展開編 第四話 頼れる財政担当

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  技術面での問題の解決策を示したダインは最大の難敵に立ち向かう為、ユーマ王宮と名を変えた、旧国賓屋敷へと足を運んでいた、最初はダインの来訪を心から喜んでいたフェカトでは有ったが、ダインの訪れた意味を考えて少し身構えている。

  ダイン 「そう牽制されては私が話辛いですね」

  フェカト 「なら、このままでよろしいとは思いませんか、ユーマは現状上手く機能しておりますので、波風は立たない様にお願いしたいです」

  ダイン 「残念ながらそれは無理ですね、準備が整い次第、私は東方耳長からの来訪要請に応えようと思います」

  フェカト 「まだ、国が完全に落ち着かない時期に、遠出なさるおつもりですか?」

  ダイン 「その指摘は最もですが、ユーマの今後を考えると耳長との交友は早い方が良い、その為にも私自らが赴いて話をまとめてこようと思います」

  フェカト 「確かに不満も有りますが、耳長との交渉自体が前例を示されていませんからね、ダイン様が今が有益だと感じているなら無理にはお止めしませんが、急な事態にはこのフェカトが全てを決するとお考え下さい」

  フェカト也にダインの心を揺さぶってはみるのだが、口にしたフェカト本人もそれが意味のない事で有るのを理解している。

  ダインのフェカトに対する信頼は大きく、大概の事がフェカトの思惑通りに決定されて行くのだ。

  ダイン 「それはいつも通りですね、私への伺いが減る分より迅速となりますね」

  フェカト 「ダイン様のフェカトへの絶大な信頼は嬉しいんですが、引き留められない事は不安です、フェカトはユーマの留守を預かる以上、ダイン様のお側に控える事は叶いませんから」

  ダイン 「フェカトの支えが有るからこそ、私もユーマを留守に出来ます、そこは十分に感謝してます」

  フェカト 「実際にダイン様の憂いも理解しています、魔龍なんて存在はフェカトも想像出来ませんでしたから、でも本当に混沌大陸に脅威が存在しているなんて」

  ダイン 「実際に接触してみると杞憂かも知れません、ですがあれこれ悩むよりも情報を得る行動をすべきですよね、それに耳長も完全に味方だとは思わない方が良さそうですし」

  フェカト 「フィセーリアと接すると話が通じる相手だと思いますけど」

  フォティーヌ 「今回の動きは騎士団独自の動きです、一応了承を得てますが幹母と呼ばれる耳長社会の重鎮は全面的に支持しているわけじゃ有りません」

  ダイン 「自身の事で失念していましたが、耳長からすれば異世界人は魔龍以上に解らない相手何でしょうね、それを念頭に置くと慎重なのは仕方有りませんよ」

  フェカト 「実際に先遣隊を籠絡してますからね、脅威に見られるのも当然ですよ」

  ダイン 「だからこそ直接対話が必要だと思います、手段は模索していますが上手く行くかは解りません」

  フォティーヌ 「マギガントの通信盤技術を応用して、東方の耳長と交渉するんですよね」

  ダイン 「それが長距離の通信にはまだまだ課題が必要なのかも知れません、フォティーヌの地図をこうやって実際の形に近付けてみると、ユーマから東方大陸へは直線距離で結べませんよね」

  ダインは地図を丸めて巻物状にすると、ユーマの位置と東方大陸を位置関係を示してみる。

  フェカト 「確かに、海や大地に当たりますね」

  ダイン 「魔力による通信がどうなるのかは解りませんが、地球で通信を繋げるにはケーブルを敷設するか、衛星を経由するんですよ、魔力通信も近距離しか行っていませんので失念していましたが、不可能で有る可能性が有ります、計算でこの星の大きさが解れば対処方法も考えられますが、技術開発するよりも出向いた方が早いかもしれません」

  フォティーヌ 「なら、マナにお願いした事は無駄になるわけですか?」

  ダイン 「いや、アレは別に使えるかも知れません、中継機として何機か同じ物を配置していけば東方大陸とのやり取りも可能かも知れませんから、取り敢えずは試作機と浮遊母艦でどの程度の通信が可能なのか見極める必要がありそうです」

  フェカト 「それってお金が掛かる話しですよね、フェカトが上手くやりくりしても直ぐにダイン様が使っちゃいます」

  ダイン 「想定以上の急拡大でフェカトには苦労掛けっぱなしです」

  フェカト 「まぁやり甲斐は感じてますから、それにフェカトもダイン様が産み出す物には興味有りますし」

  ダイン 「何にせよ通信技術を開発する事は無駄にはならないでしょう」

  フェカト 「でも魔術遠話って、テガスからクガトでも可能ですよね、術者の魔力さえ高ければテガスと東方大陸も可能じゃないんですか」

  ダイン 「確かに言われてみればそうですね、かなりの長距離で交信可能ですね」

  ダインも不思議そうに頭を捻る、地球の技術感覚で考えるのが普通のダインにはまだまだ魔術対する理解が不足している、最も魔術面でもここまで特異な事を行っているのはユーマ勢力のみなので、何もかもが暗中模索なのだ。

  フォティーヌ 「耳長では遠話といった考えは有りませんでしたから、クフィカールで赴けば済む話しでしたし」

  ダイン 「ここではそれが普通なんですよ、私が地球の常識に囚われてるだけですね」

  結果的にダインは東方大陸へ行く事への了承が得られて上機嫌だった、そして、新工房に舞い戻ると怪しげな研究を始めている。

  フォティーヌは耳長目線でみた喜ばしい歓迎の準備をダインに命じられて、明後日に来訪する予定の騎士達の受け入れの準備を初めている。

  一方で新工房の一角でフィセーリアが選定戦で飛行不能になったクフィカールの修理を指揮していた、長い時を生きて来たフィセーリアはマギガント工員としても優秀で、その腕は上級工員を上回るレベルでもある。

  フィセーリア思考 『ダイン様とフォティーヌが何やら動き回っていましたが、会いに来てはくれないんですね』

  フィセーリアはフォティーヌとダインが一緒にいるところを見て嫉妬していた、東方大陸から戻って来たフォティーヌが何かしらの重要な情報をもたらしたのであろうが、耳長に関する事で自分が呼ばれないのはダインに頼られていない様で悲しい。

  そんな時、フィセーリアを喜ばせる状況が訪れる、ふらっとやって来たダインが話しかけてくれたのだ。

  ダイン 「作業は順調な様ですね、一機はほぼ組み上がってますね」

  フィセーリア 「はい、三機のまともな部品を集めて何とか動く様になりました、ですが、慣らしも終わってないので見た目だけですよ」

  ダイン 「クフィカールはデリケートな機体ですからね、とても私の手には負えません」

  フィセーリア 「細かな調整は騎士が個々に行ってますから、耳長の騎士は整備から始まるんですよ」

  ダイン 「長寿種族の考え方ですね、アーグル人には時間が足りないでしょう」

  フィセーリア 「基本の修得だけで十年は掛かりますから、だからこそ半年という短期間でビグ・ユーマを作り上げたダイン様の凄さは想像以上です」

  ダイン 「年長の傑物から褒められるのは素直に嬉しいですね、テガスの工員達がフィセーリアの仕事に驚いてましたから」

  フィセーリア 「経験の産物でそれ程凄くは無いですよ、私はクフィカールだけですし」

  ダイン 「そう、それなんですよ、フィセーリアはクフィカールをユーマのゾッフォの様に扱えると思いますか?」

  フィセーリア 「無理ですね、クフィカールは素早い動きを意図して作られたマギガントで、フレームはジーカやウウル・ジーの様な決闘機に近いです、関節部の組み合わせが薄いので、射撃による振動には弱いと思います」

  ダインはフィセーリアの予想以上の解答に満足していた、この場合のユーマのゾッフォとは遠距離攻撃武器を装備出来るかという意味合いが深かったのだ、フィセーリアはダインの性格をちゃんと理解して最も求められている解答を答えたのだ。

  ダイン 「やはり、フィセーリアから見てもそう思いますか、私がゾッフォを多く用いているのはそこなんですよ」

  フィセーリア 「ユーマで改造された機体を見ると解りました、フレーム部分の肉抜きは施されてますが、強靭な関節部分はそのままですから、いや、魔鋼練度が上がってますから大幅に強化されてますね」

  ダイン 「なら、クラフト同様の工作機としての改修はどうでしょう?」

  フィセーリア 「それも不可能です、クフィカールは個別に最適化してますので、動く距離が一定では有りません、寸法が変わる部品を製作しても混乱するだけですよね」

  ダイン 「なら、クフィカールをどうユーマの戦力として使いますか?」

  フィセーリア 「別に銃が不可能という訳じゃ無いと思います、重量と連射可能なガドリングガンは諦めて、単発のライフルなら運用出来る筈です」

  改めてダインはフィセーリアの優秀さに驚いていた、フィセーリアはユーマの知識を調べ上げて、ユーマでクフィカールを有効的に運用する方法を導き出しているのだ。

  ダイン 「解りました、ナナと二人でマギガント用のライフルの開発を始めて下さい、使用法が同じなら、細部は問いませんので」

  フィセーリア 「解りました、魔導と工学を調べてクフィカールに最適な武器を作り上げてみます、もしもの時はダインに意見を伺ってもよろしいですよね」

  ダイン 「もちろんです、私と遊魔達に遠慮なんて要りません」

  フィセーリア 「ダイン様はそう言われますけど、実際は難しいですよ、ダイン様の会うには遊魔同士でバランス取らないと行けませんし、でも、一定の成果を出せば会いに行ける状況が出来たのは嬉しいですね、私がどれだけフォティーヌを恨めしく思っていたか・・・」

  ダイン 「ユーマを離れて働いて貰っている娘には、なるべく多く構う様にしてますからね、フォティーヌもフィセーリアの立場を羨んでると思いますよ」

  フィセーリア 「そうは思いますが、近くて構って貰え無いのも辛くは有ります、特に新参の私は個々の遊魔の関係をまだ把握してませんから」

  ダイン 「仲の良い繋がりは有りますが、遊魔同士の反目などは無い筈です、ですが耳長のフィセーリアとは皆関係を結び難いんでしょうか、次に来訪する耳長達の中から、何人か魔進化させますので、少し我慢して下さい」

  フィセーリア 「なら、クフィカールの強化を急がないと行けませんね、クフィカールがそのまま使えれば堕とした耳長がそのまま戦力になりますから」

  ダイン 「飛行の問題が解決されてませんがね、新しい耳長で魔力関係の実験を行うつもりです、私を超える魔力があるのなら、例え非効率でも純粋魔力への変換も可能かも知れません」

  フィセーリア 「なるほど、耳長遊魔の特性を上手く利用するわけですね、手持ち武器の装備だけでクフィカールが戦力化すれば、ユーマの力が益々強大化しますね」

  ダイン 「はい、人類圏にバレないところで戦力を増やせるのが大きいですね、もっとも人類圏の戦力は日を追う毎に骨抜きになってますが」

  フィセーリア 「遊魔による、世界管理も実現に大きく近付きますね、ザキトス戦役以降の混乱をダイン様が収めてくれます」

  ダイン 「余り期待はしないで下さい、私は遊魔が楽しめる世界を作る事が目的なだけですから

  フィセーリア 「それが世界の秩序を産み出すのは間違い有りません、どうぞフィセーリアを手足としてお使い下さい」

  遊魔へと魔進化を遂げたフィセーリアは、三百年培った存在そのものダインへと捧げている、それ程魔進化の呪縛は強力なモノで有り、それは今後永遠に続くのだ、だが、フィセーリアがこれまでで最も充実した日々を送っている事も間違いでは無い。

  その価値観はかつての同胞を売り渡す事に全く罪悪を感じないどころか、それが本人にとって最良の行いであると全く疑っていない。

  おまけ

  ダイオーン 浮遊母艦を開発したユーマの魔鋼不足は深刻な状況に陥っていた、浮遊母艦が今までの人類圏技術の根底を覆すモノで、より有用性を示す為にはもっと多くの浮遊母艦を建造する必要が有るからだ。

  ダインはその解決を色々模索したが、ゾッフォからより削り取る事を考えていた、おりしも遊魔へ加入したフィセーリアの三百年にも及ぶクフィカールで培った経験はダインにも伝えられて、新たな発想の土台ともなった。

  そして立案された外骨格型フレームはゾッフォ・フレームの肘、膝、足首に採用され、剛力、敏捷、強靭を伴った改良が可能となった。

  性能的に上級機にも匹敵する機体は最早ゾッフォ・フレームとは言い難く、新たにダイオーンという名前を与えられる事となった。

  ダイオーンとはダインの名を冠しており、現時点での遊魔マギガントの頂点と言える存在でも有り、今後ユーマの主力となる事は間違い無い、だが、その改修工程は高度かつ複雑でも有り、遊魔の技術を持ってしても改修作業は思う様に進んでいない。