ケツ毛がフェチの短小包茎オオカミおじさんに永久脱毛を猛反対される短編を書いてみた

  

  俺が不審な物音に目を覚ますと、すでに外は仄暗く、夜明け前の空気が満ちていた。

  しかし残念ながら熱く苦しい。いかんともしがたく熱帯朝。本来、一日でもっとも涼しいこの時間帯でさえ、体じゅうに汗を吹きださせるにはじゅうぶんだった。寝ているあいだにブランケットはどこかへ蹴飛ばしてしまったらしい。かたわらを見ると、ベッドにはいるべきはずのボーイフレンドがいなかった。

  ボーイフレンドがどこにいるかはわかっていた。シャツに下着というかっこうのまま、寝室を出てキッチンに向かう。

  彼もまた、下着一枚というラフなかっこうでキッチンのフローリングにぺたりと座り込んでいた。十歳年上の、狼の獣人。シンリンオオカミに似た、白とグレーの混ざりあった豊かな毛並みを、下着一枚ぶんを除いてふさふささせている。白目がちの三白眼で、ちょっとばかりしゃくれ気味の顎にはほかよりも黒っぽく色の濃い毛が顎髭のようにたくわえられている。身長は一八○センチほどはある。中肉中背もいいところである俺にしてみれば、見上げるほどに背が高い。縦だけでなく横にも体が大きいのだが、ただ太っているというよりは、全体に体の密度が濃いというか、がっしりしている。だから背が高いだけでなく、体そのものが大きい。

  きつい眼差し……顎髭……体つき……どこを取っても雄くさくて、良く言えばワイルド。悪く言えば粗野。俺のボーイフレンドは、一般的な意味での美形では、ないのかもしれない。だけど強面の顔つきに反して、ほんのりと笑みを浮かべているようなマズルの噛み合わせがなんともチャーミングだ。器が大きくて、俺に対して無条件に優しく、柔和な目を向ける狼。ひとによっては「厳つい」と言いそうだが、俺の目にはいつだって男前に見える狼なのだ。

  その姿が、冷蔵庫のLEDに照らされてよく見えた。彼が食んでいるカニカマも含めて。

  「なにしてんだ?」と、俺は尋ねた。

  「うおう」と、狼は驚いて振り向いた。「おはようさん」

  「カニカマ?」

  「うん」

  「俺にもくれ」

  「ゆでたまごも食うかあ?」

  「食う」と、俺は言った。「ていうか、今何時だよ」

  「わかんねえ」と、狼は言った。

  ふたりして座り込んで、カニカマやらなにやらをムシャムシャ食う。冷蔵庫は開けっぱなしだ。電気がもったいないと頭の片隅で思いはするが、流れてくる冷気はただでさえ寝起きの思考を凍らせた。

  やがて、ぴぴ、と炊飯器が電子音をたてる。それでだいたい朝五時なのだなと、俺も狼も察した。

  「今日も暑くなりそうだ」と、俺は言った。

  「シャワー浴びようぜ」と、狼が言った。

  ようやく立ち上がり、浴室に移動する。

  座っていたフローリングには、俺の汗と狼の毛で、尻のかたちがフローリングにくっきり残っていた。

  シャワーを浴びて、しばらくはだらだらと過ごした。朝の再放送アニメを観る俺の顔を、狼はじっと見つめる。

  頬を汗が伝った。蝉の声が、開け放った窓から濁流のように流れ込む。熱い。まだ午前中だというのに、今日も暑い。寝転がって窓から空を見上げると、大きな入道雲が見えた。室温はすでに三十三度に達していた。

  「あのさあ」と、狼は言った。

  「うん? なんだよ」

  「ヒマ」

  「そう」

  「構ってくれよ。日曜だぜ」

  「今テレビ観てるから、あとでな」

  「佐原は落ちて死ぬぞ、ソレ」

  狼の後ろ頭を思いきりひっぱたいてから、テレビを消した。

  ジワジワと染み込むような熱気と、蝉の声が頭上を掠めていった。怠惰。無為。狼にとっては、それもいい。今日は日曜日だからだ。しかし俺の仕事は、残念ながら曜日には関係ない。狼が俺の髪をもてあそぶのは好きにさせておき、ノートPCを手繰り寄せてテーブルに置く。

  俺の仕事はフリーライターだ。ネット記事を執筆することで生計をたてている。今日は地震対策についての情報を簡単にまとめた記事を書かねばならない。

  作業を始める前に、ブラウザでYouTubeを開く。動画時間の長いジャズ系の音楽を流すためだった。俺は昔から、少しくらい物音があった方が仕事が捗る方だった。ライブラリから目当ての動画を再生する。

  と、動画の前に広告が入った。脱毛サロンの広告動画である。

  どうということはない。素人同然の漫画を、素人同然の声優がアテレコするという、低コストで作成できる、よくある広告。体毛の濃い男に向かって、女たちがひとしきり罵倒する。一方で、脱毛サロンに通って顎や手足をツルツルにした友人がもてはやされる。男は脱毛サロンに通い、コンプレックスを解消する――

  どうかしていると思う。こんなパラノイアじみた広告を見たところで、いったい誰が心を惹かれるというのだろう? 仮に脱毛を決めたとして、俺ならこんな広告を打つ店を選ぶ気にはならない。

  当然、広告はスキップした。だから別に、その広告を見たせいなんかじゃない。俺自身も、コンプレックスというほど脱毛について思い悩んでいたわけでもない。

  「俺も、尻の毛、脱毛しようかな」

  なんとなくだった。それはまったく、なんとなくの言葉だったのだ。

  「はあ!?」

  なのに、いきなり狼が声を張り上げたので、俺はちょっと尻が浮くくらい驚いた。

  「なに言ってんだ! ダメだダメだ、そんなもん! 絶対禁止!」

  狼が両腕でバッテンをつくる。牙を剥き、マズルに皺をいっぱい寄せた様相であった。獰猛な肉食獣の顔でオレに物申している。怒っているようでも、困惑しているようでもあった。

  こんなことは初めてだった。俺も戸惑う気持ちを隠せない。

  「だって……ほら、汚いだろ?」

  とりあえず、それだけは言った。体毛が汚いと言っているわけじゃない。尻の毛は、衛生的に気になってしまうという意味だ。そういうなんの気のない言葉に、これほどの猛反発を受けるとは思わない。

  「人間の! つるつるの体に! 大事なところだけ毛が生えてるのが……ソコのにおいがイイんだろうが!」

  お、おう……

  俺は戸惑いに戸惑いを乗算させるしかなかった。この狼にそんなフェチがあるなんて知らなかったのだ。我々の交際は、かれこれ二年になる。同棲からを数えても一年が経った。それでもまだまだ知らなことばかりだ。恋人なんていったって、わかんないもんだな。

  しかしそれはそれ、ハイそうですかとはならない。俺にも一応の言い分はある。

  「トイレの後とかさ、気になるんだよ」

  俺は特別、毛深くはない。腕や脛をきれいとは言いがたいまでも、体毛に悩まされたことは一度もない。

  でもどういうわけか、腋や陰毛だけは、異様に毛深いのだ。それだって、誰に見られるわけでもないから普段は気にしちゃいないが。

  「フェロモンってのはそういうもんだろが」

  狼殿、大真面目である。

  「いやまあ、そうかもしれないけど」

  陰毛には……汗や体臭や排泄物のにおいを溜め込む機能があるらしい。俺は狼の言いたいことが、わからないではなかった。狼であるということは、狼であるということなので……嗅覚の鋭敏な種族柄、フェロモン……つまりにおいに対して、ある種のこだわりがあるのかもしれない。

  「でも汚いもんは汚いだろ」

  「だったらそんなもん、気にならねえようにしてやるよ」

  「はあ?」

  狼はやおら立ちあがり、床にべったり座っている俺を、[[rb:持 > 丶]][[rb:ち > 丶]][[rb:上 > 丶]][[rb:げ > 丶]][[rb:た > 丶]]。スーパーで米の袋でも持ち上げるように無造作に。信じられない。これだから獣人は。

  肩に担がれながら、ズボンを引っぺがされる。

  なんでそうなる。狼は明らかに、これから俺を抱くつもりだった。こんなわけのわからないうちに抱かれるほど、俺はクレイジーじゃない。

  だからもちろん、抵抗は、した。しかし一日の大部分をPCの前で過ごすのが日常の俺だ。意識して体を鍛えたことなど一度もない。運動不足の[[rb:青瓢箪 > ]]……正しく典型的な現代人……成人の体を易々と担いでしまう大男に対して、いったいなにができるというのだろう? ほとんどなすがままといえた。

  下半身をすっぽんぽんに剥かれ、ソファーに下ろされる。膝下に手を入れて、持ち上げられた。

  「ちょっ……!」

  洒落にならない。いくら恋人といったって、洗ってもいないチンポやアナルを見られることには恥辱を感じた。だのに狼は躊躇の素振りさえもなく、股間に鼻を寄せて思いきりにおいを嗅ぐのだ。マズルの先っぽについた湿った鼻をチン毛に突っ込み、まさぐって、空気をかき混ぜながら。

  すぅぅぅ~~~……

  「ああ、スゲエ……ちんぽのにおい、たくさんするなあ?」

  俺は顔の表面を猛烈に熱く感じた。それは、ただのひとり言ではなかった。不潔なちんぽのにおいが溜まっていることを、わざわざ俺に言い聞かせるのだ。

  たぶん、俺のような[[rb:人 > 丶]][[rb:間 > 丶]]には到底わかりようもない程度のにおいだったはずである。俺はどんなに仕事で夜が遅くなったとしても、寝る前のシャワーだけは絶対に欠かさない。一日の汚れをベッドに持ち込むのが気持ち悪いからだ。それでも狼の嗅覚ならば感知できる。だいたい、服を脱ぐまでもなく、彼らには下着の奥の小便のにおいが嗅ぎ取れる。外でなにを食ってきたのかもわかるし、服のにおいで一日の移動経路をおおよそ割り出せる。

  それほどの感覚器官を具えているからには、狼の世界観における価値基準の多くには「におい」という要素が大きく喰い込んでくる。彼らの鼻の良さを前にすれば、人間など常に丸裸同然。俺たちは彼らに対して常にプライベートの一部、あるいは大部分を垂れ流しながら生きているのだ。

  フーッ、フーッ、鼻息はチンポの根元に当たり、チン毛にこもった空気を吸い込む。体をふたつに折り畳まれるようなかっこうでソファーに固定され、あられもない場所を嗅ぎ回されるのが……単純な腕力にって、一切の抵抗を余儀なくされていることが……たまらなく恥ずかしかった。

  狼は平常チンポが半ば隠れてしまうくらいに濃い陰毛をついばみながらしばらくそうして、やがて満足したのか、マズルが次のポイントへ向けて移動する。垂れ下がるチンポを鼻先で持ち上げ、キンタマと竿の接着面……寝汗もかいて清潔とは言いがたい……蒸れたにおいの溜まる場所に。

  「うっ……わ……」

  「んん? なんだよ。興奮してんのか?」

  狼は俺にもそれとわかるように、大袈裟なくらいクンクン鼻を鳴らして嗅ぎ続ける。好き勝手にチンポをあっちこっち動かされ、あられもないところを嗅がれているうちに、俺は段々と勃起しはじめていた。

  「おっ、お、おまえが変なとこ嗅ぐから……」

  「へえ。汚い汚いって気にしてるとこ嗅がれたら、おまえはビンビンになるのか。そりゃあ立派な変態だな」

  どの口が言っているのか。羞恥や憤懣を覚える以前に、俺は疑問だった。

  俺たちが付き合ってきた二年間、それなりに肌を重ねてもきた。でも俺は、狼のにおいフェチや体毛フェチのことなんて知らなかった。ベッドでイチャついていても、こんなふうに言葉で責められたことも今まで一度もなかった。俺が永久脱毛したいと思ったのが、そんなに気に障ったのだろうか?

  俺と接するときは、いつだって優しい狼だった。たとえば、スーパーで酒のツマミを買うとき、俺が「これなんかどうだ?」と選んだものを見せると、狼は「ん、買おう」とまず肯定してくれる。たとえば、飽きっぽい俺が髪形や髪色をあれこれ変えても、「イイじゃん」、「今のも似合ってる」、「綺麗だしかっこいい」……ボキャブラリーこそ少ないながら、いつも褒めてくれたのだ。見た目は強面のように見えるけど、俺のボーイフレンドっていうのは、肯定から入るヤツだ。肯定することから、始めるヤツだ。度量というものを見せてくれる……安心して一緒にいられる……そんな大人の男なのだ。

  そういうボーイフレンドが……これまで俺に対して向けることのなかったフェティシズムを心頭に、今、スケベなところを嗅ぎまくっている。

  もう、なにがなんだか。

  「おまえのほうが、へっ……変態……」

  「はあん? ケツ穴ヒクヒクさせて嬉しがってるくせに。ケツ毛もっさもさでアナル見えなくたって、それくらいわかるんだよ」

  秘部を丸見えにさせられながら、尻の毛が濃いと口に出して指摘されたことのある者が、世の中にどれほどいるだろう? こんな恥ずかしさってない。

  というか、こんなに足を開いてるのに、まだ尻の穴が見えないって? いくら俺の尻が毛深いったって、そんなわけが……

  抵抗しても鉄骨のようにビクともしない両腕で俺を拘束し、キンタマの裏を嗅ぎながら、狼が言った。

  「ケツ毛がそんなにきたねえってんなら、オレが綺麗にしてやろうじゃねえか。なあ?」

  「えっ……えっ!? ちょっ、待て待てやめろ! さすがにそれはきたねえ……ってぇぇ!」

  べろぉぉぉ……

  尾てい骨のあたりから、蟻の門渡りまで、唾液をなすりつけるみたいに舐め上げられる。べとべとに濡れたケツ毛が肛門あたりの肌に貼りついた。

  マジかよ、コイツ!

  「あ~あ、きったねえケツ毛、舐めちまったぜえ?」

  にたり。俺の脱毛に反対して怒っていたときの表情に、狼の笑みはよく似ている。

  「せっ、せめて洗ってから……!」

  「でも一回舐めちまったんだから、もう二回も三回も同じだよなあ?」

  べろり、べろり……グルーミングのように尻肉の谷間を執拗に舐め回す。

  アナル舐めなら今までに、したことも、されたこともあった。でもそれは、風呂で尻の中を綺麗に洗って、準備してからだ。ボーイフレンドに洗ってもいないケツを舐めさせるなんて……

  いや、大丈夫だ。うちのトイレはウォシュレット機能がついている。自分で気になるとはいっても、水で洗浄しているんだから、実際に汚れているわけではない。大丈夫、大丈夫だ……

  狼は尻にきつくマズルを押し付けて、べちょべちょに濡れたケツ毛を、じゅぞぞ、と汚らしい音を立てて吸った。

  「あっ、ちょ……ンなとこ吸ってんじゃねえよ! 馬鹿、変態ぃぃぃ!」

  とりたてて便意を感じていたわけでもないのに、排泄を促されているみたいで……そのまま肛門をクリクリ舐められてしまえば、本当に出てしまいそうで……気が気じゃない。

  「虐めてほしそうにアナルきゅうきゅうさせやがってよ。ちゃんとかわいがってやろうなあ?」

  「うっ、あ! はぁぁぁぁっ……! やめろっ、それはマジでやめろってぇぇ!」

  肛門の出口付近にちゅぽちゅぽと出入りしていた狼の舌が、いきなり一気に奥まで捻じ込まれた。獣人の長い舌が思いきり伸びて、尻の中をベロベロ舐めまくる。

  「正気かよ! あっ、あたまっ、おかしいぃぃ!」

  「んあー?」

  尻といわず股間までバックリと噛みつかれるような……獣人にだけ可能な奇抜なアナル舐めだった。チンポに至った上顎が、牙が、竿をぐにぐにと圧迫している。

  なにを言いたいのか、わかってしまう。俺は完全勃起していた。

  でもそれは、別に汚いところを舐めさせて興奮しているわけじゃない。いえば条件反射……ボーイフレンドにスケベなことをされてしまって……こんな奥の奥まで尻の中を舐められて……だからこれは不可抗力なんだってば!

  なにせ狼のアナル舐めは一級品だった。なま温かくて柔らかい舌で、尻の中の奥の奥を舐めほじられる。そうされながらチンポを扱かれる極上の快感を、俺は知っている。でも、大事なボーイフレンドに、なんの準備もしていないケツを舐めさせるなんて、俺はとても嫌だった。

  俺は死に物狂いで抗議した。どんなに狼が押さえつけてきても、もがき続けた。さしもの狼も、俺が本気で嫌がっているのを力でねじ伏せることまではしなかった。

  ずるずる、ずるずる……狼の舌が抜けてゆくとき……その長いストロークで腸を摩擦されるとき……マジでちょっと漏れちまうんじゃねえか……俺は生まれてはじめてといっていいくらい必死に……ありったけの集中力でそれを堪えた。

  「はあっ、はあっ! おまえ……ほんと、ないから。ありえねえから……」

  足を離されて、ソファーに体を預ける。全力で抵抗したものだから、ひどく疲れてしまった。

  狼もさすがにバツが悪いのか、頭をぼりぼり掻いている。

  「そんなにいやか?」

  「いやに決まってんだろ!」

  「でも、よお」

  足の間に、狼がうずくまる。

  「チンポはバッキバキなんだよなあ」

  そりゃあ……狼が俺に夢中になってこんなことまでしてくれて、それがまったく嬉しくないのかといわれれば、そんなことはない。俺のこととなると、どんなことだって受け入れてしまうこの狼のことを、つきなみにスケベだなと感じたりもするのだ。だからそれが、不可抗力なんだってば!

  それに狼のフェチの理由だって、なんとなくの想像はつくのだ。

  「おまえだって……パンツん中びしょびしょにしてるんだろ?」

  股に足を伸ばして、つついてやる。

  でも、雄くさいこの狼にはあまりに不釣り合いなほど、その感触は小さなもので――

  にわかに反骨心を見せた俺に、狼がこっそりと尻尾を揺らした。

  要するに、「優秀な雄の証拠」を見せつけられることに弱いわけだ。

  だから雄の濃厚なフェロモンに目がないし……したがってチン毛やケツ毛にフェティシズムを感じるのだろうと思う。

  なぜか?

  狼は、短小包茎なのである。

  勃起しても小指程度の長さにしかならず、シワシワに余った包皮が先っぽまですっぽり被っている。先端がツンとすぼまった、子供ちんちんだ。

  雄としての尊厳にひどく貧しい狼は、チンポに対して絶対服従の態度を見せる。これだけ雄として優れているという、あらゆる表象に強い憧れをもっている。雄くさいの言動もそう。顎髭を伸ばしているのもそう。

  「んはあ……エロいにおい……かっけえ……」

  俺のチンポに心酔してしまうのも、これはもう、まったくもってそういうことなのだ。

  いわゆるシックスナイン。脚のあいだに狼の顔を挟みながら、互いのチンポを観察しあうかっこう。狼はこの体位を……中でも自分が下になる体勢を好んだ。

  白状しておくが、俺はとりたてて巨根ではない。大きいと言われれば否定はしないが、目を見張るほどの立派なモンでもない。これくらい普通だろうと、少なくとも俺は思っている。要するに比較の問題だった。短小から見れば普通サイズでも羨望を感じるものなのだ。

  俺も、やられっぱなしは好きではない。好き放題やられた反撃に、シックスナインは都合がよかった。

  狼のチンポは、陰毛の中にほとんど隠れてしまっていた。ただでさえ全身にみっしりとリアル・ファーをまとっているのに、チン毛はよりいっそう[[rb:強 > こわ]]い毛が密集しているのだ。触らなければ勃起しているのかどうかさえわからないレベル。

  股の毛をまさぐって、指二本で子供ちんちんをつまんでやる。しっかりと硬い。サイズはともかく、機能としてはきちんと雄だ。

  「ひとのケツ舐めながら、ちっさいチンポおっ勃てて、変態はどっちだよ。ん?」

  脚の間で、キュウ、と切なげな音がたった。男らしさを信条に生きている狼が、俺にどのように扱われたいのかが露呈される。

  包茎の先端がすでに濡れている。包皮を剥き下ろしてやれば、ぐじゅぐじゅに我慢汁で濡れた濃いピンク色の亀頭が現れるだろう。小さいチンポが、恥ずかしげに皮の中に隠れながらも、自分が雄であることを懸命に主張しているようで、哀れにもかわいらしい。

  「うあ、あっ……んふうっ、ふーっ……」

  俺の腰や尻を抱きしめて、狼が股座を嗅ぎ回る。裏筋に口づけ、キンタマを舐め転がし、指で肛門をいじくる。チン毛に鼻を埋めて、何度も何度も息を吸い込む。

  「でっけえ……チン毛もじゃもじの、かっこいい大人ちんぽ、好きだあ……」

  おかしな話だ。自分の方がモフいくせに。だけどまったく、そうなのだ。フェチとは部分対象である。部分だけを切り取ってしまえば、それは部分ではなく全体になってしまう。全体に対する部分に、狼はフェティシズムを感じる。いずれにせよ、どれほど言葉を尽くしたとて、心を正しく表現する方法などないというのが俺の考えだ。

  狼が獣人であるから、人間の体毛に興奮しないはずだとは、誰も言い切れない。証明が不可能であるが故に反証も許されない、決定不能の命題のように。

  「ちんぽ、好きか?」

  「んっ、んん……すきぃ……」

  「どうしたい?」

  「しゃ、しゃぶりてえ……でっけえ大人ちんぽで……マズル、オナホにして、いじめてくれ……」

  腰を上げる。亀頭の部分に狼のマズルが口づけた。そこを目がけて、再び腰を下ろしてゆく。

  「はっ……ああぁ……」

  熱く湿った粘膜に、チンポが包まれてゆく。口内に迎え入れてすぐさま、狼はチンポを舐め回した。裏筋を這い回り、汚れをこそぐようにカリのくびれに舌をまとわりつかせ、吸引して抱きしめる。いきなり奥まで突っ込まず、腰を揺らして少しずつ食わせてゆく。

  俺は、狼の望むようにしてやりたかった。狼が乾きに苦しんでいるのなら、あたいなく水を与え、満たしてやりたい。手ひどく扱われてめちゃくちゃにされたいというのなら、そのとおりにしてやりたい。一見、俺が優位に立っているように感じられても、それは単に建前、セレモニーにすぎない。まったく道化じみている。

  俺は狼の子供ちんぽを咥え込んだ。人間の小さい口でも、短小包茎を好き放題にもてあそぶ空間的余裕くらいはある。舌を使って包皮をほじくり、エロ汁でぬめったはしたない租チンをグリグリ舐める。

  「ひあっ! あ゛~~っ! そこ、そごぉ! ひゃきっぽ、ぎづいぃぃぃ!」

  オナホが喋るな。しっかしチンポ吸ってろ。

  一旦引いた腰をマズルにぐいぐい押し付ける。腿で顔面を挟んで固定し、そのままピストンした。俺の意志が伝わったか、狼も愛おしそうにチンポへちゅうちゅう吸いついてくる。

  「んふぁっ! ふっ、ぐ……んふうっ、んッ! ぐふッ、フーッ!」

  いくら普通サイズのチンポでも、これだけ押しつければ苦しいのだろうか。吐き気もあるのかもしれない。狼の腹がひっきりなしに上下して俺の体を揺さぶる。ディープ・スロートじみたうめき声を漏らしながら、狼はそれを嫌がらない。マゾ犬め。

  俺は別にサディストではないので、虐待じみたおしゃぶりに興奮はしない。どちらかといえば、エッチのときは相手に気持ちよくなってもらいたいという思いが強い。ので、どれだけ狼のチンポが小さかろうと、ちゃんと尊重してやりたいと思う。唾液をローション代わりに、舌で、上顎で、ゴリゴリとしっかり摩擦してやりながら、すぐに元に戻ろうとするチン皮を何度も根元まで剥き下ろし、またかぶせてやった。

  「ひゅぐッ! ひぐ、ひぎゅうぅぅ‼」

  狼は、きわめて早漏だった。こんなちんちんだからだろうか、まともな性経験がないらしいのだ。ちんぽに対するあらゆる刺激に敏感だった。それだって二年も付き合えば慣れもするだろうに、この雑魚ちんぽは一向に改善されない。それに対して、俺は少しはポジティブになる。俺がちょっとしてやるだけで、こんなに気持ちよくなってくれるのだから。あるいは……俺とのエッチに、それだけ興奮してくれているのかもしれない。

  そうだといい。俺のかわいいマゾ狼くん。俺の手で、口で、チンポで、態度で……たくさん楽しんでくれるといい。頭の中をスケベで満たしてくれるといい。

  びゅうっ、びゅ~~~っ、びゅっ、びゅっ!

  「ふうううううッ! んぐうううぅぅぅ‼」

  狼の射精は長く、ザーメンの量はとても多かった。狼はとても気持ち良さそうに射精する。快感を耐えきれなかった射精ちんぽを、ぢゅうぢゅう、音を立てて吸いながら、俺は両手で狼のマズルを掴んでやった。

  どすん、どすん、体重も少しかけながらマズルに腰を打ち据える。勝手に射精してしまった罰のように。腰を振るたび、狼の鼻にキンタマが乗っかるのがわかった。必死に鼻呼吸をして、鼻水まで垂れこぼしているそこに玉袋が乗っかると、完全ではないにしろ呼吸の邪魔になるのだろう。狼の呼吸はどんどん苦しげになっていった。

  それでも目の前では、白とグレーの毛の塊がぶんぶんメトロノームのさまを演じている。

  じゅぼ、じゅぼっ、ぶぢゅっ、ぐぽ、ぐぽ、ぐぽぐぽぐぽぐぽ――

  「きゅううううう……‼ クンンンン~~……」

  胸をかきむしられる、小型犬の弱り声のような音で、狼が必死に訴えてくる。だけどそれが甘え声であることはわかりきっているので、俺は容赦しない。イッているちんちんをしゃぶり続けるのも、イラマチオで苦しめるのもやめない。どれだけ腹が膨れようと俺は狼のザーメンをぜんぶ飲み干してやるし、狼が愛してやまない大人ちんぽも完璧に食わせ尽くす。

  狼の両脚が、ベッドの上でつま先まで伸び切っていた。両手はマズルを拘束する俺の両腕にしがみついている。屈強な雄の獣人を、俺ごとき人間が……口とチンポだけで屈服させている。

  十歳年上のボーイフレンド。雄くさくて、優しくて、人によっては「厳つい」と言いそうだけど、俺にはいつだって男前に見える狼だ。

  そんな雄を、俺によって変態に仕立てあげる。

  [[rb:わ > 丶]][[rb:か > 丶]][[rb:ら > 丶]][[rb:せ > 丶]][[rb:る > 丶]]。雄としての格。誰が自分の主人であるのか。骨の髄まで、徹底的に。

  その甘美。その至福。

  「ぶあっ、はあっ! イく! 出すぞ! ぜんぶ飲めよ‼」

  「んんッ! ん゛ん゛――ッ!」

  その悲鳴が、圧倒的賛同であると俺は理解した。

  これはもう、まったくもって、そういうことなのだ。

  炊いた白米にゆかりを混ぜる。たまごを四つ使って厚焼きにする。油揚げとじゃがいもを具に味噌汁を作り、俺たちはブランチに二合を平らげた。

  どうせ出かける予定もなし、夕方まで風呂には入らなかった。俺たちにはいくつかの特徴的な決まりがあって、そのひとつに「午前中のうちからアスファルトに陽炎が立ちのぼるほど暑い日には、外になんぞ出かけなくてよい」というものがある、今日などはまさにその典型で、狼に至ってはエアコンだけに飽き足らず扇風機の前で液状化を決め込む一日だった。

  暴露したことにはもう隠す必要も感じなくなったのか、狼はエッチしたあとのチンポのにおいを嗅ぎに俺の股に顔を埋めたり、腋のところにマズルを擦り寄せたり……そのデカい体がいちいち熱をもっていて……ベッドで交わっていたときの俺の汗を体毛が吸ってにおうし……愛らしいながらも鬱陶しく、仕事中の俺に絡みついてくるのだった。休日、狼が食む怠惰に理由はない。日ごろの疲れがたまっているわけでも、昨晩が遅かったわけでもない。それはつまり、なによりも幸福な時間を、狼は過ごしたということである。

  「あのよお」と、蕩けっぱなしの狼は言った。

  「なんだ?」と、俺は応えた。

  「一度しか言わねえから、よく聞いてくれよ」

  「うん」

  「ありがとう。すっげー、カッコよかった」

  「どういたしまして」

  暑苦しい時間を乗り切って、そろそろ本日二度目のシャワーを浴びようかという段になって、狼はハサミを持ち出してくる。

  「なんだ? 換毛期はだいぶ前だろ」

  「いや……そろそろチン毛、切ろうかなあって」

  俺は鼻じろんだ。この野郎、俺の脱毛には反対するくせに、自分は毛の処理をしようというのだ。

  「だってよ……皮に毛が挟まって、いてえんだよなあ」

  「ふうん」

  鼻を鳴らす。納得はいかないが、理解はした。チンポが小さいというのも、それはそれでいろいろな苦労があるのだ。

  「まあ、そうだよなあ」

  服を脱ぐ。腰を寄せ、つま先立ちになって股間をくっつける。俺の平常ちんぽに、狼の子供ちんちんはすっかり隠れてしまった。

  「こぉぉんなに、違うもんなあ?」

  ゴクリと喉が鳴る音がした。

  「なあ、なあ……風呂場でなら、いいかって思うんだけどよ」

  「なにが?」

  ひとによっては「厳つい」と言いそうな顔を、狼はご機嫌伺いみたいにおろおろさせた。

  「思いっきりケツほじりながら、しゃぶらせてくんねえかな……」

  上目遣いにおねだりだ。まるっきり、マゾ一辺倒というわけでもないらしい。ややこしいボーイ・フレンドだ。

  でも……まったくまったく、フェチというのはそれでよいのだ。

  束ねていた暑苦しい髪をほどき、俺は狼に背中を向ける。片手で尻肉を鷲掴み、肛門のまわりに密生するケツ毛を見せつけてやった。

  背後でぶんぶんと、風を切る気配。たまには思う存分、ボーイ・フレンドのフェティシズムを満たしてやる日があってもいいだろう。