CheMoleCule World-of-Chemistry 4話 バイタル繁華街に響く腹鼓
ボクらはPANちゃんの背中に乗って、エレメンタル平原の自然豊かな島々から...人工的な建物が所狭しと並ぶ港町へとやってきた。
(グ~~~)
Znくん「おやおや、PANちゃん、腹が鳴ってるよ」
PANちゃん「ここまで色々あったから...おなかすいちゃったなぁ。」
...着ぐるみ羊でも腹は空くようだ。CheMoleCuleって、ボクが知っているような食べ物も食べるし...どんな存在なんだろう?
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PANちゃん「よいしょっと(着地)、ついたよっ。この辺はおいしいお店がそろってるから、食べ物には困らないよ。」
Znくん「中華料理なら”ワルデン飯店”...お寿司なら”シスばんざい”でしょ、カレーなら"補給艦オリザニン"だし....スイーツなら”コースティクス・パルフェ”だし....いっぱいあるからいつも決め切れないんだよね.....。」
PANちゃん「あれ?ワルデン飯店は臨時休業みたい。」
Znくん「お寿司もだ、あれれ?」
確かに、繁華街と言う割にやけに人が少ないような...。
PANちゃん「思い出した、今日はアレだよ....アレアレっ、アレの日だ!」
Znくん「アレじゃ通じないよ、今日が酒神の日でしょ、みんなヴェールタワーの辺りに集まっていると思うよ。」
...あのワイングラスみたいな塔のことか。
腹ペコなボクらは、PANちゃんの背中に乗せてもらい塔のふもとに向かった。
PANちゃん「お~。屋台がそろってるねぇ」
店がみんな閉まってたのは、ここに料理人たちが集まっていたからか。
???「よぉPANちゃん、また来てくれたのかあ。おや、こいつはお初のヤツか?」
まるっこくて浴衣を着た狸が....ふらふらしながらこちらに近づいてくる。...ほのかに酒臭い。すでにアルコールが入っているようだ。
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PANちゃん「エタノールさん、久しぶりっ。あ、この子はかくかくしかじか...」
エタノールさん「ふむふむ、ちょいと謎が多いやつじゃな。...飲み相手になってくれるなら誰でも大歓迎じゃっ。」
...酒?ボクは興味はあるけど...それよりかはお腹がすいたなぁ。
PANちゃん「この子もおなかがすいてるみたい。」
Znくん「(グ~)...あっ、実はボクも....。」
エタノールさん「フフッ、食欲には逆らえなさそうだなっ、良いから食え食え飲め飲めっ。」
とりあえず、エタノールさんのおごりでいろいろ食べさせてくれるようだ。
エタノールさん「ほらほら、新入りさんよぉ、どんどん食って飲めっ」
テーブルに並んでいるのはたくさんの酒と....お寿司、ラーメン、カレー....どれもおいしそうだ。
グルタミン酸「うちのラーメンはうま味にこだわっているから、たくさん食べていってアル」
酢酸さん「回らない寿司、どうぞ召し上がれっ」
PANちゃん「じゅるり、どれから食べるか悩んじゃう....」
Znくん「まったく、PANちゃんは食い意地張ってるんだからっ(笑)」
....もぐもぐ、おいしいっ。
???「はいっ、こちらデザートのパンケーキですっ...わっとっとっ」
...おっとっと。つまづいてぶちまけそうだったパンケーキをナイスキャッチしてあげた。
Znくん「彼女はパティシエのナトリウムちゃんだよ。腕は確かなんだけど、目が黄色いせいか色があまり見えないみたい。」
エタノールさん「ぷは~~~。全員分注いでやったからみんなも飲みなされっ。」
酒ばかり飲んでいるエタノールさんを尻目に、ボクらは料理をいただいていく。
PANちゃん「流石、料理系のCheMoleCuleが作る料理はどれもみんなおいしいねぇ」
....料理系...CheMoleCuleは亜鉛、硫黄、酸素などの元素の能力を持ったモノが多かったけど...この子たちは元素そのものの性質じゃなさそうだね。複数の要素が組み合わさることで良いモノができている...まさに料理のようだ。
PANちゃん「面白いことを言うね、シロりるさん。酢酸さんはいなり寿司、グルタミンさんはラーメンから生まれたんだ。」
....料理から"生まれる"....? ということは、料理が料理を作ってるってこと....? 変な感覚....
PANちゃん「うん、そういうことになるね。完成した料理に”獣素”が宿るとCheMoleCuleになることがあるんだ。この料理たちはかつて人間たちが食べていたレシピを、遺跡に残されていた資料から再現したものだけど。」
...その”獣素”って....???
PANちゃん「”獣素”は物体に入り込んで、その物体の性質からCheMoleCuleを作り出す存在のことだよっ。料理のような人工物に”ダイブ”することもあれば、ブリムストーン山のあの子たちのように、自然がつくりだしたものに”ダイブ”することもあるよ。」
...獣素....ボクの記憶にはない言葉だなぁ。
PANちゃん「”獣素”は、人間の文明社会があったころ....旧世界暦の21世紀頃だっけ?...に初めて確認されたと言われてるけど、その仕組みや性質、なぜ生まれたかについては謎が多いんだよ。とにかく、このCheMoleCule世界は獣素がつくりだした、とも言われてるよ。」
...へぇ、PANちゃんって物知りなんだなぁ。
グルタミンさん「感心しすぎるなアル。どうせ西の方に居る研究者から聞いたことの受け売りだろアル。」
PANちゃん「こらっ、ばらさないでよ~。」
...CheMoleCule....獣素.....気になることが多すぎる。その研究者に直接話を聞いてみたいなぁ。
そう思っていた矢先ーーーー。
ガタンっ!
....あれ、エタノールさん....?
エタノールさん「おいそこの新入り、酒が全然へってねぇじゃねえか.....。」
....んんっ、性格変わってない?
エタノールさん「オレの酒が飲めねぇって言うのか!?!?!?」
いや、そういう訳では.....つい話がはずんじゃって.....
エタノールさん「その甘ったれた性格をエタノール消毒してやる!!!」
..エタノールさんはボクの口に一升瓶をぶちこんで酒を直接飲ませてきた.....ごぼごぼ〜〜〜〜〜
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PANちゃん「エタノールさん、やめて……!いつものエタノールさんはそんなヒトじゃないはずよ……!」
エタノールさん「うるさい!PANちゃんは黙ってろ!」
Znくん「エタノールさんをとめなきゃ……ひやっ!」
エタノールさんは飛びかかってきたZnくんを酔拳で止め、ウォッカ瓶で殴ってきた!
Znくん「ぐわっ、ふにゃ~(気絶)」
酢酸さん「あらら、何の騒ぎかしら!?」
ナトリウムちゃん「あわわ、なんとかしなきゃ……ひやぁっ!あちちちち……、引火したぁあああ!!」
酢酸さん「床にこぼれた酒が体についてしまったようね……貴方は水系CheMoleCuleとの相性が最悪だから下がってなさいっ」
グルタミンさん「ナトリウムちゃんとZnくんはウォがなんとかするアル...ニーらは早くあの子を助けるアル!」
…ううっ、一気に飲まされたせいで意識がなくなる...
そらがぐるぐるまわる〜〜〜.....
酢酸さん「あのままではあの子が危ないわ……。」
PANちゃん「エタノールさんの対処法って無いの!?」
酢酸さん「落ち着いて。全てのCheMoleCuleには何かしらの弱点を持っているわ。エタノールさんの場合は……『おいなりさん』ね。」
PANちゃん「おいなりさんって………あっ…。」
PANちゃんは何かを察したようだが、優しさとエタノールさんとの親しさが仇となって攻撃をためらっているようだ………
???「前方に絡み酒行為、及び暴走者を確認。直ちに鎮圧する。」
攻めあぐねている所へ、褐色のキツネが突然飛び出した。
エタノールさん「あん? お前も邪魔するって言うのか?」
キツネ「…不摂生はほどほどにしろ、こっちも迷惑しているんだ。」
エタノールさん「はぁ? オレに喧嘩を売ろうってのか!?」
キツネ「(今だ。)」
エタノールさんが飛びかかった隙を突いて、キツネはハンマーでエタノールさんの股間を強打した!!!
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エタノールさん「ああああああああああああああ!!!」
エタノールさんは悶絶してのたうち回り、泡を吹いて倒れている。
エタノール「おふう、あは、ふうっ」
キツネ「やれやれ…最善の手段とは言い難いが、少なくとも酔いは覚めたようだな。」
……その頃、酒を思いっきり飲まされたボクは、不思議な夢を見た。
………うごけない。
ボクはいつもひとりぼっち。
ベッドのうえ?
………本当は、もうひとりいるはずだったのに。
空虚。
……どこにもいけない。
……………ぼくは、このままきえるだけなの?
…………なぜ、ぼくはうまれたの?
どうして?
………だれのものかわからないきおくが、ぐるぐるまわっている。
…………だれかがぼくのなまえをよんでいる?
………はっ、これは現実?
目が覚めた。
目が覚めると………エタノールさんがボクに対して無限に土下座していた。
エタノールさん「ゴメンナサイユルシテクダサイ…コカンナグラナイデクダサイ……」
キツネ「やれやれ……久しぶりの新入りだからって張り切って飲み過ぎるから………これに懲りたら、アルハラなんてしないでくださいよ…。」
悪気はなさそうなので許した。また暴走したら股間パンチするって脅したら、生命的危機を感じた顔をされてしまった。
キツネ「おっと自己紹介が遅れたな。オレは"補給艦オリザニン"のオーナー、チアミンだ。口直しにこの海軍カレーでも食っていてくれ。」
……もぐもぐ………麦飯の食感と種々のスパイスがなす適度な辛さでおいしい………
……あっという間に完食してしまった。
チアミンくん「そういう顔をされると嬉しいぜ、こいつは昔、補給部隊で働いてた頃の人脈で集めたこだわりの食材で作った一品だからな。」
…この子はカレーのCheMoleCuleなのか。
酢酸さん「やれやれ、一件落着じゃの。ワタシのいなり寿司も食べるが良い。エタノールさんの巨大なやつではなく、米が詰まったものじゃがな。」
グルタミンさん「ウォのラーメンも食べるアル!」
ナトリウムちゃん「わ、私のパンケーキも………」
やれやれ、まだまだ食べることになりそうだなぁ。
それにしてもボクの記憶....さっきのは一体何の記憶だったんだろう。
酒による幻覚だけとは考えにくい。
……もしかして………?
エタノールさん「何じゃ、ボーっとしておって、もう酔いがまわっているのか?」
.....違います、考え事をしてただけです。
……とにかく、おいしい料理を食べ終えたら研究施設に行こう。
次回、「K村とお肉の秘密」
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キャラ紹介のコーナー
エタノールさん
宴会大好きな狸親父。CheMoleCule世界の酒神。
普段は温厚で酒造りに真面目な性格をしているが、
酒が入りすぎるとアルハラ親父と化してしまう。(酒を愛する精神が過激になっちゃうだけで悪気はない)
股間のヒドロキシ基が大きすぎて、ズボンが履けないらしい。(なので赤い越中褌)
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酢酸さん
寿司屋「シスばんざい」の板前。回る寿司と回らない寿司の両方を提供している。
エタノールさんとは「親密な関係にある」と言うが、その真意は不明。
よくエタノールさんの宴会に参加(酸化)しているからということか?
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グルタミンさん
中華料理屋「ワルデン飯店」の客寄せパンダ(料理人)。うまみ自慢のラーメンが名物。
中華風の身なりをしているが、実はジャパン系らしい。
そもそも本物の中華系の人間は「アル」なんて語尾は付けないので、旧世界の文化を勘違いしている説が濃厚。
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ナトリウムちゃん
スイーツのお店「コースティクス・パルフェ」のパティシエ。
水に濡れると発火して大変なことになるので、全身に油を塗っている。
実家が肌に合わず、家出してバイタル繁華街にやってきたらしい。(ちなみに実家とは和解済み)
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ちあみんくん
大麦色の海兵キツネ。カレーの名店「補給艦オリザニン」のオーナー。
海軍の物資補給部隊で働いていた経験があり、その人脈でこだわりの香辛料を仕入れている。
セーラー服に六尺褌なのも補給部隊時代の名残らしい。
エタノールさんに急所攻撃したハンマーは本来は海兵の体調検査に使うもの。(膝蓋腱反射)
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PANちゃん
モフモフ羊。エタノールさんとは親しいらしく、よく酒を飲む仲。
Znくん
亜鉛ウサギ。今回はアル中に殴られただけの不憫。
シロりるさん
謎のCheMoleCule。何か思い出しかけている。