとひと言、“嫌だね、前の方がよかった”と、そう云うのであった。

  お代を払って、駆け出した。雨足は強くなっていた。ステンカラーのレインコートはずぶ濡れで、電車に乗るのも憚られるような有り様。それでも晴之は、走り続けた。

  家に戻ると、妹の掌が飛んできた。

  「ったくうるさいわねぇ!毎晩毎晩、何時だと思ってんのよ!男の股座もいいけど、たまには早く帰ってきて晩飯の支度でもしたらどうなの!飯はテーブルの上、おやすみ!」

  それからは、以前のような静かな日常が、降り注いだ。ベランダでは観葉植物を幾つか、育て始めた。もう負け犬ではないーー。そういう意識は、晴之の心模様を幾分かは、安らかなものとした。晴之の中には次第に、覚悟と矜恃とが芽生え始めていた。

  3. COMME des GARÇONS

  いいものは高いという。服飾の世界にあっても、それはそうだ。原価率など気にする人間はそもそも、高価な服など買うわけもない。安いものには問題が潜んでいる、たとえば工員からの搾取であるといったような。

  体型が変わったとはいえ、体質もあってそこまで太れるわけでもなかった晴之であったが、トレーニングにより筋肉は増していたので、リフレッシュした顔とともに、いまだに人気はあった。

  だが、もういいのだ。

  飲み屋通いをやめた晴之、ハイブランドの服を買い始める。まるで少年のように瞳を輝かせながら、ブティックの店員と会話を交わす日々。

  預金がすり減ってゆく。危うい資金繰りが、いつの間にやら常道となっていた。ひたひたと忍び寄る危機、露になるまでには、まだ時間がかかりそうであった。

  それよりも、このまま、誰にも愛されないまま、独りで朽ち果てていくのか。それもいい、でもそれだけでは、寂しい。晴之は深夜布団の上で、静かに静かに、そのようなことを考えながら、ただひたすらに少年のように、咽び泣くのであった。生活感のない悩みが、この頃の晴之の脳内を支配していた。

  早い話が、晴之は顔が変わっても、我儘なのであった。人間、そう簡単には変われないものなのである。

  或る日、罰が当たった。

  転職したばかりの職場でミスを連続してやらかした、集中力が足りなかった、激昂した上司と対立した、結局クビになった、形式上は依願退職であった、珍しくやけ酒をした、涙々であった。そしてーー。

  少々の禁欲的生活の反動もあって三日三晩行きずりの男と遊び呆けて、たまたまふらりと赴いた、HIVの即日検査で。陽性であったのだ。

  意外と冷静ではあった、感染はいつ頃のことか、心当たりはあり過ぎた。そういえばゴムを使ったことなどなかった、だからこれは、当然の報いであるのだ。

  「あ、“あの人”に報せなきゃ」

  その時、一陣の風が辺りを攫った、塵や埃が、舞っていた。忙しなく歩く、次第に息苦しくなる、駆け出す、信号が変わる、急き立てられる。

  急げ、急げ、そんな声が聞こえてくる気がして、走る、走る、意味もなく、ただあの人の元へーー。

  気付くと晴之は汗まみれの少年のような顔で、あの人の住処の前に立っていた。それはアパートの一室。息を吸う、告白をするわけでもないのに。チェックメイト、覚悟は決まった。

  インターホンを押す。扉がゆっくりと開く。のっそりと顔を出す大きな塊、瞬間見る間に顔付きが変わる。名はそうだ、隼人と云ったか。再会の時、見ると嬉しそうだった。ガッカリさせると思ったが、手遅れになる前に報せねばならない、喉が渇く、口を開く。

  「HIVに感染しちゃった。ハヤくんとはHしたことあったから、話さなきゃと思って。そんだけ。じゃ、さよなら」

  踵を返す、ふわり向かい風、怯んだその時、隼人は叫んだ。

  「知ってたよ、俺もそうだし!ハルちゃんのことも全部知ってたよ!俺じゃ駄目か、いい奥さんになれると思ってる。俺じゃ駄目か」

  それは晴之にとっては、一本の蜘蛛の糸のようなものであったろうか。一時の我儘も思い上がりも、晴之の執念が押し込めた。顔からでないと始まらない恋もある、残念だがこれは事実なのだろう。この時二人はまだ二十代、幼いのであった。

  

  翻って半年ほど前であったか。晴之は、路上で蹲るようにしていた手負いの青い鳥の看護をした。不思議と、助けてやらねばならない気がした。何かあった際には解るようにと、鳥の足には小さな赤いタグを付けておいた、便宜上の呼び名はリリーとした。

  それからリリーは時折晴之の側にやってきては、元気そうな様子を見せるのであった。

  4. 生き直し

  再会した二人は、抱き合った。何はともあれ、まずはそれであった。

  気付けば、高額服飾品の買い過ぎで晴之の預金はショート寸前であったが、本人はその事実ときちんと向き合ってはいなかった。時既に遅し、事態は風雲急を告げるのであった。

  そんなこととは露知らず、組んず解れつの二人、ふとベランダを見遣ると、かつて赤いタグを付けてやった青い鳥のリリーが手摺りに留まっていた。窓を開け、中に呼び寄せる晴之。

  青い鳥は、口を開いた。

  「そなたたちのHIV、感染をなかったことにしてやってもいい。ただ、次はないぞ」

  この時二人は、襟を正して生き直すことを、各々己の中で誓った。だが遅かった、遂に晴之の預金が、底をついた。買い物の際にクレジットカードの与信が下りなくなって、初めて気が付いた。古着屋で山のような服飾品を処分するも二束三文、焼け石に水なのであった。

  晴之は追われるようにして隼人の家に転がり込んだ。妹の元にも、時折は戻る。背に腹は変えられない、金を無心するのだ。

  「まぁ今回だけ許してあげる。部屋空けてくれて、せいせいしたわ!戻ってきた時は、手土産くらい寄越してくれてもいいのよ。お金はいつか耳揃えて返してもらうけど、少し猶予をあげようかしらね」とは妹の弁であった。リリーが、妹の気持ちを和らげてくれていたーー。

  これで確かに、危機は回避されつつあった。二人は、安息の地に辿り着いたようにも見えた。だが、果たして本当にそうであろうか。

  隼人も晴之も、元々欲深い、業の深い人間だ。二人きりで互いを意識した時に、果たしてそれは覆い隠せるものであろうか。

  或る日隼人は、悪夢を見た。晴之が自分を見捨てる夢であった。たわいもないが、これは堪えた。この男は、不安になるとまず、誰かに跨るのだ。見境がない、始末が悪い。

  隼人は、性に溺れた。リリーは度々悪夢によって警告のサインを出していた、ただ省みられることはなかった。やがて、再びHIVに感染した。

  そうした様を、裏切るでもなく晴之は、ただじっと俯瞰していた。そして、隼人が崩れてゆくのを最後まで見届けてから、晴之は隼人の元を立ち去った。

  それから半年ののち、隼人は帰らぬ人となった。絶望して、首を吊ったのだ。無縁仏となった。

  墓参りの日、晴之の肩にリリーが乗った。晴之は、リリーの力を借りて生き直そうとしていた。何もかも失ってようやく、独りぼっちでもいい、そう思えた。

  5. 10 Years After : Conclusion

  実に十年である。晴之が立ち直るには、それだけの時間が必要であった。妹からの借金の弁済も終わった。また誰かと出逢いたい、そんな風が気紛れに吹いたかのようでもあった。

  飲み屋で、ふらりと訪れた健輔と、顔を合わせた。声が掛かる、思わぬこと、それは健輔からの誘いであった。

  「またいい顔になったな。よかったらこれから、飯でもどうだ?」

  程よい老いは、互いへのリスペクトに繋がった、話が弾む。ようやっと、ここまで辿り着けた、長かったーー。

  「ね、健ちゃん、僕、幸せになれるかなぁ?」

  「もう幸せなんじゃないの?何なら俺も、側に居て手伝うからさ」

  「ありがと!」

  *****

  空いっぱいに広がる星空の絨毯を眺めている二人、肩寄せ合って、よく似てもいた。はにかんだ笑みで長いキス、遠い口溶け、夢の始まり、今夜も二人で溺れてみようか、それは気紛れな絆されようで、在り方としては、十年分の戦いの重みはあった、それはたぶん既に十分に満たされていた、だからよかった、これでよかった。

  追い付けない、辿り着けない、キリがない、終わらない、そう思っていた。けれども、すれ違いだらけの長い長い青春時代は、いつの間にか幕を閉じていた。

  「愛っていう存在の本質っていうのは、自分を差し置いても大切だと思えるかどうか、そこにあるんじゃないかな。慌てる前にひと呼吸置けたなら、それだけでも立派なもんだよ、成長したね」

  健輔がそう云ってくれたから、だから晴之は独りぼっちのこれまでの全てを、無事に飲み込んだのだった。

  「今晩は唐揚げとシーザーサラダ、それにロールキャベツ!どれも美味しくできたよ!」

  「お、旨そうだな!これはあとでご褒美だな!」

  「うん、待ってる!」

  手が届かないと、そうとばかり思っていた幸せ。たとえそれが残滓のようなひとひらであるのだとしても、もう構わない。

  誰かのやさしさに甘えられる内は、甘えておけばいい。いつか誰かに恩返しできたなら、それでいい。

  みんなにやさしくするための方法論など、存在しない。だからこそ、大切な人だけは、何としてでも守り抜かねばならない。

  楽しいことばかりではない、弾かれることだってある。

  押したり引いたり距離感を保って、時には突っ張って、後ろも振り返りながら、ゆっくりと進む。それで道は開ける、きっとまだ、生きてゆける。

  だって、今宵もリリーが晴之の側で飛び回っているから、だからーー。

  The End