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彼の名前は健太。大学一年生で、一人暮らしを始めたばかりだ。彼は食事にあまりこだわりがなく、コンビニやファミレスで済ませることが多かった。ある日、スーパーで買い物をしていると、ドッグフードのコーナーに目が留まった。彼は犬が好きだったが、アパートでは飼えなかった。ドッグフードのパッケージには、美味しそうな肉や野菜が写っていた。健太は思わず手に取ってしまった。
「これって、人間が食べても大丈夫なんだろうか?」
健太は好奇心に駆られて、レジに持って行った。店員は不思議そうな顔をしたが、何も言わなかった。健太は自宅に帰って、ドッグフードを開けた。粒状のものが入っていた。彼は一つ口に入れてみた。
「ん?意外と悪くないぞ」
健太は驚いた。ドッグフードはサクサクとした食感で、塩味が効いていた。
「ドッグフードって薄味だと聞いてたのに、濃い味付けなんだな。案外食べられるじゃないか。」
先ほどより黒ずんだ鼻をひくひくと動かして匂いを嗅ぐ。
彼はもう一つ食べてみた。それからもう一つ。気づくと半分くらい食べてしまっていた。
「あれ?こんなに食べちゃった」
健太は少し後悔したが、お腹が満たされている感じがした。彼は残りのドッグフードを袋に戻して、冷蔵庫に入れた。
「まあ、たまに食べるくらいなら問題ないだろう」
そう思って、健太は勉強に取りかかった。
勉強していると、健太は何か違和感を感じた。彼は鏡を見て驚いた。自分の顔が少し……犬っぽくなっているではないか。口の周りに毛が生えてきていて、鼻も黒くなっていた。
「え……なんだ…なんだこれ……!」
健太は慌てて身体を調べた。手足や胸やお腹も犬の毛で覆われていた。彼はパニックに陥った。
「ど……どうしよう!これじゃ学校に……っていうか外にも出られないぞ!」
健太は携帯電話を取ろうとしたが、指先は太く、丸くなり始めた。
「う、うわっ…どうなってるんだ…。」
鋭く伸びた爪が画面を引っ掻くばかりで、操作できなかった。彼は泣きそうになった。
「これってもしかして……ドッグフードのせい?」
健太は昨日食べたドッグフードを思い出した。あれが原因だとしたら、やめれば元に戻るかもしれない。彼は決心した。
「もう二度と食べない!絶対に!」
そう言って、健太は冷蔵庫からドッグフードの袋を取り出した。そして、ゴミ箱に捨てようとした。
しかし、その瞬間、彼の鼻が敏感に反応した。ドッグフードの香りが彼の食欲を刺激した。彼は思わず袋にかぶりついてしまった。
「も……もう少しだけならぁわうぅ…。まだ残ってるしぃばぅんっ……。」
健太は自分の声が犬のようになっていることに気づかなかった。彼はドッグフードをむさぼり食べた。
かぶりつくたびに彼の食欲に応えるかのように、鼻が突き出し始め、歯が鋭くなっていく。
耳がどんどん大きくなり頭頂部まで達すると重力に負けてだらんと垂れた。
その耳を黄金色の毛皮が覆っていく。
ドッグフードの袋を掴んでいた腕が徐々に短くなり、袋を持っていられなくなった。健太は四つん這いになり、這うように袋に顔を突っ込んで夢中で伸びはじめた舌で袋の中をかき回す。
ズボンのお尻の部分がもこもこと膨らみ、縫い目を裂きながら毛むくじゃらのしっぽがコキコキと音を立てて突き出した。
袋が空になると、彼は満足そうにすっかり薄く、長くなった舌をだらんと出した。
口元から垂れるよだれも気にならないようだ。
「ハッハッ、ハッハッ………ああ、幸せだ……わふぅ。」
健太は這うようにもぞもぞとベッドに戻って、眠りについた。
翌日、健太は目覚めると、もっと違和感を感じた。彼は鏡を見て愕然とした。自分の顔が完全に犬になっていた。目や耳や顎も犬の形に変わっていて、口からは牙が見えた。彼は鏡に向かって吠えてみた。
「わんっわぁあうっ!」
健太は自分の声に絶望した。彼は身体を見たが、それも犬の姿だった。手足は獣の短い脚になり、お尻からはふさふさとしたから立派な尻尾が突き出ていた。彼は立ち上がろうとしたが、バランスを崩して倒れた。
(も……もう立ってられない……手……前足だ…前足をつくしか……。)
健太は泣き叫んだが、聞こえるのは犬の鳴き声だった。彼はドッグフードを食べすぎたことを後悔した。もう元に戻れないのだろうか。
その時、インターホンが鳴った。健太は驚いて顔を上げた。誰か来客があるらしい。彼はドアの方に向かって走った。そして、ドアノブに飛びついて開けようとした。
「わぁうっばうっわうっ!」
健太は必死に叫んだが、ドアノブは動かなかった。彼は力尽きて床に倒れた。
インターホンを押していたのは友人の山田だった。山田は健太と同じ大学で、クラスメイトだった。彼は健太から連絡がなくて心配していた。
「おい、健太!どうしたんだよ?学校に来ないし、電話も出ないし」
山田はインターホンを押したが、返事がなかった。彼はドアノブを回してみた。すると、ドアが開いた。
「あれ?鍵がかかってないのか?」
山田は中に入ってみた。すると、部屋の中から犬の鳴き声が聞こえてきた。
「わうぅん!」
山田は驚いて振り返った。そこには一匹のゴールデンレトリバーがいた。その犬は山田を見て、尻尾を振って喜んだ。
「きゅううん!」
山田は困惑した。
「え?ここに犬がいるの?健太はどこだろう……?」
山田は部屋を探したが、健太の姿は見当たらなかった。代わりに、ドッグフードの空き袋や犬用のおもちゃや首輪が散らばっていた。
「これは……まさか……」
山田は恐る恐る犬に近づいた。そして、その首輪についている名札を見た。
そこには、「ケンタ」と書かれていた。
山田は信じられないという表情で犬を見つめた。その犬は山田の目を見て、悲しそうに鳴いた。
「わぅん……」
健太は山田に助けを求めたが、言葉にならなかった。彼は自分が犬になってしまったことを悟った。彼は涙を流した。
しかし、もう遅かった。彼は永遠に人間に戻れないのだった。
だがその時、健太は意外なことに気づいた。自分が犬になってしまったことが、そんなに悪いことではないということだ。彼は人間の世界のストレスや悩みから解放され、自由に走り回ったり、おやつを食べたり、昼寝をしたりできるようになった。どうせもう戻れないなら彼は犬の生活を楽しむことにしようと思った。
山田も健太を見捨てなかった。彼は健太のアパートの管理人に話をつけて、健太を自分の家に連れて行った。彼は健太をペットとして飼うことにした。彼は健太に散歩や遊びやトリミングをしてあげた。彼は健太に優しく話しかけた。
「大丈夫だ健太。お前は一人じゃないんだ。僕がずっとお前のそばにいるよ」
健太は山田の言葉に感謝した。彼は山田の手を舐めてあげた。彼は山田の笑顔に癒された。
「わぅんわう!」
健太は幸せそうに鳴いた。彼は自分が犬になってしまったことを受け入れた。彼はそれを楽しむことにした。
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