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水月の狼

  【登場キャラクター】

  ※容姿・詳細プロフィールは以下URLからよろしくお願い致します!

  ○マーティス・クラウド

  https://twitter.com/daiki_sansan/status/1606223119894450177?s=46&t=wwiaX4He45HoFvcDnRIh2g

  ○グラトニー・ザ・サーベラス

  https://twitter.com/daiki_sansan/status/1606507364735410177?s=46&t=wwiaX4He45HoFvcDnRIh2g

  [newpage]

  [[rb:水月 > みなづき]]の狼

  「好きですよ」

  「は?」

  いつもの食卓.

  雲間から伸びる朝日が部屋を優しく包み込む.

  コトコトと湯を沸かすポット.

  窓の向こうから朝の報せを届けることり達.

  絵画に描いたような和やかな朝の日常の中、マーティスは唐突に投げられた言葉に耳を疑う.

  「もう一度聞く……今なんて言った?」

  「1回で聞き取ってくださいよ.あなたが好きなんです.」

  面と向かって座るマーティスの相棒……グラトニーが朝の紅茶を啜りながら呆れ顔で返す.

  「好きな人に好きと言って何が悪いんですか.本っ当にあなたは鈍いですね.」

  「なっ……!鈍いとかそういう問題じゃないだろ!あまりにも突然だったし、そんな急に……」

  ため息をついてさらに煽りをかけてくるグラトニーを見て、より困惑する.

  「じゃあ逆に聞きますよ.あなたは私のことが好きですか?」

  「は……!?」

  ガチャリと大きな音を立ててティーカップが置かれる.

  明らかに怒りを含ませた問い.

  「いやお前……そりゃあ好きだけど……」

  「好きだけど、なんです?」

  「…………」

  今まで見たことの無いグラトニーの気迫に言葉に詰まる.

  射抜かれる黄金色の双眸.

  その瞳には怒りとともに、どこか悲しい色が滲んでいた.

  「……もういいです.」

  しばらくの沈黙の後、目を伏せたグラトニーは乱暴に椅子を元の位置に戻すと自室へと戻ってしまった.

  「……なんなんだ、あいつ」

  目の前の食卓には、空になった食器が朝の光を受けて白く光る.

  『あなたは、私のことが好きですか?』

  頭の中で何度も反響する言葉.

  どうしても真意を咀嚼できないまま、マーティスはしばらく呆然と立ち尽くしていた.

  扉の向こう.

  「マーティス……」

  壁によりかかり、力強く拳を握る.

  その目にはうっすらと朝露が潤んでいた.

  [newpage]

  「どうしたらいいんだ……」

  陽気な音楽が商店街を活気づける.

  部屋を訪ねても返事がなかったため、行ってくるとだけ伝えて家を出てきた.

  別になにか目的を持ってきたわけではない.

  燻られた心を晴らせぬまま、ここまで来てしまったのだ.

  笑いながら話に花を咲かせる夫婦達を尻目に、雑踏を踏み分けて進む.

  答えの返ってこない問いに自問自答を繰り返し、途方に暮れていると……

  「あなたの大切なあの人に!いつもお世話になっているあの人に!あなたの小さな感謝の気持ちを届けてみませんかぁ!只今セール中ですよぉ!!!」

  明朗な声がマーティスの耳に届いた.

  声の方向を向くと、一際人だかりのできている商店があった.

  吸い寄せられるようにその店に足を運び、中を覗くと、売り子さんの後ろには様々なペンダントが並べられていた.

  どれも熟練の職人が手がけているのか、細かくも美しい装飾が施され、その白銀はつややかに光る.

  普段からペンダント等を身につけないマーティスにとって装飾品は不要だと思っていたが、この精巧さには目を見張るものがあり、つい魅入ってしまう.

  その中に…

  「……あ」

  数あるペンダントの中に、マーティスを惹き付けるものが1つ.

  これなら……

  売り子さんに声をかけ、これをひとつ、と注文する.

  ありがとうございました!

  青空の下、明朗な声が空高くに響き渡った.

  [newpage]

  ザザーン……

  凪いだ夜の海に波音だけが静かに響く.

  のぼりかけの月に目を細めながら、彼を待っていた.

  「こんな時間になんです?」

  後ろからグラトニーの声が飛んでくる.

  いきなり連れ出されたからか、若干の不機嫌さが滲んでいる.

  「……海が、綺麗だな」

  「はい?」

  予想もしなかった返答に、グラトニーは裏返った声を出す.

  「あなたがそんなことを言うなんて、珍しいですね」

  「俺だってロマンチックなことくらい考えるよ」

  「……正直気持ち悪いですよ?」

  なんでだよ、と苦笑いする.

  「ずっと考えていたんだ.俺とお前が、どうしてずっと一緒にいるのか」

  「……答えが出たんですね」

  ついに来たか、と目を輝かせてグラトニーは目の前に立つ.

  「俺らは一心同体だ.喜びも、悲しみも、何もかも、全て分かちあってきた.兄弟だとか、そんな言葉じゃ言い表せない.」

  「……」

  じっと見つめてくる.

  今朝見たような、あの黄色い眼差しで.

  「この先もずっと、俺とお前は一緒だ」

  「それじゃあ……!」

  相棒の顔が明るくなる.

  …あぁ

  俺はずっと、この顔が見たかったんだな.

  「俺は……好きだよ、グラトニー」

  「……!」

  二人の間を風が駆け抜ける.

  相棒の目には砂が目に入ったのか、大粒の夜露がまさに溢れようとしていた.

  [newpage]

  「但し……それは恋人としてじゃない」

  「え……」

  突然の否定に上ずっていた相棒の声のトーンが下がる.

  「言っただろ?俺たちの関係は兄弟とか、そんなぬるい言葉じゃ言い表せないって」

  優しく微笑むと胸元に忍ばせていたモノを手に取り、首に優しくかけてやる.

  「これって……!」

  首にかけられたペンダントを見て、相棒が目を見開く.

  かけられたペンダントには白銀の十字架と、首を反らして遠吠えをする狼の姿が象られていた.

  さらには、十字架に深紅のルビー、狼の目には黄金色のトパーズが埋め込まれ、十字架にはグラトニーのフルネームが筆記体で刻まれている.

  悪魔として罪の十字架を背負ってまで、咆哮をあげて命の業火を燃やす.

  まさに、相棒の生き様にふさわしい逸品であった.

  「結構高かったんだぞ?それ」

  おちょくるように笑う.

  「お前の背中は俺に任せろ.どこにいても、俺が必ず守ってやる.絶対にだ.」

  確固たる意思を持ってグラトニーを見つめる.

  迷いなどない.

  真紅の瞳に翳りなど何処にも見当たらなかった.

  「……バカな真似を」

  肩を震わせ俯く.

  必死に開かれた目から、遂に大粒の涙が零れ落ちた.

  「あなたはそうやって……いつも私の先を行ってしまうのですね」

  嬉しいとも哀しいとも言えない、この気持ち.

  思うような形では叶わなかったかもしれない、この願い.

  それでも、彼と一緒にいたい.

  その気持ちだけはお互い変わらずにあった.

  それだけでも、十分だった.

  「泣くな、バカ」

  優しく抱きしめる.

  触れ合うほどに感じる、愛おしい程の熱量.

  思うような形で叶えてあげられなかったかもしれない、相棒の願い.

  それでも、俺は相棒と一緒にいたい.

  その気持ちは、お互い変わらなかった.

  それだけでも、俺は……

  「マーティス……」

  「グラトニー……」

  ひとしきり抱きしめると、再び見つめ合う.

  「ありがとう.俺の隣にいてくれて.」

  「こちらこそ.そばにいてくれて、本当にありがとうございます.」

  そして……重ねる.

  近い距離に感じる、お互いの息吹.

  凪いだ月明かりの下.

  首にかけられた白銀の十字架の上で、1匹の狼が吠える.

  明日の星に向かって、静かに.

  ただ、声もなく─

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