008-014
多量の堕液でオハナIIIの胎内を満たしたダインは、完成した新しい遊魔達から、直接その出自と目的を聴く事にする。
オハナIIIはダインの前から移動して、その右横にはべり、反対側にはリリルカがはべる、生まれたばかりの二人は頭を床に付けたまま、ダインの言葉を待っている。
ダイン 「顔を上げて下さい、私に対して仰々しくされると困ってしまいますから」
ふっくら小柄 「ですが絶対者たるお方に対して平伏する事しか思い付きません」
痩せ型ノッポ 「はい、里長などとは比べ物にならない御威光を前にして戸惑っております」
リリルカ 「まぁ慣れるまでは仕方有りませんよ、ダイン様は自分が思ってる以上に迫力ありますから・・・」
ダイン 「私がですか、普通に接してくれる関係が望ましいですがね」
オハナIII 「オハナには意味が解らないです、確かにダイン様は凄いとは思いますが、わざわざ態度に表す事も無いですよね」
リリルカ 「オハナIIIは人間の社会を知らないからですよ、大体の男は持ち上げられると喜んでますからね、ダイン様の様な人なんて殆どいません」
とは言うもののリリルカは属して間もないこの遊魔社会を偉く気に入っている、ダインはリリルカの良き理解者で、三天人達も思っていたよりも接し易い人達だ、その他にも伝説的存在魔龍だったレ・ミュウに辺境の村人だったとは思えない知識を身に付けたメファティなど、遊魔社会は今のリリルカにとってそれ以外考えられない居場所となっている。
ダイン 「それは問題ですね、なら慣れる為に名前で呼び合ってみましょう、順に名前と軽い紹介を行って下さい」
ふっくら小柄 「私はキュカと申します、リグレ領のジャノア山脈にあるザオルの里から参りました、ザオルとは諜報や暗殺などを生業とする一族でリグエ領主に代々使えております」
痩せ型ノッポ 「同じザオルの里から来たイファタです、キュカとは従姉妹の間です、申し難い事ですが賢人ダイン暗殺の命を受け参りました」
ダイン 「やはりそうですか、しかし、動きが早いですね、ルトが王に告げたのは今日ですよね」
キュカ 「ザオルの者達は直ぐに王都で起こる異変に備えて集められてました、今回ダイン様を襲ったのは急遽決定された事です」
ダイン 「異変ですか、何かを策謀しているという事ですね」
キュカ 「王妹ラールカは地の王の侵攻に合わせて王都での決起を計画しています、ですがザオルの失敗でどうなるか解りませんが・・・」
イファタ 「まさか何も出来ずに無力化されるとは想定してなかったですから、賢人ダインは三天人に無礼を行って手討ちにされたという筋書きでしたから」
リリルカ 「普通一晩で三人が堕とされるなんて考えませんからね、男女の仲は段階を踏む物ですから」
キュカ 「でも、ダイン様が相手なら仕方が無いですよね、キュカもこれまでの自分なんてあっさりと捨てちゃいましたから」
イファタ 「イファタもそうです、これからの生涯誠心誠意を込めてダイン様の為に尽くします」
オハナIII 「遊魔ならばそんな事当たり前ですよ、わざわざ言葉にする必要も有りません」
ダイン 「私は言葉通り人を変えてしまいますからね、体験した者なら解るでしょう」
キュカ 「はい、里では駒として生きる事を徹底的に叩き込まれますから、今の考えの変化など以前のキュカには想像すら出来ません」
イファタ 「イファタも同じです、任務を果して死ぬ物だと思っていましたから」
ダイン 「こんなに美しい二人に死を強要するなど、愚か者の考える事は理解出来ませんよ、活けて永遠に愛でるのがこのダインのやり方です」
臆する事無く言い放ったダインをキュカとイファタは熱の籠った目で見上げている、ダインこそ正しく二人にとっての救世主で新しい生を与えてくれた存在なのだ。
リリルカ 「ですが二人の言葉から察するに襲撃者を送った者は失敗を察知している様ですね、今後はどの様に動くつもりですか?」
ダイン 「人間の行いはそれ程の脅威では有りませんね、なら地の王と花園、いずれかとの決着を付けるべきでしょう、早く片付くと思われるのはどう考えても花園ですね」
オハナIII 「ですが、花園が本当にダイン様を害するつもりが無いのかは駒だったオハナには判断出来ません」
ダイン 「まぁそれは直ぐにでも解るでしょう、私も新しい技を身に付けましたからね、それにディーラルにおける完全な安全地帯も欲しいですしね」
リリルカ 「この耳長屋敷ですら襲撃された今、それは難しいんじゃ無いですか、ラールカが仕掛けて来た以上は地の王の侵攻も近い筈です、メファティだってまだレブナン島に辿り着けていないでしょう、移動王宮とも言える浮遊母艦の来援は望めませんよね」
リリルカは遊魔に成ったばかりだが、共有の知識で理解している。
ダイン 「確かに人類大陸の戦力を投入すれば、地の王との戦いも今ほど絶望的にはなりませんね、撤退は判断としては正しいとは思いますが奪還はかなりの時間を必要とします、なら此処に有る戦力を活用するしか有りませんね」
リリルカ 「まさか地の王の戦力を奪うつもりなんですか?強力な巨人魔導具には処女が付き物ですけど・・・でも同等の戦力で防御を堅めても安全とは言えませんよね」
ダイン 「詳細は今は秘密です、とりあえず今は次に備えますよ、キュカとイファタは外でルト達に拘束されて下さい、二人に関する報告は思念に続きをお願いします、この役目はリリルカに任せますよ」
キュカ 「折角ダイン様のモノにして貰えたのにもうお別れなんですか?」
ダイン 「敵中に潜む事で得られる事は多いでしょう、それに遊魔の目なら今まで見えなかった物が見える筈です」
イファタ 「確かにそう思います、遊魔の目で見たイファタなら必ず多くの情報をもたらせる筈です」
ダイン 「お願いしますよ、結果が出せれば完全な遊魔へと迎えられるでしょう」
イファタ 「最高の褒美を約束して貰えました、このイファタ必ずや結果を出してみせます」
キュカ 「キュカも負けません、自ら考えて動くが重要なんですよね」
そのキュカの何かを含んだ笑顔は、既に何かを模索し始めている様だ、ダインは遊魔を理解する二人に頼もしさを感じながらその背中を見送る。
どうやら明日が北部の遊魔活動にとって重要な一日となりそうなのだ、その為には一人で籠ってまだ詰める事がダインにはあった。
リリルカ 「では私達は部屋に戻ります、オハナIIIは私と一緒に来て下さい」
オハナIII 「オハナの部屋が無いなら、ここがオハナの部屋ですよね?」
ダイン 「悪いですがそうはなりません、オハナIIIが今日遊魔入りした事は想定外でしたからね、ですから原因のリリルカに面倒見て貰います」
リリルカ 「妹の面倒を見るのは姉の特権ですから、リリルカも初めての経験で楽しみです」
リリルカは本当に嬉しそうな表情をしている、性格上興味が無さそうな事だが遊魔としての楽しみ方というモノを徐々に理解してきた様である。
ダイン 「遊魔同士で交流を深めるのはとても大切な事ですから、オハナIIIにも妹が出来ていますからリリルカからちゃんと学んで下さいね」
リリルカ 「そういう事です、まだ遊魔に馴染めないのは解りますが、徐々に慣れて行きましょう、私もまだまだですからね」
ダイン 「では、オハナIIIを頼みます、明日は忙しくなりそうなので少しは寝て下さいよ、遊魔は不眠でも活動出来ますが、少しでも寝た方が頭は冴えますからね」
リリルカ 「解りました、ダイン様も無理はなさらぬ様に・・・」
ダイン 「明日の指示は既に設定してますので、目醒めてから実行して下さい、皆が揃っての朝食は難しいでしょうから」
ダインには少し疲れた様子が漂っているからこそ、リリルカは素直に退室する事にする、リリルカ自身もそうだが疲れた時は一人の方が休めるのだ。
それに気付いて後に続くオハナIIIを見ていい考えを思い付く、ダインには面倒を見る様に言われたが、リリルカも一人の方が休める性格なのだ。
リリルカ 「オハナIIIって、私が居ないと不安ですか、今日が初めての遊魔の夜ですからね」
オハナIII 「そうでも有りません、オハナ休む時は何時も一人でしたから、そもそもオハナ達は個々にカプセルで休んでましたからベッドで寝られるか心配です、ベッドは楽しみなんですけど」
リリルカ 「難しい問題ですね、なんならメファティの部屋で寝てもいいんですよ、正直言って私も人と寝て落ち着けるかは疑問なんですよ」
オハナIII 「でもそれだとダイン様の言いつけに反いちゃいますよね」
リリルカ 「自ら考えて出した結論なら大丈夫ですよ、ダイン様の言葉は一人になる為の口実だと思いますから、ダイン様が一人で過ごせるなら別に私とオハナIIIは一緒じゃ無くても良いと思います」
リリルカの推測は正しい、ダインは自分が一人になる為にリリルカにオハナIIIを任せたのだ、だからこそ二人が別れて休んでも咎める事など無い。
オハナIII 「解りました、実はオハナも一人で考えを整理したいと思っていたんですよ、今日は色々あり過ぎて・・・」
リリルカ 「本当に別人へと変わっちゃいましたからね、でもリリルカは変わったオハナIIIの方が好きですよ」
オハナIII 「その言葉とても嬉しいですよ、何で嬉しいのか自分でもよく解りませんけど」
リリルカ 「ちゃんとした個人として成長してるんですね、今日寝て目醒めた後はもっと別のオハナIIIを見れるかも知れませんね」
他人に余り興味を示さなかったリリルカだが、オハナIIIの事はとても気になってしまう、それは単にオハナIIIが遺跡から産み出された普通とは異なる存在故かも知れないが、リリルカが人間に興味を持つのはかなり珍しい事でもある。
何にせよ、リリルカはオハナIIIをメファティの部屋まで案内して、ちゃんとベッドに寝かせて寝息をたてるまで見守ると、静かに部屋を後にするのであった。
一方、外で襲撃者達の相手をしているディセルト達は、まだまだ眠れそうに無い、魔術の蔦は術者の思い通りに動いて、襲撃者達を三箇所に分けてディセルト、ディーティエ、ディーティルの三人が各々監視している。
三箇所に分けたのはダインがお持ち帰りした二人が居なくても怪しまれない様にする為の工作で、実際襲撃者達は二人が拐かされている事に気付いていないだろう。
ディセルト思念 『新しい二人は私の所に加えますね、全体が把握出来ない様に予め個々に木に拘束してますから』
ディーティエ思念 『お願いします、さすがルトは用意が良いですね』
ディセルト思念 『いや、ルトの判断じゃ無くて、ダイン様の指示が有ったんですよ、一番外側にする様にと、ですが霧と昏睡で誰も把握なんて出来ないでしょうけど、ルトの見立てでは魔力の察知も無理っぽいですし』
ディーティル思念 『魔力が感知出来るならこれ程上手くは行きませんからね、ダイン様の術は優れていましたが、逃走不可能でも無かったですし、危険を感じて直ぐ逃げないのは駄目ですね』
ディーティエ思念 『ディーラルの人間は仕方有りませんよ、多分この人達魔術は初体験で、この魔術ですからね夜の森に霧が出る事は多いですから不自然さも感じなかったでしょうね』
ディセルト思念 『何にせよダイン様と敵対しなくて良かったという事です、この襲撃者達の力量はディーラル王宮騎士団よりも上の様ですから、昏睡して無ければ蔦魔術での拘束も難しかったと思います』
ディーティエ思念 『つまりダイン様がいなければ危なかったという事ですね、私達だけの状態で襲われていたなら捕縛されたのはこちらだったと』
ディーティル思念 『何人かは切れたかも知れませんけど、ルトとティを人質にされては戦えませんよ』
ディセルト思念 『実際、それが本来の目的だったんでしょうね、戦いの前に相手の戦力を削るのは有効ですから』
ディーティル思念 『この時期にダイン様が来て下さったのは本当に幸運だったんですね、地の王の侵攻が有ればとても太刀打ちなんて出来ませんでしたよ』
ディセルト思念 『それに関しては少しマシになった程度ですね、魔竜四匹で百五十年戦力を蓄えた地の王と戦うわけですから、おまけに今回はディーラル全てが味方じゃ有りませんよ』
ディーティエ思念 『ですがこれで夜が明けて動きが有るのは確実でしょうから、引き続き警戒しないと』
キュカ思念 『あの、少し伺っても良いでしょうか?』
ディセルト思念 『もちろんです、妹に閉ざす口はありませんからね、何でも言って下さい』
キュカ思念 『全員を捕まえるよりも、ワザと何人か逃がした方が良いと思います、組織がどう対応するのかも調べるべきですよね』
ダイン思念 『その提案はもっともです、何人か逃げて貰いましょう、キュカもそちらに加わって下さい』
キュカ思念 『いえ、私よりもイファタの方が適任です、縄抜けや格闘術に通じてますから』
イファタ思念 『それならば私がディセルト姉様を足止めしている間にキュカが逃げた方がいいですよ、機転が利くのはどう考えてもキュカの方ですから』
ダイン思念 『自ら考えた事は自ら実践すべきですよ、ディセルトは上手く隙を作ってイファタが行動しやすい様にして下さい』
ダインの決定がなされた以上キュカはそれに従うしかない、正直言って逃げる事は得意ではないので、イファタの役目を譲りたかったが、演技等は確かにイファタよりは上手く出来る自信もあったので、ダインの決定は妥当だとも感じていた。
キュカとイファタは拘束された状態でディセルトが監視するグループの上手く紛れ込んでいるが、他の襲撃者達の大半はまだ覚醒すらしていない状態なので、二人の身に起こった事は全く気付かれていないだろう。
キュカ思念 『ダイン様を疑っている訳では有りませんが、このまま戻されて重い処罰が下されれば、キュカはお役に立てないと思います、機を見て逃亡した方がお役に立てると思います』
ダイン思念 『別に私の役に立たなくても、キュカがちゃんと戻る事が重要です、いざとなれば全てを捨てて逃げれば良いだけです』
ダインの言葉はキュカに感動を与えていた、里の為の任務遂行が絶対条件で己の命を軽いモノだと教育されていたキュカにとって、自分の命を第一にする様に言ってくれたダインはまさに今の拠り所でもある。
おまけ
キュカ リグエ領内ジャノア山脈にある隠れ里、ザオル出身の間者でありなかなか優秀な人材、少しふっくらしているが肥満ではなく丸い身体つきをしている。
見た目に反して身体能力は高く、それ故に三天人襲撃に抜擢されている、王城内部にメイドとして働いているそっくりな姉がいるが、これはいざという時に入れ替わって任務を実行する為の備えでもある。
イファタとは従姉妹同士だが、父親に似たイファタとは全く似ていない。
イファタ キュカ同様にザオルの里出身の間者、キュカ以上に身体能力が高く、戦闘術に秀でているが、魔術に対する耐性は全く無かった為にダインの魔術であっさりと捕まってしまう。
女である事を利用して任務をするキュカと違って、戦闘任務などによく選ばれている、これは生き残れば里の重要人物となれる立場ではあるが、ほとんどの者がそうなる前に死亡する、かなり厳しいふるいに掛けられていて、実際は使い捨ての駒といっていい。