007-017
普段、自分主導で話すダインもリリルカの前では完全に聞き手となっていた。
リリルカの生涯でちゃんと話を聞いてくれて理解してくれる存在はダインが初めてで、今までの寂しさを埋める様に語り続けていた。
ダイン 「つまり北部人類はリッポト湖周辺で文明を築いていたという事ですね」
リリルカ 「その通りです、今の私達ではリッポト湖の存在を確かめる事は出来ませんでしたが、賢人様の話で裏付けが出来ました」
ダイン 「私も話に聞いただけでリッポト湖の実物を見た事は有りません、ですがミュウは見てますよね」
レ・ミュウ 「はい、大陸中央に確かに存在してます、でも主から教わった知識から推測すると、リッポト湖は不自然だと思います」
ダイン 「そうなんですか、私は実物を見てませんからね」
レ・ミュウ 「主の知識を借りるなら、アレはダムですね、人工的に作った堰の様な構造物が存在してました」
ダイン 「つまりリッポト湖周辺には現文明よりも優れた文明が存在したという事ですね、巨大ダム湖を作る為には高度な建築技術が必要となる筈ですから、真っ直ぐな堰を作っても水の圧力は抑え込めませんから」
リリルカ 「二人とも凄いですね、この私が全く理解出来ませんよ、でも、このままでは終われませんよ」
ダイン 「確かにリリルカの知識は素晴らしいですが、私も賢人の名は飾りじゃ有りません、そして私の深淵はもっと恐ろしいモノですよ、ですが、リリルカには覗ける資格が有りますね」
リリルカ 「覗く資格ですか、私だって知識を求める者です、知らない事は何でも教えて貰いたいです」
ダイン 「その気持ちは良く解ります、私の知識を教える事を約束しましょう、ですが余りに過激な真実を含んでいる為に隔絶された場所が必要ですね、私達はしばらくここに滞在しないと行けませんから然るべき所に住処を設けてから、いずれまたお会いしましょう、あと、リリルカさんに見て貰おうと描いた絵が有りますので感想を聞かせて下さい」
部屋に招き入れられたリリルカは大きなテーブルに座る様に促されると、着座して直ぐにテーブルの上に有った4枚の絵に目を奪われる、3枚はレ・ミュウが描いた魔龍で、1枚がダインの描いたマギマイナーだ。
4枚の中でリリルカはマギマイナーが特に気になる様で、顔を近付けてじっくりと見つめている。
ダイン 「手に取って見てもいいですよ、砂漠の坑道で見つけた巨人魔導具を描いてみました」
リリルカ 「地の王の軍勢が使った巨人魔導具ですね、三天人様達の物と比べて小さくて太いです、あと手が長いのが特徴です、王都にも残骸が戦功として残ってます」
ダイン 「百数十年前の戦闘の物でしょうか?」
リリルカ 「そう言われてますが、私の見立てでは更に古い物が混ざっている様です、外装が錆びて殆ど朽ちた物はとても百数十年でああなったとは思えません」
ダイン 「百数十年前の侵攻以前にも北部は岩喰いに攻められたという事ですか?」
リリルカ 「そうとも言えません、たまたま見つけた古代の巨人魔導具を戦功として持ち込んだのだと思います、朽ちた方には戦った痕跡が有りませんでしたから」
ダイン 「北部人類圏でもマギマイナーが存在していたが、その存在は失われたという事ですか、ところで残りの3枚はどうですか?」
リリルカ 「トカゲの一種に見えますけど翼が有りますよね、飛べるんですかコレ?」
ダイン 「やはり北部に魔龍は飛来していない様ですね、まぁ飛来していればパニックになっているでしょうが・・・」
レ・ミュウ 「飛べても北部には行きたく無かった、そういう枷が魔龍には有ったと思う」
リリルカ 「え、天人様って巨人魔導具で飛ぶんですよね?」
レ・ミュウが魔龍だった事など知らないリリルカは、ダイン達がレ・ミュウの駆るクフィカールで来たと思い込んでいるのだ。
ダイン 「私達は人のまま飛ぶ魔術を会得しているんです、ここでは魔術が知られていないので、奇妙に思うかも知れませんが」
リリルカ 「いえ、古代書には人のまま飛ぶ魔術を記した物も多く有りますから読んだ事が有ります、でも三天人様も知らない、失われた古代魔術が実在する事に興奮を覚えます」
メファティ 「ダイン様と出会って、メティもこの世界の広さを知りました、外の世界にはディーラルの常識では計り知れない事が満ち溢れている様です」
リリルカ 「メティは禁断の砂漠の先に何が有るのか気にしてましたからね、三天人様達は禁断の砂漠を越えて来たと言われてますが、余り伝えてくれて無いんです、ただ、地の王の国があって危険だとは言ってます」
ダイン 「地の王ですか、私は知りませんね、私が知る南部には魔獣が多くいましたが・・・」
レ・ミュウ 「魔族の国も存在してるけど、地の王の事は解らないです、ミュウも空から下を見下ろすだけだから地下は解らない」
ダイン 「東方耳長の話では、大陸東部の耳長領域まで岩喰いの坑道が伸びていた様です、もしかすると魔族よりも強大な勢力がこの大陸の地下には存在するのかも知れません、私の知るところでは岩喰いは地下だけで生活出来る様ですから」
リリルカ 「地の王とは岩喰いなのでしょうか?」
ダイン 「確かに別の種族の可能性も有りますが、岩喰いのマギマイナーを戦力として用いていたんですよね、アレは高い魔導技術が無いと扱えませんよ」
リリルカ 「確かにディーラルでは三天人様の壊れた巨人魔導具を直す事も出来ませんからね、私は実物をちゃんと解析すべきだと提案したんですが、三天人様が許可しないと却下されました」
ダイン 「魔術の基礎が無いと魔導具は難しいですからね、もしかすると三天人達は北部人類圏に魔術を持ち込みたくないのかも知れません」
レ・ミュウ 「でも地の王と云うのが攻めて来た理由も気になりますね、空から見た北部は余り裕福な感じがしませんでしたから」
ダイン 「空からでは解らない理由があるのかも知れません、古代書には何か理由が書かれた物が有ったんじゃ無いですか?」
リリルカ 「私も全てを読んだ訳じゃありませんから、でも確か北部は鉱物が多いと読んだ気はします」
ダイン 「その鉱物は魔鋼じゃ有りませんよね?」
リリルカ 「魔鋼って、錆びないけど加工出来ない金属ですよね、鉱山では厄介鉱石と言われてます、硬くて掘り進められないのに使い道が無いって・・・」
リリルカの言葉にダインの目が輝く、今ダインがもっとも必要としている物資は魔鋼であり、人類大陸のユーマ領では得る事が出来ないのだ。
ダイン 「北部人類圏では魔鋼が産出されるのですか、それは朗報ですね、私の国ユーマの魔鋼加工技術を導入出来ればこの国はもっと発展しますよ」
リリルカ 「あれ、今、賢人様私の国って言いましたけど、故郷の事ですよね」
ダイン 「いや、私が国王を務める国の事ですよ、ミュウと一悶着あってこの大陸を旅してますが、人類大陸には私の国が有るんですよ」
ダインが高貴な身分と知ってリリルカの顔が硬くなる、ディーラルの王族はかなり身分にうるさい様だ。
リリルカ 「申し訳有りません、不敬な態度で接してしまって、ですが私は勉学一辺倒で貴人との接し方が解りません」
ダイン 「いや、気にする必要は有りませんよ、国と言っても人類大陸では新興の小国ですから」
レ・ミュウ 「ミュウも主の国は見た事無いですから、それほど大仰に考えないで下さい、主は崇められたり褒められるのが嫌いですから」
ダイン 「ミュウの言う通りです、私は疑り深いので褒められたり持ち上げられると裏があると疑ってしまうんです、だから普通に接してくれる方がありがたい」
リリルカ 「賢人様は本当に謙虚な方ですね、この国の王とは全く別です」
ダイン 「そういう話は本音とは心を許せる者でないと語らない方がいいですよ」
リリルカ 「私はもう賢人様を信じて崇拝してますから、正直言って三天人様は頭が堅くて融通が効かないと思ってますが、賢人様からは新しい息吹を感じます」
ダイン 「私は馬鹿をやるのが好きなんですよ、経験上自分が馬鹿をやらないと楽しく生きれないと気付いたので、この生き方は変えられませんね」
リリルカ 「馬鹿になる生き方ですか・・・私は実践出来てますね」
メファティ 「余り人に言う事じゃ無いですけど・・・」
ダイン 「いや、他人から陰口言われるよりも自分で馬鹿やってると公言した方が絶対にいいですね、私にとってはリリルカの最大の魅力でも有りますから、人に馬鹿と言われるまで熱中出来るのはとても大切です、私の国に欲しい人材ですね」
リリルカ 「そんな王様自らの仕官のお誘いだなんて・・・本気にしちゃいますよ」
ダイン 「もちろん本気ですよ、リリルカが今後の戦略を見定める上で重要な情報を与えてくれるでしょうから、現に北部人類圏から魔鋼が産出される事は特に有益な情報でした、今後は予測される埋蔵量と採掘技術なんですが、採掘技術の目処は立ってますからね」
レ・ミュウ 「まさか、主は砂漠のマギマイナーを使うつもりじゃないですか?」
ダイン 「ミュウも大分私が理解出来て来ましたね、ざっと構造を確認しましたがマギマイナーなら、日に20メートルは坑道を掘り進む事が可能でしょう、人力じゃ考えられない性能です」
リリルカ 「砂漠に埋もれた地の王の巨人魔導具を発見しているんですか、賢人様は全てを見通している様です」
ダイン 「たまたまですよ、ですが移動手段が問題ですね、私の飛行魔術でもマギマイナーの程の重量は運べませんからね、いいやり方を模索しましょう」
ダインはリリルカの尊敬の眼差しが眩し過ぎて敢えて無策を装ったが、移動の問題はユーマ本国から浮遊母艦を持ち込めば直ぐにでも解決出来る。
リリルカ 「三天人様の巨人魔導具を修復出来れば使えるんじゃないですかね、他にも戦功で集めた巨人魔導具を利用すれば動かせるかも知れませんよ」
レ・ミュウ 「そんな事しなくてもミュウにも秘策が有ります」
ダイン 「アレはそうそう披露出来る事じゃ有りませんからね、ですが他の手段が無理ならばお願いしますね」
レ・ミュウは魔龍化して運ぶ事を言っているが、ダインにその気は無い、リリルカの反応から魔龍の存在が知られていない事は確実で、今は遊魔の持つ魔龍の力を示すのは控えた方が良さそうだ。
その後、リリルカを迎えた座談会は夜遅くまで続き、宿の人間はリリルカの分の夕食まで用意してくれた、だが、夜になってもこの国にいる耳長達からの連絡は無く、ダイン達はこの宿に宿泊する事になりそうだ。
気を利かせてくれた宿の計らいでリリルカの部屋も用意される、ダイン達三人はそのままこの部屋を使う事になり、扉で繋がった寝室には大人が三人は寝れるベッドが二つも有った。
ダイン 「明日、三天人から使いが来るかも知れませんので、今日は早めに眠りましょうか、リリルカは別室が良いですよね、私達は一緒でも構いませんが四人一緒に寝れるベッドは有りませんね」
ダインの言葉にリリルカは狼狽している、本の虫であるリリルカに男女の同衾は別世界の出来事だったのだ。
メファティ 「ダイン様も意地悪しないで上げて下さい、リリルカは人と話す事も稀なんですよ」
ダイン 「よく話していたじゃないですか」
リリルカ 「それは賢人様が話を理解してくれるからです、リリルカと話すと皆んな呆れるか怒っちゃうんですよ」
ダイン 「傑物とは周りに理解されないモノですからね、そもそも誰にでも理解されるなら傑物ではないでしょう」
メファティ 「メティも変だってよく言われてましたから少し解ります、そしてダイン様が初めてメティの事を解ってくれたとも思います」
レ・ミュウ 「主の考えは概ね正しいですけど、容赦が無いんですよね、人の価値を自分の基準で判断しますから、メティの村でも少し怖かったです」
メファティ 「でも、アレで賢人様の特別感が強まってましたよ、村人同士だと配慮して言えない事とか多いですから・・・でも、今頃村はギクシャクしてると思います」
ダイン 「人間とは目上の存在の評価が正しいと思ってしまうんですよ、ですが人間の目上とは社会的地位の事が殆どですから、ちゃんとした評価じゃない事が多い、実際、人を超えていないと人は評価出来ませんよ」
リリルカ 「まるで賢人様が人じゃ無いみたいです」
リリルカは軽い気持ちで口にしたが、後に自分自身の身体で十分にその事を知る事となる。
王都ディグランにはまだダインがまだ安心して過ごせる活動拠点は設けられておらず、その事でリリルカの遊魔への魔進化は保留されている状態でもあった。
おまけ
ダインの私見パラメーター
メファティ 遊魔メファティ
淫 140 淫 2750
技 120 技 720
体 300 体 1600
魔 3300 魔 52400
ダインが北部人類の村で初めて出会った女性、活発な生活で村の暮らしに飽きていた、年齢は十代半ば過ぎだが、北部人類圏では将来を心配される年齢である(北部人類圏は早婚の為)、男尊女卑の傾向が強い北部人類圏ではあるが、特に有能とされる女性は例外である。
メファティも有能な女性で知識は男性を上回り、家事や採取能力も高い、狩は男性の仕事である為に行わないが、弓術の腕は男性より優れている。
村の外の世界に憧れていた為に積極的にダイン達に関わっていった、知識が有り、容姿と純潔というダイン基準を満たしていた為に遊魔に迎えられた。
遊魔形態は標準となりつつある魔族型だが、レ・ミュウの足りない部分を補う様に魔進化された為に母乳生成能力が高い。
賢人ダインの正式な従者として認められた為、晴れて村から出る事を許された、メファティにとってダインはまさに運命の男性なのである。