多くの人達が昼食のメニューに意識を向け始める頃、大通りを走る車が風船のように次々とひっくり返る。次の瞬間、あちこちから警笛とクラクションの不協和音が響き渡った。信号機は折れ曲がり、消火栓や電話ボックスはひしゃげ、舗装された道路は見る影も無く粉砕されていた。突如現れた厄災の中心には岩石を削り出したかのような荒々しい鎧を身に纏い、獅子の顔に象のような牙が生えた頭を持ち、ワニのような巨大な尻尾を持った怪物が咆哮を上げながら目につくものを手当たり次第に破壊して回っていた。暫くすると黒い防護服とヘルメットを装備した集団が現れ、怪物目掛けて砲撃を開始した。怪物の体表で幾度となく爆発が起こるものの、怪物は微かによろける程度で、手当たり次第に車や電柱から燃料や電気を捕食していった。
「制圧対象いまだ健在!押し切られそうです!」
盾を構えている前衛が怪物の猛攻を耐え忍びながら報告をする。
「ヒーロー到着まで残り50秒!」
「到着までの時間を稼ぐのが我々の任務だ!出し惜しみするな!」
隊長が押し負けそうな部下たちを鼓舞し、火力支援を続けていく。銃に込めた最後のマガジンが尽きようとした瞬間、二つの軌跡が怪物の体を吹き飛ばした。1人は犬族の青年、もう一人は竜人の中年男性だった。
「見ろ!ラッシュハウンズとバンカードレイクだ!」
「これでもう安心だわ!」
野次馬のように見物していた住民たちから歓声があがる。
「お待たせしました!!」
犬族の青年、新人ヒーローのラッシュハウンズは持っていた銃を素早く抜いて怪物めがけて銃弾をお見舞いすると、怪物は雷に打たれたかのように身体を仰け反らせた。
「よく持ちこたえてくれた。協力、感謝する」
竜人の中年男性、ベテランヒーローのバンカードレイクはその隙を逃さずに怪物の胴体めがけて両の拳を突き立てて盾の引金を引くと、盾の中から鋭く大きな杭が勢いよく飛び出して怪物の身体を貫いた。
「ギャオオオオオォォォォ・・・・・・・・・・・・ッ!!」
怪物の身体には亀裂が走り、断末魔の悲鳴を上げながら崩壊していった。砂のように崩れた体の跡には砕けたガラス玉のようなものが転がっていた。暫くすると白い防護服を着た人たちが現れ、大きな箱の中に怪物だったものを次々と納めていった。
「制圧完了。サンプルの回収は回収班に任せるとして、俺たちに手伝えることはあるか?」
バンカードレイクが隊員たちに声をかけた。
「ご協力感謝します。後は我々が対処しますので、お二人は報告に向かってください」
「分かった。新人、帰投するぞ」
バンカードレイクはラッシュハウンズに声をかけた。
「了解しました!それではお先に失礼します!」
ラッシュハウンズが敬礼をすると、バンカードレイクが起動した転送装置の光と共にその場から消えていった。
辛うじて被害を逃れたビルのカフェテラスでは、狐族の青年がコーヒーを飲みながらドローンが撮影した戦闘記録を眺めていた。
「生産時間、物理強度ともに文句なし。物量作戦では有効でしょうが、やはり一般人の遺伝子だけではヒーローに敵いませんね・・・・・・では次なる策を打つとしますか」
青年は残ったコーヒーを全て飲み干すと、誰もいなくなったテラスを後にした。ふっと笑みを浮かべた口の端から、触手のようなものがちらりと顔を覗かせるのだった。
ハウンズとドレイクは転送装置を通じて施設へと帰投し、奥の部屋へと向かった。部屋の奥では鷲族の大男が各地でヒーローたちが戦っている様子が中継されていた。
「二人ともご苦労だった」
「ホーク長官、俺はもう一線を退いた教官だ。新人まで駆り出すなんて最近は人手不足が余程深刻なようだな」
ホーク長官と呼ばれた大男は苦い顔を浮かべた。
「痛い所を・・・・・・それだけ事がひっ迫しているとも言える。早速だが二人にはある依頼を頼みたい」
「依頼とは何です?」
「まぁコレを見てほしい」
ホーク長官が端末を操作すると、机の上に映像が再生された。そこには様々な種族の「男性」が主に女性が身に纏う衣服や下着姿で男性客と共に愛を育む光景が映し出されていた。ハウンズは顔を真っ赤にして顔を背けていたが、ドレイクは道端に捨てられた空き缶を見るかのような表情で一部始終を見ていた。
「変わった風俗店だな」
「重要なのはここからだ」
ホーク長官が端末を操作して次の動画に切り替わると、そこにはお腹を大きく膨らませた先ほどの女装をした男性たちが椅子のようなベッドで両足を大きく拡げている光景だった。暫くすると、男性たちは苦痛とも恍惚ともとれる表情を浮かべ、股座から大小様々な卵や胎児のような塊を産み落とす光景が次々と映し出された。あまりにも信じられない光景を前に、ハウンズよりも先にドレイクがホーク長官に尋ねた。
「つまり、ここの調査をしてほしいという事だな?」
「察しが良くて助かる。無論、潜入調査分の報酬は弾ませてもらう」
「だが何故この風俗店を選んだんだ?ヒーロー活動とは関係なさそうだが」
「その質問にはこの資料を見てほしい」
ホーク長官は別のスライドを展開した。そこには、今年のヴィランとの戦闘件数と、ある時期の戦闘件数のグラフと、一枚の写真だった。写真には赤く大きな「✕」の印と共に「殲滅完了」というサインが記されていた。
「奴は既に十年前の作戦で生産拠点もろとも破壊した筈だが・・・・・・」
二人は写真の生き物について、ハウンズに説明を始めた。
彼の名は「スレイテンタクルス」。ヴィラン協会が生み出した触手生物にヒト(獣人や竜人など、言語を介する二足歩行の知的生命体全般を指す)の遺伝子を与えて知性を獲得したヴィランで、瞬く間に怪物の研究と生産を行う「生産課」と呼ばれる拠点と地位を獲得した。それからヴィランと怪物の合わせ技によって被害件数が高まっていった時期があったという。それから地道な捜査を経て、十年前に長官と教官、その他大勢の大規模作戦で生産拠点と共に破壊したというのだ。
「数年前にここのオーナーが変わって、運営方針が変わっていったらしい。それ以来めきめきと売り上げが伸びていき、今では周囲の店を買収して規模を拡大しているらしい」
「売り上げが伸びているのと、戦闘件数の増加に因果関係があるのかを調査しろ、と」
「そういう事だ。三か月調査して何も出なかったのならそれでも構わない。新人君の実戦経験を積ませるためにも良いだろう。勿論、相応の報酬は成果の有無に関わらず支払う事を約束しよう。これがその前金だ」
長官は分厚い封筒を二人に手渡した。ハウンズは恐る恐る封筒の中身を確かめると、その額に目を見開いた。
「見てもらった通り、何があるか分からないからな。引き受けてくれるかね?」
「わ、わかりました!」
ハウンズは封筒に入っていた額に声が上擦っていた。
「・・・・・・分かりました」
ドレイクはため息をついて了承した。
数週間の「準備期間」を経て、2人の潜入調査が始まった。ぱりっと黒いスーツとシャツに身を包み、蛇を思わせるデザインのネクタイを締めた狐獣人のオーナー、檻永 繋継(おりなが つなぎ)が面接を取り仕切っていた。ドレイクは借金返済のために短期間で金が必要であること、ハウンズは短期のアルバイトという協会から用意された設定と名目を元に面接を進め、比較的スムーズに入職が決まるのだった。
「それでは今から、最終確認を兼ねた見学会をします。少々刺激が強いかもしれませんが、少しでも無理そうでしたら申してくださいね?」
「は、はい・・・・・・」
ドレイクは力なく答えた。
「分かりました!」
ハウンズは学生さながらの威勢のいい返事をした。
二人の返事を確かめると、応接室から客室への見学ツアーが始まった。ホテルの客室のような扉が廊下にずらりと並び、談話室のような部屋には飲み物から衣装、玩具まで様々なものが整然と並んでいた。客と従業員はそこで思い思いに必要なものを調達して部屋で楽しむスタイルなのだそうだ。ハウンズは嫌悪の表情を押し殺しように、感情の波が来る度に奥歯を噛み締めていた。
「ここまで見学をしていても辞退しないということは相当の覚悟をお持ちなのですね」
「も、勿論ですとも!」
ハウンズは一瞬遅れて答えた。
「ここまで来たら辞める訳にはいかないですし・・・・・・」
ドレイクは切羽詰まったような表情と声音で答えた。檻永は二人の最終確認を確かめると、更に別の部屋へと案内を始めた。そこには「分娩室」と書かれていた。
「さぁ、ここが見学ツアーの最終地点です。これまでよりも刺激が強いかもしれませんが、まぁ大丈夫でしょう」
檻永に案内されるまま薄暗い部屋を進むと、ガラス張りの部屋には二人の男がいた。一人は客と思われる中年男性の馬獣人。もう一人は大きなお腹を抱えた男性の鳥獣人で、資料映像で見たように椅子のようなベッドに身体を固定されていた。二人は何か会話をしているようで、馬獣人の中年男性は心配そうに鳥獣人の手を握り、お腹の大きな鳥獣人はそれをなだめるような表情を浮かべながら手を握り返していた。
(客と従業員の間で成り立っている一種の演じ分けだろうか・・・・・・それにしては従業員側の演技にうさん臭さを感じない・・・・・・本気で愛し合っているのだろうか?最初に見ただけでは分からないことが多いな・・・・・・)
ドレイクが表情を崩さないまま様子を伺っていると、鳥獣人に異変が起きた。ばしゃっと透明な液体が股座から弾け、割れ目から白い塊が顔を覗かせ始めた。鳥獣人は痛みに身を仰け反らせながら、力み始めた。ガラス越しにも分かる鬼気迫る表情と叫び声と共に、割れ目から少しずつ塊が顔を覗かせ始めた。一際大きく力んだ瞬間、真っ白な塊が取り上げられた。まごう事なき卵である。それから次々と卵を産み落とした鳥獣人はぐったりとした表情を浮かべ、目には涙を浮かべていた。馬獣人も目から涙を溢れさせて健闘した鳥獣人の頭を撫でていた。
「いやはや今日は運がいい・・・・・・あのようにお客様と愛を育んでいただいて、時にはあのように子を設けることもできるのですよ。まさに科学の神秘といっても良いでしょう」
「あれって・・・・・・本物なんですか?」
ハウンズが恐る恐る尋ねた。檻永は笑みを浮かべながら答えた。
「まさか!しかし、本物そっくりの質感や重みなどを、従業員に負担をかけずに愛を育むことのできる当店独自開発の玩具にございます。本格的に入職していただく際、事故防止のために処置を受けていただくことにはなりますが」
「処置・・・・・・それは一体どういうものなのでしょうか?」
ドレイクの質問に、檻永は少し考えてから答えた。
「当店特製の人工子宮にございます。これを体内に定着させることで、痛みや負担を軽減してお客様との愛を育むことができます。他に質問はございませんか?」
二人は暫く考え込んだ後で、特に無い事を伝えた。
「それでは最後に契約書にサインをしていただきますね」
檻永は待合室の照明を点けると、2人の前に書類とペンを手渡した。二人は契約内容を入念に確かめると、調査用に与えられた偽名を用いて署名を完了した。檻永は二人から契約書を受け取ると、二人を応接室とは異なる部屋へと案内した。
案内された部屋は清潔感のある病院を思わせる空間となっており、様々な医薬品が棚に収められていた。
「さぁ、まずは簡単に健康診断を行ってから、定着処置を行いますね」
二人は身長や体重、血圧を計測し、血液や尿のサンプルを採取され・・・・・・と、企業や学校で受けるような至って普通の健康診断だった。採取の結果は一時間程度で完了し、問題無く定着処置を受けることになった。
「まずはこちらでお手洗いを済ませてから身体を洗って温めておいてください」
檻永はそう言いながら浴室の奥の部屋へと入っていった。二人は檻永がいなくなったのを確かめると、辺りをそれとなく伺いながらトイレと脱衣を済ませて浴室へと入っていった。
滑らかな石畳にタイル張りの浴室は、二人が銭湯やホテルでよく見かける至ってありふれた見た目のものだった。
「・・・・・・意外と普通、ですね」
「お、おぉ・・・・・・」
二人は潜入調査という自覚を再認識しながら頭と身体を洗い、湯船に浸かった。石鹸やリンス、湯船のへりに浸されていた薬湯の袋の中や水質に至るまで確かめたものの、やはり怪しい部分は無く、至って普通の浴場といった印象しか無かった。それとなく周囲を見渡したが、監視カメラのようなものが無い代わりに窓は無く、出入口は自分たちが入ってきた場所以外には見当たらなかった。
入浴を終えた二人は、腰にタオルを巻いて奥の部屋へと入っていった。部屋の中は温かく、漢方のような匂いが充満し、ビニール製のベッドからは湯気が立ち昇っていた。
「お待たせしました!」
「お待たせしてすみません」
「いえいえ、こちらも準備にお時間がかかりますので。お二人とも、こちらのベッドに仰向けの姿勢で寝そべってください」
二人は檻永に促されるままベッドへ横たわり、腰に巻いていたタオルを解いた。逸物が重力に沿うように垂れ下がる光景は、二人に一抹の恥じらいを催した。
「それではどちらから先に処置を始めましょうか?」
ドレイクが「じゃあ・・・・・・」と言い終わるや先にハウンズが「俺から先にお願いします!」と真っ先に名乗りを上げた。ドレイクが「おい」と言いかけたが「ハウンズが学生特有の先走りを見せた」という体でそのまま進めることにした。
「それではあなたから処置を始めますね。まずは両膝を立てて股を開いてください」
「こ、こうですかね・・・・・・?」
ハウンズは恥じらいながら檻永の指示に従った。檻永はゴム手袋を付けて手を洗うと、ワゴンから一本のローションボトルを取り出して中身を手に搾り出して両手に塗り広げた。
「少しひんやりとしますが、すぐに馴染んできますからね」
ローションを纏った檻永の手がハウンズの尻に触れた。自分以外が触ったことの無い部分を触れられて、ハウンズの身体が反射的に跳ねた。
「すぐに体温で温まってきますからね」
檻永はハウンズの反応を意に介さずにローションを塗り広げていった。尻孔のしわ一本一本に染み込むように塗り広げられ、馴染んだ部分からじんわりと熱を帯びてくるのだった。
「次は肛門に指を入れていきますので、少し力んでください」
「こ、こうですか・・・・・・?」
ハウンズは既に恥じらいを捨てて檻永に身を任せることにした。ヒクヒクと動く尻孔に、檻永の指が一本、また一本と入り込んでいった。出す以外の行為をしたことの無い部位に、他人の指が何本も入り込む感触に、ハウンズは戸惑いと言葉にしがたい感覚を覚えていた。
「それではこちらを挿入して処置は完了です」
檻永は容器の中から柔らかく細長い塊を取り出した。
「それを入れるんですか・・・・・・?」
「えぇ。ですが入念に解しましたので安心してください」
ハウンズはその大きさに驚きを隠せなかったが、檻永は変わらない口調で淡々と準備を進めていった。
「では定着させていきますね。深呼吸に集中していればすぐに終わりますので」
「え、あ、はい・・・・・・ッ!?」
ぐちゅり、と生温かい塊が緩んだ尻孔にあてがわれた。それはハウンズの呼吸に合わせるように少しずつ入り込んでいく。未知の体験と心地よさに、気付けばハウンズの逸物は硬さを増し、鈴口からは透明な蜜が垂れ始めていった。見ず知らずの男に股を晒すどころか勃起まで見せてしまったハウンズは顔を真っ赤にしながらもその状況を受け入れるしか無かった。やがて檻永の指が孔に触れて、あの塊が全て入り切ったことを確かめさせられた。
「お疲れ様です。初めての割にはスムーズに入りましたね」
「すみません、お恥ずかしい所を見せてしまって・・・・・・」
「いえいえ、よくある反応でしたのでお気になさらず。では今度はこちらの処置を進めましょう」
「は、はい・・・・・・よろしくお願いします」
ドレイクもハウンズ同様、檻永の処置を受けた。しかしドレイクは軽く呻いただけで、ハウンズのような痴態を晒すことなくあっという間に済ませたのだった。
「はい、こちらの処置も完了しましたよ。あんまりに反応が薄かったですが・・・・・・もしかして、意外と『こちら』の経験がおありで?」
「あ、あぁ・・・・・・まぁ、一応」
ドレイクは言葉を濁して答えた。
「成程・・・・・・ほんの興味本位ですのでお気になさらず。では本日の面接と処置は終了となります。定着までに三日ほどかかります。それまでは『普段通りの生活』を送って頂いて結構です。初仕事の日程を組み次第、追ってご連絡いたします」
それからおよそ一週間、ささやかな休日を満喫していると、一本の電話が入った。「初仕事」の予定が組み上がったのだ。
二人が店を訪れると、入館証と共にある部屋へと案内された。
「それではお二人さん、初仕事の前に色々と準備をしてもらいますね。まずはここでの呼び名を決めてもらいます」
二人は檻永から手渡された書類に名前を書き込んだ。ヒーロー名からも、自分の名前からも悟られないよう細心の注意を払った。ドレイクは「ハースブルーム」、ハウンズは「ワイルドベリー」と書き込んだ。
「ふむふむ・・・・・・お二人とも悪くない源氏名ですね」
檻永は二人の名前をタブレット端末に記録していった。
「それでは今度はシャワーを浴びて着替えてくださいませ」
二人はシャワーを浴び、甘い香りの石鹸で身体を洗い流すと、檻永に衣装棚の前に案内された。中には色とりどりの衣装や下着が並んでいた。しかし、どれも主に「女性」が着るものであった。
「お客様の中には衣装の指定をされる方もいますが、今回はございません。お好きなものをじっくりお選びください」
「お、おぉ・・・・・・」
ドレイクは衣装棚の女装を前に、戸惑いの表情を浮かべた。
「お選びくださいって言われてもな・・・・・・どれにするか迷っちまうな」
ハウンズが困った表情で尋ねた。すると檻永は二人の体色や体格、見た目に似合いそうな装いを選んで手渡した。ハウンズには飾り気の無い桜色のランジェリーに丈の短いメイド服が、ドレイクには細かなレースが施されたランジェリーに丈の短いセーラー服があてがわれた。
「ぐっ・・・・・・私のような中年のおじさんにこんな格好はミスマッチでは・・・・・・?」
「よくお似合いですよ。敢えて年不相応の恰好がお好きな方もいらっしゃいますし」
「なんだか学園祭を思い出すな~・・・・・・意外と悪くないかも」
「よくお似合いで。これならすぐに人気嬢になれそうですね」
檻永は二人の反応に気持ちの良い相槌を返すと、初仕事の「お客様」へと案内を始めた。
案内された部屋では、身なりと恰幅の良い二人の男性客がお酒と思しき飲み物の入ったグラスを傾けていた。
「お待たせいたしました。お二人とも、初めてのご奉仕に名乗りを挙げてくださって感謝いたします」
「いやいや、この店には世話になっているからね」
「それに、初めてだからこそ味わえる『よさ』もあるからな」
男性客たちは品定めをするようにハウンズとドレイクの恥じらう姿を見つめていた。
「立ち話も何ですし、まずは自己紹介から始めましょうか」
「ワイルドベリーと申します!初めてのご奉仕、頑張りますね♪」
ドレイクはハウンズのテンションに気後れしつつも、すぐに頭を切り替えて自己紹介を始めた。
「ハースブルームです・・・・・・お、お手柔らかにお願いします」
二人の自己紹介を済ませると、檻永はタブレット端末を操作しながら説明を始めた。
「ご奉仕を始める前に、この端末でタイマーを立ち上げてください。飲み物や衣装などの注文や時間の延長はここで操作できます。タイマーを立ち上げないと注文メニューを開けないので注意してくださいね。今回は説明込なので時間無制限となります」
「それじゃあ『お嬢ちゃん』たち、一緒に座っておしゃべりしようよ」
二人は恐る恐る二人の客の横に座って初仕事が始まった。自己紹介を交えての雑談ということもあり、客からの質問に答えていった。何度かハウンズがボロを出しかけたものの、悟られる事無く会話が弾んでいった。
やがて客たちのお酒の酔いが程よく回ってきたのか、お客たちからのボディタッチやスキンシップの頻度が増えていった。職務上、不快感を覚える事態に遭遇することは少なくない。二人はほんの一瞬だけ驚きこそしたものの、すぐさま切り替えて職務に専念していった。
「それじゃあそろそろ・・・・・・始めよっか」
客の一人が提案すると、もう一人の客もそれに同意するように頷いた。一人はハウンズもといワイルドベリーを、もう一人はドレイクもといハースブルームを指名した。二人の客と嬢は、ベッドやソファで思い思いに愛を育む本番へと移っていった。舌や唾液が酒や煙草の匂いと共に口の中で絡み合っていく。貪るような舌遣いと共に、客の手がするすると下着へと伸びていく。
「んう・・・・・・っ!」「おぉ・・・・・・ッ!?」
二人の嬢は尻尾から背中にかけて走った快感に、思わず声が漏れた。食い込む下着の中で窮屈そうに膨らむ逸物がじんわりとシミを作っていった。客もそれに気付いたのか、口づけを解いてそり立つ逸物を軽く握ったり指で弾いたりした。今まで感じたことの無い感覚に戸惑いつつも、二人の嬢は客に促されるままベッドに押し倒された。パンツは脱がされ、逸物と尻孔を大きく晒す体勢を取らされ、快感と共に羞恥心がふつふつと湧き上がるのを感じた。二人の客は慣れた手つきでゴム手袋を嵌めると、ローションを手に搾り出して二人の尻孔に塗り広げていった。
「あっ・・・・・・!?」「ぐ・・・・・・!」
彼らの指が一本、また一本と増えていく感覚に痛みは無く、寧ろ増えていく度に腹の奥底で快感の泡が弾けるのを感じてしまっていた。あっという間に指は全て入り、大きな塊、拳まで入っているのすら感じていた。彼らの拳が自分たちのメス孔に入る度に逸物からぴゅるぴゅると蜜が押し出される。
ハウンズは四つん這いの姿勢を取らされていると、自分を指名した客が自分の前にぼろんっ、と汗臭い肉の塊が差し出した。
「それじゃあご奉仕、してもらおっか」
「ち、ちょっと心の準──」
ハウンズは思わず顔を背けようとした瞬間、客に頭を掴まれて一気に喉奥に突き入れられた。喉を押し潰さんとする逸物が口の中を蹂躙する。
「歯を当てるなよ・・・・・・?そうそう、いい子だ」
自身の逸物をしゃぶらせながら、客は嬢の頭や背中を撫でた。銭湯やトイレなどで他の人の逸物は見たことこそあれ、それを仕事とはいえ口に含むことになるなんて思いもしなかったハウンズは、口の中を満たす匂いと塩気に思わずえずいてしまいそうになる。しかし、指名してきた客から撫でられる度に、少しずつ不快感が薄れていくのを感じた。逸物が徐々に硬さを増してビクビクと脈打つのを感じていると、ハウンズの口から逸物が引き抜かれた。
「おっと、せっかくの初物をコッチでぶちまけちゃ勿体ない。『コッチ』に注がせてもらおうかね」
客はグチュグチュとハウンズのメス孔の具合を確かめると、一気に逸物を突き入れた。客の逸物はぐっぽりと根元まで入り込み、ハウンズの視界にバチバチと火花が散った。オスの悦ばせ方なんて知らない筈なのに、定着した人工子宮がきゅうきゅうと客の逸物をしゃぶり上げていく。客の腰が自身の尻に打ちつけられる度、自身の逸物からはトロトロと蜜が溢れて止まらない。メイド服のスカートが汗とも愛液ともつかないもので汚れていくのもお構いなしに、初めての感覚に頭は混乱し続けていた。
「イッちゃうよベリーちゃん、ナカにいっぱい射精すからね・・・・・・!」
「はい・・・・・・!いっぱい、種付けお願いします・・・・・・ッ!」
自分の口からついて出てきた言葉に驚く間もなく、客が一層強く打ちつけた腰と共に、溶岩を注がれたかのような熱がハウンズの胎を満たした。成人向け雑誌で見るような擬音や効果音も無く、ドクドクと腹の中を満たしていった。脈打つたびに萎びていく逸物は、やがてハウンズのメス孔からぬるりと抜け落ちると、メス孔は痺れるような熱を帯び、孔と逸物に細く白い橋を描いてシーツとスカートのシミに消えていくのだった。
時を同じくして、ドレイクも仰向けに寝転がされて前戯を受けていた。
「あれ、おじさんもしかして『コッチ』の経験あったりする?」
「うっ・・・・・・じ、実は少々・・・・・・」
ドレイクは目を背けながら答えた。実際、様々な怪人やヴィランとの戦いで幾度となく犯されてきた時期があった。一線を退いてからは犯される頻度は減ったものの、自分でも試すようになった経緯がある。あっという間に客の拳はおろか肘まで入ってくるのを感じた。じゅぱっ、と腸壁が引っ張られる感覚と共に、孔の奥がすぅすぅと冷えるのを感じる間もなく、赤熱した塊のような客の逸物がドレイクの身体を貫いた。
「ご・・・・・・ぇっ!?」
あくまで比喩の話とはいえ、メス孔はおろか心臓まで押し潰されそうな感覚に、ドレイクは踏みつぶされた蜥蜴のような間抜けな声が漏れてしまった。生命の危機を感じたのか、ドレイクの逸物からびゅぶっ!と粘っこい塊が吐き出され、ドレイクの服と顔を汚した。
「もしかして感じちゃった?」
客がドレイクに悪戯っぽく尋ねる。痴態を晒してしまったドレイクは思わず顔を伏せてしまった。
「おじさん可愛いね・・・・・・新人なのが信じられないくらいウブなとこも」
「あんまりからかわないでください・・・・・・恥ずかしいです・・・・・・っ!?」
急に突き上げられたせいで、ドレイクの中年腹と逸物がユサユサと揺れだした。まるで玩具のように腰を打ちつけられる感覚は、快感を覚えつつも若かりし頃の屈辱感を思い起こさせた。結合部はジンジンと熱を帯び、突き入れられる逸物の脈動は徐々に感覚を狭めていった。
「あ~・・・・・・おっちゃんのナカ意外と悪くないじゃん。禁欲した甲斐があったな・・・・・・さぁ、たっぷり種付けするから零すなよ?」
客は激しく腰を打ちつけた後、ドレイクの腰を掴んで一際奥深くに逸物を押し当てながら吐精を始めた。
「あっ、ああぁぁっ・・・・・・・・・あっ・・・・・・!?」
腹の中で何度も噴火を繰り返す精の濁流にドレイクの身体は熱く滾り、逸物から何度も潮を噴いていた。潮を噴く度にドレイクの腰が浮き上がって肉壺を締め付け、それに応じるように客は子種を注ぎ続けた。無限に感じる程の種付けと締め付けを繰り返し、やがて逸物がドレイクのメス孔から吐き出された。
交尾を終えてぐったりとしたハウンズとドレイクを横目に、檻永が客の二人に声をかけた。
「お疲れ様ですお客様、今回はこのまま『出産』へ移行してもよろしいですか?」
客の二人は部屋に届いたドリンクを一気に飲み干して答えた。
「えぇ勿論」
「ここからが本番だもんな」
「かしこまりました。それでは始めていきますね」
檻永は胸のポケットからシールのようなものを取り出すと、ハウンズとドレイクの下腹部を露わにしてぺたりと貼り付けた。
「・・・・・・へ?」「今、何て・・・・・・?」
状況を把握しきれていない二人の腹の中では、劇的な変化が始まっていた。熱く煮えたぎる子種が徐々に小さくなったかと思いきや、今度はその塊が大きく膨らんでいくのを感じた。やがて二人の腹は本人たちも気付くほど大きく膨れ上がり、生き物のように蠢いた。
「──ぁ」「ぎっ・・・・・・!?」
ぶしゅっ、と二人のメス孔から子種とは異なる液体が噴きだした。
「さぁお二人とも、ご奉仕の『本番』ですよ。しっかり『産んで』あげてくださいね」
「そん、なこと・・・・・・言っ、たって・・・・・・!?」
「何かが、出てくる・・・・・・のか?」
ハウンズとドレイクに、電流が走ったような快感が全身に走った。気付けば体は本能的に全身で踏ん張り、下腹部に力を込めていた。先ほどの逸物よりも大きな塊が、肉壺から徐々に降りてくる。そして前立腺を幾度となく押し潰し、その度にぴゅるぴゅると吐精し続けていった。
「がんばれ、頭が出ているぞ・・・・・・!」
「もう一息だ。頑張れよ!」
ハウンズとドレイクは客の男たちに手を握られていた。まるで出産に立ち会う夫のように。見ず知らずの相手だというのに、二人は不思議と安心感を覚えていた。二人は一際大きな声を絞りだすと、腹に抱えていた重みが消えるのを感じた。
「おめでとうございます。元気に生まれましたよ」
「・・・・・・え?」「・・・・・・は?」
二人は上半身を起こした先には、透き通った塊がベッドに転がっていた。しかし、その卵からは細長い管のようなものが伸びていたのだ。自分たちの股座、更に言えば自身のメス孔に。
「これは当店オリジナルの最新作です!このシールで刺激を与えることで体内の精液と腸液を吸収して、このような形で排出することができるのですよ。初めてのご奉仕でしたので、最新作を体験していただきたくて使わせていただきました。如何でしたか?」
檻永の言葉に、ハウンズとドレイクは肩で息をしながら答えた。
「凄く・・・・・・気持ちよかったです」
「わ、私も・・・・・・」
檻永は満足そうな笑みを浮かべると、産み落としたものを蓋のついた容器に入れて部屋を後にした。
客の男たちとハウンズ、ドレイクの四人がシャワーと着替えを済ませた頃に、檻永が部屋へ入ってきた。
「皆さま、本日の初ご奉仕、お疲れ様でございました。お会計はこちらです」
檻永がタブレット端末を操作すると、会計額と支払い方法の選択画面を開いて男に見せた。
「あぁ、今日は楽しませてもらったよ」
男の片割れが慣れた手つきで持っていた携帯端末をかざすと、支払いが承認された旨の画面を表示させた。
「コレは愉しませてもらった分のチップとして受け取ってくれ」
もう片方の男は自身の財布から紙幣を何枚か取り出すと、二人に同じ枚数ずつ手渡した。
「ありがとうございます!」
「あ、ありがとうございます・・・・・・」
ハウンズとドレイクの二人は紙幣を細長く折りたたんで着替えのポケットにしまい、店の外までお見送りをした。見送りを済ませた二人は、最初に着替えをした部屋で、元の服に着替えていった。
「お二人ともお疲れ様でした。続けられそうですか?」
「初めての事も多かったですが、何とか頑張れそうです!」
ハウンズは勢いよく答えた。
「凄く大変かもしれませんが・・・・・・頑張ります」
ドレイクはややためらいがちに答えた。二人の答えを聞いて、檻永は安心したような表情を浮かべた。
「それは何よりでございます・・・・・・!それでは明後日の午後6時から入ってもらいます。こちらはお二人の店名を記載した入店証です。出退勤時にこれを提示してください」
檻永は二人にカードを手渡した。そこには初仕事前に書き込んだ「店での呼び名」が記載されていた。
「おぉ・・・・・・ありがとうございます。それではお先に失礼します!」
ハウンズはカードを財布に仕舞うと、すたすたと店を後にした。
「ありがとうございます。明日の午後6時でしたら、遅くても10分前には準備をした方がよろしいでしょうか?」
「そうですね。業務が始まるのは6時以降なので、早めに来てもらう分には構いませんよ」
「分かりました。それではお先に失礼いたします」
ドレイクはハウンズとは別の方面から店を後にした。
二人の姿が見えなくなった檻永は自室に戻って端末を操作していた。液体で満たされたガラスケースの中には、彼らが初めての奉仕で産み落としたものが浮かんでいた。
「初めてにしてはまずまずの仕上がり・・・・・・やはり母胎の健康状態と比例関係にあるようですね。これなら二か月としないで上位の母胎になるかもしれませんねェ・・・・・・」
檻永の声に応えるように、彼らが産み落とした物体が「どくんッ」と蠢くのだった。