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【70】ふわもふは正義っ!!(断言)

  呪具による疑似生命を生み出したら、まさかの視えませんで絶望なう。

  ちぃくしょーっ!

  心の中で小梅〇夫が量産されててマージ。うぜぇ、うぜぇ!

  うっ、うっ、と嗚咽を上げながら、悔しさに拳を震わせる・・ってのがリアルでの現状です。

  神は〇んだっ!ここは地獄か?!

  「ある程度魔力がある者には視える、筈なんだが・・」

  「私に魔力は無いってかーっ!?」

  「いや、あるぞ?それは確かだ」

  「んじゃ何でぇ~・・せっっかく名前も考えたのにぃ~・・視えないとか辛すぎるぅぅ・・」

  「名を?あぁ、ではそれだな。名を呼んでやれば姿が視える筈だ」

  「んマぁジでっ??!!」

  がばりっ!と勢いよく身を起こし、垂れる鼻水もそのままに青年を問いただす。

  「恐らくな。とりあえず試してみれば良いだろう」

  「あいっ!そうします!」

  ティッシュで涙と鼻水を拭い、居住まいを正して鏡台の方を背に、なんとなく両手を胸の高さで組んで・・そっとその名を口にした。

  「・・[[rb:緋翠 > ひすい]]?」

  すると、ちょうど正面の位置に、星屑のような小さな光がじわじわ集まってきた。

  驚きに固まっていると、光がきゅっ、と小さく寄り集まってぱしんっ!と弾ける。

  そして現れたのは、自分と同じ高さに頭がある、お座りした姿勢の大きな大きなお狐様。

  想像通りの、真っ白でふわふわした毛皮。

  アクセントに耳先や足先、尻尾の先が朱に染まっている。

  しゅっと筆を走らせたような細い目と、その周りを彩るのは紅く、美しく映える縁取り。

  中にある瞳は、綺麗な[[rb:金糸雀 > カナリア]]色。

  背後でふさりと振られた、もっこりふわふわな尻尾に気を取られると、真っ黒な鼻がずいと近づいてきて、ちょん。と軽く胸に押し当てられた。

  触られた感覚にこれまた驚いて、恐る恐るその大きな顔の鼻筋を手の平で撫でる。

  思いの外さらりとした毛皮の感触越しに、喜んでる感覚が伝わって来ると・・

  じわりと得も言われぬ感動が襲ってきて、反射的にもこふわした胸毛に飛び込んだ。

  「あっ、あ~・・たまらん・・ふわっふわだぁ~」

  これヤバイ・・思考が蕩ける・・人を駄目にする毛皮だぁ・・

  「無事視えるようになったようだな」

  しかも今夏じゃん?ふわふわ毛皮とか暑いと思うじゃん?

  ちっちっちー。聞いて驚け~この毛皮、なんとひんやり毛皮でしてよ?

  緋翠たんは体温ないらしい~。

  触れた所が自分の体温でじわじわ温まってくる感はあるけど、場所を移ればふわすべもふもふでしてよ?

  「・・アヤ?」

  この全身くまなく包まれるもふもふ感・・

  あ~。癒される・・マジ、で・・召されr、

  「アヤっ?!」

  「はっ?!やべっ!寝かけた?!」

  焦ったような、上ずった呼び声に意識が引き戻されて、バチッと目が覚める。

  無理やり覚醒した時特有の頭痛が襲ってきて、こめかみを指の腹で押し撫でた。

  「おぅ・・痛って~・・」

  「大丈夫か?!返事をしないから心配したぞ?」

  「うん。大丈夫~。や、すんごい気持ち良くてさ。意識が飛びかけ・・いや、飛んでたわ」

  頭を掻きながら「ごめん、ごめん」と軽い調子で謝りつつ、もう片方の手で緋翠たんの頭を撫でる。

  しかも撫でやすいように頭下げてくれるのきゃわわ♪

  胸がきゅんきゅんしてもうすっかりメロメロでございます。

  おっきなもふもふお狐様、最高かよ・・

  「いや、何ともないのなら良い。疑似生命体の「きつね」は問題なさそうだしな」

  「うんっ!マジ想像通りのもふもふで本当に最高ですありがとうございますっ!!」

  「喜んでもらえたのなら何よりだ。今後、呪術的な害はその「きつね」が排除してくれる。あの愚物も、限界まで追い詰めてくれるだろう」

  「あはは。こんな可愛い狐さんだと、ご褒美にしかならない気もするけどね~」

  もふもふと、毛皮の感触を堪能する手を止めずに青年へと相槌を返す。

  いやマジで。こんなもこもこちゃんに迫られても怖くなくね?

  あ。視えなかったら普通に怖いか。

  「ま、死なれたら後味悪いし。程々にお願いね緋翠~」

  真っ白な毛をかき分けて首に抱き付き、すりすりと頬を擦り付けてお願いする。

  すると『任せろ!』といった感じの、頼もし気な感覚が伝わって来て、ますます頬が緩んだ。

  ずっと抱き付いていたかったけど、やんわり『離れて欲しい』と言われた気がして、渋々腕を解く。

  金糸雀色の凛々しい瞳と目が合うと、頬の辺りが胸元にすり寄って来た。

  でも、それもほんの一瞬だけで、またぱしんっと光を弾けさせた緋翠は姿が視えなくなってしまう。

  驚きに目を瞬かせていると、青年の「行ったか」という短い言葉で緋翠が早速仕事に掛かった事を理解した。

  「随分と仕事熱心な良い「きつね」だな。この様子なら、アヤの守りを任せても問題なさそうだ」

  「うぅ・・でも、もうちょっとモフりたかった・・かむばーく、まいモフモーフ!」

  「それ程までに気に入ったのか?だが今は呼んでやるな。疑似生命体は与えられた使命をこなす事こそが存在理由だ。邪魔すると弱るかもしれんぞ?」

  「えっ?!マジで?!分かった。戻って来てくれるまで我慢しますっ!」

  やべぇやべぇ!構いすぎ注意ってヤツですな!

  既に血の涙を流しそうなレベルでモフ欲が募ってますが・・

  緋翠たんの為に我慢しますっ!頑張るぞー!おーっ!

  内心でグギギと歯を食いしばり、イマジナリーな応援団と共に円陣を組んで気合の声を上げる。

  「さて、最大の懸念だった件はひとまずこれで良しとして、他にも幾つか話したい事があるのだが・・まだ時間は大丈夫か?」

  「あいはい、大丈夫だよ~」

  差し出された回復薬を受け取りながら、頼子は軽い調子で青年に答えた。

  〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇

  恥ずかしながら、呪具によって生み出された疑似生命体に嫉妬を覚えた。

  私の魔力とアヤの血によって生みだされた[[rb:ア > ・]][[rb:レ > ・]]は、言うなれば意識を持った道具。

  刻まれた任と使命をこなし、ただひたすら主を守るだけの存在・・

  こちらの者が疑似生命体を生み出す場合、目的に沿って姿を決める。

  愛玩目的などで作られる事は殆ど無い為、どれもこれも見た目が厳つく、凶悪であったり逆に全く目立たない薄っすらとしたものだったりするのだが・・

  彼女には最初で「飼いたい生き物」と例えを出したせいか、愛玩目的での容姿を想像したらしい。

  確かに、顕現した疑似生命体は美しく、かつ力強さと威厳に溢れた姿をしていた。

  流石、絵を描く事を生業とする彼女の想像力だ。

  実際素晴らしいとしか言いようがない。

  想定外だったのは、予想以上に彼女が疑似生命体を気に入ってしまった事だろうか・・

  あちらにばかり夢中になられると・・その、やはり寂しく・・心が苦しくなる。

  あくまでも物である「きつね」に抱く必要のない感情ではあるのだが・・

  儘ならないものだな。我ながら呆れるしかない。

  恋心によって持て余す感情を『難しいものだな』と考えていると、先に彼女の方から話を切り出された。

  「そういえば、先日頼まれた「しゃしん」が、丁度今日届いたんだ!忘れない内に渡しちゃうね?時間のある時にでもゆっくり見てみてくださいな」

  「あぁ、分かった」

  返事をすると、手の平程の小さな絵が沢山入れられた、向こう側が透けて見える程に透明な袋をぽんと渡される。

  あぁこれは、以前氷を入れて持たされた袋と同じものだな。

  受け取り、何枚か取り出して見て見ると確かにこの前見せてもらった「がぞう」を紙に描き起こした物のようだ。

  たった数日でこれだけの絵を用意するとは・・

  どれだけ金を積んだのだろう?・・渡した金貨で足りたのだろうか?

  考える内、彼女の懐具合が少々心配になり追加の金貨を出すべく口を開こうとしたが、彼女の言葉の方が先に発せられた。

  「そうそう!「しゃしん」の代金にもらった金貨ね。あれだと貰いすぎだから、残りの分はこっちの品を買ってお返ししたいなぁって思っててさ。遺跡に行くんだよね?野営道具とかどうかな?って」

  そう少し早口で提案され、開きかけた口を閉じて彼女の優しさと気遣いに微笑みを返す。

  「それは助かるが、良いのか?」

  「もちろんだよ!色々と役立つ品を買うつもりだから、遠慮なく受け取ってね!」

  にこにこと楽し気に笑う彼女に、こちらもつられて笑いながら「分かった」と頷きを返した。

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