ルゥ編 第三話 魔王ルゥの誕生

  X01-003

  終着点は直ぐそこに迫りつつ有った、全ての肉塊を受け入れたルゥの身体は人を超えた存在に相応しいモノへと変化しつつ有った。

  既にその肉体の変容によってカプセルの中だけでは手狭になりつつ有り、ルゥも対応を余儀なくされている。

  ルゥ思考 『この設備を破壊してしまうのは勿体無いですね、何か上手い方法を考え無ければ行けません、あ、なるほど、別にこのまま収まる必要はないという事ですね』

  ルゥは自分の把握していなかった知識から適切な解答を導き出して、それを実行する事に決めた、現状、今ある人間の腕だけでカプセルを持ち上げる事は不可能だが、尻尾の力を使えば下から押し上げる事が可能だというのだ。

  ルゥ思考 『放り出す感じでお尻に力を込めれば尻尾が出るんですか、触手をお尻から放り出す感覚に似ていますからちょっと怖い感じもしますけど、気持ちは良さそうですね』

  触手の大量排泄を体験したルゥはその時の快楽を今も鮮明に覚えていた、そしてルゥの腸内には排泄される様な糞便も存在しない為に、思いっきり力を込められる事も理解出来る。

  状況を理解出来れば後は実行しかない、ルゥは触手を排泄する様な感覚で腹部に力を込めると、それによってお尻の上が圧迫されて、排便にも似た感覚で何かが膨らみきった瘡蓋を突き破って下に垂れ出る。

  ルゥ 「んひぃ〜凄ぃ〜、触手出すより凄いですぅ〜、でもぉ〜これもぉ〜触手出してるんですよねぇ〜」

  確かに尻尾と言っても、ルゥの尻上から垂れ下がって行く尻尾はちょっと特殊だ、長い一本の紐状に見えるが、実は数本の触手が撚られて構成されており、カプセルの底に到達した部分は解けて透明パイプの縁の下に潜り込み始めている。

  そして、ルゥがより尻尾を排出させると、潜り込んだ触手達が徐々にカプセルを押し上げていく。

  ルゥ思考 『かなり持ち上がりました、ルゥは全く力なんて込めていないのに凄い力ですよ、もう手の指が届きそうですね』

  排泄された尻尾触手の力は相当なモノで、既にルゥの膝上近くまでカプセルを持ち上げている、そして縁に指が掛かったルゥが両手を使って更に押し上げると、かなりの重量がある筈のカプセルが一気に押し上げられて行く。

  ルゥ思考 『ルゥ自身の力も上がっています、以前の身体なら耐えられない程の重量を感じていますが、全然苦痛には思いません、これがザキトスが言った最高の魔族の力なんですね』

  腕の力が加わって、肩ぐらいまで持ち上がったカプセルではあったが、尻尾触手が伸びる位置の限界が近付きつつある様で両腕に掛かる荷重が段々と大きくなっている。

  ルゥ思考 『次は、背中ですね、お尻と同じ感覚で新しい腕が使えそうです、ですが何か普通の腕とはかなり違った感じです、指の構成が人の手とはまるで違った感覚で、本数が多いですよね』

  実際、生え出そうとしているモノの姿は腕というより翼の様なモノだった、ルゥは直接見る事は出来なかったが、人の手とはかなり異なる感覚を感じており、ルゥの想定している使い方とは全く事なっている。

  尻尾を出すのに似た感覚で背中から新しい腕を解き放つと、ばさりと指の間の皮膜が拡がる、そう、この器官は腕と翼を兼ねたモノで七本指の上三本が鉤爪、下の四本が皮膜で繋がった翼を形成するのだ。

  そして、その鉤爪の翼は今のルゥ以上の腕力があり、両の翼を加えて力ですんなりとカプセルは持ち上がり、装置上部のロックが作動して固定されてもうカプセルが勝手に下がる事は無いだろう。

  ルゥ思考 『凄い力ですよ、これなら確かに飛べちゃいますね、でも流石に浮遊魔術とセットで使うのが前提みたいです、ですがこの身体』

  ルゥは元からある両手を前に出してマジマジと見つめてみるがそれ程変わった所は無い、強いて言うなら爪が尖ってかなり鋭くなっている様だが、強度自体が上がっている様で爪同士を軽く弾いてみるとキィンという金属の様な澄んだ音がした。

  ルゥ思考 『硬そうな音がしてますね、翼の爪も鋭いですけど、指の爪も負けてませんよ、そして、外に出られたという事は、いよいよ角を出しても大丈夫ですよね』

  ルゥは自分の魔族としての仕上げが何で有るのか十分に理解している、夢の中の魔王ザキトスには立派な角が有って、角の大きさこそが魔族としての優秀さの現れだと知っているのだ、つまりルゥが生やす角の大きさによってルゥの魔族としての強さが解るのだ、そして最高の魔族と言われた自分の身体がどう変わってしまうのかルゥには楽しみで仕方がない。

  ルゥ思考 『いよいよですね、身体の強さは相当のモノでした角がどうなるのか楽しみです、何だか凄く頭の両端が膨らんじゃってますけど、角なんですよね』

  魔王ザキトスの角は立派な雄牛の角の様だったが、ルゥの頭はどう考えてもそういう角では無さそうだ、尻尾や翼には感覚が有ったが、角に関しては別段これといった感覚は無くどの様なモノが生えて来るのか全く未知数だ。

  その両側の膨らみから、ルゥの首には相当の重量が掛かっていると思われるのだが、ルゥはその重みなど全く感じていない、それどころか動くのも気怠かった身体は嘘の様に軽くなって、動き自体がかなり素早くなっている。

  ルゥ思考 『頭がウズウズしてますね、これ出すと絶対気持ちいいヤツです、尻尾や翼でチョット濡れちゃいましたけど、角だとイッちゃいそうです』

  ルゥは直感で角が出る快楽が今まで感じた快楽を大幅に上回る事を感じていた、この出そうで出ない角の感覚は明らかにルゥを焦らしている様で、ルゥは早く角を出してスッキリさせたいのだ。

  そして、深く息を吸ってざわめく心を落ち着けようとしていた時に、それが訪れる、頭の瘡蓋が中から何かに突き破られて溜まった液体が噴き出すと、それに続いて大きなモノも飛び出してくる。

  ルゥにとって始めてのその感覚は、もう一人の自分が枷を解かれたて自由になった様な解放感を与え、全身を駆け巡る浮遊感で身体の力が抜けてつい尿が流れ出てしまう、そして訪れた次の浮遊感でルゥは達してしまい、垂れ流れる尿に混じってピュッピュッと潮も吹き出してしまう。

  ルゥ 「うはぁ〜ん、とっ止まりません、大いなる力が満ちているのに恥ずかしいお漏らしが止まりませんよぉ〜」

  ルゥは盛大なお漏らしと共に圧倒的な力を誇る魔王へと変貌を遂げようとしていた、流れ出る尿は残った人間性を洗い流すかの様で、ルゥの思考は角が成長すると共に大いに精神も変貌しつつあった。

  ルゥ思考 『はは、このお城はルゥのモノですね、角を得て漸く解りましたが、この研究室以外にも色々有りますね、そして従僕を増やすにはとても好都合です、特に昔から有る部屋に居着いている連中は丸分かりですね』

  角から得られる情報によって、クガトに増築される以前の城内は全てルゥが把握出来る様になっていた、ただ残念な事にルゥと同じ世界から来た二人はクガトによって増築された部屋を与えられている為に状況は把握出来ていない。

  だが、自己の権力を誇示する事が好きなクガトの一族は、旧魔王城の豪華な内装の部屋を好んでおり、今のルゥにはその殆どの状態が把握出来ていた。

  ルゥ思考 『右の部屋にいて魔力を捧げていた者達は、全て魔王ザキトスの意識と共に殉死しちゃいましたからね、ルゥも取り敢えずは眷属を増やさないと行けません』

  ルゥには既にやるべき事が見えている、取り敢えずは人に気付かれない様に眷属を増やして勢力を増大させて、いずれはこの世界で権力を手中に収めるのだ、その為にはこのクガトの家を取り込む事が早いだろう。

  ルゥ思考 『眷属を増やすにしても見た目は重要ですよね、レボトみたいな俗な人間は利用するのは良いですけど、眷属にはしたく有りませんし、もっとこう美しく無くては行けませんよね』

  魔王ルゥは美意識に強い拘りが芽生えていた、元々はそれ程気にするタイプでは無かったが、魔王ザキトスの嗜好はルゥに大きな影響を与えている様で、眷属を作り出す事と美しいモノを産み出す事をイコールに感じている。

  ルゥ思考 『取り敢えずこの研究室をもっと詳しく調べましょう、改造カプセルを傷付けない様にしたのは良い判断だと思います、もっともカプセルの部分は右の部屋に有った物でも代用出来そうですが、二十五体のカプセルと秘密の抜け道を使えば拐った人間を直ぐにでも眷属に出来そうですね、頭の中の魔王ザキトスの指南書には眷属を増やせとも有りますし』

  意外と親切な魔王ザキトスは膨大な知識情報をルゥに残してくれている、そしてその中にはルゥが置かれた現状から、どうのし上がって行けばいいかの行動計画まで有り、何と魔王ザキトスが現在の城内から得た情報を基にして作られた、現クガト家の有望な人間の魔族への魔改造プランまである。

  ルゥ思考 『魔王ザキトスも色々暇だったみたいです、クガトの家系図とめぼしい女性の魔改造プランが有ります、女性しか魔改造しないのは拘りですよね、まぁルゥも男の身体は弄りたくは有りませんが、そして一番のお勧めはあのリレッタですか、叔父のレボトに似て何かとルゥに対して棘の有る娘ですけど、魔族の力を試すにはルゥに敵対的な感情を抱いている方が都合が良さそうですし、何より綺麗なところはルゥも認めないわけには行きませんからね』

  ルゥは魔王ザキトスの計画通りに初めの眷属をリレッタ・クガトにする事に決めた、実は魔王ザキトスはリレッタを上手く利用していた様で、ルゥ達を召喚した召喚術も上手く誘導してリレッタに託した物であったのだ。

  それ故、リレッタの行動予測は正確に出来ている様で、リレッタの性格を考慮した上でちゃんと研究室まで誘導する策謀も既に用意されている。

  ルゥ思考 『ここまでちゃんと計画が有るのに、リレッタを後継者にはしなかったんですね、ルゥを誘うよりも確実だったと思いますけど、ですが、リレッタには何かが足りなかったと考えるべきでしょうね、魔王ザキトスとルゥは同じ世界出身と有りますから、人種的な適性が有るのかも知れません、でも、ルゥを選んでくれてありがたいです、ルゥはリレッタの眷属なんて絶対に嫌ですから』

  新魔王として再誕したルゥは魔王ザキトスの残されていた力をほぼ全て受け入れていた、直ぐにリレッタを研究室に誘導する為の策の準備を手早く用意をして自室に戻って休む事にする。

  今は手に入れた力を悟られない様に元の人間の姿に戻って、与えられた自室で何食わぬ顔で過ごすべきだろう、獲物は時がくれば勝手に捕まえる事が出来るのだから。

  ルゥは触手達にズタボロにされてしまった衣服を魔術を使って元に戻すと、それを着て秘密の研究室を後にする、メイドが朝起こしに来る前に自室に戻って居ないと何かと怪しまれてしまうだろう。

  幸い、城内はまだ早朝の静けさに包まれており、朝支度で早い使用人達すら起きていない様で、巡回する兵を魔王として手に入れた情報を使って上手く躱して自室に辿り着くとドッとした疲れがルゥに襲い掛かって来る、耐え切れずにそのままベッドに入ると直ぐに眠り落ちてしまう。

  おまけ

  研究室のザキトス思念 ルゥも本人も肉体を滅ぼされた魔王ザキトスの魂だと思い込んでいるが、実際はザキトスが魔法生物に残していた知識を元に自我が目覚めたモノであり、魔王ザキトスの魂では全く無い。

  生前のザキトスの精神とリンクしていた魔法生物はその思考のパターンを学習しており、魂では無いモノの殆ど変わらない思考を持っている、だが、ザキトス本人も想定していなかった為にザキトスが構築していた魔族の繋がりの外に置かれていた為に生き残った魔族達にすら存在が知られていない。

  もし、このザキトス思念の存在が知られていれば、魔族同士の争いは回避出来ていた可能性が高く、アーグルの人類は幸運だったともいえる。

  ルゥを後継者に選び消滅したと思われているが、その情報の大部分は未だ研究室に巣食う魔法生物に残されている為に今後、類似した思念が復活する可能性がある。