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ジャングルの聖域

  俺はスマトラ島で野生動物の保護活動をしてるレンジャーだ。大学の頃に大型哺乳類が密猟者によって数を減らしている実情を知り、とても心を痛めた。元々動物好きだった俺は、すぐにインターネットで野生動物保護活動をしているボランティア団体にコンタクトを取り、そこでしばらくボランティア活動をすることにした。

  それから数年が経ち、俺の功績が認められ、ボランティアからレンジャーへと昇格した。日本とインドネシアを行き来するのは大変だが、やりがいのある仕事で、充実感もある。一年中蒸し暑いのは少し辛かったが、今はもう慣れた。レンジャー基地はジャングルに近い場所にあるので、色んな野生動物を観察できるのが何よりも俺のご褒美だ。

  野生動物の中でも大型肉食獣は密猟者によって個体数を減らしている。俺はジャングルを見回り、密猟者がいれば追い払うか拘束しなければならない。相手は殺人をも厭わない極悪集団で、野生動物は金目当ての道具にしか思っていない。迂闊に手を出せばこちらが危ない目に遭う緊張感のある仕事でもある。

  仕事に追われているうちに、気が付けば29歳になっていた。現地のバーなどにはよく顔を出しているが、恋人は作ったことがない。レンジャーはグローバルに交代制なので、今期のミッションが終われば日本に帰って婚活でもやろうかと考えていた。

  そんな矢先、こんな泥臭い現場に似合わない可愛らしい日本人の女の子がボランティアとして入ってきた。体型がボンキュッボンで、23歳だというし、日本でモデルをしてた方が良いのではと思ってしまうくらいだ。何でも彼女は動物がすごい好きで、自然にいる野生動物を見たいと思って応募してきたとのこと。基地に日本人は俺一人しかいなかったので、自然と俺が彼女の面倒を見る流れになった。嬉しくもある反面、目のやりどころに困るので、仕事に支障が出ないことを祈りたい……。

  彼女は好奇心旺盛である一方、優しい性格だった。俺の雑用を効率よくこなしてくれることもあり、一緒に仕事をしていくうちに親しくなり、少しずつ彼女に心惹かれていくものがあった。

  「愛内さん、この報告書を事務に運んでおいてくれる?」

  「はい、わかりました!」

  「ありがとう。あのー、愛内さんもこっちに慣れて来たし、今度、一緒にジャングルの見回り行ってみるかい?」

  「え? いいんですか?」

  彼女は目を大きく見開いて嬉しそうに笑った。

  「よし、それじゃあ決まりだ。それほど危険度が高いルートではないから初めて行くにはちょうどいい頃合いだと思う。俺から皆に推薦しておくよ」

  「戸田さん、ありがとうございます!」

  こうして、俺と彼女は二人でジャングルの見回りに行くことになった。

  「ジャングルの中って生き物の気配が濃くてワクワクします」

  彼女が目を輝かせながらそう言って、俺の後に付いて来る。

  「そうだね。詳しく調査されていないところも多いから新種もたくさんいると思うし、好奇心がくすぐられるよね。あ、でも危険な生物もいるから、十分に気を付けてね」

  「はい、この日のためにいろいろ勉強してきました!」

  和気藹々とジャングルの中を進んでいく。

  途中までは楽しい雰囲気だったが、開けた平原が広がる場所に人の姿を見付けて、一気に緊張感が高まった。見慣れない顔だ。密猟者の可能性が高い。

  「愛内さん。初めてでごめんだけど、俺はあの怪しい人物が何者か探らなければならない……」

  「わ、わかっています。それが仕事ですもんね」

  「帰りが遅くなるかもしれないけど、許して欲しい」

  「大丈夫です……!」

  俺は怪しい人物の行動を草陰から監視していた。どうも相手は三人のようだ。銃を持っている。かなり怪しい。怪しい人物達は望遠鏡で何かを探している。しばらく監視していると、怪しい人物達に動きがあった。銃を特定の方向に向けて狙いを定めている。銃の矛先を急いで確認すると、トラの親子がいた。密猟者確定だ!

  「こちらエリアT1。密猟者を発見した。至急、応援班をこちらに向かわせてくれ。奴らは銃を持っている」

  俺は無線でレンジャー事務局に応援を要請した。俺も持ってきていた銃を手に取った。

  「俺と愛内さんではあの三人を拘束するのは難しい。しかし、応援が来る前にトラが撃たれる可能性が高い。愛内さんは危険だからそのままここにいて欲しい。絶対何があってもここを動かないで。俺はあいつらの注意を引き付けてくる」

  「……。気を付けて下さいね」

  「大丈夫。こういうのには慣れているさ」

  俺は意を決して、銃を構えつつ、三人組の方に歩いて行く。

  「おい、君達、何を狙っている。ここは禁猟区のはずだ」

  大きな声で話し掛けたので、相手もすぐにこちらに気付いた。

  「まずい、レンジャーだ」

  「どうする? ずらかるか?」

  「いや、せっかく獲物を見付けたんだ。レンジャーは俺達を殺せない。先にトラを狩る」

  トラに狙いを定めていた密猟者はそのままトリガーを引いた。

  パ―――ンと大きな銃声が鳴り、グアアアアとけたたましい獣の雄叫びが響いた。

  「な――――」

  密猟者の一人が俺を無視してトラに銃弾を放った。俺は虚をつかれた。

  「おい、やめろー!!!!!!!!!」

  密猟者はその後も二発、三発とトラに向かって銃弾を撃ち続ける。相当の腕の持ち主のようで、狙われた親トラが血塗れで倒れている。早く止めさせないとトラが皆殺しにされてしまう。こうなってしまっては止むを得まい。俺は密猟者に向かって銃弾を数発放った。しかし、距離があったために外れてしまった。

  「おい、アイツ、今撃って来たぞ、やべーって」

  「大丈夫だ、一人しかいねぇ、俺が相手をする。お前ら二人は殺したトラをトラックに載せろ」

  「お、おう、わかった……」

  密猟者二人がどこかに向かって走り出した。

  「なっ!?」

  俺は思わぬ密猟者の行動にまた虚をつかれてしまった。

  「おい、そこの二人、止まれ!」

  走る密猟者の足を狙って銃弾を放つ。しかし、密猟者には当たらない――その時、肩に激痛が走った。

  銃を持った残りの密猟者がこちらに銃を向けていた。

  「おい、よそ見してんじゃねぇよ。お前の相手は俺だ」

  「くっ……」

  状況はかなり不利だ。このままではトラよりも俺が先にやられてしまう。お互い銃口を向け合う。密猟者は余裕の表情だ。おそらくあちらの方が腕は上だ。

  キキーという車が急いで走る音がした。視線を一瞬向けると、走り去った二人組がトラックに乗っていた。ただのトラックではない。かなり改造している。殺したトラを回収する気だ。案の定、二人組はトラックをトラの方に向けて走らせていた。

  「くそっ。ここからじゃ遠い」

  タイヤを狙えば、銃口を向けた密猟者に自分が撃たれる。どうにか救いはないものか……。

  「何故、トラを撃った?」

  「ああん? そんなの決まってるだろ? 高く買う奴がいるからだよ」

  「売買は禁止されているはずだ」

  「ははっ、物さえ手に入れば、後はどうにでもできるんだよ!」

  トラックの走る音が止まった。視線を向けると、二人組が殺したトラを荷台に載せている。ダメだ。この膠着状態では俺には何もできない……。

  「密猟者! そこを動くな!」

  応援班の声だ。すごい駆動音が遠くから聞こえる。応援班の車はジャングルでも走れるように戦車仕様に改造している。

  「ちっ、アレには勝てないな……あばよ!」

  「あっ、おい、待て! 痛っ」

  密猟者は俺に向かって数発発砲しながらトラックの方に走って逃げていった。密猟者達が最後の一人を回収すると、トラックは平原を猛スピードで走り去っていった。俺は足を撃たれ、すぐに密猟者を追うことができなかった。

  「くそぉ!」

  悔しい。トラは殺され、俺は何もできなかった。これじゃあ、レンジャー失格だ。

  「戸田さん! だ、大丈夫……じゃないですね。あわわ、血、血が出ています」

  彼女が草むらから飛び出してきた。いろんな出来事が立て続けに起こったので、少し混乱している様子だ。

  「嗚呼、何発か喰らってしまったが、命に別状はない。ありがとう。応援班ももうそこまで来ているし、心配ご無用だ」

  「うぅ、良かった……私、すごく怖くて、何もできなくて……戸田さんが殺されてしまうんじゃないかってすごく怖かったんです」

  彼女はそう言って、膝から崩れ落ちて泣き出した。

  「すまんな。こりゃ、まいったな……」

  この後、応援班が駆け付け、俺はすぐに病院に連れて行かれた。しかし、奇跡的にも銃弾は体を掠めたものばかりで、血は出ていたが、全治三日で退院できた。奇跡はそれだけではなかった。殺されたトラは奴らに回収されたが、子供のトラ二匹は殺されずに済んだ。応援班によると、子トラは何が起きたのか理解ができていなかったようで、その場で呆然と座っていたという。このままではまた密猟者に狙われる可能性が高かったので、しばらくレンジャー事務局で保護することになった。

  ネコより少し大きな体サイズの子トラ達は、俺と彼女で世話をすることになった。

  「おっきいネコみたいですね」

  「そうだな。このサイズのままだったら飼えるんだけどな。これからもっと大きくなるよ」

  「お世話しているので、おっきくなっても可愛いと思います」

  「そうだな」

  彼女は子トラ二匹とじゃれ合って楽しそうだった。あのショッキングな事件は彼女の心に大きな傷跡を残したに違いない。人間の強欲、醜さ、怖さ。できればそういうものは優しい彼女には見て欲しくなかったが、この現場にいる以上嫌でも目にすることになる。これが現実なのだ。しかし、彼女もある程度はそういうことが起こることを聞かされていて、受け入れる覚悟を持ってここに来たはず。少しずつでいい、現実を受け止めて強くなって欲しい。

  最初は部屋で放し飼い状態だった子トラ達もすくすくと成長し、もう部屋では一緒に遊べないくらい大きくなってしまった。ずっと飼い続ける訳にはいかない。保護すべき野生動物達はトラ以外にもたくさんいる。そろそろ野生に返す練習をした方がいいかもしれない。しかし、先日の密猟者達はまだ捕まっていない……。

  そんなことを憂いていたある日、人が何か大型の動物に殺されたというニュースが飛び込んできた。野生動物に対する風評被害が出ないといいなと思っていたら、内々で殺された人物の写真が事務局に回ってきた。

  「おい、戸田、これって……」

  「……。嗚呼、この前の密猟者だ」

  殺された人物は俺達を襲った密猟者三人組だった。金目当てでトラを殺したのだ。野生動物に殺されても文句は言えないだろう。

  「地元民の話によると、ワータイガーが密猟者を殺したって」

  「ワータイガーか……」

  ワータイガーはこの地域に伝わる伝承上の虎人間だ。地元民はこのワータイガーを守り神として信仰している。しかし、伝承は伝承だ。俺はレンジャーとしてこの地域に何年も住み、地理的にも詳しくなったと思っているが、虎人間なんて見たことがない。そんなものがこの時代にいるとしたら、とっくに発見されて話題になっているはずだ。

  大きくなった子トラと彼女と一緒にジャングルの中を歩く。この前の密猟者は大型動物に殺されたので、この噂が広がって、密猟者もしばらくは現れないだろうと考えた。このタイミングで保護した子トラ達を野生に返す準備を進めている。いきなりジャングルに放っても生きていけない可能性があるので、事務局近くから少しずつジャングルの奥へと連れて行き、自然の環境に慣れさせている。うまく自然に帰ってくれるといいが……。

  「戸田さん、ワータイガーの話知っていますか?」

  「嗚呼、知っているよ」

  子トラを近くのジャングルまで連れて歩いている途中、彼女が思い出したように話し掛けてきた。

  「最近職員さんの間で話題ですよね。戸田さんは信じますか?」

  「俺は何年もここにいるけど、見たことがないから信じてないね。愛内さんは?」

  「そうですか~。私はワータイガーを信じていますよ。このジャングルに守り神がいるって思うとなんか素敵じゃないですか! 私がワータイガーだったら悪者をやっつけられるのに!」

  彼女はシュバシュバっとボクシングの動作をした。

  「あはは、そんな可愛いワータイガーなら俺も会ってみたい」

  「もー、笑わないで下さい、本気なんですから~~!」

  あの時、何もできなかった彼女は後悔の念があったという。今は茶化したが、彼女なりに強くなろうとしているのだろう。

  彼女と冗談交じりに話しをしながら歩いていたら、前方から二匹のトラの成獣が現れた。

  「ガルルルル……」

  現れたトラは明らかにこちらを威嚇している。

  「まいったな。普段はこんなところに現れないのに……」

  相手は保護動物と言えど、野生動物だ。こちらが保護しているという情は伝わらない。人命とトラの命を天秤に掛けた時、優先されるのは人命だ。俺は咄嗟に銃を抜こうとした――その時、二匹の子トラが俺達の前に出て、成獣のトラを威嚇し始めた。

  「ガルルルル……」

  「グルルルル……」

  まさか俺達を守ってくれようとしているのだろうか?

  驚いたことに、二匹の成獣は子トラを見るな否や、威嚇をやめ、くんくんと子トラ達のニオイを嗅ぎ始めた。何かを探っているようだ。

  「戸田さん……」

  「シッ、様子を見よう」

  俺達はトラ達のコミュニケーションを見守ることにした。

  しばらくすると、成獣が子トラの体をペロペロと舐め始めた。どうやらもう戦意は消失したらしい。威嚇していた子トラ達も受け入れたのか、威嚇をやめ、成獣の体を舐め始めた。

  「これは、このまま野生に返すチャンスだ。予定外だけど、お前達とはここでお別れだ」

  俺はそう言って、子トラ達の首輪を遠隔で外した。首輪の外れた子トラ達は少し驚いたようだったが、こちらをチラリと見た後、成獣の方に歩みを寄せた。四匹でしばらくペロペロお互いに舐め回した後、ジャングルの奥の方へと歩き始めた。

  「子トラちゃん達、元気でねー!」

  もう襲われないと察した彼女は子トラ達に声を掛け、大きく手を振った。子トラ達はこちらをチラリと見たが、すぐに前を向いた。成獣は俺達に頭を下げた……ように見えた。

  「行っちゃいましたね。少し寂しい」

  「嗚呼、そうだな。でもこれでいいんだ。野生動物は人間とは別の世界に生きているんだ」

  「あの子達、元気にたくさんの子を産むといいな」

  「そうだな」

  「私もたくさんの子供が欲しいな……」

  「ん?」

  「な、何でもないです! 早く帰ってこのことを報告しましょう」

  「あ、おい! そんな速足で歩くと危ないぞ!」

  俺はこのことを事務局長に話すと、驚かれたが、それでよかったと太鼓判を押された。

  あれから密猟者の報告は一件もなかった。少し不思議なことを除いて、あれからの日々はいつも通りだった。

  「なあ、自然に返したトラがこのあたりに行くと電波がぱったり途絶えるんだけど、電波を遮る何かがあるのかな?」

  「おおかたオーパーツでも埋まっているんじゃないか? ジャングルの奥地だから何があってもおかしくはないさ」

  俺達が保護した子トラには衛星経由で電波で位置が特定できるICチップを体に埋め込んでいた。ICチップは保護した動物すべてに付けている。ジャングルに帰った子トラ達がいつどこにいるのかはこのICチップのおかげでパソコンで把握することができる。位置が動いていれば元気に過ごしているということだ。しかし、子トラ達が特定のエリアに行くと位置情報が全く入らなくなるが、そのエリアを離れるとまた位置情報が入るということが発覚し、職員の間で話題になっていた。そのエリアはジャングルの奥深いので、何があるのかは皆興味津々だが、誰も行けないから分からない。ネットの世界地図で確認しても特段何か異物があるようには見えなかった。

  「きっと人間が入ることができない野生動物の楽園があるんですよ!」

  その話を聞いた彼女は楽しそうにそう言った。

  「あはは。そうだな。そうだといいな」

  「もー、また適当に笑って。こういう話は全然ノッてくれないですよね、戸田さん」

  「レンジャーは現実主義だからな。妄想は自分の頭の中だけで閉まっておくよ」

  「えー、戸田さんの妄想も私聞きたいなぁ……」

  彼女がグイっと顔を近付かせて来る。少し、いや、結構ドキッとしてしまった。

  「よ、酔っているんじゃないか。明日も仕事はあるんだから、飲み過ぎは厳禁だぞ」

  「わかってますよー!」

  彼女はそう言ってガブガブ酒を飲んだ。

  「うーむ、どうしたらよかったのか……」

  慌ただしい日々はあっという間に過ぎていき、気が付けばレンジャーの休暇期間が目前に迫っていた。レンジャーはグローバルに交代制で行われており、休暇期間は2ヶ月まるっと休むことができる。俺は婚活も兼ねて日本に帰る予定だったが……最近は彼女のことが気になり始めている。結構年下だし、どうしたらいいものか……。

  「愛内さんは休暇期間どうするの? 俺は日本に帰る予定だけど」

  「私も日本に帰ろうかと思っています。それじゃあ、あの……日本に帰ったら一緒に旅行行きませんか?」

  思わぬ積極的な誘いに俺はたじろいだ。

  「お、おう、いいね。母国と言えど、まだ行ったことがないところはたくさんあるからなぁ」

  「私もそうですー!」

  彼女は嬉しそうに笑う。この時気付いた。俺は彼女のことが好きなのだと。この気持ちを伝えるべきかどうかは正直迷っていた……。

  それからあっという間に帰国日になった。俺は彼女と共に空港がある街に行くためにジャングルの中を歩いていた。少し不便だが、ここを歩かないと街には行けないのだ。彼女は帰国したら行きたい旅行の計画を立てていた。

  「ん?」

  「え? こんなところにトラ?」

  俺達の行く手を阻むかのように、成獣のトラ四匹が道を塞いでいた。こちらをじっと見ている。このエリアにトラが現れることは今まで聞いたことがない。今は銃も持っていない。襲われたらどうしようかと俺は緊張した。

  「もしかして、子トラちゃん達かな?」

  「……。スマホで調べてみる」

  街から近いこのジャングルではスマホの電波が入るのだ。便利な時代になったものだ。野生動物の位置情報アプリはスマホにも入れていたので、俺はすぐに検索した。すると、二匹は俺達が育てた子トラで間違いないようだった。

  「間違いない。二匹は俺達が育てたトラだ」

  「本当ですか! すごい! こんな偶然あるんですね!」

  彼女は喜んだが、俺は素直に喜べなかった。野生に帰った動物が俺達のことをまだ覚えているとは限らない。

  ふと何かの気配がすると思って振り返ると、後ろにもトラの成獣がいた。囲まれてしまった。これでは逃げ場がない……。立ち往生していると、子トラ二匹がまるで付いて来いとでも言っているかのように歩き始めた。後ろにいるトラがそれを促すように俺達に詰め寄って来る。

  「付いて行くしかなさそうだな」

  「は、はい……」

  正直、こんな状況は初めてだし、聞いたこともない。一体何がどうなっているのか、トラは俺達をどこに連れて行く気なのか、全く気が気じゃなかった。スマホで位置情報を確認しながら歩いていると、どうもジャングルの奥地に導かれているらしい。奇妙なことに、まるでワープを使っているかのように、位置が急激に飛ぶことがあった。

  「戸田さん、進行方向って……」

  スマホを見ていた彼女は気付いたようだ。

  「嗚呼、君が言っていた楽園だよ」

  電波が届かない謎のエリア。俺達はどうやらそこに導かれているようだ。

  電波消失地点手前まで来ると、トラ達は突然立ち止まって鳴き声を上げ始めた。

  「ガオオオオオオオーン!!!」

  「ガオオオオオオオーン!!!」

  すると、目の前の景色が歪み、巨大なドーム状の空間が現れた。

  「何だ……これ……」

  「すごい……」

  俺は初めて見る未知のものに恐怖したが、彼女は好奇心の方が勝り、目をキラキラ輝かせていた。先導していた子トラ達がドームの中に入っていく。後ろにいるトラが詰め寄って来る。中に入れということらしい。

  俺達は意を決して中に入った。

  「こ、これは……」

  「すごーい! 楽園! 戸田さん! 楽園ですよ!」

  彼女は目を輝かせてそう連呼する。彼女の言う通り、目の前にはジャングルとは違った美しい景観が広がっていた。真ん中には宮殿のような建物がある。ここにはトラしかいない。一体ここは何なんだ?

  トラ達は俺達を宮殿に導いているようだった。もう何が起きても不思議ではない。なるようになれだ。俺達は導かれるままに宮殿に入って行った。

  「よう来た人間達よ」

  宮殿には普通のトラの三倍はあるであろう巨大なトラが二匹座っていた。そのトラが俺達に話し掛けてきた。

  「私達は聖なるトラの一族。ようこそここまでおいで下さいました。まずは我が孫を安全に育てて下さり、ありがとうございました」

  巨大なトラの話が始まった。俺達が保護したトラはこの王族の孫だったらしい。目の前の巨大なトラは王様と王妃。人間の言葉を話せるのはこの二匹だけとのことだった。子トラ達と一緒にいた成獣は王子とその妻、子トラ達はその子供(つまり孫)で、後ろにいたのが兵隊だった。このドームはトラ達の聖域で、普通はトラしか入ることができないのだが、特別に俺達を招いたとのこと。俺達がこの地を離れる前に、孫を育ててくれたお礼を一言言いたかったと言う。驚きの連続だった。

  「お主らに一つ頼みがあるのじゃが、聞いてくれるだろうか?」

  「な、何ですか?」

  王様が俺達に頼みたいこととは一体何だろうか?

  「この聖域の守護者になって欲しいのじゃ」

  「聖域の守護者?」

  「我々の仲間は悪い人間達によって命が奪われ続けている。今まではこれもまた自然と摂理と考えて見過ごしてきたが、孫の世話役を殺されたところで我慢が限界に達したのじゃ」

  それはあの密猟者三人組のことだった。

  「聖域の守護者には報復を頼んだのじゃが、聖域から離れた場所まで行き過ぎたために力をほとんど使い果たしてしまったのじゃ。お主らは人間でありながら、これまで我々を守ってきた。それはよく知っておる。そこでこの役を頼めないだろうか?」

  「す、少し考えさせて下さい」

  確かに俺達はトラを含め、この地の野生動物を守ってきた。これがこの先もできるというのであれば本望だが……トラの守護者というのは一体何なのか……? 分からないことが多過ぎる。トラに囲まれたこの場所で断ることはできるのだろうか?

  「戸田さん……」

  「ハッ! 愛内さん……突然過ぎる話だ。どうしたらいいのか俺にも分からない……」

  「そうですね……でも……トラの守護者、一緒にやりませんか?」

  「えっ?」

  彼女が意外なことを言い出すので、俺は心底驚いた。

  「ちょ、ちょっと待って。冷静に……」

  「私は冷静です」

  彼女の目は本気だった。

  「私はあの時何もできなかった。でも守護者になれば、トラ達を守ることができる。それなら、私はトラの守護者になりたいんです」

  「本気……なのか?」

  「はい」

  彼女は堅い信念を持っている部分がある。彼女はこのままでは一人でもトラの守護者を受け入れそうだ。彼女一人をここに残して、俺はここを立ち去ることができるだろうか? ……できない。そんなことはできない。俺はもう彼女のことを愛している。そんな彼女を一人残して立ち去ることなんてできない。

  「……わかった。愛内さんがやるというのなら、俺も一緒にやるよ」

  「本当ですか?」

  「これからどうなるのか分からないから、今ここで言っておく。俺は君が好きだ。君と一緒に仕事をしていくうちにすごく好きになってしまった。付き合って欲しい」

  「えっ……」

  俺の突然の告白に彼女は涙を流した。

  「う、嬉しい。私も……優しい戸田さんのことが好きになりました。ずっと一緒にいたいと思って、勇気を出して帰国しても旅行しようって……」

  あれはそういう意味だったのか。

  「お付き合い致します。むしろ、結婚して下さい!」

  「えっ!」

  まさかの逆プロポーズ。

  「あちゃー、一本取られたなぁ……本当は俺が言いたかったのに」

  「えへへ。一本取っちゃいました」

  俺と彼女の意思は決まった。

  「王様、わかりました。俺と彼女の二人で、守護者をやります」

  「ありがとう。人間達よ。それでは、これを食べておくれ」

  王様がそう言うと、二人の前に小さな肉が運ばれてきた。

  「それは守護者の力を凝縮した肉じゃ。それを食べよ」

  それはどう見ても生肉だった。

  「生肉か……」

  「そ、そうですね……」

  生肉を食べるのは結構抵抗があるが、守護者になると決めた以上、何とでもなれと思って、俺は勢いで生肉を食べた。俺が食べるのを見て、彼女も思い切って食べた。生肉は血なまぐさい味だった。

  「はぁ……はぁ……食べた……」

  「んくっ、んくっ……はぁぁ……」

  俺と彼女は生肉を食べ終えた。すると、急激に体が熱を帯び始めた。

  「体が……熱い……」

  「私も……熱いです……」

  体がおかしい。一体どうなってしまうのか。

  「あ、あがっ、いぎ……」

  「あう、はぁはぁはあ、えぐぅ……」

  彼女と一緒にガクガクと体を震わせる。体が熱くて熱くておかしくなりそうだ。両腕を思いっきり左右に振ると、ビリビリと服が破けた。筋肉がメキメキと発達していている。爪がグググと鋭くなった。ペニスがいきり立ち、勃起した勢いで着ているものをすべて突き破った。ヤリタイヤリタイヤリタイ――

  「愛内……さん……ダメだ……理性が収まらない……」

  「わた……しも……来て……」

  彼女のその一言で理性がすべて吹き飛んだ。俺は彼女を押し倒し、履いているズボンの上から彼女のアソコに向かってペニスを突き刺した。

  「あぁぁぁぁっ――――!!!」

  俺のペニスが彼女のズボンを突き破ってアソコに入ると、彼女は大きな声を上げて吠えた。その勢いで彼女は仰け反り、歯が鋭く尖った。ビクビクと震える彼女のお尻からズボンを突き破ってシッポが一気に生えた。彼女の生えたシッポを手で握って、本能の赴くまま正常位で腰を振る。彼女の体はメキメキと大きくなり、着ている服が膨らんで弾け飛び、大きなおっぱいがぶるるんと露出した。俺はそのおっぱいに向かって顔を埋め、乳首を舐め回す。

  「あああん! やー! あっ、あっ、いやあああん!!!」

  お尻がムズムズする。俺の体にもシッポが生えてきているようだ。腰を振りながら、彼女のおっぱいを舐め回していると、お腹の方にも複乳が盛り上がってきた。両手でそれらも揉んで彼女の性感帯を刺激する。

  「はぁはぁはぁ、やあああああん!!!」

  彼女のシッポを甘噛みすると、彼女は涙を流して悶えた。彼女が苦しそうな顔をしたと思ったら、鼻先を中心にマズルが伸び始めた。同時に毛も生え始め、トラらしい模様が広がる。俺の獣化速度よりも彼女の方が早い。手足に肉球が生え、指の太さが太くなっていく。彼女の全身にも毛が生え始め、骨格が人間からトラのような姿に変化していく。彼女の耳を甘噛みすると、徐々に頭の上に移動し始め、可愛らしい丸みを帯びた三角耳になった。俺の手足にも肉球が生え始め、指が太く短くなっていく。彼女の服がすべて破れ落ち、俺はすっかりトラの姿になった彼女を正常位のまま冒し続けた。不思議なことに、彼女の髪は残ったままだった。

  「ガルルル……はぁはぁはぁ……私も……動きたい……」

  彼女はそう言うと、器用にもトラの身体能力で体を跳ね起こし、俺を押し倒して騎乗位の姿勢になった。彼女の今の姿は、トラに人間のおっぱいと髪を生やしたような姿――そう、まるでワ―タイガーのような姿だった。彼女の力は強く、俺の上で思いっきり腰を上下させる。

  「あ、ああぁ、やべぇ、クソ気持ちいいい」

  彼女に冒されて、俺の体も変化していく。ガクガクと震えて、体中の骨格がトラのように変化していく。キスをすると、マズルが伸び、全身に毛が生え始めた。

  「はぁはぁはあ、がるるるる……」

  「があぁぁぁー! ぐるるがるるる」

  俺と彼女はトラの鳴き声で鳴き続ける。彼女のアソコに入れているペニスの感覚が変わった。形が変わっているようで、すごく気持ちいい。ペニスの形が変わるとすぐに絶頂してしまい、もう何度イカされたかわからない。

  「ガアアアアアアア――!!!!!」

  「グルルルルアアアア――!!!」

  獣と化した二匹で絶頂の雄叫びを上げた。

  「はぁはぁはぁ……愛内さん……最高だよ」

  「はぁはぁはぁ……戸田さん……大好き……」

  俺達は最後にマズル同士でキスをした。

  「おお、新たな守護者の誕生じゃ!」

  「良かったですね、アナタ」

  王様と王妃が嬉しそうに微笑んだ。

  姿がトラと化したからか、他のトラの声も理解できるようになっていた。周りのトラから祝福の声が聞こえた。俺達は少し照れながらも、この祝福に心が満たされていた。

  「愛内、だいぶお腹が大きくなってきたね」

  「はい。子供は三匹生まれそうです」

  守護者としての任務はこの聖域を守る事、聖域外のトラ達を守る事であるが、あれからは密猟者は現れていないようだった。彼女は子供をたくさん産んでトラの個体数を増やしたいと意気込んでいる。俺も子供がたくさんできて、トラを絶滅から救うことができるなら嬉しい。彼女の子供が生まれてくるのを楽しみ待ち侘びている。

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