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【107】「掃除屋」についての疑問。/原稿作業なう!

  「掃除屋」の少年を見送ると、褐色肌は毛皮の入った袋を天幕に仕舞い、調理担当の三つ編みに「アドと手合わせしてくるな!」と声を掛ける。

  「わかったわ~。怪我には気を付けてね~」

  「分かってるよ!行こうぜアド!」

  誘われ、洗っていた手の水滴を振り切ってから、褐色肌の後を追った。

  残る水気による手が冷える感覚で風を感じながら、褐色肌に追いつき隣に並び歩く。

  「幾つか疑問があるのだが」

  「何だよ」

  「「掃除屋」が居ない時はどうするのだ?」

  「近くの森の中まで捨てに行くか、消し炭になるまで燃やして埋めるか、だな。洗浄魔法があれば一瞬で片付くから楽なんだけどよ・・洗浄の魔道具だってくっそ高いから、アタイらみたいな中堅冒険者には手が出せねぇし・・ほんと、洗浄魔法使えるヤツが羨ましいぜ」

  ちら、と褐色肌は私の背後に浮かぶ半精霊の「C」に視線を向けて言った。

  「「面布のカルセ」なら使えるんだろ?」

  「そうだな。よく世話になっている」

  「やっぱな。おまえ、冒険者にしちゃ身形がキレイ過ぎなんだよ」

  「それは何か悪い事か?」

  「別に?ただ他の冒険者から「貴族崩れ」か「金持ちの道楽」みたいに思われるかもな。これから冒険者としてやってくなら、周りに溶け込めるようにしといた方が面倒なくて楽だぜ?」

  「ふむ・・厄介事を恐れて清潔さを捨てたくはないな・・」

  「なら何かあっても[[rb:手前 > てめぇ]]で乗り切るしかねぇな」

  冒険者らの天幕が張られた位置から随分と離れ、足元が地を這う草に覆われたところまできた。

  この辺りは岩が多く、あまり背丈のある草も生えておらず障害物も少ない。

  手合わせには丁度良いだろう。

  「他に訊きたい事はねぇか?手合わせの前に答えてやるよ」

  「そうか?ならば一つ。冒険者らは自分たちでスライムを飼わないのか?そうすれば態々「掃除屋」に頼む必要もなくなるし、旅中でも清潔さを保てると思うのだが」

  「あー・・。冒険者「は」飼わねぇな。必要になって一時的に連れてく事はあるけどよ。理由は世話が大変なのもあるけど、まぁ身内の為だな」

  「と言うと?」

  「冒険者ってのは職にあぶれたヤツの掃き溜めさ。その殆どが農地を継げなかった奴やスラム出身者なんだよ。で、そいつらが冒険者になる前にやってた仕事の一つが「掃除屋」なワケ。力のない子どもでもある程度稼げる仕事だしな。さっきの「掃除屋」も、今日の稼ぎで家族が明日の飯にありつける・・」

  天の光が半分ほど落ちた薄闇の中、自身の幼い頃を思い出しているのか、どこか遠くを見るような目で天幕の方を見ていた褐色肌は、こちらに視線を戻して続けた。

  「な?ガキの頃に「掃除屋」を経験した冒険者は多い。将来の為に顔を繋げる貴重な伝手でもある。そんな「掃除屋」の仕事を「冒険者」が横から奪ってどうすんだ?って話さ」

  「・・成程。だから身内の為か・・良く解った」

  軽く顎を引いて礼を伝えると、褐色肌は「いいさ!アタイは先輩だからな!」と爽快な笑みで答える。

  「んじゃ、そろそろヤるか?」

  「そうだな。勝敗の基準はどうする?」

  「出血するような攻撃は無しで、先に3撃入れた方が勝ちってのは?」

  「ではそれで。開始の合図は「C」頼んでいいか?」

  背後を見上げるようにして向けた視線の先で、護衛の半精霊「C」は両腕で大きく丸を作って了解を示した。

  その場から互いに反対方向へ歩き、ある程度距離が離れたところで向かい合って構える。

  準備完了と見て、やや高度を上げた半精霊の「C」は両腕をすっと頭上に掲げ・・

  パンッ!と力強く打ち鳴らした。

  〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇

  ヘッドフォンから流れて来るアニソンを聞き流しながら、ペンタブに齧りつくようにして夢中でペンを動かす。

  いくらデジタル化で原稿作業が早く進むようになろうとも、結局は手を動かさなければ終わらないのだ。

  いや、紙とペンだけの時代よりか、かなり楽になってはいるんですけどねっ!

  「誰か!早く脳内画像を取り出せる[[rb:道具 > まっすぃーん]]を開発してくれぃ!」

  切実な願望をつぶやきながら、水色で表示した下書きレイヤーの上から黒い線をしゃかしゃかと引く。

  自分の頭の中にある絵や話を、こうして形にしていく作業は楽しいながらも苦しい。

  でも、息も絶え絶えで描き上げ、印刷された本を実際手にする時は、毎回もの凄く感動する。

  本の感想を貰えた時なんかは脳内麻薬ドパドパで、情緒がバグるくらい嬉しい。

  いやいや、もちろん[[rb:公式様 > 制作側]]がお目こぼしくださるからこその同人活動。

  常に公式様に感謝しつつ、ありがたく妄想を具現化させて頂いておる所存。

  ・・本当に、同人は生きる喜びに満ちている。

  真面目な話、同人のお陰で自分はこうして生きているのだ。

  死んだ両親が常々言っていた。

  「「好きな事は手放しちゃ駄目。やりたい事を大事にして生きなさい」」

  この言葉には苦しめられもしたが、今の自分を形作る大事な[[rb:核 > 中心]]だ。

  ちら、と視線を横にずらし、モニター横のフォトフレームに収まった家族写真を見る。

  10年前、成人式で撮った父と母に挟まれた振袖姿の自分の写真・・

  亡くなった時は本当に辛かったが、今はこうして写真を見ることも、思い出に浸ることも出来るようになった。

  それもこれも、アキという大親友のお陰である。

  両親を亡くし、大学も休学して、色々あって周りの人間が誰も彼も敵にしか見えなくなり、あの記憶領域に残す価値もない糞ジジイの[[rb:戯言 > 呪い]]のせいでボロガリになっていた私は、イベントで出会った親友に、心身共に救われたのだ。

  『おう。こうして振り返ると、私ってばアキさんにもっと色々お返ししていかなくてはならんのでは?』

  疲れると定期的に発症する「親友へ恩返ししたい症候群」である。

  『よし、早速今欲しいものが無いか訊いてみよう!』

  すちゃっ!とスマホを取り出し、メッセアプリを開いてぽちちち!とタップ。

  いざ送信!

  気の抜けるような効果音がして数秒、直ぐに既読がついて返信が来た。

  『原稿中でしょ?集中して進めなされ』との有難いお言葉と共に「頑張れ!」と応援してくれるキャラのスタンプ。

  安定の質問スルーかい。

  でもなぁ・・勝手に贈り物を買うと怒るんだよな・・

  むぅ。今度また何かイラストでも描いてプレゼントにするか・・

  これだけは怒らずに受け取ってくれるんだよね。

  そこまで考えて、返信に「しょぼん」のスタンプと「はーい」とやる気の感じられない内容を打ち込んで送信。

  ちら、と今度は卓上ミラーで胸の契約紋を視界に収め、異常が無い事を確認してからまたペンを握る。

  うん。何も問題なし。

  この調子で原稿を巻きで進めていこう!

  さすれば[[rb:お姉さん > 美人さん]]とのやり取りも、もう少し落ち着いて出来るかも!

  何事も余裕が無ければ、上手くいかないものですからして・・・多分ねっ!

  お願いされたチョコは近くのスーパーで買い、不足分プラス予備の分はネットショップで注文済み。

  ええ、3種ドカッと注文しましたとも。

  ま、そうそう腐る物でもなし。すぐに捌けることでしょう!

  部屋の温度には気を付けないといけないけどね!

  そんで買い物に出たついでに狐のお面も買い~

  古着屋さんでイイ感じの柄の着物とか羽織とか買い~

  頭部を隠す用になんかテラッとした布も買いまして~

  百均で卓上ミラー買ったついでに扇子も購入しましたとさ。

  美人さんと対面する為の小道具はこれで揃ったけど、まだお面に装飾してないので、この後切りの良いとこまで頑張ったらカキカキぺたぺたします。

  ラインストーンとかも買ったので、着物の柄に合わせて模様を描き込みながら素敵に飾り立てよう!

  ふっふっふ~!創作物を考えるのってめちゃくちゃ楽しいわぁ~!

  いつの間にか机に肘をつき、顎を乗せてニヤニヤとしていた事にはっと気付き、慌てて原稿作業に戻る。

  「うぬぬ!誰か早く脳内画像を取り出せる以下略っ!」

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