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ヒロシとは別に特別な関係ではない。大学で知り合い、そのまま普通に遊んでいる仲だ。多数の友達のうちの一人であったはずだ。
その日はたまたま他の友達がバイトで忙しいとか、レポートに追われているとかで、俺とヒロシの二人でカラオケ屋に入ったと言う訳である。
その店は、アルコール飲み放題と言いつつ、ドリンクバー方式ではないから受付に電話する。
「ジントニとメキシコークお願いします」
この二杯の飲料に何かが入っていたのだろう。
乾杯し、それを口にした辺りで記憶がなかった。
気が付いたら5平米程度の個室にいた。硬い床に寝かされていたので、身体がバキバキである。
スマホは手元にあるが、電波は立っていない。そして、充電は切れかけている。
部屋の扉は外から固く閉じられていて、体当たりでどうにかなりそうな硬さではなかった。
脱出ゲームという奴だろうか? 現実に起こるだなんて思ってもみなかった……
取り敢えず、部屋にあるものを確認する。
段ボール箱が一箱。空の衣類籠が一つ。天井に防犯カメラらしい小さなドーム。あとは何もない。スイッチの類も引いたり押したりするようなギミックもない。
部屋のあちこちを調べたけど、怪しいのは段ボール箱一つである。
「仕方ない、これを開けるしかないんだな」
箱の一番上には、メイド服と女物の下着が入っていた。次にウェストニッパー、シリコンバスト、ウレタンの何か造形物、肌色の全身タイツ、それとプラスチック製のお面だ。
「他には? 他にはないのか?」
箱は解体して隅々まで見たが、全部無地である。衣装のポケットに何か入ってるとかないか確認したが、そんなものはない。
これはこの衣装を着ろと言う事なのだろう。それを防犯カメラで見て笑っていると言う訳か。
腹が立つので、取り敢えずカメラを壊そうとしてみた。
だが、天井は高くて微妙に手が届かない。ベルトを使って叩いてみたが、乾いた音がするばかりで傷一つ付いていない。
疲労困憊したが、薬で眠らされていた分、眠気はない。
もう、これは着るしかないのだろうか?
女装? そんなことはしたくない。
お面は口を大きく開いた笑顔で、アニメキャラの顔をしている。可愛いと言えなくはないがどこかしら不気味である。
コレを着なければならないのか? 着ないと出られそうにない。
しかし、こんなのを着なくちゃいけないとはどんな趣味だよ。
もっと人体実験とかそういう事に使えよ。
悩みに悩む。しかし勇気は起きない。
そうしているうちに腹は減る。カラオケで頼んだポテトはまだ殆ど手を付けていなかった。その前に牛丼屋で並を食ったのが最後か。
名誉の餓死と言うには、目の前にあるものは不格好だ。
やっぱり着替えるしかないのだろう……
先ず、体型補正が必要だと言うのだろう。ウェストニッパーを着てファスナーを上げる。ギリギリと胸と腹が締め上げられる。ヒップアップのような効果もあるだろうが、かなりキツイ。
肌色の全身タイツは結構厚手のタイプで、足を通すと間接のゴツゴツもすね毛も一発で覆い隠してしまった。
楕円状というか、水滴型に整えられたウレタンは恐らく太股だろう。胸の辺りのベスト状になっている部分は、一度頭と腕を通す必要がある。腕を通したところで、胸がポケット状になっているのに気付いて、シリコンバストを入れる。Fカップ程度だろうか?
下着を着て、メイド服の袖に腕を通す。
全身がフリフリになっている。こんな格好人に見せられないな……と言いつつ、カメラは回っているのだろうが。
さて、お面だ。後頭部が二つに分かれていて、それをファスナーが繋いでいる。
頭を入れて、頭の落ち着きを整え、ファスナーを下ろす。
ぐっと頭が追いやられて無理矢理固定される。
これも長い間やるのはキツいな……
着替え終わったその瞬間、錠が上がる音がした。
これは移動しろという事か。
衣類籠を持ち上げると、錠は再び下りた。
なるほどね。
何も納得するモノはない。ただ、仕組みだけは分った。
これは別にスイッチでどうにかなっているとかではなく、監視カメラで全部見ている。
試しに衣類籠をドアの前まで持って行ったら、扉は開かず、元の場所に戻して手に何も持たねば扉は開く。
つまり、身ひとつで隣の部屋に行かねばならないのだろう。そして、行ったら最後、この部屋には戻れない。
惜しいことと言えばスマホぐらいだが、どうしようもない。
一度お面を外して、スマホで何枚か写真を撮り、一通りの説明をメモに残した。まぁ、どうせこんなのも消されるか潰されるかするのだろうが……
お面を付けて部屋を出る。
隣の部屋は十畳ぐらいあり、埋め込まれたモニター、ベッドと冷蔵庫、電子レンジ、水道と給湯器、壁一面の鏡、システムバスがある。
二重扉の連絡路が用意されている。人間が通るには厳しいが、メシと衣類ぐらいは通るのだろう。尤も、向こう側は閉ざされていて、こちらから押して開くものではなかった。
なるほど、生活しなくてはならない程度には、隣への要求度は高いのだな。
冷蔵庫には水と冷凍食品がある。使ったら補充される方式だろう。
モニターが点灯する。そして、自分と同じようなアニメキャラクターの着ぐるみが画面に現われる。
テンションの高いアニメ声で呼びかけられる。
こっちの反応とは無関係に話は進む。
内容は可愛い動き方講座であった。
こうしたらNG、こうやって動けと懇切丁寧に教えてくれる。その手の養成所にでも卸したら喜ばれるのではないだろうか?
こんな映像が流れると言う事は、それを期待されていると言う事である。
これは真面目にやらないと出られないな……仕方なしに従う。
そして、ふと鏡に目が留まる。
確かに、この出で立ちで男全開の動きは恥ずかしいな。
と、さっき習った通りに背筋を伸ばし、腕を内側に巻き込むようにしてみる。それだけで見栄えは上がる。
案外やれるものだな。
取り敢えず腹が減った。
着ぐるみを脱ぐか……
冷食は一食分。多分、何らかのノルマをこなさないと、次が出ないなり隣の部屋に行けないなりなのだ。
大切に食べる。
そして、シャワーを浴びる。
部屋に戻ると、連絡路の扉のランプが点いている。
なるほど、そういうシステムか。
納得しないが理解はする。
連絡路の中には肌色タイツとウェストニッパー、ウレタンのあんこが入っている。
古いのはここに入れろと言う訳か。
そして、新しい物が届いたと言うことは、それを着ろと言うわけだ。
愚直にそれに従い、そして動画の通りに動きを学習する。
ある程度上手く出来るようになると、次のキャプションへと進み、そのノルマをこなす。
動きにポージング、軽いダンスとカリキュラムが組まれている。
画面端にタイマーが付いていて、これが減っていく。
着ぐるみを脱ぐとこれが止まるので、また再び「なるほど」と思うのだ。
仕方ない。従うしかない。
心の中で言い聞かせる。
タイマーが減って、ある所にくるとメシが送られてくる。
メシを食べてシャワーを浴びてタイツを取り替える。
何ターンかしたところでタイマーはゼロになり、隣の部屋に移動できた。
移動が出来たのは良い。その部屋にはダブルベッドがあるばかりだ。否、モニターもあるが、そこには「誰も脱いではならぬ。声を出してはならぬ」と書いてある。脱ぐと何かペナルティがあるのだろうなと思った。今までの経緯を考えると、ちょっとそれは体験したくない。
声の方は、独り言も虚しくなって、前の部屋でも一切言葉を発する事はなかった。と言うか、お面を付けて男の声で喋るのはどこかしら恥ずかしさがある。
隣の部屋で過ごしていたが、特に何もない。黙って居ても面白くないので、ダンスの練習だけは続けた。
当然腹が減り汗も掻く。
これはどうしたものだろう? 取り敢えず、前の部屋に戻ろうとした……普通にドアが開く。
なるほどね。
何にも納得していないし、なんなら何も理解していない。
取り敢えず部屋に戻り、メシを食い、シャワーを浴びる。
新しいタイツを履いて……と言うところでタイツの股間にギミックが仕込んであるのに気付く。
股間のところがシリコンのおまんこになっている。おまんこは穴が空いていて……それはちんこを通すのに丁度良いのだ。
ふざけやがって!
と憤るが、多分、これはちんこを通さないと次の部屋に行けない。
次の部屋には扉が三つある。ここの部屋とどこか別の部屋が二つ。もし、俺と同じ境遇の人間がいて、隣の部屋に侵入したら……そして、それが済んだら晴れて部屋を出られるのだろうか?
最悪な想像が浮かぶ。
タイツを着られないまま悩み続けるが、しかし、ただ暇なだけである。
寝て過ごしてみるが、腹が減る。
腹が減っても新しい食い物は届かない。
タイツからちんこを出すのが嫌で餓死するのは嫌だな。
俺は結局、思惑通りの格好をする。そうすると、扉が再び開いた。
そして、その奥には同じようなメイド服のアニメの顔をした着ぐるみがいた。
自分の姿を散々見続けていて、美的感覚が狂っていたのだろうか、可愛いと思ってしまった。
部屋の中に進むと錠が落ちる音がした。
モニターには「セックスしろ」と出る。
なるほど。納得も理解も出来ないが、それをするしかなかった。
戸惑いつつ、抱き合い、そして胸を触る。
何故か興奮する自分がいる。
相手も同じだろうか? ちんこが当たるのがはっきり分る。
お互いに勃起しているのは気持悪くもあるが、しかし、見た目は美少女だ。
自分の体型を自慢するつもりはないが、細身で筋肉質だと思っている。そして、相手も同じような感じだ。
悔しいけどちんこの高鳴りは収まりそうになかった。
道具も何もない状態でセックスと言えば、兜合わせぐらしかない。生憎後ろの穴は閉じているから。
正面から抱き合い、ちんこを合わせる。
相手がズボズボと手を使ってこいてくる。
やばい、気持ちいいかもしれない。
そう思った瞬間、早々に果てた。そして、殆ど同じタイミングで相手も射精してしまう。
錠が上がる音がする。
入ってきたドアの正面ではなく、左の部屋を開こうとするが、相変わらず締まったままだ。
モニターには、49と言う数字が現われる。
まさかとは思うが、そのまさかなのだろう。
自室に戻りシャワーを浴びる。メシを食ってタイツを着替える。
そして、隣の部屋に向かう。
相手も少し遅れてやってきた。
射精したばかりなので、射精は出来そうにない。
でも、相手がいるというだけで少し安心する。
少し相手を触ってみると、相手もまんざらではないようだ。
お互いの可愛い姿を、身振り手振りで褒めて、そして喜ぶ姿を見せる。
そんなやり取りをしていると、またちんちんが立ってくる。
ああ、またセックスだなと思うと、気持ちが高まってしまう。
モニターの数字は48になった。
これがまた日常になるのか。
もう既に日付の感覚は失っている。何日経っているだろうか?
取り敢えずセックスを繰り返すこと、可愛い動きを身に付けることを念頭に置いて動く。
段々と相手のことが好きになってくる。
可愛い、可愛すぎる。
彼女の事なんて既に頭になくなっている。
数字は30を切った。
タイツは後ろの穴が空くようになった。
当然のことながら、アナルセックスじゃないと鍵は開かない。
声を上げずに絶頂する事を覚えて、そしてトコロテンを自分ですることも、相手にさせることも覚えてしまった。
数字は20を切ると、部屋に玩具が設置される。
楽にイケると思ったら、そうでもない。普通に射精しただけでは許されなくなった。
道具を駆使して、気持ちよさを追求するようになった。
プレイは過激になり、体力を思いっきり使う。
気付けばあっという間にゼロになった。
部屋の扉が開く。
扉の二つある部屋だ。次が出口だろうか?
テーブルには水と薬が二組。そしてメモがある。
「服に着替えて薬を飲め」
テーブルの奥に無難なTシャツとジーンズが用意されている。下着も男物である。
さて、どうしたものか。散々遊んだ相手が目の前にいる。
顔を見られるのは嫌だという思いが強い。
相手も同じような事を考えているのだろう。
ああ、困る。
相手もずっと可愛いままでいて欲しい。
ああ、どうしよう?
そう思うと、相手は僕の手を握って、ベッドルームに戻った。
そこでまたセックスを再開する。
散々セックスしたあとのセックスだ。体力はもう限界であった。
再び射精した後、僕も相手もゆっくりとして、気が付けば眠ってしまっていた。
再び目を覚ましたとき、相手はいなかった。それどころか、あの部屋にあったジーンズとTシャツに着替わっていた。
ここは何処だろう? 2.5帖ほどの部屋に、パソコンとマットレスがある……漫喫か?
財布もあるし、スマホは充電中になっている。
外に出ると学校近くの漫喫だった。
店員に尋ねると、お代は先に貰っていると言われる。
そのままふらふらと自分のアパートに戻る。
途中、友達と出会って驚かれる。
「お前、二ヶ月もどうしたんだよ!?」
そんなにも経つのか……
「記憶がないんだよ……」
まさか、着ぐるみを着て男とセックス三昧だったとは言えない。
そう言えば、ヒロシはどうなのだろう?
「ヒロシも一緒だったのか!? お前と一緒で、昨日見つかって記憶がないって言ってたよ」
その時、一つ嫌な事が偶に浮かんだ。相手はヒロシだったのではと。
その後、ヒロシと出逢ったが、その事には触れられなかった。
堂々と単位を落として、留年は確定したが、ヒロシもそれは同じだ。
ああ、あの着ぐるみの記憶がちらつく。
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