004-16
ジゾフの恭順発表の数日後、今、遊魔達は主に三つのグループに分かれて活動を進めていた、ダインのいるテガス組、ティアス、アーキア、リエルの三名はククジア王都組、フェカトを中心とするツェーリア事後処理組という構成になっていた。
そして一連のツェーリア併合に関する調査でティアスが直々にククジア王都から派遣される事になった、その際ティアスの移動手段としてククジア王都ククージアでのスカイベアーのお披露目をする事にもなって、テガスはその準備にも追われていた。
ダイン 「どうせなので、エポポ三機を持って行きましょう、王宮騎士団から改修依頼を伺ってますから、ティアスの操縦でザガルバは来る事になりそうですが、アキかリィはスカイベアーですね」
七実 「ティアスはダイン様と二人が良いと思いますよ、それにアキかリィを選ぶと絶対に揉めますから、ティアスとダイン様一緒が最善じゃ無いですか」
真夏 「そうですよね、ティアスは立場上テガスに留まるわけには行きませんから、なるべく接して上げた方が良いと思います」
ダイン 「二人から、その言葉を聞けた事を喜ばしく思います」
愛耶 「家族を気に掛けるのは当然ですからね、現状ティアスとリレッタはテガスに居ない事が多いですから」
ダイン 「リレッタにはウィディを与えても良いと思うんですが、燃料油が問題なんですよ、増槽も考えてますが」
七実 「クガトは王都ククージアよりも更に遠いですからね、でもルゥとの調整も重要な役目ですしね」
ダイン 「あちらの準備も着々と進んでますからね、何でもククジア最大の船も確保したそうです、ですが出航準備だけでも数ヶ月は掛かるとか」
七実 「ちょうど良いじゃ無いですか、スカイベアー二番艦の作業はようやく始まったところですし、混沌探索にはクガトの後方支援が必要不可欠ですから、二番艦の完成時期と合うんじゃ無いですか」
ダイン 「流刑者を送る定期便は有るそうですが、大規模な船を使かった船団を組織するのは初めてだそうです、ルゥもかなり強引に進めてますね」
真夏 「ティアス派の優勢が決定的になってますので、他で成果を残そうとする者が多いそうです、混沌大陸への進出で一番恩恵を受けるのはクガトですから」
ダイン 「ザキトスの遠征軍もクガト領を後方支援の港として使っていたという話でしたね」
七実 「後方補給路に強いクガトが居座った事で、ザキトス遠征軍は混沌で生きる手立てを探すしか無かったわけですね」
ダイン 「進攻して補給線を断たれるなんて最悪の状況ですね、ですがその状況で今日も勢力を維持しているとはザキトス魔族も侮れませんね」
七実 「遊魔の能力と近いと考えると簡単じゃ無いですか、混沌大陸と言っても人間が住んでいたんですよね」
ダイン 「人類種ですね、エルフやドワーフ相当の異種族も居たそうです、耳長は魔術、岩喰いは金属の加工技術が優れていたそうですから、日本のファンタジーのイメージまんまですね」
七実 「でもエルフの耳長って日本発祥のイメージなんですよね、何でアーグルのヤツも長いんでしょう」
ダイン 「解りませんが、聴覚に優れてるんじゃ無いですか、耳が良いから耳が長いんですよ」
真夏 「ですが、今のところ生存は確認されて無いんですよね」
ダイン 「はい、混沌大陸ではザキトス魔族がヒャッハーしてるそうですから、魔獣という生き物を生で食べると身体や魔力が強化されるそうなんですよ」
七実 「嫌な世界ですね、正に力こそ正義ってヤツですか」
ダイン 「大陸の西岸がそうなだけで、その先がどうなっているかは解らないそうです、耳長の国とか有ればいいんですが」
七実 「それ良いですよね、ヒャッハーなんて皆殺しにしちゃいましょう」
ダイン 「不快で有れば排除の対象ですね、ルゥがちゃんと収めてくれればいいんでしょうが」
真夏 「まだまだ先の話ですよね、先ずはククジア王都へ行かないと」
ダイン 「ククジア王都ですか、先日のお返しにど肝を抜かせて上げましょう、そうですね、何か新しい事を披露してみましょうか、スカイベアーからウィディを発進させてみましょう」
七実 「運ぶエポポは二機が基本なので、一機分のスペース有りますからね、それに吊るしたままで飛行形態にするのも試すべきですし」
真夏 「誰がやるんですか、危険じゃ無いですか」
ダイン 「私がやりますよ、発案者が実行者となるのは当たり前です」
真夏 「ダイン様の心意気は理解してますけど、止めてくださいね見てるこっちがヒヤヒヤします」
ダイン 「いや、母艦からの出撃ってロマン有りますから」
真夏 「言いたい事は解りますけど、駄目ですよ、それにスカイベアーにも武装付けたんで、護衛も不要だと思います」
七実 「そうですよ、天翔る処女って飛行装備ですけど、空戦装備じゃ無いですから、それに空戦ってやっぱり銃とか砲が必要ですよね」
ダイン 「スカイベアーの主砲も対地用ですからね、飛ぶ物に当てられるだけの命中精度は有りませんし、炸裂弾を作る手も有りますがハードル高いですね」
真夏 「現状でも過剰な装備ですからね、混沌大陸の探索に不安を持つのは解りますけど力を持ち過ぎるのも危険ですよ」
ダイン 「そうですね、幸いアーグル人の知識では撃たない限り主砲は飾りだと思われるでしょうから、輸送機械である事を強調しますよ、その為のゾッフォ輸送です」
真夏 「それで人選はどうするんです、最低でも三名連れて行きますよね」
ダイン 「私と、ナナ、マナ、そして今回はプルルを連れて行くつもりです、今の遊魔で一番王都に詳しいのはプルルですから」
七実 「妥当な人選ですね、異世界の大国の王都なんて楽しみです」
真夏 「油断しないで下さいね、異世界人ってだけで珍しいんですから、それに今のナナって、自分で思っている以上に異性から見て魅力的ですから」
ダイン 「それはマナも同じですけどね、まぁ今回はスカイベアーという安全圏も有りますし、アキとリィも王都入りしてますから以前に比べれば気楽ですが」
七実 「そうですよね、やっぱり周りに遊魔が居ると安心出来ますから」
ダイン 「では、出発の準備を始めましょうか、私がプルルを呼びに行きますので二人は準備を始めて下さい、ウィディを前方の第一ハンガーで頼みます」
ダインはそう言葉を残すと、国賓屋敷に向かって歩き始める、名前こそ国賓屋敷のまま使っているが、実質はユーマ後宮という認識が広まっており、もはや学院の生徒達の侵入騒ぎも殆ど全く無くなっている。
残された工房組は的確に作業を進めて、今やダインの帰りを待つばかりだ、だが、屋敷に向かったダインはなかなか戻って来る事がない、スカイベアーの速度を上げればまだ王都ククージア到着に余裕はあるのだが、ダインが戻らない事が、七実と真夏には気掛かりで仕方ない、そして、ジャンケンして勝った真夏が様子を見に行く事にする。
真夏が国賓屋敷に着くと、玄関前に生徒達による人集りが出来ていた、どうやらプルルが用意したククジアへの献上品が多過ぎて、運びきれない為に生徒に運ばせるつもりの様だ。
ダイン 「集まって頂いて有り難う御座います、今より私の手に掴んだクジを引いて貰います、当たりクジは私の指と繋がってますので余り強く引かないで下さいね」
斜め上なダインクジに真夏は思わず溜息が漏れる、ダインなりに不正を防ぐ為の手立てなのだろうが、ダインの指と繋がる紐が当たりとは真夏が引きたいぐらいだ。
真夏 「マナが運べばわざわざクジなどなさら無くても」
ダイン 「いや、このクジは荷物を運ぶだけで無く、当選者を王都まで同行してあげるクジなんですよ」
真夏 「え、生徒を王都まで連れて行くんですか」
ダイン 「スカイベアーの座席は余っていますからね、どうせなら空の旅も楽しんで貰いたいと思いまして、私からの特別授業です」
生徒 「さすがダイン王です、ユーマの最新技術に触れる機会を御与え下さるとは、それにダイン王を引き当てるクジだなんて、このイーヴィエ絶対に引き当ててみせます」
生徒の心を代弁する様に、頭に羽飾りを付けた生徒が口を開く、この羽飾りは優秀な生徒の証で、それを許されているのは三名しかいない。
ダイン 「ですが、私を引き当てるのは運ですよ、優秀だからと言って運が良いとは限りませんよ」
ダインは口ではそう言っているが、このクジが単なる運だけで決まるモノでない事を遊魔の真夏は見抜いていた、クジの中に三本特殊な魔力を帯びた物が存在しており、それが間違い無くダインの指と繋がっている。
イーヴィエ 「なら、私から引かせて貰います、成績優秀者にはそれぐらいの権利は与えられますよね」
ダイン 「いいですよ、初めに選ぶのならば必ず当たりクジが有りますから、既に引かれてしまっていたという言い訳は出来ませんね」
ダインはそう言って、イーヴィエに向かって片手を突き出してクジを選ばせる、なんだかんだでイーヴィエの実力に期待しているのだろう。
そして、イーヴィエは躊躇無く一本を掴み取ると、軽く引き出してみる。
ダイン 「お見事です、一人目は貴女で決まりです、これで当たりは残り二つです、さぁ続いて下さい」
既にダインの目的は果たされたと言っていい、実はこのクジは次なる遊魔の選別を兼ねている様で、イーヴィエの容姿と当たりクジを感じ取った能力にダインは十分に満足している様だ。
その後、一列に並んだ生徒達が次々にクジを引いて行くが、当たりを引いた残りの二人も明らかに何かが見えていた様だ、ダインの用意したクジは集まった生徒の数の四倍以上の数で、全員が引き終わっても残る可能性が高い、だが、残りの二本を引き当てた生徒は確実にダインの魔力を感じ取った上で、当たりを選んでいたのだ。
イーヴィエ 「スルームさんと・・・貴女はムジカさんで合ってますわね、ご一緒に王都への旅を楽しみましょう」
ムジカ 「私なんかが当たりを引けちゃうなんてとてもついてます」
スルーム 「え、そんなに難しいクジじゃなかったですよね、当たりが解りましたし」
スルームの言葉に外れた生徒達は不思議な顔をしている、だが、生徒の人数より明らかに多かったクジの一番最初で、イーヴィエが引き当てた事を考えると何か仕掛けがと考える生徒もいる様だ。
ダイン 「引き当てた人は私との相性が良いんですよ、咄嗟に思い付いた方法でしたが意外と有効な様です」
真夏 「それは良かったですね、ですがダイン様がお楽しみの間に大分時間が過ぎてますよ」
ダイン 「それは大変ですね、三人はプルルから荷物を受け取って私に続いて下さい、ポーカには愛耶が伝えてくれるでしょう」
既に遊魔達はダインの思い付きに慣らされてしまっているので、三人が学院から抜け出してもポーカが問題にする事は無いだろう、むしろポーカを含む遊魔が問題とするのは新しい遊魔候補がこうも簡単に決まってしまった事である。
そして、スカイベアーで合流した七実はその事を余り嫌がっておらず、むしろ歓迎している様だった。
七実 「可愛い娘が三人も増えてるじゃ無いですか、皆んなダイン様好みです」
ダイン 「折角スペースも有りますので王都に連れて行く事にしました、皆もスカイベアーにも乗りたいでしょうから」
七実 「ダイン様はそういうところが優しいですよね」
ダイン 「いずれ数が増えた時に扱える人間も必要ですからね、ですがそれにはちゃんとユーマの人間になって貰いますけど」
イーヴィエ 「ユーマでの仕官が叶うという事ですか、家を捨ててでもお仕えしたいです」
ダイン 「もの凄い覚悟ですね、実はユーマの騎士団を作る予定なんですよ、その為には強い騎士を欲しています、選定は私が行いますので、テガスに戻った後で私と勝負してみますか」
スルーム 「ダイン王自らが腕を確かめてくれるのですか、わたくしもお相手願えるでしょうか」
ダイン 「狙って当たりを引き当てた者のはその資格が有ります、貴女も手合わせしますか?」
ムジカ 「私は騎士としての才能は無い様ですから、ゾッフォも上手く扱えてませんし」
ダイン 「魔力を読む力は有る様ですが、私の魔力を読む事が出来たのでここにいるんですよね?」
ムジカ 「はい、ダイン王の魔力はとっても変わってますから、それに後宮に出入りされてる方々も特別ですよね、ポーカ学長の魔力もダイン王が来て直ぐに変化しましたし」
ダイン 「貴女は騎士の家系ではなく魔術士の家系なのでしょうか、興味深い程の能力をお持ちの様です」
ムジカ 「少なくとも母は違いますが、私の父が誰なのかは私も知らないんですよ、ですが母が選んだからには高い魔力の持ち主だったと思います」
ムジカはダインの問いに素直に答えたが、ダインとしてはムジカの存在に対して危機感を覚えた事からこその質問でもあった、ムジカの言葉から察するにムジカには魔力で遊魔を見分ける能力が有る様なのだ、そしてその様な危険人物をダインが放置しておく訳が無い。
おまけ
遊魔魔力親和性 アーグル人の極一部には遊魔魔力に対する親和性を持った者も存在している、魔力自体は低いもののプルルがその実例でも有り、ダインの想定を超える遊魔へと魔進化を果たしている。
ダインはこのプルルの事例を解析する事によって、遊魔魔力との親和性が高いアーグル人がいる事を認識して、その判別方法を研究した結果が今回のダインくじである。
親和性の高いアーグル人は高い確率で遊魔魔力の感知が可能で有ると予想したダインは、なるべく効果の高い当たりを用意する事で生徒を選別した。
その結果、短時間で候補者を三人も見つけ出す事に成功し、その内一人はどうやら遊魔魔力の感知まで可能だという事が発覚した。
ダインはこの親和性の高い三名を魔進化させる事を考えており、遊魔の戦力強化は着実に進んでいる。