Ad
冷房の効いた図書室。外では雨が絶え間無く降っている。空気もジメジメしていて、ザ・梅雨といった天気だ。一週間後には梅雨明けすると天気予報では言っていたが、こんな天気で本当に明けるのだろうか?
そんな外の様子も気に留めず、僕は優雅に読書をしている———
——訳ではなかった。
過ごしやすい室内にも関わらず、怠そうに机に突っ伏している猫獣人。そう、僕のことである。
梅雨が明ければ夏休み…の前に期末テストがあるのだ。できればこうやって居残りで勉強するのは避けたかった。が、英語の出来が壊滅的なのである。なぜか英語だけ、他の科目の比にならないぐらい出来ない。英単語もよく分からなければ文法もほとんどできない。このままだと補修無しの夏休みを迎えられるかすら危うい。だからこうして居残っているのである。不本意ながら。
しっかし全く分からん。これ基礎から全く出来てない気がする。でもそこからやると時間かかるし…。けどそうしないと出来ないし、なによりそのためにここに来たんだし、でもぉ……。
という具合で、現在に至る。渋々やってはいるが、結局分からないのは変わらず。どうしたものかな…。
「どうした?こんなところで何してんだ?」
声を掛けてきたのはいつぞやの狼だった。お前こそなんでここにいるんだ。
「生徒会の作業が終わったからなんとなく来た。見知った影があったと思ったらお前だったとはな」
さりげなく心を読まれた気がする。やめて。てかここにいるのバレたの恥ずかs
「ふーん、英語…」
げ。広げてる教科書とか見られた。
「これは違くてっ!えっと…その…」
「違くても何もまだ何も言ってないんだが」
あっれー?これ自分で傷抉ってるだけじゃね?
「さては英語、分からないのか?」
「っ…!そっそうだよっ」
くっそぉ…バレた。めっちゃニヤついてるの腹立つ。おかげで恥ずかしくて自分でもわかるぐらい顔真っ赤なんだけど。
「俺で良ければ教えてやれるが、どうする?」
「え?うーん…」
うーん、バレたの嫌なのはともかくとして、もふもふ事件のせいで忘れてたがコイツ一応成績はトップクラスだからなぁ。成績が微妙に振るわない僕からしたら教えてもらうことには得しかない。でもこの前あんなことをしたやつに教えてもらいたいとも思わない。けどなぁ、どうしよう…。
…仕方ない。行き詰まってるのは確かだし、ここは腹を括ろう。
「…お願いします」
「オッケー。今五時だし、あまり長居は出来ないからパパッと行くぞ」
うげ。うだうだしてたらこんな時間になってたのか。気を引き締めていかなきゃな。
かくして、この狼によるマンツーマンのミニ講座が始まった。教えてもらっては解き、教えてもらっては解きを繰り返し、とりあえず基礎は出来るようになってきた。コイツの教え方が分かりやすくて助かる。なんなら先生よりもうまい気がする。
一通り解き終わったし応用に入ろうかな。わからなくなったらまた教えてもらえれば…ん?
「おーい」
彼がこっちをずっと見ている。無意識なのかぼーっとしているのか、どこか目の焦点が合ってないような…。どうしたのかな?
「大丈夫かー?」
手を振ってみる。それでも気づいていないみたい。
心なしか顔も赤い気がする。夏風邪か?
「ちょっと手当てるね」
熱が出てないか診てみる。けど、毛のせいかよく分からない。このときばかりは彼のもふもふの毛並みを恨んだ。
「ごめんね、失礼します…」
致し方無し。おでこを当ててみようとする。すると
「うわああああああああ!!!!!!!ちょっ近い近いって!!!!!!!!!うわっ」
「わっちょっ」
いきなり彼が突き飛ばしてきた。僕はなんとか耐えられたけど向こうは弾みで椅子ごと倒れている。
「いっててて…大丈夫?何回読んでも返事しないし顔も赤いから心配したんだけど」
「大丈夫だ、すまない…」
それならいいんだけど。
「なんかまだ顔赤くない?帰った方がいいんじゃないの?」
「いっいやこれは気のせいだ!だから大丈夫」
本当に大丈夫かなぁ…。本人がそういうんなら咎める気もないけどね。
「じゃあまだ応用残ってるし、もう少しだけ付き合ってくれない?」
「いいぞ」
問題の続きを解き始める。ハプニングはあったけど、さっき教えてくれたのが頭に入ってたおかげで時間もかからず解けた。
「よっしゃ〜〜〜!終わった〜〜〜」
「お疲れ。頑張ったな」
「教え方がうまくてどれもすぐ分かったよ、ありがとう」
「おっおう」
「…やっぱり顔赤いじゃん。大丈夫?」
「大丈夫だ気にしないでくれ」
これで英語もバッチリ。たぶんテストもなんとかなるだろう。彼の体調が気がかりだけど。
「わかんなくなったらまた教えてくれないかな…?」
「…おう!いつでも来いよ」
——テスト返却日。油断しまくってた僕は英語が赤点ギリギリになった。もうちょいやればよかったな…。
Ad