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天幕を張った休憩場―・・野営地の目と鼻の先で、褐色肌と並び[[rb:異世界 > あちら]]のころりと可愛らしい色と形をした飴を味わう。
ただ甘いだけではない。
僅かに酸味も感じる・・
ガリりと歯を立てて噛み割ると、飴に包まれていた中身が舌に触って優しい甘さが広がった・・
そう、この飴は驚くことに二層になっているのだ。
薄赤のつるりと固い飴に包まれた白い部分は、外側の酸味を感じる甘さとは違い乳のこってりとした優しい甘味と、ほろりと崩れる柔さを持っている・・
味も触感も違う二つの層は、舐め溶かして別々に味わうも良し。
噛み砕いて混ぜ、共に味わうも良し。
毎回口にする度、違った楽しみ方が出来るという飴なのだ。
ずっと舐めていたくて、つい溶かし食べてばかりだったのだが、今回は割り砕いて食してみる。
やや惜しくはあるが、贅沢な食べ方だけあって二つの混ざり合った甘さは素晴らしく舌を楽しませてくれた。
口の中の幸せを噛みしめていると、半精霊の「C」が先程魔法で割った岩の上に浮かび、何やら気になる素振りを見せている。
興味を引かれて傍まで寄り「何かあるのか?」と声をかけた。
すると「C」はこちらを見下ろし、人差し指でくるりと円を描く・・
途端、足元の地面がぐぐっと持ち上がり視線が高くなった。
驚き、何事かと口を開く前に「C」が割れた部分を指さす。
見れば、そこには白い岩の部分から顔を出した棒状の色石があった。
「ほう・・」
薄闇の中でもはっきりとわかる緑から青へと移り変わる色は、十分に目を引く美しさだ。
しげしげと色石を観察していると「何してんだよ」と褐色肌も寄って来る。
「いや、割れた岩の中に色石があったのだ」
「ふーん。どれどれ・・」
そう言って、下に落ちていた岩の一部をひっくり返す褐色肌。
するとそこにも色石が含まれており、白の中に青が見えた。
「フツーの色石だな。回収しても金にはなんねぇぞ?形が良ければ庶民用の装飾品に使われる事もあるけど、大体はガキの遊び道具だ」
「そうか・・だが、少し持って帰りたい。「C」、この部分を割り出せるか?」
こくりと頷いた「C」が岩にぺたりと触れると、一番大きな色石の周りを抉るように白い岩ごと取り出してくれた。
片手に収まる程度の大きさの塊は、白い石を土台に青と緑の棒状の色石が乗り、他にも細い色石が何本か見え隠れしている。
細い方は淡い黄色と、少しだけ赤が混じっているようだ。
「そんなもん、どうすんだ?」
「記念品・・のようなものだな」
動植物は痛んでしまうから持っては行けないが、石ならば問題ないだろう。
こちらの様子を感じられる品として取っておいて「でじかめ」で切り取った風景と合わせて見せれば、彼女が喜んでくれるやも。
「記念品ねー。そんなら魔石とかにしねーの?そっちの方がキレイじゃん」
確かに、同じ石として見れば、魔石の方が見た目も美しく、利用価値もあるか・・
「そうだな。これから先、魔物から見つかった時は幾つか取っておくか・・」
「そーしろ、そーしろ!あ、リーダー!お帰り~っ!」
頭の後ろで手を組んだ褐色肌は明るく言ったところで、天幕へと戻って行くリーダーの姿を見つけ、手を振り呼びかけながら駆けて行った。
段差になっている足場から飛び降りて腰のバッグに石を仕舞い、「不屈の砦」のメンバーに一声掛けてから戻ろうと小走りで褐色肌を追う。
天幕の近くまで寄ってみると、丁度褐色肌が手合わせの結果を仲間に知らせている所だった。
「え~?負けたの~?」
「うんっ!負けた!文句ナシの負け!」
「へぇ・・何でヤられたんだい?」
「魔法で!あ、アド!皆に魔法の事言っても平気か?」
三つ編みとリーダーからの問に対し軽快に答えていた褐色肌がこちらに気付き、そう訊いてきたので「構わない」と承諾で返す。
「そっか!な、聞いてくれよリーダー!アドの魔法すげぇんだぜ!」
そう楽しそうに語ろうとした褐色肌を、赤髪が「その前に」と制した。
「ほらほら!キーラ。リーダーも居る事だし、彼にあたし達を紹介しなくて良いの?」
「あっ。そうだな!」
「あらあら~それならあたし、リルベル呼んでくるわね~」
「ありがとフラウ!」
赤髪の言葉で焦る褐色肌に、三つ編みが声を掛けて離れて行く。
会話から察するに、ここに居ないメンバーを呼びに行ったようだ。
「んん゛っ!アド!アタイが所属するパーティ―「不屈の砦」の皆を紹介するな!」
声の調子を整え、褐色肌は改まってメンバーの紹介を始めた。
こちらも挨拶をしようと思っていたところなので、素直に話を聞く。
「この人が「ミリアーナ」。[[rb:盾使い > 壁役]]で、アタイら「不屈の砦」のリーダー!」
褐色肌に手の平で示されたリーダーは重い盾を扱うというのも納得の筋肉量で、全体的に分厚い。
しかし首が見える程度に短く整えられた茶色の髪は細く艶やかで、顔が整っている為まず男性と間違えられることはないだろう。
そのリーダーは褐色肌の紹介に腰に片手を当て、「リーダーのミリアーナだ。等級は3」と堂々と言い放つ。
やや圧倒されながら、軽く顎を引き会釈で返した。
「次!副リーダーの「デラ」」
「デラよ。使うのは双剣で攻撃役ってところね。等級はリーダーと同じ、3等級よ」
ひらりと片手を振った赤髪はそう言って、襟足に近いところだけ伸ばした髪を背中側に払う。
自分とそう変わらない目線の高さの赤髪に対し、リーダーの時と同じように顎を引いて返した。
「んで、こっちが「モウロ」見ての通り[[rb:虫人 > むしびと]]で空からの援護役!」
「モウロはモウロ、だヨ?。よろシくネ?」
「等級は4だぜ!」と補足を入れた褐色肌の背中にぴたりとくっつくようにして立つ虫人は、上の両手の平を広げ4本の指をワキワキと動かし挨拶する。
それに対しこちらも軽く頷いて答えた。
先程は、出来るだけ意識しないようにしていたが・・
虫人をこのような距離で見た事が無かった為、不躾にならない程度に軽く観察する。
空を飛ぶに相応しい細身の体。
衣服は体に添うように作られ、はためかぬよう余分な布は少ない。
どうやら四枚翅を出す為に背中側は大きく開いているようだが、女性の背中をまじまじと見る訳にはいかないのでしっかりとは確認出来ていない。
腰の上辺りからは尾のように虫腹が伸びている・・
それより視線が引かれるのは顔だ。
人なら眉がある位置に短い触角があり、その下の緑の眼は人の物とはだいぶ違う・・睫毛のない瞼が覆う瞳は粒が集まったかのような虫寄りの形をしている。
鼻の半ばから垂れ布で口を覆っているが、それは『虫に近い形の口元を忌避する他種族への配慮である』と本で読んだことがあった。
どうやら事実だったらしいと、既存の知識が実際の経験により裏付けられる高揚感に、気分が浮つく。
この場に居た3名の紹介を終えたところで、丁度三つ編みがもう1人を連れて戻ってきた。
「お待たせ~」
「・・・ぐぅ・・」
「ごめんなさいね~。この子乗り物に弱くて~まだ薬が残ってるみたいなの~」
「しょうがねーよな。荷車すげぇ揺れっし。吐きっぱなしは可哀そうだもんな」
三つ編みの背で寝こけているボサボサの濁った緑色の髪を撫でた褐色肌はそのまま紹介を始める。
「この寝てるちっこいのが「リルベル」。戦闘に役立つ魔法を使うぞー!等級はまだ4だけど、もうすぐ3に上がれそうなんだぜ!」
そう嬉しそうに笑いながら「おい、リルベル!起きろよ~」とボサ髪を揺するが、当の本人は「・・むにゃ」と吐息とも寝言ともつかない音を発するばかりで目覚める気配がない。
「そう無理に起こさずとも・・」
「いいのよ~起こさないと、ご飯食べ損ねちゃうわ~」
そう言う三つ編みに、赤髪が「預かるわ」と声を掛けてボサ髪を抱え上げた。
「しゃーねーな。リルベルはまた今度起きてる時にって事で!次は「フラウリィーラ」な!」
「フラウリィーラよ~「フラウ」と呼んでくださいな~等級は3よ~」
「フラウが使うのは槍・・で良いのか?あの武器」
「正確には違うのだけど~[[rb:斧槍 > ハルバード]]ってご存じ~?」
頬に片手を当て、小首を傾げてこちらに問う三つ編みの言葉に少し驚き、頷きと共に答える。
「あぁ。長い柄の、斧と槍を合わせたような武器だな。扱いが難しいと聞いたことがある」
「まぁ、博識ね~」
「そうなのよ~結構難しいのよあれ~」と微笑む三つ編み。
柔和な雰囲気からは想像し辛いが、斧槍で3等級とは・・かなり[[rb:使 > ・]][[rb:え > ・]][[rb:る > ・]]のではないだろうか?
「最後はアタイ!キーラだ!獲物は弓で、狩りや偵察が役割だぜ!等級は4!このメンバー6名が「不屈の砦」だ!」
腰に両手を当て、鼻と胸を膨らませた褐色肌はそう得意気に告げるのだった。
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