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ずるり、と舌を絡めながら頭を引く。口の中でぶるぶると熱い肉が震えた。生臭いにおいが口の中に広がる。だが俺はその匂いが大好きなのだ。そのために、今俺はここに座り込んでいるといっても過言ではない。
今俺がいるのは街の片隅にある小さなビル。そこの最奥にある人気のないトイレで、俺は座り込んで壁に顔を寄せていた。正しくは壁そのものではなく、壁に空いた穴から出ている肉である。俺はその愛しい肉塊をゆったりと、溶かす様に舌を絡め、口腔を密着させ、そしてゆっくりと口唇でしごきあげる。
「はぁっ……」
壁の向こうから熱い吐息が聞こえた。どうやら俺の口の中を存分に感じてくれているらしい。俺は嬉しくなってさらにゆったりと頭を動かした。狼の獣性を持つ俺は、マズルが長く大きなモノも悠々と咥えられる。そうやって喜んでもらえるのが嬉しくて、沢山のモノを咥えてきたのだ。そのテクニックをもってすれば。
「ぐッ……!」
やがてびくびくと俺の口の中でその肉が跳ねた。それと共にあふれ出す、ねっとりとした液体。俺はそれを音を立てて呑みこんだ。名残惜しくて、未だ口の中で小さく震えるその肉に再び舌を絡める。刺激が強過ぎたのか、向こう側に少しだけ引き抜かれる。刺激が強過ぎたかと慌てて俺は舌の動きを緩めて。後に残る体液を改めて舐めとった。
綺麗にして、俺がそれを口から解放したからだろう。やがて肉竿は穴の向こうへと姿を消し。じいっ、とジッパーがあげられる音が響いた。カモフラージュのためか、水が流れる音がしてから隣の個室の扉が開く。俺はそれを聞きながらこちらの個室の便器に腰掛けた。今の記憶を忘れないまま、自分の処理をするためだ。ズボンを下ろし、先走りでぐちょぐちょになった下着に手を這わせる。
「んん……」
思わず漏れる声。誰が来るかわからない場所だから声を出すわけにはいかないのだが。それでも興奮が強過ぎるとこうやって声が出てしまうのだ。
どんどんどん、と突然大きな音が響いた。どうやら誰かがトイレ内にいたらしい。俺は慌てて手を止める。プライベートな空間には違いないが、かといって何をしていいというわけでもないだろう。少なくとも俺の良識から言えばオナニーはマナー違反だ。もっとも混雑している状況じゃないから、バレなければいいだろうとは思うのだけれど。
俺はとりあえず呼吸を整えて、目の前の扉をノックする。はいってますよ、という返しだ。だが再び扉は強くノックされた。なんだ、ここに入りたいのか? 確かにしゃぶりたい奴はこの個室に入るのが暗黙の了解ではあるんだが、それは先客がいない場合のはず。そもそも隣のしゃぶられたい側に誰もいないのに急いで入る必要もないと思うのだが。
「おい、開けろ。警察だ」
警察? なんだって警察がこんなところに。いや、確かにここでハッテンしてるのは褒められたことではない。どころか警察にどうこう言われてもしょうがないとは思うが、少なくとも現状は現行犯ではない……はず。どうして急に警察が? 俺はそのまま動きを止めた。このまま、やり過ごすべきだろうか。ここにこもっている以上逃げ場はないが、だからといって向こうも踏み込めはしないだろう。
「あー……ハッテン行為に関することじゃない。聞きたいことがあるから出てきてくれると嬉しい」
ハッテンに関することじゃないのか? なら開けてもいいか……。いや、そもそも警察を騙っているだけの犯罪者かもしれないのだけれど。とりあえず用心して、少しだけ扉を開けてみた。と、と目の前の隙間に黒いものが付きつけられる。それは間違いなく警察手帳だった。俺は観念して扉を開く。
「ようやっと出てきてくれたな」
そう言って疲れたようにため息をつくのはドーベルマンの雄。先ほど見た警察手帳が本物なら、羽田健司さんというらしい。スーツを着ているから、何も知らなければただのサラリーマンだと思うところだ。
彼の後ろに視線をやれば、なんとなく気まずそうに立つ二人の雄。大柄で立派なスーツをきた黒毛の獅子と、眼鏡をかけてどこかおどおどした表情を浮かべる虎の二人だ。二人とも中年といったところだろうか。薬指に指輪が光るあたり、二人とも既婚であることは間違いなさそうである。獅子は筋肉がスーツの上からでもわかるほどに逞しく、虎はどちらかというとむっちりとした体形だろうか。それでも骨太な感じはあるし、太っているという程でもない。ちなみにドーベルマンは二人と違いすらっとした体形である。俺の好みとしてはこの猫科二人なのだが……まあ今はそういう話ではないか。
「えっと、これはどういう状況で……?」
俺は全員の顔を見渡しながら首をひねった。獅子は不満そうに視線をそらし、虎も恥ずかしそうに床を向く。この二人も、このトイレがどういう場所かわかっているということだろうか。あるいは先ほどの警官の発言で知ったばかり、ということもあるかもしれない。
「このビルの中で、ちょっと事件があってな」
ドーベルマンが苦虫をかみつぶしたような顔で言う。まあ警察が出張ってるからにはそういう事なんだろうが……。
「細かいことは省くが、犯人はこのビルの中にいる男性だろうと推測された。今日は日曜日だから幸い容疑者は少なく……」
そう言って、彼は振り返りながら後ろの二人に視線を向けた。つまりこの二人が今日このビルにいた二人ということだろう。いや、違うか。俺もこのビルにいたから、俺も容疑者になっているはずなのだ。
「俺も容疑者ってことっすか」
俺の顔に彼は肩をすくめた。
「お前、『そっち』にずっと入ってたんだろ? 『そっち』に入るやつは五分やそこらでは出てこないからな。疑ってねえよ」
どうやらこのドーベルマン、かなりここの状況を理解しているらしい。
「俺が入ったばっかりじゃないってどうしてわかるんすか?」
確かにすぐには出てこないやつらばかりが集まる個室ではある。だが入ったばかりかもしれないじゃないか。
「そんだけ臭わせておいてか?」
そう言いながら、こんどはにやにやとした笑みを浮かべた。そうか、彼も犬の獣性を持っている。つまりまごうことなき警察犬なのだ。おそらくこの距離からでも、俺の口の中に残る体液の匂いをかぎ取れたのだろう。
「まあ、そうなんですけど」
さすがに恥ずかしくなって、頬を掻きながら視線をそらした。
「で、だ」
そんな俺の態度を切り捨てるように彼は話を続ける。
「この二人のどっちかが犯人だろうとアリバイを確認したんだが、二人ともその時間はトイレにいたと言いやがる。だからお前ならどっちがこのトイレに来たか知ってるんじゃねえかと思ってな」
なるほど、つまりアリバイ確認のためということか。もちろん捜査協力は一般市民の義務であるし、なによりハッテン行為に目をつぶってもらうのである。それくらいの協力はしたいところなのだが。
「でも俺、誰が来たかなんて確認してませんよ」
わざわざトイレに来た人を、扉を開けて確認なんかしていない。俺でなくとも、誰がどのタイミングできたのかなんてわざわざ記憶していないだろう。
「足音で特徴とか……」
「刑事さんならそういうのわかるかもしれませんけど……。俺一般市民ですよ。わかりませんって」
むう、と彼は唸った。なんでもいいんだが、と食い下がられるが、そう言われても俺は誰も見ていない。そもそもここに来たのは俺の隣の個室に入って俺にしゃぶらせてくれたヒトの……。
「あ……」
俺は思わず言葉を漏らした。しおれていたドーベルマンの耳がピンと立ち上がり、キラキラと期待に満ちた瞳がこちらに向けられる。そんなに期待されても困るんだけど、さすがにこうなったら口に出さないわけにはいかないだろう。
「いや、その。何も見てないとは言いましたけど……隣の個室のヒトの、ナニは見たかなって……」
そう言いながら俺は思わず照れ笑いを浮かべる。そう、俺が知っているのは。俺の隣の個室から突き出された、あの太く長いモノだけだ。
「なるほど。つまりこの二人のちん……んん」
ドーベルマンは軽く咳ばらいを挟む。
「性器を見せてもらえれば、ひょっとしたら何かわかるかもしれないということだな?」
無茶なことを言っているのはわかる。だが実際それくらいしか俺の記憶には残っていないのだ。まあそんなこと許されるわけが――エエエッ!
「これでいいのか」
そう言って、目の前で獅子が突然ズボンのジッパーを下ろしたのだ。そのままごそごそと中から巨大な肉塊を引きずり出す。
それはまさに、引きずり出すという表現がぴったりだった。社会の窓から突っ込まれた彼の大きな手は、間違いなく肉筒の根元を掴んでいる。そして彼はそれを引き出す動きをして見せたのに。それでもすぐにはその先端は姿を現さない。一瞬の溜めがあったあと、勢いよく大きなふくらみが飛び出してきた。一瞬のことのはずなのに、それは確かに質量を持って大きく揺さぶられていた。綺麗に向け切った先端と、色黒な幹。絡みつく血管と、はっきりわかる先端との段差。おそらく平常時でこの状態である。極上の逸品と言えるだろう。超うまそう。
「おい、どうなんだ?」
突然横からかけられた声に、俺は思わずすくみ上る。あ、そうか、そうだった。今は別にハッテン中とかじゃねえんだ。このドーベルマンに協力するために見せてもらってるだけで――俺の脳裏に、悪い考えが浮かんだ。
「え、あ、え、えっと……似てるような……違うような」
「マジかよ」
ドーベルマンが驚いて獅子を――彼の股間を振り向いた。確かにこれはそうは見られない逸品である。これに似てる男がそうゴロゴロといてたまるか。
「お前も、さっさと出したらどうだ」
獅子が面倒くさそうに虎に言う。おそらくこんな日曜に仕事に来ているひとたちである。よっぽど仕事が忙しいか、仕事が好き化のどちらかだろう。そしてこの獅子はおそらく前者だ。さっさと疑いを晴らして仕事に戻りたいという顔をしている。
「ほ、本当に見せるんですか……?」
不満というよりは、これはもはや恐怖感を覚えているのではないだろうか。獅子の威圧感なのか、この状況なのかはわからないが。
その様子を見て獅子は舌打ちをして、虎に手を伸ばした。そのまま剥いてしまうのか、と思ったがそういうわけでもなく。彼は虎の手を取ると一気に羽交い絞めにした。
「おいそこの狼、さっさと確かめろ」
ええ、俺が脱がしていいの? なにこれ天国なの? たぶんノンケだろうこの虎オッサンのズボンを下ろすことが合法なの?
俺は思わずドーベルマンの方を振り向いた。何も考えずにその通りにして、さすがにレイプ犯にされるわけにはいかないのだ。
ドーベルマンは少しだけ迷って、虎と視線を交わし。改めて俺を見ると、ゆっくりと頷いた。虎の方も恥ずかしくて身をよじっているが、無理やる抵抗するというほどでもない。これは……興奮するな。
「で、では失礼しますよ」
できるだけ平静を装いながら俺は言う。そのまま跪いて、おっさんのベルトに手をかけた。かちゃかちゃと金属の音だけがトイレの中に響く。二人の男に見下ろされながら、俺は今オッサンのベルトを外している。どういうシチュエーションだこれ。ズボンを脱がすと、その下は縞柄のトランクス。いかにも、といった感じではある。そのゴムに手をかけて、俺はそこで手を止めた。そっと虎オッサンを見上げると、彼は恥ずかしそうに目を伏せる。かわいい……。
「えいっ」
俺は思わず目を閉じて、一気に引きずりおろした。
「おお……」
この声は、ドーベルマンである。彼の声が何を意味するのか。おれはゆっくりと目を開けてみた。
なるほど、これは感嘆の声を漏らしてもしょうがあるまい。大きく太い、サトイモのような肉塊。しっかりと先端まで皮に包まれているが、そんなことが気にならないレベルの逞しさである。確かにこれは声が漏れるレベルの大きさである。もっとも獅子とどちらが大きいかは難しいところだが。
俺の視線で見比べていることが分かったのだろう。獅子は無言で虎の隣に並んでくれた。なるほど、見比べやすい。虎も恥ずかしがっているが、さすがにこの期に及んで隠すつもりはないようである。俺は安心してその魅力的なそこを、じろじろと見比べた。写真撮りたい。
「こんなに違うんだ、わかるだろ」
獅子が焦れたように言う。
確かに彼のいう事は一理ある。獅子は完全に剥けきって立派な亀頭が露出しているし、逆に虎は完全に皮をかぶって亀頭は先端からもまったく見えていない。これでは似ているという方が無理があるのだが――
「でも俺、見たのは臨戦状態ですから……」
む、と獅子はうめいた。これには彼も納得せざるを得ないだろう。男性のその部分が平常状態と戦闘状態でどれだけ違うかはきっと彼らも身をもって知っているのだから。
「そうはいうが、この話は体験版だから……」
それもそうだ。あまり長々とここでやってしまっては本誌になったときに困る。
「だからほら、こんなこととか」
おおっ
「こんなことをしても」
おおおおおっ!!!?
「何も描写できないんだよなあ、もどかしい」
そう言いながらたっぷりサービスしてくれる獅子。なんとその隣で恥ずかしそうにしていた虎のおっさんもサービスをしてくれている。
「ま、まさかここまで…!」
「まあ、続きは本誌で、な」
そう言って獅子のおっさんは俺の肩をポンとたたくと、トイレを出て行った。
「ま、まってください! 俺も買いに行きます!」
慌ててそう叫び、俺はそのままトイレを飛び出した。
そう、けもケット8の会場に行くために
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