「そうですか。全員、無事ですか」
瀞は丈一から、最も知りたかったことを聞き、安堵して仰向けに寝転がった。
「ああ。綾子ちゃんとその兄弟は、全員無事だよ」
「風丸の奴も、ちゃんと亮太を助けられたんですね」
「そういうこと。ま、後から来た03部隊がいなかったら、やばかっただろうけど」
「それは俺も同じですよ。志龍が来てくれなかったら、絶対死んでたし」
守るべき人々を、子供たちを、不当な脅威から救うことができた。安堵と共に達成感を得た瀞は、ゆっくりと歓喜を噛み締めた。
だが、それは長く続かなかった。救えなかった命もあるのだから。
「でも、綾子ちゃんたちの家族は・・・・・・」
「残念だけど、おじいちゃんはキメラに殺されていた。近所の人たちもね。一般市民の死者は、17人だった」
意を決して質問した瀞に、丈一は躊躇なく答えた。
「17人も?」
「BATの機動隊は、包囲網を張っていた80名の内24名が死亡、35名が重軽傷を負った。そして、08部隊は4名全員が殉職したよ」
「やっぱり、08部隊は全滅していたんですか」
「ああ。バールやバルバトスをかなり仕留めていたんだが、数には勝てなかったんだろう」
「BATの機動隊も、そんなに殺されて」
「人間じゃ、太刀打ちできないからな。戦車でもないと」
「あの日だけで、40人以上も、キメラに殺されたんですか・・・・・・」
「そういうことだね。キメラ事件って、そういう事だから」
丈一の淡々とした口調で犠牲者の数を知った瀞は、怒りに震えていた。
たった一晩で40名以上が命を落とすことなど、そんなことがあるだろうか。ましてやこれは、稀に発生する災害や事故などではなく、人の悪意が引き起こした事件なのだ。
「もうこれ、テロじゃないですか。戦争でも起こってるんですか?」
「凶悪犯罪は、ある意味内戦と同じかもね」
「内戦って、ニュースでしか見たことないですよ」
「人同士の戦いだね。こっちは獣人対キメラだ。性質は違うけど、突き詰めれば同じだと思うよ。ま、なんにせよ、キメラが出てきたら俺たちがやるしかない。キメラを止められるのは、獣人だけだ」
「ですね。よく分かりましたよ」
天井を見上げながら、瀞は誓った。
平穏を壊された市民に。
任務を全うした機動隊員に。
同じ運命を背負った獣人兵士に。
キメラの犠牲となった名も顔も知らない人々に。
「俺は獣人を辞めねえ。獣人としてキメラと戦い続けてやる。キメラと、それを作る奴らを根絶やしにするまで」
決意を語る瀞を、丈一は黙って見ていた。
「キメラに対抗できるのは、獣人だけだ。俺たちがやらねえと」
「そうだね」
不意に、瀞の視界を缶コーヒーのラベルが覆った。
「決意表明はいいけどさ、今は体の力を抜いてくれよ。治る傷も治らなくなる」
無表情で淡々と語っていた先ほどから一転し、とても優しい笑みと口調だった。
「はい」
眼前に差し出された優しさを瀞が受け取ると、丈一はにっこりとほほ笑み、もう一つ用意していた缶コーヒーを開けた。ブラックコーヒーだ。
瀞は上半身を起こして微糖の缶コーヒーを開けて、口に含む。ほのかな甘みと適度な苦みを味わうと、怒りが落ち着いていった。
「丈一さん、俺も今度からは同じのでお願いします」
「あ、無糖派だったんだ。意外だな」
「何で意外なんですか」
「甘いの好きそう」
「甘いのも苦いのも、どっちも好きですけど」
瀞は小さな嘘を付いた。
本当は、ブラックコーヒーは苦くて好きではなかったが、丈一が飲んでいる姿を見て飲みたくなった。
「で、次の話も超が付くほど重要なんだけど」
「何ですか?」
瀞が丈一に体を向けると、丈一は缶コーヒーをベッド脇の台に置き、再び語り始めた。
BAT07基地、地下1階Lブロック応接室にて。
上層部の面々が集う場として利用されるだけあって、Lブロックは他のブロックと違い部屋の内装が豪華で煌びやかだ。病院のような研究ブロックや体育施設のような訓練ブロックとは違い、まるで高級なホテルを思わせる。
床に敷かれた絨毯、天井から吊るされたシャンデリア、壁に掲げられた絵画、壁際に並べられた甲冑。調度品も全てが上品で洗練されたデザインであり、とても特殊部隊の基地内にあるとは思えない一室である。
その部屋にて二人の草食獣が、大理石製の小さなテーブルを挟んで向かい合い、豪華なソファーに腰かけていた。
片方はカモシカの女性兵士、空である。ソファーの座り心地は良いのだが、精神的にはとても居心地が悪かった。不慣れな場にいるからでなく、向かいに座る獣人の存在が重圧となっているからだ。
「断るのか」
若さが残り透き通っていながらも、威圧的で重々しい。声量は小さいものの、しっかりと耳に残る。巨大な爪牙を宿した煌めく琥珀のような声が、空の耳に入ってきた。
否、爪牙ではなく角と蹄と言うべきだろう。言葉を発したのは、鹿の獣人なのだから。
体躯は長身で細身、顔立ちは精悍で凛々しい。和虎や賢士のような肉食獣独特の獰猛さは感じられず、理知的な雰囲気を身に纏っている。更に言動一つ一つが堂々としており、若さを残しつつも威厳と風格をも備えている。頭部から生えた立派な角も、それらを助長する要因となっていた。
荘厳だが、それ故に威風辺りを払う牡鹿は、テーブルの上に置いてあるカップを取り、静かに口を付けた。その挙動も優雅で花がある。無意識なのか、それとも計算した上での動きなのか、空には分からなかった。
「兵士でありながら、上からの命令を断るとはな」
「も、申し訳ありません」
牡鹿の仕草に見とれていた空は、厳しい視線を向けられ動揺しつつ謝罪した。
「でも、私にはまだ無理です。副隊長に就くなんて」
突然呼び出された空が、普段足を運ぶことがないLブロックの応接室に入ると、牡鹿は初めからそこにいた。戦うことを生業とする獣人だが、牡鹿は豪華な部屋によく似合っており、違和感は全くなかった。
吉岡 正義(よしおか せいぎ)と名乗った鹿の獣人は、呼び出された理由がわからず戸惑う空に、BAT上層部が議決した一件を伝えた。
“07部隊隊員鹿山空を、08部隊副隊長に任命する”と。
それを聞いた空は、即座に言った。
“辞退させてください”と。
「無理だと思う理由を言え」
正義は空を睨みつけ、命令した。和虎とは異なる迫力を秘めた眼光が空を貫く。
空はたじろぎつつも、思ったことをそのまま言う。
「私はまだ、兵士として未熟です。技術や知識はもちろん、経験が圧倒的に不足しています。私が副隊長になったら、きっと部下の皆を危険に晒すことになってしまいます。私よりも相応しい兵士はいるはずです」
空は胸を張り、全て言い切った。
2度実戦を経験した空は、キメラの恐怖を、実戦の過酷さを嫌というほど味わった。副隊長になれば、あの状況下で冷静な判断を下し、部下にそれを命じなければならない。しかし、今の自分にそれが出来るとは思えなかった。
目まぐるしく状況が変わる戦場で、常に臨機応変に策を考えるなど、出来るはずがない。自分のことだけで精一杯だ。よろ
空の意見を聞き終えた正義は、身を乗り出して更に命令をした。
「なら、今すぐ代案を言え」
「え?」
「上層部の案に反対するんだ。当然、もっと良い考えを用意しているんだろう」
「それは・・・・・・」
「代案も考えず、ただ断ったのか」
「ですから、他にもっと優秀な人を」
「その優秀な人とは誰だと聞いているんだ」
「その・・・・・・」
「工藤か、日鷹か、犬神か、知多か。それとも他の部隊か」
「えぇと・・・・・・」
話にならない、と言わんばかりに、正義はため息をついてソファーから立ち上がり、絵画か掲げられた壁の方に歩き始めた。
「BATは01から09までの実動部隊があり、各部隊が担当の地域をキメラから守っている。たった一つでも欠けたままにするわけにはいかない。全滅した08部隊の補充はBATにとって最優先事項だ」
正義は立ち止まり、絵画を眺めている。空も顔を傾け、絵画に視線を向けた。
岩壁の上で、人狼が吠えている絵だ。月光を浴びた銀色の対応は美しいが、狼の顔は野性的で禍々しかった。
「隊員は最低四人必要だ。一人は新兵、もう一人は引退した古参兵。これで二人は揃う」
正義は、部屋の中をゆっくりと歩き始めた。部屋の中の芸術品を一つ一つ愛でるように眺めながら。ミュージカル俳優の演技のように、優美な歩みと透き通った声で。
「残る二人は、隊員数が五名いる部隊、つまり01部隊と07部隊から一人ずつ取ることとなった。一人は01部隊の副隊長。彼女を新たに08部隊隊長とする。そして、残る一人」
正義は脚を止め、視線を空に向けた。離れていても、やはり威圧されそうになる表情だ。
「07部隊からは空。お前が選ばれた」
「どうして、私なんですか?」
「部隊内の連携を考えると、工藤と日鷹は動かせない。07部隊は手のかかる新兵が多いからな」
正義はテーブルへと歩き始めた。正義との距離が近づき、空の緊張が高まる。
「となると、新兵三人の誰か、となるが・・・・・・」
空が身を固くしていると、正義はテーブルの上にある自身のカップを左手で取った。そして、その隣にあるティーポットを右手で取る。
「三人の中で最も優秀な兵士はお前だ」
正義はゆっくりと、ポットの中の紅茶をカップに注ぎ始めた。
「射撃に格闘、座学も優秀。更に、2度の任務で負傷していないという結果も出ている」
ポットを置き、正義は紅茶を口に含んだ。
「お前が08部隊の副隊長に相応しい」
「でも、瀞や風丸の方が・・・・・・」
「うっとおしい謙遜はやめろ」
口調と視線をより鋭くし、正義は空を見下ろしてきた。
「自身を過小評価しているのか、責任重大な仕事から逃れたいのか・・・・・・いずれにせよお前の行動は、自身の卑下か怠惰にしか見えんな」
空は口を閉ざした。正義は空のソファーの周りを歩き始めた。
「犬神と知多のいずれかが副隊長になること。工藤か日鷹が07部隊から去ること。それらの方がより危険だ」
「そうですけど・・・・・・」
空は深呼吸し、僅かに残った可能性に一応賭けてみることにした。
正義を見上げて、臆さず質問する。
「08部隊に新しく入る隊員の内の一人は、引退したベテランの兵士なんですよね。彼は副隊長になれないんですか?」
「彼にはブランクがある。何より将来性が無い。今後のことを踏まえ、お前に経験を積ませ、より優秀な兵士に育て上げた方がいい」
「他の部隊を交えての調整はできませんか?新兵とそうでない兵士のバランスが取れるように」
「極力他の部隊は交えるようなことはしない。戦闘では連携が重要だ。隊員が一人変わるだけで影響が大きい。個々の能力が大きく、種族によって特性が大きい獣人なら尚更だ。複数の部隊で兵士の入れ替えをすることはない」
「そうですか」
空は正義の意見を聞き、静かに頷いた。
「お前が08部隊の副隊長になることが、最適な案だ」
正義はソファーに腰かけ、背もたれに体重を預け再びカップに口をつける。
空は姿勢を正したまま、自分の前にあるカップを取り、冷めた紅茶を飲んだ。
紅茶には詳しくないが、冷めても美味しかった。思ったほど甘くなく、しかし緑茶のような苦みもなく、後味がすっきししていた。
(私が、副隊長か・・・・・・)
空は、先ほど正義が言った言葉を思い返した。
自分は、自分を軽視しているのだろうか。
副隊長という重責から逃れたいだけなのだろうか。
瀞や風丸に、それ以外の誰かに責任を押し付けたいだけなのだろうか。
本心は、中々自分でも分からない。
ただ、和虎や賢士がいない07部隊や、瀞や風丸が副隊長を務める姿は、想像できなかった。
「空が、副隊長に?」
「ああ」
ベッドの上で瀞は、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして思わず聞き返した。空が08部隊の副隊長に就くという事実を丈一から聞かされて。
一方の丈一は、いつものように不適な笑みでコーヒーを飲む。
「マジですか?」
「大マジ。確かに、俺が嘘を言いそうなのは分かるけど、これは本当」
「いや、別に嘘を言いそうとか思っていませんよ。からかわれたりはするけど」
瀞は言い返しながらも、空の異動するという事実について思考を巡らせた。
あの空が、副隊長になるのだ。同い年の仲間が、部下を持つ身に。
しっかり者で優しくて。
射撃と体術が得意で、頭も良くて。
銃が大好きで、語らせたら止まらなくなるほどで。
自分と同じく流行にやや疎く、風丸の話を真剣に聞き入ることもあって。
驚愕が落ち着いてくると、様々な感情が心中で芽吹き、絡まり合っていく。
「なんか、複雑?」
「複雑っていうか・・・・・・納得、って気持ちが最初に浮かびました。空ってすごく優秀だし。俺なんかと違って」
「先を超されて悔しい?」
「いえ、それはないですね。自分はまだまだだって、よく分かりますから。そもそも、副隊長になれって今言われても、絶対やりたくないです。指示出して戦うとか、絶対できないんで」
「確かに、人の上に立つって、どのジャンルでも難しいもんな」
「だから、おめでとうって素直に喜びたいんですけど、ちょっと、心配ですね。俺なんかが心配するのも変な話だけど、空はまだ経験豊富ってわけじゃないし。いくら優秀でも、今の空に副隊長をやらせるのって、ちょっと、可哀想というか」
瀞は和虎や賢士を思い浮かべた。瀞にとって、“隊長”とはあの二人を指す言葉だ。
高い知力と武力を兼ね備えている二人は、常に的確な指示を部下に出し、自ら武器を取り戦っている。存在するだけで安心感を与える二人は、新兵である自分たちとは比較できないほどの高みにいる存在だ。
空も優秀だが、まだその高みにいるとは思えない。仲間がこんなにも早く大役を任されることを誇らしいという思いもあるのだが、空に課せられた重責を考えると、素直に喜ぶことなど出来ない。
「まぁ、確かにね」
瀞の考えを理解した丈一は、静かに頷いた。
「まだ新兵である空君に押し付けるのは、酷かもね」
「はい。別の人には出来ないんですか?」
「俺の一存じゃ、どうにもできないね」
「そうですか」
「瀞君の言うとおりだよ。こういうことは、本来はゆっくり進めていくべきことだ。でも」
丈一は残ったコーヒーを飲み干し、微笑みを崩さず続けた。
「獣人になれる人間は少ない。兵士は常に人手不足だ。だからこそ、早く育つことを求められる。空君は、副隊長になるにはまだ早いかもしれない。でも、副隊長になることを求められた以上、早く副隊長たるに相応しい力をつけるしかない。厳しいけど、獣人兵士とはそういうものだよ」
瀞は自分を恥じた。
ついさっき、強くなってキメラを倒しまくり、人々を守ればそれでいいと思ってしまった。
だが、自分はBATの隊員だ。組織の一員である以上、今回の空のようなことが起こる。
我武者羅に、怒りに任せて武器を振り回していればいいというわけではないのだ。役割を任された時は、それを引き受け、職務を全うしなければならない。責任を果たさなければならない。
「なんか、俺、獣人兵士としてやらなきゃいけないことを、全然知らずにBATに入ってしまったような気がしてきました」
「仕方がないよ。入ってみて、初めて分かることだってたくさんあるんだから。これから勉強していけばいい」
「そうですね・・・・・・でも、副隊長には怒られそうです。前にもそれに関連したことで怒られたんで」
「どんなこと?」
「七里ビルに突入する前のことなんですけど。状況次第では人を殺すことになるかもしれない、そんな話が出たんです。でも俺、人を殺す覚悟なんかしていなかったから・・・・・・人相手に戦えるか、悩んでしまって。そしたら副隊長から、今更悩むのはおかしいって言われたんです。入隊する前に、覚悟を決めるべきだって」
「なるほどね。スカウトする時、俺がちゃんと説明するべきだったな。つい省いちゃったけど」
「省いたのは、はっぱり、話したら断られると思ったんですか?人を殺さないといけない、って、入隊を考え直すくらいに重いことですからね」
「ただの言い忘れだけど、そういう気持ちもあったかもな。ま、キメラと戦うことの方が、ずっと重いことだと思うけど」
「そうですね。丈一さんは・・・・・・」
「ん?」
丈一さんは、人を殺したことがありますか?
瀞は寸前のところで、その質問を飲み込んだ。
(何聞こうとしてんだ、俺。あるって言われたところで、どうこうなるわけじゃないだろ。そもそも、こんな重い話は軽々しく聞くようなことじゃないし。丈一さんだって、話したくはないだろうし、そもそも殺したことなんてない可能性の方が高いだろ)
その質問をすべきでない理由を一瞬いくつも考え、言い聞かせた瀞は、丈一の顔を見た。
いつも通りの、飄々とした微笑をこちらに向けている。
怒っている様子はない。否、隠しているのか。
「空に、もうその話はしたんですか?」
「いや、俺と同じ部隊の仲間がしてるよ」
「そうですか。しっかし、同じ部隊でこれからも頑張っていこうって思ってたのに、別の部隊に行っちゃうのか・・・・・・」
「寂しい?」
「はい。付き合いはそんなに長くないけど、同級生だし。それに、空はめっちゃ良い奴ですから。優秀なだけじゃないんですよ。優しくて、しっかりしてて」
「だからこそ、選ばれたんだよ」
「ですよね」
「それに、07部隊は男だけになっちゃうからなぁ。それも大問題かもね」
「いや、それは関係ない・・・・・・いや、ありますね」
「何、その急な意見の方向転換」
「なんつーか、戦いになったら男も女も関係ないと思ったんですけど。でも、女性が一人いるって、やっぱり違うかな、って思いました。男女差別するわけじゃないけど、雰囲気が和むというか」
「言いたいことは分かるよ。やっぱり、良い意味で男女は違うから」
「窓口の受付とか、女性が多いですからね」
「そゆこと」
「こないだの任務で子供たちを助けたときも、空がいてよかったですよ、ほんと。一番怖がられなかったんで」
「部隊内の空気も変わると思うよ」
「うーん、確かに、空がいないと、なんか重くなりそうだな。風丸はバカだし、副隊長は怖いし。和虎隊長はカッコよくて頼りになって優しいけど、やっぱ、怖いですし」
「風丸君も、瀞君をバカって思ってるだろうね」
「俺もバカだけど、風丸の方がバカですから」
「それはさておき、空君がいなくなるってことは、花がなくなる、みたいな?」
「花っていうか、森林かもしれませんね」
「あぁ、なるほどね」
「空の欠点って、銃のこと話始めると、止まらなくなることだけですから」
「意外だよね」
「ほんと。銃とか嫌いそうな見た目なんですけど」
澄んだ水で満ちた水槽に一滴だけ落ちた墨が消えていくように。
丈一と会話を交わしている内に、くだらない質問を投げかけようとしたことで芽生えた後悔は、忘れ去られてしまった。
「ま、ずっと会えなくなるわけじゃないよ。これからも、定期的に会えるさ」
「でも、他の部隊との交流は全然ないって、和虎隊長が前に行ってましたよ。03部隊にいる親友と会えないって、文句言ってましたから」
「その心配は必要ないよ」
「どういうことですか?」
「そうか」
和虎は、向かいの椅子に腰かけている空の顔を見た。
覚悟を決めた表情は凛々しく、勇ましかった。雲一つない青空のように、澄み切っている。どうやら、迷いや後悔はないようだ。
「はい。08部隊の副隊長になります」
静かな資料室の中、小声だがよく通る声で空は言った。
自身の役割を。選択した茨の道を。
「お前の決断に文句を言うつもりはない」
「ありがとうございます」
「ただ、想像以上に辛い立場だぞ」
「はい。でも、まだ私に、立派に副隊長が務まるほどの力がないなら、これから努力していきます。副隊長たるに相応しい兵士になります」
「そうだな」
空は視線を、大量の資料と格闘している風丸に向けた。
「最初は断りました。新米の私に務まるわけがないと思って」
「確かに、経験は足りてないと言わざるをえないな」
「でも、吉岡さんの話を聞いて、私がやるべきだって、思い直しました」
空は和虎に視線を戻し、続けた。
「ちょっと、昔を思い出したんです。小学生の頃から、班長とか、委員長とか・・・・・・何かしらの役職を選ぶときは、私がいつも選ばれていたんです」
「空は、しっかりしているからな。しかも、押しに弱い」
「そうなんです」
「そして、他者を優先し、率先して自分を犠牲にしてしまう」
「犠牲なんて考えたことはありませんけど。もちろん、皆のため、っていう気持ちはありましたけど。自分のためでもありましたから。成長するチャンスというか」
「今回は、委員長程度のことではないぞ。文字通り、部下の命を預かる副隊長になるんだからな」
「分かってます。でも、その時と思いは同じです。誰かがやらなきゃいけないなら、私が」
「・・・・・・分かった」
空の覚悟を聞いた和虎は、小さく頷いた。
思いは十分伝わった。あとは、応援するだけだ。
「ちょっと、瀞と風丸が心配ですけど」
空は、再び風丸に視線を向けて苦笑しつつ呟いた。風丸は、未確認キメラの情報を暗記しようと、必死に資料の内容をノートに取っている。
「そうだな。だが、俺と賢士が心配フォローする」
「それなら安心ですね。でも、風丸が特に心配かな」
「瀞も同じくらい心配だ」
「そうですかね?うーん・・・・・・」
『え、空が持ってる銃って、マシンガンじゃないのか?ライフルって、1発ずつしか撃てないだろ?ほら、ガシャンってするやつ』
『プラスチック製の銃って、金属探知機に引っかからないんじゃないのか?』
『レンコンみたいなのがついてる銃って、マグナムっていうんじゃないのか? え、マグナムって弾のことだったのか』
『拳銃なんかあたるかよ!!』
「確かに、そうかもしれませんね」
そう言って、空は笑った。不安という棘が刺さっていながらも、迷いを払ったその笑顔は、とても綺麗だった。
「しかし、空が抜けるとなると、戦力的に痛いな」
「和虎隊長と、副隊長がいれば大丈夫でしょう」
「いや、2度の任務でお前の強さはよく分かったからな。今後は大いに期待しようと考えていたんだ」
「きっと、瀞と風丸が埋めてくれますよ。ちょっと心配ですけど、あの二人だって、戦ったら私より強いはずですから」
「どうかな。お前も相当だぞ」
「あまりそうは思えないですけど」
「それと、会えなくなるのは、寂しいな」
「はい。でも、合同訓練の時は会えますから」
「合同訓練、ですか?」
「ああ」
丈一は、ベッド脇の小さな冷蔵庫から緑茶が入ったボトルを取り出し、一口飲んで喉を潤すと、瀞に差し出してきた。
「ああ、ども」
喉が渇いていた瀞は、喉をならして飲み干した。瀞が飲み終えると、丈一は再び口を開いた。
「今回の任務は、1つの部隊では対応できないほどの規模だった。今後、同様の事件が起こらないとは限らない。状況に応じて、2つ以上の部隊が同じ戦場に立つ機会もあるだろう。そうなると、当然、他の部隊との連携が重要になってくる。熟練度が高いコンビネーションは、何よりも協力だから」
「確かに、そうですね。やっぱ、味方は多い方がいいですよ。敵の数は多いんだし」
「それに、志龍君以外の隊員だったら、合わせられなかっただろ?」
「はい。志龍とは、一緒に訓練してましたからね。それ以外の隊員だったら、あんなに上手くいかないですよ」
「だから今後は定期的に、担当している地域が隣接している2つの部隊と、合同訓練をすることになったんだよ」
「隣接しているってことは、俺らは・・・・・・08部隊も、ですかね?」
「ああ。九州・沖縄地方を担当している07部隊は、中国・四国地方を担当している08部隊と、そして近畿地方を担当している03部隊と合同訓練をするようになる」
「じゃあ、空とも、志龍ともたまに会えるんですね」
空の出世を嬉しく思いながらも、会えなくなることに寂しさを感じずにはいられない。
心を霧で覆われたような気分だったが、また会えると分かった瞬間にそれは消え去った。
「分かりやすいな、瀞君って」
「え? あ!」
こちらを小馬鹿にするような笑みを丈一から向けられた瀞は、激しく揺れ動いている自身の尻尾を掴んで止めた。ついさっきまでは尻尾を自分の尻で敷いて座っていたのだが、いつの間にかベッドの上で胡坐をかいていたため尻尾は解放されていた。
嬉しさのあまり尻尾が揺れるところを見られると、理由は分からないが奇妙な恥ずかしさを味わうこととなる。
「これは、その、本能だからしょうがないというか」
「そんな恥ずかしがることないのに。まぁでも、いい大人は、そんな本能丸出しの行動取らないかな」
「ひでえ!丈一さんだってあるでしょ!思わず本能出る時!」
「例えば?」
「え、それは、えーと・・・・・・蛇だからくねくねしてるとか。寒さが苦手とか」
「それは本能と違くない?体質だし」
「じゃ、じゃあ・・・・・・あ、蛇ってよく舌を出したり引っ込めたりしてますよね!丈一さんも、するでしょ!?」
「確かに、周囲の状況を確認したいときはするかな」
「え、どうして状況確認で舌使うんですか?」
「蛇は舌で匂いを感じ取っているんだよ。目とか耳が悪いから」
「そうだったんですか」
「知らなかったんだ」
「いや、普通は知りませんって。理科の授業でも教えてくれなかったし」
「でも、俺が蛇なんだし、調べてくれるかと」
「何で丈一さんのためにそこまでしなきゃいけないんですか?」
「友達のことは調べるでしょ」
「生態とかは調べるのは別の問題でしょ!」
「そういえば、蛇型のキメラのことが書かれた資料に、そのことが書いてあったと思うけど」
「え、そうでしたっけ?」
「瀞君って、あまり座学の成績よくないでしょ」
「平均点は超えてますよ」
「空君や志龍君にはボロ負けしてるじゃん」
「確かにあの二人には負けてますけど、“ボロ”はつけなくていいでしょ!それに、風丸には勝ってるし!」
「あれと比べてもなぁ」
「う・・・・・・自分でも、何で比べたんだろって、言った直後に後悔しました」
「いずれにせよ、勉強不足だな。知識は武器なんだ。己を知り、敵を知れば、百選危うからず、って言うだろ。ちゃんとキメラのことを調べてないと、いくら強くてもまた大怪我するよ」
くだらない話をしていたはずだが、丈一は鋭利な眼差しを瀞に向けて的確な助言を発した。笑顔のままだが真剣さが表情に出ており、口調も力強い。
柔和な空気を一瞬で消し去り、静かに渇を入れてきた丈一。その変貌ぶりに、瀞は畏敬の念を抱いた。
以前も会話中、丈一は不意に不気味さを帯びたことがあったが、今回は厳しさと頼もしさを兼ね備えた空気を纏っている。
和虎とは違った、“隊長らしさ”がそこにあった。
だが。
「話がそれたけど、瀞君は本能に従って尻尾振っていればいいよ」
丈一は一瞬でさっきの雰囲気に戻った。
「よくありません!」
戻された瀞は、すかさず反論する。
「そもそも何でそんなに嫌がるの」
「丈一さんがバカにするからです!」
「犬っぽくて可愛いのに」
「大きなお世話ですよ、ったく・・・・・・そういえば」
瀞は、ふと思いついた疑問を口にした。
「合同訓練に話を戻しますけど。別の部隊との連携とか、もっと早くやっておけばよかったんじゃないですかね。キメラって常に大群で襲ってくるし。前に似たようなこと、なかったんで・・・・・・」
その疑問を言い終えようとした時、瀞は寒気を感じ思わず身震いしそうになった。丈一の雰囲気が、また変わったのだ。表情は微笑のままだが、間違いなく空気が変わっている。
先ほどの、厳しい隊長のようなそれとは違う。BATの説明の時に帯びた不気味さに近い。
二転三転する丈一の気配に驚いていると、目の前の蛇がゆっくりと口を開いた。獲物を捕食する直前の動きに似ていた。
「部隊間の連携の話は、前から上がってたんだよね。でも、なかなか採用されなかった。理由は色々だよ。獣人は強いから、少数でも大丈夫だと判断されたからとか。他の部隊の援護に行っている間、担当している地域にキメラが出たら大変だとか。ま、そんな理由はいくらでも用意できるけど」
瀞は上半身を起こし、身を乗り出して丈一の話に集中した。話の内容もさることながら、丈一の真剣かつ不気味な雰囲気が瀞を引き寄せた。
「体制を変えるには、おおきなきっかけが必要だ。今回は、08部隊の全滅がそれに当たるわけだ。でも、現場で戦う兵士にとっては、たまったもんじゃないよな。起こってからじゃ遅い。何かが起こりそうになった時点で、すぐに動かないと。例え骨折り損になってもね。程度によるけど、今回は、BATの行動は遅かったと言わざるを得ない」
丈一は、ゆっくりと立ち上がった。
「部隊同士が、連携して仲良くなることが、嫌だったのかな?」
「それって、どういう・・・・・・」
丈一の言葉の意図が分からなかった瀞は、躊躇いながらも質問しようとした。
しかし、丈一はそれを遮るように上半身を倒し、顔を瀞の方へ近づけてきた。
相変わらず不気味な空気を纏ったまま、不敵な笑みを浮かべる蛇の顔が迫ってくる。
瀞は何も言えなくなり、そして全く動けなくなった。
蛇に睨まれた蛙とはこのことか。
しかし、恐怖を感じているのは確かなのだが、不快という感覚は全くなかった。
蛇の笑みは、危険だが魅力を秘めている。
瀞の目には、そう映った。
やがて、瀞の鼻先に触れそうになるほど、丈一の顔が眼前に迫った。
不気味に光る双眼で顔を覗き込まれると、自身の全てが見透かされているような錯覚に陥る。
鼻先同士が触れると、そう思ったが、丈一の顔は寸前で左に曲がった。
そして、耳元に迫った丈一の口が、笑みを携えたまま開いた。
「俺たちが強くなったら困る、そんな奴らがいるんだよ」
丈一の囁きが、吐息と共に耳の中に吸い込まれる。
言葉の意味を理解した瀞は、顔を正面に向けたまま目を丈一の方に向けた。
そして、丈一と目が合った瞬間、瀞の体はびくりと震えた。
丈一の目が、人のものではなかったのだ。
金色の球体に浮かび上がる、黒く細長い裂け目。
比喩ではなく、本物の蛇の目だ。
驚愕で震えたものの、やはり恐怖はなかった。
その身に不気味さを纏う丈一だが、その目はただただ綺麗だった。
まるで、宝石のように。
目を囲む緑青色の鱗もまた美しく、瞳に花を添えているかのようだ。
瀞は丈一の言葉など忘れ、金と緑青の宝石が持つ煌めきにただただ圧倒され、その美しさに魅了された。
時も忘れて、見つめ合う。
呼吸の音さえ聞こえない、無音のまま続く一時。
ゴォォォォ
スライド式のドアが鳴らした音が、その時間に終わりを告げた。
「えっ」
ドアを開けたのは空だった。空は病室の中の様子を見て、言葉を失い固まってしまった。
それもそのはず。視線の先では、犬と蛇が、瀞と丈一が、至近距離で見つめ合っていたのだから。
ベッドの上で上半身を起こした瀞に、丈一が身を乗り出して近づいて。
二人の顔は、今にも密着しそうなほど接近していて。
表情は、とても穏やかで。
まるで1秒後に、唇同士が触れ合うかのような・・・・・・。
「あっ」
ドアが開く音で現実に引き戻された瀞もまた、固まっていた。
視線の先には、驚愕の表情でこちらを見ている空がいたから。
空が驚いた顔は何度か見たことがあるが、今までで一番驚いている、それほどの表情だった。
しかし、それは瀞も同じだった。
瀞も空も、今までで一番驚き、耳と尻尾を垂直に立たせ、体毛を逆立てて体を膨らませている。
「やぁ、空君」
丈一は呑気に挨拶をしているが、瀞はそれどころではない。
落ち着いて弁明しようとするが、焦りのせいで口がうまく動かない。
「そら、ちがっ」
「うん、分かってる、大丈夫だから。話したいことがあったけど、またあとでね」
空はそれだけ言って、その場を後にした。
スライド式のドアが、ゆっくりとしまっていった。
「ちょ、ちょまぁぁぁぁ!!空ぁぁぁぁぁ!!」
瀞が発した悲痛な奇声は、空に届かなかった。
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同刻、九州北部の森林地帯にて。
四方を大自然に囲まれた中に、その廃墟は曇天の下で寂し気に佇んでいた。
色が剥がれて灰色になった壁には所々ひびが入り、窓やドアは全て壊れて動植物は侵入し放題という有様だ。
元は煌びやかなホテルだったのだが、今はその面影が欠片も残っていない。生命力に溢れる蔦に絡みつかれ、内部にまで入り込まれている今、その建物は大自然に飲み込まれかけていた。廃墟はそれを望んでいるかのように、その身を森にゆだねている。
それでも、廃墟は自然と完全に同化することは出来なかった。どんなに森に埋もれても、人工物であるがゆえに異物として緑の中に居残り続けてしまう。
それは尊厳か、呪いか。
「く・・・・・・ふ・・・・・・」
そんな、森にもホテルにもなれない建物の中には今、人でも獣でもない存在がいた。
「んぐ・・・・・・」
かつてロビーだったその場所で、ビニールシートを敷いて腕立てをする者。
頭部は狼であり、灰色の体毛で全身を包んでいる。
骨格は人であり、人間の衣服を着こんでいる。
人と獣の属税を持つそれは、紛れもなく獣人。狼の女戦士である。
「くぅ・・・・・・」
狼はゆっくりと、時間をかけて腕立て伏せを繰り返す。より筋肉に負担をかけ、さらなる筋力増強を目指して。
回数は既に200を超えており、滝のような汗が体毛を伝ってシートの上に落ちている。カーキ色のタンクトップと紺色のスパッツはぐっしょりと濡れ、逞しい肉体にぴったりと張り付いていた。
「うぅ・・・・・・」
狼は歯を食いしばり、両脚で地を蹴って逆立ちの姿勢を取り、そのまま前転をして立ち上がった。
「はぁっ! ・・・・・・ふぅ」
牙を見せつけるように口を大きく開き、深呼吸をして呼吸を整える。1時間ほどかけて、全身の筋力トレーニングを行ったため、疲労はかなりのものだ。
しかし、肉体は休息を求めていても、精神は運動を、行動を、戦いを望んでいた。
「くっそ・・・・・・」
狼はもどかしさを抑えるように、柔軟体操を始めた。
最近は、よくこんな気持ちになる。原因は分かっている。最近は、目立った戦果を挙げていないからだ。敵との戦力差を考慮すれば当然なのだが、こちらは地味な活動を続けていくしかない。
無論、小さな戦果を積み重ねていけば、やがては戦局が大きく傾くことになる。事実、自分たちの活動は少しずつ実を結んでいる。しかし、やはり目に見える勝利がなければ、前に進んでいるという実感を得られない。同じ場所で、呑気に突っ立っているのではないかと、そんな焦りが生まれてしまう。
確固たる目的がある以上、自分の闘志が消えることはないと断言できる。それでも今は、目的に近づいているという確信が欲しい。
(まぁ・・・・・・最近の相手が雑魚ばかりで、苦戦がないというのも理由の一つか。強敵を倒せば、多少の満足感は得られるだろう)
シートの上で足を開いて座り、上半身を倒した狼は、最近戦った相手を思い返して不満げに顔をしかめた。
(危険を味わわずに勝てるのは、喜ばしいことなのだが・・・・・・職業柄、多少は歯ごたえのある相手と戦いたいものだな)
狼を上半身を起こした狼は、天を仰いで息を付く。
(今は訓練しかすることがないな・・・・・・もっとも、その時間を確保できるだけ幸運だろう。それに・・・・・・)
柔軟体操を続けつつ、狼はこれから訪れるであろう戦局の変化について思考を巡らせた。焦らなくていいと、自分に言い聞かせるように。
(次に黒狐と合流した時、私たちは大き動くことになるはずだ。敵地に潜入できたんだ。手ぶらで帰ってくるはずがない。もし、上手くいけば・・・・・・)
戦局の停滞で苛立ちが溜まっていた時、不意に訪れた大きな転換。
もうすぐ、大きな戦果が自分たちにもたらされるだろう。
つまり、目的に大きく近づくことが出来るのだ。
(そうだ、もうすぐなんだ。もう少し待てば・・・・・・)
過度な期待は危険だが、抱かずにはいられない。勝利に近づくその時を。
しかしそれは、戦いの激化をも意味する。ならば自分は、もっと力をつけなければならない。
今は強くなることが、自分の仕事なのだ。
(少し素振りをして、見張りを交代するか)
狼は立ち上がると、愛用の武器の元へ歩き出した。
狼は深い森の中で、やがて訪れる戦いに備えて、静かに爪を研いでいた。
逸る気持ちを抑えながら。
そして。
(黒狐、敵地の中で重圧に苦しんでいるだろうが・・・・・・頑張ってくれ)
仲間の身の安全と勝利を祈りながら。
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同刻、BAT07基地、地下7階の一角にて。
(うっま!こんなん食ったの久しぶり!皆にも食べさせたいな~)
和田と入れ替わった者は、仲間の祈りなど知らず、ファミリーレストランでチョコレートパフェを味わいながら食べていた。