007-032
ディセルトを遊魔に加えた耳長屋敷では、宿に残るメファティを呼び寄せて食事が行われていた。
元が野戦食でもあるディーティエのパンに包まれた、ディーティル自慢の肉の煮込みは美味な料理であり、ダインもその味に十分満足していた。
ダイン 「そろそろ本題に入りましょうか、北方の守護者への対策とクフィカールの整備場からの物資の回収が主になりますが、各担当をどう振り分けましょう」
ディセルト 「ルトが守護者でダイン様が回収は決まりだと思います、むしろルトだけが守護者で良いと思います」
ディーティル 「確かにルト以外が奇妙な山に行くのは危険かも知れませんね」
レ・ミュウ 「ならミュウも守護者に対峙すべきだと思います、魔龍が控えて睨みを聞かせた方が有利に事が運ぶでしょう」
ダイン 「危険な事をルトやミュウに任せるのは気が引けますが、クフィカールの修復が出来るのは私だけでしょうから仕方ありませんね、ですが無理せず危険を感じれば直ぐに逃げて下さいね」
レ・ミュウ 「ミュウは魔龍で一番逃げるのが上手いから大丈夫」
ディセルト 「ルトがクフィカールで行った時も入れてくれたので大丈夫でしょう」
ダイン 「ディセルトが耳長だったからでしょう、遊魔をすんなり通してくれるかは不明です、先ずルトだけで侵入を試みて下さい、ミュウはルトの意識が読めるところに留まって何かあれば全力で逃げて下さい、もしルトが戻らなければ日暮まで待って帰還して下さい、薄情に思われるかも知れませんがミュウまで失いたくは有りませんから」
ディセルト 「上に立つ者として当然の判断です、ルトは見捨てられても怨む事はありません」
ダイン 「悲しい事は言わないで下さい、対話が成立して交渉に入れるならどんな厳しい条件を出されても、私の判断を仰ぐと言ってなるべく拘束されない様にして下さいね」
自己の安全と遊魔の未来を考えた結果とはいえダインの心は憂鬱だ、だが、北部の守護者がダインの構想にとって、避けては通れない存在である事は間違いなく、最早前に進むしかない。
ディセルト 「解りました、ダイン様に心配を掛けないのも遊魔の勤めですから、ルトは自分よりもティとティルが心配です、ちゃんとダイン様のお役に立てるのでしょうか」
ディーティエ 「ディーラルには都合の良い予言があるから大丈夫ですよ、あれのせいでティ達はここに閉じ込められてますからね」
ディーティル 「でも、今の状況考えるとあの予言は真実なのかも、実際に冒頭部分はその通りになったわけだし」
メファティ 「[三人の天人を従えし王が表れ、世に大きな戦が訪れる]ですか、天人様達がこの国を救う以前から存在していたと言われてますね、出所は不明ですけど」
ダイン 「まぁ私には敵が多いですから戦いが起こるのは当然かも知れません、それにこの大陸の魔獣を浄化する事も将来的には考えてますから、浄化を実行する前に制圧ですがね」
レ・ミュウ 「さすが主は理想が大きい、でも主ならきっと叶えて耳長の国を取り戻してくれる筈」
ダイン 「いや、遊魔の国ですね、まぁ耳長には自治領を与えてもいいですが、共存する姿勢を示してくれて対価を払って貰えれば問題ありません」
ディセルト 「ダイン様のお力なら支配も十分可能なのに」
ダイン 「幸福の分配が私の理想ですから」
ディーティエ 「それが嘘でない事を遊魔は実感してますから、ダイン様に従うんですよ」
ダイン 「いずれにせよ、個々が出来る事を精一杯やりましょう、私はクフィカールを修理して飛ばす事ですね」
ディセルト 「封印してある整備場を活用出来ればやれると思います、ルト達には無理でしたけど」
ダイン 「他に提案のある者が居ないなら明日に備えて休みましょうか、遊魔の身体は確かに強靭ですが急速は必要ですよ」
メファティ 「あの、ここの遊魔は耳長ばかりでメファティは心細いです、だからリリルカを遊魔に加える事を検討して下さい」
メファティは思い切ってダインに提案してみる、今日三人も耳長遊魔が増えた事でメファティは引け目を感じてしまっているのだ、遊魔は同格という掟があっても、植え付けられた感覚はそう簡単に消えるモノでもない。
ダイン 「確かにリリルカの知識は有効な判断材料になりそうですね、新しい道が示されてまだ間に合うなら試した方が良さそうですね、情報次第では作戦の変更もあり得ますか・・・耳長の四人は休んで下さい、親睦を深めてもいいですが、私はメティとリリルカのところへ行って来ます」
ディーティエ 「決断早いですね、メファティの言葉に流されてる気もしますけどね・・・」
ダイン 「良いと思った事は直ぐに実行ですよ、私の国には思い立ったが吉日という言葉がありましたからね」
レ・ミュウ 「耳長が行くと迷惑だからここで寝て待ってます、飛んで行くんですよね?」
ダイン 「この王都ディグランの街明かりなら大丈夫でしょう、森から飛び立てば野生生物だと思われるでしょうし」
メファティ 「幸いリリルカの研究室は此処から近いですし、遊魔なら直ぐに到着するでしょう」
ダイン 「なら行きましょうか、面倒なので窓から行く事にしましょう」
メファティ 「靴は履いた方が良いと思います、ディグランは道が悪いですから」
ダイン 「それもそうですね、この王都で靴を履かないで外出する人間は確かに居ないかも知れません」
メファティの言葉に納得したダインは玄関に降りて靴を履くと、そのまま空へと飛び立つ、メファティは先導の役目があるので急いでそれに続くと、飛び立ったダインは城壁を越えたところで見えなくなる、飛行で城壁と堀を越えたところで直ぐに街に降りたのだ。
メファティ 「ダイン様早すぎます、でも急ぐならもっと飛んだ方が早いですよ」
ダインに追い付いたメファティが口を開く、場所も知らずに飛び出したダインの意図がよくわからないからだ。
ダイン 「少し夜の街を見て見たかったんですよ、街の本質を理解するには夜の方がいいですからね」
メファティ 「この辺りは大丈夫ですが繁華街は危険ですよ、ディーラルの男は酔うと更にタチが悪いですから」
ダイン 「酔っ払いは何処でもタチが悪いですね、人類大陸では飲酒が制限されてますから」
メファティ 「ディーラルの男は人類大陸には行けませんね、酒で動いてるような連中ですから・・・」
ダイン 「まぁ、ここは静かでいいですよ、まだ灯りの付いた建物も多いですが、音がしませんね」
メファティ 「学術街ですからね、皆んなお酒飲まずに本でも読んでるんでしょう」
ダイン 「なるほど、リリルカのところまでは歩いて行けますよね」
メファティ 「はい、あの尖塔が有るところですから、周りに高い壁が有りますけど・・・」
ダイン 「出入りが制限されているんですか?」
メファティ 「ディーラルの最高学府ですから、流石に賢人様でもこの時間に正門からは入れませんよ」
ダイン 「潜入は遊魔の得意技ですからね、どれだけ高い壁も遊魔には無意味ですから、壁というのは入ってしまえば意外と無防備ですし」
メファティ 「でも部屋に辿り着いてもリリルカは多分起きてますから、騒がれると厄介ですね」
ダイン 「なら催眠ガスを使いましょうか、リリルカの部屋に窓は有りますよね」
メファティ 「はい、建屋の三階ですから無防備な筈です」
ダイン 「それは建屋の最上階になるんですか?」
メファティ 「はい、三階建なんて凄いですよね」
ディーラルの感覚では三階建という構造は珍しく一般認識では凄い建物の様だ、現代日本を知るダインにとってはそういった認識は無いが、文明水準的に最高学府という建物は最先端でもある様だ。
ダイン 「なら飛行して屋根に移りましょうか、念の為隠蔽の魔術を使いましょうか」
隠蔽魔術はいわゆる光学迷彩というヤツだ、光を屈折させる事で視覚で捉える事を困難にするのだ、もっともここ学術街でこの時間に出歩く者などほぼ皆無だ。
視認し難くなったダイン達は浮遊して揚々と壁を越えると、リリルカが居る学者の屋根に降り立つ、雪深い北方の屋根は雪が積もらない様に鋭角だが、半ば浮遊状態を維持しているダイン達が転がり落ちる事は無い。
ダイン 「この学舎の住人達は処女が多いですね、至るところから純粋魔力を感じます」
メファティ 「当たり前です、ここって学府の女子寮ですから」
ダイン 「なんで先に言ってくれないんですか、さすがの私でも潜入に躊躇しますよ」
メファティ 「耳長屋敷を訪れて、直ぐに三人とも遊魔にしちゃったダイン様がそんな事言うなんて意外です、気に入ったら行動早いのに」
ダイン 「私は面喰いですからね、処女は重要な要素ですが処女だけが選別の基準じゃ有りませんから」
メファティ 「え、リリルカって、そんなに綺麗な娘じゃ無いですよね、胸も大きく有りませんし」
メファティは自慢の巨乳を揺らしてアピールする。
ダイン 「今の見た目じゃありませんよ、ああいう美に無頓着で地味な娘を自分好みの牝に仕立てるのが良いんですよ」
メファティ 「そうなんですか、まぁダイン様って魔龍すら自分の牝に加えちゃうぐらいですから、るリリルカぐらい知れてますよね、で、どうするんですか?」
ダイン 「こういう時はダインゲッコーの出番です」
メファティ 「何ですかそれ、月明かりに何か仕込むんですか?」
ダイン 「まぁ見ていて下さい」
ダインは尻尾の先端を前に持って来ると先の方から脚が二対生えて来る、そして脚の手前から尻尾が切断されると断面が変化してヤモリの頭が出来上がる。
メファティ 「美味しそうですね、トカゲのスープは大好物なんですよ」
ダイン 「意外な食文化ですが、トカゲじゃなくてヤモリです、家を害虫などから守ってくれるので食べちゃ駄目ですよ」
メファティ 「ダイン様の尻尾じゃ無いですか・・・」
ダイン 「まぁそうですが、このヤモリという生き物は垂直の壁でも難なく移動出来ます、そして壁にいてもおかしく無い生き物です、つまりこのダインゲッコーを侵入させてリリルカの状態を確認してから行動を起こします」
メファティ 「手取り早く消音魔術の結界張って乗り込めば直ぐなんじゃ・・・」
ダイン 「女性の部屋は押し入る前に調べたいじゃ無いですか、特にリリルカの様な人間の部屋はお宝が眠ってる気がします」
メファティ 「普通に汚い部屋でしたけど、脱ぎ散らかした衣服が散乱してましたね、あと至る所に本が有りました」
王都に来てからリリルカの部屋を訪れているメファティはその様子を知っている、そしてメファティの情報はダインに変なやる気を与えていた。
そして、ダインゲッコーはリリルカの部屋へと突入して行く、幸いリリルカの部屋の窓は少し開いており、小さなダインゲッコーなら侵入は容易だ。
潜入したダインゲッコーは壁を這い上がってから天井に張り付いて部屋内を観察する、邪魔な障害物の無い天井は部屋の内部を調べるのに都合が良い。
ダイン思考 『情報通りの部屋ですね、開きっぱなしで本が散乱してます、それに下着も散乱してますね、リリルカは・・・あ、机に伏せてますね、寝ているんでしょうか』
ダインゲッコーはリリルカの近くに移動するとより深く状況を観察する、どうやらリリルカは寝息を立てて眠っている様で、部屋の内側から鍵が掛けられている、この状態なら邪魔が入る事は無いだろう。
そしてダインゲッコーはリリルカの真上でより強力な睡眠ガスを放出する、当初部屋への侵入を考えていたダインであったが、リリルカの部屋の窓はダインが侵入するには少し狭く、この状態でリリルカを外に連れ出す事を選択したのだ。
リリルカの部屋の前へ移動したダインは尻尾を部屋に向けると、隙間から尻尾の先端を侵入させて行く、一旦尻尾を使って窓を全開にするが、やはりダインが入り込めるほどの大きさは無い、だが、ダインは無理でもリリルカなら窓を通す事が可能なのだ。
ダインの尻尾は部屋の中を進んでリリルカの前で鎌首をもたげると、そのまま降下して頭からリリルカを丸呑みにして行く。
催眠ガスでより深い眠りに落ちているリリルカは全く抵抗する事なく呑まれて行き、完全に呑み込んだところで尻尾は引き戻される。
ダイン 「捕獲完了ですね、このままでは頭が下になるので体を入れ替えましょう」
窓の外に出た尻尾は一旦リリルカが回転出来るほど大きく膨らむとまた元の太さに戻ってダインの背中に付く。
メファティ 「今ので回転させたんですか、ダイン様ってそういうところ細かいですよね」
ダイン 「頭に血が溜まっては可哀想じゃ無いですか、思考とはより完全な状態の方が良い発想が産まれるモノですから」
メファティ 「それでここからどうするんですか、やっぱり屋敷まで飛んで行くんですよね」
ダイン 「まぁそれが最善ですからね、幸い内から鍵も掛かってましたから、明日の朝までは大丈夫でしょう」
メファティ 「朝には活動を開始するんじゃ・・・」
ダイン 「少しでも休息出来れば大丈夫です、さぁ戻ってリリルカの魔進化を始めますよ、場所はメファティの部屋でどうでしょうか?」
メファティ 「それって人間の魔進化は人間で楽しむって事ですよね?」
ダイン 「私はともかくディセルトの負担は減らしておきたいですから、それにリリルカに動いて貰う事もあるかも知れません」
ダインはリリルカが奇妙な山に興味を示すであろう事を理解している、そして冷酷な思考ではあるが、ディーラル王国掌握の為の重要人物ともいえるディセルトでは無く、リリルカに北部の守護者との接触を行って貰おうという構想も抱き始めていた、より探求を望む者が赴く方が万が一何かが起こった時にダインの心が傷まないからである。
おまけ
ダインの私見パラメーター
ディーティエ 遊魔ディーティエ
淫 60 淫 525
技 325 技 1225
体 75 体 565
魔 38200 魔 282000
三天人二人目の遊魔、ディーティルに対して戦闘力の伸びが高いがこれはディーティルの戦闘能力を遊魔能力でコピーしている為だ、だが、経験で得た感覚まではコピー出来ずに大体八割ぐらいの戦闘力に落ち着いている。
ディーティエの元の戦闘力から考えれば戦闘力の向上はディーティル以上で、またディーティエ自身が戦闘勘を身に付ければ更に戦闘力は向上して行くだろう。
だが、ダインがディーティエに求めているのは管理能力なので、ディーティエ自身が戦闘の修練を重ねる可能性は低い。
遊魔としての分類は天使型でディーティルと殆ど同型である、ただ元の肉付きが良いのでエロさはディーティルより高い。
ディーティエは自身の適性とダインから求められている役割を十分理解しており、溜め込まれた天人資産の管理などを行うつもりである、また、人材管理もダインから任されているとの自負しており、今後、一番忙しい遊魔となる可能性が高い。