【EX】わたし達の大冒険(中編・その1)

  (ラビッピ!しっかりするでチュ!)

  (らびっぴねーたん!)

  (おねーちゃん!)

  目の前の自分そっくりなウサギを前に、倒れたわたしへ駆け寄って必死に呼びかける子ネヂミちゃん達。

  でも、今のわたしにその声は届いていません。

  [newpage]

  ─────

  「(ここ、は……?)」

  目を開けると、そこはさっきまでわたしが居た所に似た森の中。

  辺りにはモロQさんがうろうろしていて、入口には……さらわれたはずのモグラーニャさんの姿がありました。

  「(も、モグラーニャさん……!?)」

  わたしはすぐに、モグラーニャさんの元へ駆け寄ろうとします。

  しかし……。

  「(あれ、動けない……っ。)」

  何故かわたしの体は動かず、そればかりか勝手に同じ場所をうろうろしていました。

  「(そ、そんな……モグラーニャさん……っ!)」

  彼に気づいて貰えないかなと、必死に呼びます。

  でも、どうやらモグラーニャさんにはわたしの声は聴こえてないようで、その場から地下へ潜ってしまいました。

  ─────

  「(どうして……モグラーニャさん……。)」

  あれから、同じ場所をモロQさん達とうろうろし続けるばかりで一向にモグラーニャさんが戻って来る気配はなく、もしかしてわたしはずっとこのままなのかの思い始めました。

  でも、わたしはモグラーニャさんが、わたしのことを見捨てたりするような人じゃないことを知ってるし、信じてます。

  だから、きっと……。

  「(……ぁ、モグラーニャさん……! )」

  そう願っていると、モグラーニャさんは掘った地面へと戻ってきました。

  そして、足早にわたしの方へと向かってきて。

  「そういやぁやたらとウサギがそこらに居るが、ここはウサギの森か?」

  「(はい……!ウサギです……っ、そしてわたしはラビッピです……!モグラーニャさんっ!)」

  わたしに気づいたのか、しばらくこちらの姿を眺めてきたために必死に呼びかけます。

  やっぱりモグラーニャさんに見つめられると、今でも恥ずかしいです……////

  「それにしちゃ可愛いよな~。変な唇野郎とかトカゲみたいなヤツばっかかと思ったら、こんなアイツらしくない動物まで飼ってるのかじんべえは。」

  「(か、かかか……可愛い、だなんて……////)」

  モグラーニャさんったら、何を言ってるんですかっ。

  だって、いつもわたしのことを娘のように優しくしてくれたり、一緒に特訓してくれたりしてるじゃないですか。

  そんな初対面みたいなこと、言わないでくださいっ。

  「(……って!わわわ、モグラーニャさん退いてください……!!)」

  「まぁいい、とりあえず黒い球探さねぇとな……ぐわっ!?」

  と、そんなことを考えている間もわたしの体は勝手に動き続けていたため、ちょうど目の前で分銅を退けていたモグラーニャさんにぶつかってしまいました。

  [newpage]

  「いってぇ~……ウサギだからってつい油断してたぜ。」

  「(ご、ごめんなさい……っ!モグラーニャさ……あれ……?)」

  でも、感触はあったのに何故かわたしは痛みを感じませんでした。

  えっと、これってもしかして……。

  「(今のわたし、モロQさん達と同じで動かされてるだけなんでしょうか……。)」

  声は聴こえていないようですし、モグラーニャさんもわたしのことを見ても何も反応しませんでした。

  つまり、今のわたしはすぐ側でうろうろしているモロQさんト同じで、モグラーニャさんから見たら敵なんですね……。

  「(元の世界に戻るには、どうしたら……っ。)」

  きっと今頃、子ネヂミちゃん達はそっくりなわたしに襲われてるかもしれません。

  そんなの、嫌です……。

  「(こうなったら、目の前のモグラーニャさんに今のわたしをやっつけてもらうしか……。)」

  それ以外に戻る方法はなさそうですし、痛みを感じない今ならきっと。

  しかしそう考えている間に、モグラーニャさんはそのまま黒い球の方へ向かってしまいました。

  「(ぇ、えっと……モグラーニャさん……っ。)」

  同じ場所をうろうろさせられるだけで、何もできないわたし。

  ただ、モグラーニャさんが戻ってきてくれることを願うばかりです。

  「(お願いします……っ、モグラーニャさん……。)」

  (例え相手が、自分の知っている奴であっても敵として立ち向かってきたなら戦うしかない……。あの頃のオレはそうしてきた。もちろん、お前が立ち向かってきた時もな……。)

  モグラーニャさんは、かつて邪魔をしていたわたしに対しても躊躇(ちゅうちょ)なく倒していたとお話してました。

  なのできっと、今のわたしのこともやってくれるはずです。

  「(ぁ、来ました……!)」

  わたしの願いが通じたのか、モグラーニャさんが黒い球を運びながらこちらへ戻ってきました。

  そして、その願い通りモグラーニャさんはわたしに向かって黒い球を投げつけ。

  「(ありがとうございます……モグラーニャさん……。向こうではまた、わたしと仲良くしてくださいね……?)」

  そう言い残すと共にわたしの体に黒い球が当たると、そのまま目の前が真っ白になりました。

  [newpage]

  ─────

  「ラビッピ!」

  「らびっぴねーたん!」

  「おねーちゃん!」

  「っ……ここ、は……?」

  あれからしばらくして元の世界に戻ってきたのか、わたしの耳に子ネヂミちゃん達の声が聴こえると、ゆっくりと目を開けました。

  さっきまでとは違いモグラーニャさんは居なくて、心配そうに見つめる三人の姿がそこにあり。

  「ラビッピー!」

  「らびっぴねーたんっ。」

  「きゃふっ!」

  「よかったでチュ……きがついて……っ。」

  「ごめんなさい、わたしったら……こんなことで……。」

  抱きつく子ネヂミちゃん達を、申し訳なく思いながらよしよしと撫でてあげます。

  どれくらい気を失ってたか分かりませんが、わたしは皆さんが無事のようで安心しました。

  「チュ……。それにしてもじんべーのやつますますゆるせないでチュ!」

  「むー!らびっぴねーたんはらびっぴねーたんだけー!」

  「皆さん……////」

  わたしも、あの人の事は二度と許せなくなりました。

  いえ、元から許す気なんてなかったですが、まさか自分の偽者まで出してくるなんて……。

  どれだけ、わたしのことが憎いんですか。

  「……行きましょう……!わたしはもう、大丈夫です……っ。」

  そう言って立ち上がると、わたしは目の前でわたし達の様子を伺うウサギの方を向きます。

  あいにく、進路をふさぐような形で立っているので、そのまま切り抜けようとしてもダメですよね……。

  なので、ふと思いついた事を実行しようと思いました。

  「ずっと子ネヂミちゃんだけに、足止めさせているのも申し訳ないです……なので……っ。」

  そう、直接動きを停めさせるには、敵の足を狙った方が良い事に気付いたので、わたしは一か八か賭ける事にしました。

  わたしからの敵意を察したのか、ちょうど動き出したウサギとタイミングを合わせ──。

  「えいっ……!!」

  足払いするように蹴ると、上手い具合に当たってウサギがその場に倒れ込みました。

  「やったでチュ!」

  「いえ、目の前のこのわたしも先ほどまでのアジラさん達と同じで、きっとすぐに動き出します……っ。」

  その様子を見て目を輝かせる子ネヂミちゃんですが、まだ倒した訳ではないのですかさず黒い球を探しに部屋の奥へと向かいます。

  「えっと……あ、ありました……っ。」

  すると、ちょうど黒い球はすぐ近くにあったので、急いで黒い球を運ぼうとしました。

  しかし、わたしの後ろには運悪くモロQさんが居て……。

  「キャ……っ!」

  あとちょっとで触れられるといった所で、モロQさんの体当たりを受けてしまいました。

  「チュ?ラビッピ~!」「らびっぴねーたん!」

  「いたたっ……、油断しちゃいました……っ。」

  「ムリはダメでチュよ?」

  悲鳴に気づいた子ネヂミちゃんと、二人の子モグラさんが心配そうにわたしのもとへと駆け寄ってきます。

  「ごめんなさい……でも、大丈夫です……っ。」

  幸い、かすり傷さえなく済んだ為わたしはそのまま立ち上がると、モロQさんが戻ってくる前にと黒い球へ向かいます。

  そして……。

  「幾らわたしでも、二度も……、やられません……っ!」

  そう言いながら、ちょうどこちらへと向かってきたモロQさんへ黒い球を蹴りつけて倒しました。

  「チュ~、やっぱりラビッピはヒーローでチュねっ。」

  「らびっぴねーたんひーろー!」

  「そ、そうですか……?ありがとうございます……っ////」

  わたしは子ネヂミちゃん達の言葉に照れつつ、今度は先ほどの借りを返しにわたしの偽者さんのもとへ向かいます。

  そして、モロQさんと同じように黒い球を運んで狙いを定めると。

  「ごめんなさい……っ、わたしの偽者さん……!」

  黒い球を蹴り付けてウサギを倒しました。

  「やったでチュ!あっ、ゴールはすぐそこでチュっ。」

  「ぁ、本当ですね……っ。えいっ……!」

  気づけば、ゴールの壁はわたしのすぐ後ろだったみたいです。

  なんだかこのステージだけでかなりの時間が経っちゃいましたね……。

  《ドカーンッ!》

  無事にゴールの壁を壊すと、次の部屋へと向かいました。

  [newpage]

  そこからはただモロQさんやわたしのそっくりさん、アソンさんがうろうろしていて、分銅がそこかしこにあるステージが続きました。

  一度押したら引けないのが辛いですが、子ネヂミちゃんや子モグラさん達の協力のおかげで難なく進めています。

  「モグラーニャさん……やっぱりすごいです……っ。」

  幾ら特訓で鍛えてきたとは言っても、モグラーニャさんにはまだまだ追いつけません。

  黒い球もやっとバックドロップが出来るようになってきただけで、自由自在にはいかないです。

  「そんけー、してるんでチュねっ。」

  「はい……/// だって、今やわたしの師匠のような存在ですから……っ。」

  言い過ぎかもしれませんが、本当のことなので……。

  でも、まさかこんな形で特訓の成果を発揮する日が来るなんて思いませんでした。

  「らびっぴねーたん、パパだいすきだもんねっ。」

  「おねーちゃんかおあかーい!」

  「ぇっ?そ、そんなことないですよ……っ///」「わーいまっかっかー!」

  うぅ。わたしはすぐ顔に出ちゃうので、子モグラさん達にも敵わないです……///

  背を向けて両手で顔を隠すも、ギュッと抱きつかれてしまいました。

  「あたちもラビッピのコトだいすきでチュっ!このきもちはモグラーニャにはまけないでチュ♪」

  「わわわ、子ネヂミちゃんまで……っ///」

  前と後ろを子モグラさん達に抱きつかれているわたし。

  まったく、皆さん甘えん坊なんですから……♪

  ─────

  皆さんをなでなでギュッしてあげると、再び先へと進み始めました。

  最初はわたし一人で心細かったですが、今では心強い仲間が居ます。

  もう、わたしのそっくりさんにだって負けません!

  「じゅんちょーでチュねっ。」

  「はい、皆さんのお陰です……♪」

  「そーでチュ?ラビッピもがんばってるでチュっ。」「そーそー!」

  「そ、そんな……わたしなんて、すぐ……キャっ?」

  「ダメでチュよ、ネガティブしこーはもうナシでチュ。」

  「ご、ごめんなさい……そうですよね……っ。」

  でも、ちょっとしたことで心が折れちゃうのはまだまだな気がします。

  早く、子ネヂミちゃん達に迷惑を掛けないようにならないとっ。

  「でチュ。あたちもいつまでラビッピといられるk……いや、なんでもないでチュ!いくでチュ!」

  「……?わわわ、はい……っ。」

  何やら子ネヂミちゃんが意味深な事を言ったのが聴こえましたが、急かされるまま次のお部屋へと向かいます。

  わたし達はずっと一緒です、そんな離れ離れになるなんて考えられません。

  「なんからびっぴねーたんいっぱいいるねー?」

  「はい……わたしって、そんなに人気なんでしょうか……。」

  「わーい!おねーちゃんゆーめーじん!」「こ、子モグラさんっ……///」

  そんな、有名人だなんて恥ずかしいです……!

  わたしなんて、大したウサギじゃないですし……///

  「まったくみんなラビッピのコトすきすぎてこまるでチュっ。いくらかわいーからって……。」

  「んー?ねぢみねーたん?」「なんでもないでチュ!」

  ちょっぴり、妬いてるような素振りを見せる子ネヂミちゃん。

  わたしは、そんな子ネヂミちゃんも子モグラさん達も大好きですよっ。

  「ふふっ、子ネヂミちゃんの方がかわいいです……♪」

  「チュ!あ、あたちはかわいくなn……。あ、アリガトでチュ……///」

  プイッとそっぽを向く子ネヂミちゃんを撫でてあげるわたし。

  それは密かに自分が可愛いと思ってる事を自覚してる素振りですよ?

  「もー……ラビッピもモグラくんたちもイジワルでチュ。でもそんなトコロ、あたちはスキで……」

  「おいてくよー?」「ってまつでチュ~!!」

  そうしている間にゴールの壁を壊し先へと進むと、気づけばこのエリアも半分を過ぎていました。

  [newpage]

  フンドーンさんの待つお部屋までもう少しですが、わたし達は途中であるものを見つけました。

  なんだか一部分だけ丸くて星の描かれた床ですが……。

  「これはなんでしょうか……?」

  「いままではなかったでチュね。」「んー?」

  興味津々な三人ですが、わたしは何かありそうな予感がします。

  きっと、これは罠なんじゃ……。

  「いってみるでチュ!」

  「あっ、子ネヂミちゃん……!」

  そう考えていると、子ネヂミちゃんはその星の床へと乗ってしまいました。

  すると床が回りだし、たちまち子ネヂミちゃんがその場から消えてしまいます。

  「子ネヂミちゃん……っ。」

  わたしが呼んだ時には既に子ネヂミちゃんの姿はなくなっていました……と思っていたら。

  「ど、どうしよう……子ネヂミchきゃふ……っ!」

  「つまみだされたでチュ~……。」

  何故かすぐに子ネヂミちゃんが空から降ってきました。

  「もしかして、此処もわたしじゃないとダメなんでしょうか……。」

  カンガルーンさん達ボスと言い、やはりわたしが主役みたいだからなんですよね。

  でも、わたしが主役って……いえいえ、そんなはずはありません!

  「チュ~……たちかにあたちだと、はんそくになりそーでチュね。」

  「よしよしー。ネヂミねーたんだいじょぶー?」

  「なら、わたしが行きます……!」

  「ラビッピ……。」「らびっぴねーたん?」

  きっとこれも、わたしに向けた挑戦なのかもしれません。

  となると、お相手はやはりあの人なんでしょうか。

  「大丈夫です……っ、わたしには皆さんが居ますから……。なので、皆さんはここで見守っててください……っ。」

  「……わかったでチュ。おもいきってボコボコにしてきてでチュ!」

  「ぼこぼこー!」「はい……っ。」

  わたしはそう子ネヂミちゃん達を安心させてあげると、魔法陣の上に立ちます。

  すると……。

  「わわわっ、目が回ります……!」

  クルクルと回転しだし、戸惑うわたしは何処か見知らぬ場所へと飛ばされるのでした。

  [newpage]

  「……ここは……?」

  わたしが気がつくと、辺りにはキャビッジが散らばっていました。

  ここは、畑なんでしょうか……。

  「でも、穴が空いてないし……っ!?」

  不思議そうに見渡していると、突然聞き覚えのある声と共に人の姿が現れました。

  「来たな、ラビッピ!」

  「っ……じん、べえ……。」

  なるほど、此処はあなたの庭でしたか。

  さっき子ネヂミちゃんが行った時は追い返してましたが、やっぱり狙いはわたしなんでしょうね。

  「フン。さっきはネズミが入り込んできたが、やっと来たか。まさか入口に気づいてなかった訳じゃないだろうな?」

  「ひっ……!そ、そんなこと……。」

  確かに、これまでにもあったかもしれません。

  でも案内も何も無かったし、普通なら気づかなくて仕方ないと思いますが。

  「まぁいい、ちょっと待ってろ。」

  ふと思い返していると、じんべえはそう言って何処からかクワを持ち出してきます。

  そして、わたしの目の前で徐に大きな穴をあけると。

  「っ……あ、穴……?」

  「これからお前と勝負だ!制限時間以内にそこらのキャビッジを全部この穴に落とせたらお前の勝ち、一個でも残したらオラの勝ちだ。いざ、勝負っ!!」

  ルール的なことを言うと、いきなりわたしへとクワを振り下ろしてきました。

  

  「キャアっ……!?」

  [[rb:咄嗟 > とっさ]]の判断で避けたものの、じんべえはそのままわたしを狙ってきます。

  ふと、囲いの外を見るといつの間にかタイマーが置かれていて見る見るうちに時間が。

  「そ、そんないきなり過ぎます……っ。」

  急いでキャビッジの元へ走ろうとすると、じんべえは恰もそれを予測していたかのように先回りしてきました。

  「ひっ!」

  「ヘヘヘッ、そうはいかねぇぞ。」

  見た目の割に素早いじんべえですが、ふとある事に気付くとわたしは一つ作戦を思いつきました。

  それはつまり……。

  「えっと……ごめんなさい……!!」

  「グエッ!?」

  あちらが回り込んでくるのなら、こちらは足止めすればいいんです!

  思った通り、じんべえはわたしのぶつけたキャビッジで怯んでいました。

  「今のうちです……!」

  わたしは、すぐにキャビッジを穴へ向かって蹴り込みます。

  コツさえ分かればこっちのものですね。

  「クソッ、ウサギのくせにっ。」

  しばらくすると、じんべえが起き上がり再びわたしの方へと向かってきます。

  でも、今のわたしなら怖いものはな……。

  「っ、キャっ!?」

  次のキャビッジのもとへ向かおうとした途端、落ちている石に気づかず躓いてしまいました。

  その場に倒れると、チャンスとばかりにクワを振り下ろして。

  「バカめ!調子に乗ったな?今だ!」

  「ぐはっ……!」

  今度は避ける間もなく、じんべえにクワで叩かれました。

  かなり思い切りだったせいか、暫く立ち上がれないわたし。

  「おっと、寝てる場合か?どんどん時間が無くなってくぞ?」

  怯むわたしをあざ笑うかのように、じんべえが笑みを浮かべて煽ってきます。

  「ま、まだです……っ。」

  時間と聞いてすぐに立ち上がると、再び残りのキャビッジの元へと向かいます。

  ただ、叩かれてしばらく動けなかったせいか既に残り時間は僅かになっていました。

  「わわわ、急がないと……っ。」

  そして、何とかキャビッジの元へと辿り着いたわたしですが……。

  「ハァっ、ハァっ……。こ、これで……っ!?」

  ボロボロになりながらじんべえへキャビッジをぶつけ、その隙に穴へ落とそうとした瞬間、敢え無くタイムアップになってしまいました。

  「ヒヒヒ、残念だったな!時間切れだ。」

  「そ、そんな……。」

  「またの挑戦をお待ちしておりまーす!」

  じんべえは不敵な笑みを浮かべながらそう言うと、何処からかスイッチのようなものを取り出し。

  「えっ、ちょっ……キャア~っ!!」

  じんべえがポチッと押した瞬間、足元に穴が開きわたしはそのまま奈落の底へ落ちていきました……。

  [newpage]

  (……ラビッピ……!)

  (……らびっぴねーたん……!)

  あれから気を失っていたのか、しばらくすると何処からか子ネヂミちゃんや子モグラさん達の声が聞こえてきました。

  そして、気が付くとそこには心配そうに見つめる子ネヂミちゃん達の顔。

  「ん……ここは……?きゃふっ!」

  起き上がろうとすると、真っ先に子ネヂミちゃんが抱き着いてきました。

  「ラビッピ~……心配したでチュ~っ。」

  「らびっぴねーたんぶじでよかったー。」「よしよしー。」

  「んん、みなさんったら……///」

  子モグラさん達になでなでされながらも、こちらもよしよしと抱きしめ返してあげます。

  すると、子ネヂミちゃんが気になった顔で結果を聞いてきました。

  「それでどーだったでチュ!?」

  「……ごめんなさい!まだまだだったみたいです……っ。」

  「チュ~!じんべーのやつ、おんなのこあいてにデリカチーなさすぎでチュ!!」

  申し訳なさそうに目線を落とすわたし。悔しい思いはありますが、わたしの実力不足だったことは否めません。

  ちなみに、目の前に先ほどまであった魔法陣らしき模様はなくなっていました。

  どうやら、じんべえとの戦いは一度きりみたいですね。

  「とりあえず、先へ進みましょう……っ。」

  「チュ?そーでチュねっ。」

  はい、わたし達にはモグラーニャさん達や親ネヂミさん達を助ける目的がありますからっ。

  

  ─────

  その後は今までと同じく分銅の迷路があったり、そんな中でわたしのそっくりさんやモロQさん、ウニチクが邪魔をしてきたりしましたが、子ネヂミちゃんや子モグラさん達が引き付けるなどしてくれたお陰で難なく突破していきました。

  やがて、気づけばボスの部屋の前まで来ていて。

  「色々ありましたが、やっとフンドーンさんのお部屋まで来ましたね……。」

  「こんかいはながかったでチュ~。」

  何となくステージの数も増えているような気がしましたが、もしかしたらこれからどんどんボスまで長くなっていくんでしょうか。

  そう思うと、じんべえパークって広いですね。

  「さて、行ってきますね……?」

  「まって!ぼくもいくー!」

  「えっ、こ、子モグラ(水色)さん……?」

  わたしは休む間もなく、3人目の子モグラさんを助けにフンドーンさんの居る部屋の方を向きます。

  すると、水色モグラさんが付いてきて。

  「らびっぴねーたんのことまもりたい!」

  「で、でも……っ?」

  「だめ?」

  考え込むわたしを覗き込んで、キラキラとした眼差しを向ける水色モグラさん。

  ここまで、カンガルーンさんとサンデスさんはわたし一人で頑張ってきましたが、その間子モグラさん達はずっと向こうで応援してくれました。

  でも、本当は一緒に皆さんを助けたいという気持ちがあったのかもしれませんね。

  「……分かりました……っ。行きましょう……!」

  「わーい!」

  「みんなー!」「がんばれでチュ!」

  水色モグラさんの意を汲むと、わたし達は子ネヂミちゃん達の声援を受けつつ、扉の向こうに待つフンドーンさんのお部屋へと入っていきました。

  [newpage]

  ≪ズドーンッ!!≫

  「うらぁー!待っていたぞ!」

  「フンドーンさ……キャアっ!?」

  フンドーンさんの待つお部屋へと入ると、突然空からフンドーンさんが勢いよく地面に降り立ってきました。

  「早速俺と勝負だー!うらぁっ!」

  「ケフンケフンっ……ふぇっ!?キャアっ!」

  辺りは土煙に覆われて見えなくなるものの、有無を言わさず戦いが始まっていたようで、わたしに向かって体を回転させながらフンドーンさんが迫ってきました。

  もちろん、いきなりなので避け切れるわけもなくわたしはフンドーンさんの体当たりを受けて、勢いよく吹っ飛ばされ……。

  「らびっぴねーたん!」

  「どーしたぁ?勝負はもう始まってるぞ!」

  「ご、ごめんなさい……っ。えっと、でも……。」

  徐々にフンドーンさんの姿が見えてきますが、カンガルーンさんやサンデスさんの時と違ってどう戦えばいいのか分かりません。

  しかし、側にはサンデスさんの時と同じく黒い球だけがありました。

  「もしかしたら、サンデスさんと同じ……。」

  サンデスさんには、思い切って黒い球をぶつける事で勝つことが出来ましたし、フンドーンさんにも隙をついてぶつければ……。

  「ご、ご、ごめんなさい……!」

  わたしはすぐに黒い球のもとへ行くと、そこからフンドーンさんに向かって思い切り蹴りました。

  「……あ、あれ……?」

  しかし、黒い球はそのままフンドーンさんに当たると何故か弾き返されてしまい。

  「ん?そんな攻撃が通用すると思ったかぁ!」

  「ぇ……っ、キャアっ!」

  それと共にフンドーンさんは、わたしの方へ回転しながら体当たりしてきました。

  避ける間もなく、体当たりを受けて吹っ飛ばされるわたし。

  「らびっぴねーたん!」

  「いたた……っ、ごめんなさい。大丈夫です……っ!」

  勢いで地面を転がるわたしへと水色モグラさんが心配そうに駆け寄りますが、わたしはまだまだ平気です。

  ただ、黒い球を当てただけではダメとなると、どうしたら……。

  「むー!」

  「おう?なんだお前は。」

  フンドーンさんへの攻略法を考えていると、いつの間にか水色モグラさんがフンドーンさんの前に立ちふさがっていました。

  「あれ?子モグラさん……って、わわわダメですよ……!!」

  「らびっぴねーたんいじめちゃだめー!」

  わたしが止めようとする間も、水色モグラさんはわたしを守るように。

  「小僧、なかなかいい目付きだな。だが、俺の相手はアイツだ!」

  「それでもだめー!」

  「子モグラさん……。」

  さっきも思いましたが、普段はわたしに対して甘えん坊さんなのに、逞しすぎますっ。

  やっぱり、当たり前ですがモグラーニャさんの子供なんですね。

  「ありがとうございます……っ。でも、わたしはまだまだ戦えます……!」

  水色モグラさんの勇姿を見せつけられると、わたしも頑張らなくちゃって思えてきました。

  きっと、攻略法はあるはずです……!

  「茶番は終わりだぁ!行くぞ!」

  わたし達がそうこうしていると、フンドーンさんは痺れを切らしたのか、突然その場から飛び上がりました。

  あれ?フンドーンさんって飛べたんですか……。

  「わわわっ、ど、どうすれば……って、子モグラさん……!?」

  わたしが慌てふためいていると、水色モグラさんは何故かその場に穴を掘っていました。

  ただ、よくよく見ると水色モグラさんの掘った場所には影が出来ていて。

  「らびっぴねーたん!こっちー!」

  「そういえば、分身……。ぁっ、なるほどです……っ!」

  ようやくフンドーンさんの倒し方が分かった気がします!

  わたしが水色モグラさんの掘った穴へ一旦隠れると、ちょうどフンドーンさんが空から降りてきて。

  「うらぁー!……ぐおっ!?」

  「わぁっ!」

  先ほど影になっていた穴へと頭からハマってしまいました。

  「フンドーンさん……!」

  あまりにも勢いよくハマっていったので、心配そうに名前を呼ぶわたし。

  でも、攻撃するなら今がチャンスですよね……。

  「んぐぐぐ……!」

  「えっと……ご、ごめんなさい……!!」

  フンドーンさんが穴にハマっている隙に、わたしは黒い球を運んでフンドーンさんへと投げつけます。

  すると、フンドーンさんの体にヒビが入るのが見えて。

  「グワァッ!!」

  「すごいこえー!」

  カンガルーンさんと言い、サンデスさんと言い、そしてフンドーンさんと言い、攻撃した時の姿はとても見ていられないです。

  それとも、わたしが単純に気にかけすぎなだけなんでしょうか……。

  「フンッ、流石はモグラーニャの弟子だ!だが、これぐらいでくたばる俺じゃなぁーい!」

  穴から勢いよく抜け出し、そう言い放つと再び先ほどのように回転しながらわたし達の方へと向かってきます。

  って、どうしてモグラーニャさんとの関係を?

  「わわわ……っ!」

  って、今はそんなことを考えている場合じゃなかったですね。

  迫ってくるフンドーンさんを辛うじて避けると、水色モグラさんのもとへ走ります。

  「ぁ、らびっぴねーたん!」

  「子モグラさ……あれ?」

  わたしが辿り着く前に何故か水色モグラさんが地面へ隠れちゃいました。

  すると、いつの間にか先ほどと同じようにフンドーンさんは高く跳び上がっていて。

  「あっ、子モグラさん……!ここです……っ!って、影が3つ!?」

  ちょうど、わたしの足元に影が映ったので掘ってもらおうと水色モグラさんを呼ぼうとしましたが、よくよく見ると他にも2箇所離れた場所に影があるのを見つけて戸惑うわたし。

  すると、水色モグラさんがそのわたしの足元から出てくる同時にフンドーンさんが降りてきて。

  「ぷはー!あれ?」

  「子モグラさん……!」

  「わぁ!」

  フンドーンさんに気づき、間一髪で水色モグラさんを抱いて離れると、先ほどのようにフンドーンさんが穴へはまりました。

  3択だったようですが、上手く当たりを引いたみたいです!

  「やったー!」

  「わわわ、すごいです……!そして、えい……っ!!」

  「グワァッ!!」

  たまたま近くにあった黒い球へと向かうと、先ほどと同じくもがいているフンドーンさんへ黒い球をぶつけました。

  それにしてもフンドーンさん……既にボロボロなんですが、大丈夫でしょうか。

  「ハァッ、ハァッ、小僧もなかなかやるな!だが、俺はまだまだやれるぞー!」

  もうっ。どうしてそんな、皆さん平気な顔をするんですか……。

  それとも、わたしはそう思っている方がおかしいの、かな……?

  「えへへー!」

  「こ、子モグラさん……っ。」

  戦いのはずなのに、遊びだと思っている水色モグラさん。

  でも、小さな子供にとってはそう感じるのかもしれないです。

  「わたしも、まだまだ頑張らないとですね……っ。」

  水色モグラさんの様子を見ていたら、負けてはいられないと思って再び黒い球を用意するわたし。

  しかし、そんなわたしの元へ何故かフンドーンさんが何やら話しかけようとしていました。

  えっと、何でしょう……?

  [newpage]

  「ラビッピ。」

  「っ、ひゃい……!?」

  「良かったな、お前に心強い仲間が出来て。」

  えっ?き、急になんですか。

  そんなモグラーニャさんみたいな優しい口調と、さっきまでと違って穏やかな表情をして……。

  「お前が悪いヤツに狙われてるって聞いた時は、俺も精一杯お前の事を守ってやると思った。……だが!」

  「はい……。」

  「もう、俺の出る幕はない。それに、お前はもう守られる立場じゃない。」

  「だから、今の俺は最後まで全力でお前を倒す!うらぁー!!」

  「はい……!わたしも、皆さんの為に戦います……!」

  フンドーンさん、こんなに良い人だったんですね。なんだか、かっこいいです……。

  でも、今は皆さんを助ける為にあなたと戦わないとですね。

  「子モグラさん……!」

  「はーい!」

  水色モグラさんの方を向いて合図すると、水色モグラさんはフンドーンさんの影の下へ穴を掘り始めます。

  今度は4つですが、よくよく見ると1つだけ濃い影を見つけました。

  「本物はそこです……!」

  「ぷはぁっ!」

  水色モグラさんがわたしの示した影の下に顔を出し、地上へと飛び上がるとちょうどフンドーンさんが降りてきました。

  すかさず水色モグラさんを抱き抱えて避けるわたし。

  「ゴフッ!!」

  すると、フンドーンさんが穴へ頭からハマっていったので……。

  「フンドーンさん……。わたしは、その……そんな気持ちだけでもうれしいです。」

  「えっと、ありがとうございます……っ。あんまりお話ししたことなかったので、もし元の森に戻ったら、お話したいです……。なので今は、その……ごめんなさい!」

  わたしはそう、フンドーンさんへの思いを伝えると、黒い球をフンドーンさんへとぶつけます。

  そしてフンドーンさんは叫び声を上げながら、その場から消えてしまいました。

  「ばいばーい。あ、でっかいきゃべつー!」

  「……あっ!そうでした……っ。」

  姿が消えた後もしばらくその場に立ち尽くしていましたが、すかさず上から大きなキャビッジが落ちてくると慌ててキャビッジをゆすります。

  すると中からは、黄色モグラさんが飛び出してきました。

  「らびっぴおね~ちゃん!」

  「わっ!よしよし、これで3人目ですね……っ。」

  「わーい!」

  「さて、子ネヂミちゃん達の所で戻りましょう……!」

  「はーい!」「うん!」

  黄色モグラさんをおんぶすると、わたし達は入り口で待っている子ネヂミちゃん達のもとへと戻っていきました。

  [newpage]

  部屋の前へ戻ると、真っ先に子ネヂミちゃんが抱き着いてきました。

  後に続いて赤モグラさんもやってきます。

  「あ!ラビッピ~ッ!」

  「わっ!お待たせしました……っ。無事に3人目も助け出せました……。」

  「ぼくがんばったー!」「やったねー!」

  「そーなんでチュね。あたちもかつやくしたかったでチュ~……。」

  あれ、さっきはわたしが活躍しないとダメって言ってませんでしたっけ。

  ふと子ネヂミちゃんの発言に疑問を持ったわたしは。

  「じゃぁ、次からは一緒に戦いますか……?♪」

  「チュ!?そ、それはダメでチュ!」

  「すなおになったらー。」

  わたしからの提案に慌てて首を横に振る子ネヂミちゃんですが、子モグラさんに顔を覗き込まれるとすぐに観念して。

  「グヌヌヌ………そ、そこまでゆーならあたちもいくでチュ!」

  「えへへー!」

  「こねぢみねーたんいたらこわいものなしー!」

  ふふっ。子ネヂミちゃんったら、分かりやすいです。

  でも、これでもうこの先何の心配は要らなそうです!

  「なんならあたちだけで、えーい!うりゃー!ってたおしちゃうでチュっ。」

  「わわわっ、それじゃわたしの出番無くなっちゃいま……、!?」

  「チュふふっ、じょーだんでチュよっ♪」

  「……ぇっ……?」

  ふと、無事3人目を助け出して盛り上がっていると、そんなわたし達のもとへと誰かが近づいてきていました。

  始めは全く気づきませんでしたが、慌てて突っ込みながら子ネヂミちゃんの方を向くと……。

  「ちゃんとラビッピのでばんもあるでチュ……ってきーてるでch!?」

  「子ネヂミちゃん……っ!!」

  その途端、さっきまで居なかったはずのじんべえが子ネヂミちゃんを掴み上げました。

  [newpage]

  「フン、やっと捕まえたぞ、このクソネズミ!」

  「はっ、はなせでチュ!」

  「さっきはうっかりぶん投げちまったが、いつの間に入り込んでやがったんだ。」

  「こっ、子ネヂミちゃんを離してください……!」

  慌てて子ネヂミちゃんを離すように言うも、じんべえはそんなわたしの方を向くと見下すように。

  「んぁ?よう!負けウサギ!オラ相手にはザコのくせに、よくもカンガルーンやサンデス、フンドーンまでもを痛めつけてくれたな?」

  「っ……。」

  「むー!らびっぴねーたんはつよいもん!」

  「そーだそーだ!」

  「黙れ!とりあえずコイツはオラが預かった!じゃあな。」

  子モグラさん達がわたしの前に出て、庇うように両手を広げて[[rb:擁護 > ようご]]します。

  ですが、じんべえは態度を変える事なく、乱暴に子ネヂミちゃんを何処からか持ち出したケージに閉じ込めてしまい。

  「ラビッp……!!」

  「子ネヂミちゃん!!」

  そのままわたし達は何も出来ず、目の前で子ネヂミちゃんを連れ去られてしまいました。

  ─────

  「どう、して……っ。」

  わたしはしばらくの間、その場でうつ向いたままなにも出来ずにいました。

  「らびっぴねーたんだいじょぶー?」

  「っ……。あ、ごめんなさい……。わたしは大丈夫ですよ……っ?」

  しかし、心配そうに顔を覗き込む子モグラさん達に気付くとすぐ我に返って取り繕いますが、水色モグラさんがわたしの頭をなでなでしてきて。

  「よしよしー。」

  「ねぢみおねーちゃんいなくなっちゃったけど、ぼくたちがいるよ。」

  「そーそー!」

  「子モグラさん……、ありがとうございます……っ!」

  「わぁ!らびっぴねーたんくるしーっ。」

  子モグラさん達に励まされると、とたんに嬉しくなって抱きついてしまいました。

  そうですよね。まだ、わたしには子モグラさん達が居ます。

  子ネヂミちゃんの事ばかり考えていて、せっかく助け出した子モグラさん達の事を忘れる所でした……。

  「とりあえず、先へ進みましょう……!」

  「「「うん!」」」

  そう言って立ち上がると、わたし達は次のエリアへと向かいました。

  きっと子ネヂミちゃんのことですから、隙をついて逃げてすぐにわたし達のもとへ帰ってきてくれますよね。

  [newpage]

  しばらく歩くと森から工場地帯のような所へやってきました。

  辺りにはパイプのようなものがいっぱいありますが、じんべえパークってこんな所もあるんですね……。

  「ここでしょうか……。」

  エリアの入口に着くと、目の前に早速看板がありました。

  「えっと、次はどんな人でしょう……?」

  側で駆け回る子モグラさん達を横目に見つつ、看板のもとへ向かいます。

  そこには、わたし的にはあまり面識のない方の紹介文が書かれていました。

  『あ、どうも。

  スパナマンっス。

  工事中の看板じゃないっス。

  一応ボスなんス。

  暴力、はんたーいっス。

  いぢめないでネ。』

  あっ、スパナマンさんってこういう人だったんですね……。

  何だか真面目そうなイメージがありましたが、そうでもなかったみたいです……。

  「すぱなまーん!」

  「すぱなってなーに?」

  「人間が使う道具ですね。いろんなものを造るのに必要みたいですよ……?」

  「へー、そーなんだ!」

  「このおじさん、どーぐなんだー。へんなのー。」

  「あわわ、それはダメですよ……っ。」

  看板を見て、どこか興味津々の子モグラさん達。

  スパナマンさん、ごめんなさい……。

  「とりあえず、進みましょう……!」

  「「「はーい!」」」

  

  そう言ってわたし達は、早速最初のステージへと入っていきました。

  [newpage]

  ステージへ入ると、先ほどサンデスさんの居た海辺で見かけたバルさんの姿がありました。

  やはり、わたし達の事を気にすることもなくただ空中を泳いでいます。

  「あのおさかなさん、そらとんでる~!」

  「なんだかたのしそー!」

  そういえば、子モグラさん達はまだお会いした事なかったですね。

  元の日常生活に戻れたら、いつかは皆さんで海へ行きたいです。

  「あれは、タルでしょうか……。」

  ふとバルさんが泳ぎまわる中、タルらしきものが置かれているのに気づきました。

  そして、その隣には看板があって。

  『~タルです~

  このタルは、押す、引く、投げるが可能じゃ。

  ただし穴にはまると、地上は通れるようになるが、

  地下は通れなくなるのじゃ。』

  一見、地下に関しては潜れないわたしには関係のなさそうなことみたいですが、子モグラさん達が居るからでしょうか。

  確かにゴールの扉前には、いかにもタルで塞がないと壊せないような造りになってます。

  「でもっ、これをあそこに入れればいいだけですよね……っ!」

  わたしは、その場からゴール前の穴へ向けてタルを蹴り込みました。

  すると、タルはそのまま穴へすっぽり入って。

  「ぴったしー!」

  「なるほど、こんな感じなんですね……っ。」

  何故か2つありますが、一個塞げば充分みたいなのでこのままバルさんが徘徊する中を進んでいき。

  「えいっ!」

  ≪ドカーン!≫

  難なく黒い球を投げてゴールの扉を壊せました。

  どうやら、分銅の時と同じく新たな道具のお披露目ステージだったみたいですね。

  「おね~ちゃんすごーい。」

  「ふふっ、じゃぁ次行きましょう……っ。」

  子ネヂミちゃん、待っててくださいね。

  わたし達、すぐに助けに行きますから!

  [newpage]

  調子を取り戻したわたしは、子モグラさん達を連れてステージを進んでいきました。

  徐々にパズルっぽい感じになってきたので、考えさせられる場面もあったり、バルさんやモロQさん、アソンさん、そしてフェイスネークさんに襲われたりもしましたが、皆さんの協力もあって案外スムーズに進めた気がします。

  「ふぅ、結構進みましたね……っ。」

  ただ今まで子ネヂミちゃんに頼り切りだったのか、襲われた際の対処法をすっかり忘れていて。

  すでに子モグラさんを危ない目に遭わせてしまっていました。

  「こわかったー……。」

  「わわわ、よしよしっ……。ごめんなさい、わたしがちゃんと見てなかったから……。」

  「ううんだいじょぶ。」

  「おねーちゃんはわるくないよ!」

  よしよし、とわたしの頭を撫でる赤モグラさん。

  本当に皆さん優しいです……。

  「ありがとうございます、子モグラさん……っ。」「わぁっ!」

  つい力が入って、ぎゅうっと抱きしめてしまうわたし。

  でも、それくらい皆さんは大切な存在です。

  「……さて、行きましょう……!」

  「うん!」

  赤モグラさんを離して立ち上がると、再び先へと進み始めます。

  これからは、もっと皆さんの方にも意識を向けないとですね。

  [newpage]

  しばらく進むと、今度はさっき入口で見かけたような大きなパイプが置かれていました。

  ただ、タルに比べればまだ分かりやすいかもしれませんね。

  「んー?」

  「えっと……。」

  『~エルボです~

  あのパイプはエルボというのじゃ。

  球を投げ込むと、転がる向きを変えられるぞ。

  押すことは出来るが、引けないし、投げられない。』

  なるほど、黒い球を投げ込める以外は分銅と一緒みたいですね。

  そうなると、これもよく考えて使わないといけないかも。

  「なにこれー!」

  「んー?なんもないよ?」

  ふと考えていると、子モグラさん達がエルボを覗き込んでいました。

  「えっと……とりあえず壁は向こうみたいですね。」

  ゴールの前ではフェイスネークさんがうろうろしていますが、ここから投げ入れれば見つからないはずです。

  

  「子モグラさんは離れててください……っ。」

  エルボの周りに居る子モグラさんへそう言って離れさせると、エルボへ向かって黒い球を投げ込みました。

  すると、黒い球は「スポッ」という音を立てて吸い込まれるようにエルボへと入っていき……。

  ≪ドカーンッ!≫

  そのまま向きを変えて転がっていって、ゴールの壁を壊すとエルボも消えてしまいました。

  ちなみに、その途中目の前をうろうろしていたフェイスネークさんを巻き込んだのは事故です。

  「おもしろーい!」

  「なるほど、こんな感じなんですね……っ。」

  ここはどうやら、エルボのお披露目ステージだったみたいですね。

  ということは、これからはエルボを並べたりしないといけなかったりするのでしょうか……。

  まぁ……。

  「皆さんが居ますし大丈夫ですよね……っ。」

  「んー?」

  「ぁっ、ごめんなさい……っ。独り言です……♪」

  「おね~ちゃんへんなのー。」

  つい思っていたことが口に出てしまい、子モグラさん達に顔を覗かれると慌てて誤魔化すように。

  でも、みんなで協力すれば何てことはないはずです……!

  ところで、エルボには黒い球以外でも入るんでしょうか……?

  ふとそんな疑問を抱きましたが、その答えはすぐに明らかになるみたいです。

  [newpage]

  「タルは入りますね……っ。」

  ちょうど次のステージにて、キャビッジとタルがあったので試しにと思い順番にエルボへ入れてみようと思いました。

  もちろん、バルさん達が来ないように場所を変えて。

  その結果、まずタルは黒い球と同様にエルボへ入り向きを変えて転がっていきましたが……。

  「次はキャビッジですが、どうでしょうか……えいっ!」

  勢いよくエルボへ向かってキャビッジを投げました。

  しかし……。

  「あれー?」

  何故かつっかえてしまったため、エルボには入りませんでした。

  「ぁ、こっちはダメなんですね……。」

  ハマってしまったキャビッジを引っ張りだし、たまたま近くに空いていた穴へと落とします。

  ところで、今更ですがこの落ちてるキャビッジって食べられるんでしょうか……。

  「とりあえず、タルは入るのが分かりましたから大丈夫ですね……。って、ここでは要らないような……。」

  よく見るとゴール前には穴が空いてなくて、どうやら単純にエルボを向こうへと押して行って投げ込めばいいだけみたいですね。

  なるほど、今後は要らない道具も出てくるわけですか……。

  「あ!おさかなさん!」

  「こっちきちゃだめー!」

  ふと、道具に気を取られているとバルさん達がこちらへ向かってきていました。

  わたしは、子モグラさん達がこちらへ寄せ付けないよう守っている隙にエルボを運びます。

  「これも結構……重い、ですね……っ。」

  確かにこれなら、分銅と同じく投げたり引いたりは出来ないです。

  と言うか分銅はともかく、これは投げるものではないですよね……。

  「っと。何とか設置完r……って!」

  エルボを設置し終えて振り向くと、何故か目の前にはバルさんが居ました。

  [newpage]

  「わわわわ、こ、来ないでください……!」

  「らびっぴねーたーん!」

  あとちょっとでバルさんに体当たりされると思い、両手で耳を押さえて蹲った瞬間、背後から水色モグラさんの声が聴こえてきました。

  恐る恐る顔だけ向けると、皆さんがタルを握っていて……。

  「らびっぴねーたんどいてー!いまたすけるー!」

  「わわわ……っ!」

  「「「せーの!えーい!!」」」

  バルさんの隙をついてすぐにその場を離れると、子モグラさん達が掛け声とともに勢いよくタルを転がしてきました。

  すると、忽ちタルはバルさんに当たり。

  「っ……。ぁ、あれ?バルさん……?」

  わたしが気がついた時には、バルさんの姿はありませんでした。

  「良かったです……。助かりましt……きゃふっ!」

  「らびっぴねーたんっ!」

  「おねーちゃん!」

  「も、もうっ……でもありがとうございます……っ////」

  「それはそうと……。」

  バルさんを倒した勢いで、わたしの後ろにあるエルボへ入ってしまったのかタルはゴールの前にありました。

  えっと、これでは邪魔ですね……。

  「とりあえず……っ。」

  ゴール前へと向かい、扉を塞いでいるタルを退かします。

  あっ、これで大丈夫ですね。ただ、あと一マス少なかったら終わってました……。

  「黒い球お願いします……!」

  「わかったー!」

  子モグラさん達へ呼びかけると、水色モグラさんが離れた場所にある黒い球のもとへ向かいました。

  そして、皆さんで運んでくると……。

  「せーの!」

  「「えい!」」

  ≪ドカーンッ!≫

  そのままエルボへ向かって黒い球を投げ込み、ゴールの壁を壊しました。

  「えへへー!やったー!」

  「わわわ、すごいです……!」

  「そー?」「よしよしー。」

  「らびっぴねーたんもがんばったよ!」

  「っ……皆さん……。ありがとうございます……っ////」

  ただ、その後はタルで穴を埋めるステージが多かったせいか、わたしの活躍できる機会がほとんど無かったのはここだけの話です。

  [newpage]

  そうこうしている内に、気づけばもうスパナマンさんのいらっしゃる部屋の前まで来ていました。

  今回は、なんだか危険そうなのでわたし一人で行きます……!

  「看板では気さくな方みたいだったけど……。」

  これまでのお部屋を振り返ると、アソンさんやバルさんがたくさん居ましたし、そう思うと本当は硬派な方なのかもしれないですね……。

  「とりあえず、がんばります……!」

  相手の事を考えていても仕方ないですし、行くしかありません。

  その前にまずは……。

  「らびっぴねーたん!」

  「っ?あ、皆さん……っ。」

  ふとわたしが考えている間に、子モグラさん達が黒い球を運んできていました。

  「ごめんなさい、ぼーっとしてしまいました……。」

  「ううん!だいじょーぶ!」「おね~ちゃんなげて!」

  「ありがとうございます……っ。って、アソンさん達が迫ってますね……。えいっ!」

  子モグラさん達に黒い球を渡されると、ちょうどアソンさんがこちらへ向かってくるのが見えたので急いでゴールの壁へと蹴りました。

  しかし、運悪くウニチクが来たために黒い球が弾かれてしまい。

  「わわわっ、タイミングが悪かったみたいです……!」

  黒い球を拾いに行こうとするもアソンさんが迫ってきている為、すぐに子モグラさん達を連れて隅へと逃げます。

  何の変哲もなく、ただ黒い球を運ぶだけのステージだと思うんですが……。

  「どう、しましょうか……。」

  「おね~ちゃん。」「えっ?」

  「わたしにまかせてー。」

  ふと考えていると、黄色モグラさんが何か作戦があるのか、アソンさん達の方へと歩いていき。

  「こっちだよ~。」

  そう言うと黄色モグラさんは、手招きをし始めました。

  それに気づいたのか、アソンさん達が共に黄色モグラさんの方へと歩いていきます。

  「らびっぴねーたん!」

  「そうですね……っ、今ですっ!」

  黄色モグラさんがアソンさん達を引き付けているのを確認すると、黒い球をゴール前まで運んでいき。

  そこから思い切り黒い球をけり込みました。

  ≪ドカーンッ!≫

  ゴールの壁が壊れると目の前を右往左往していたウニチクと共に、黄色モグラさんの方へと向かっていたアソンさん達も消えてしまいました。

  「やったー!」

  「だいせいこ~。」

  「ありがとうございます……っ、助かりました……。」

  

  「ぼくもいくー!」

  「ぇっ……で、でも……。」

  「ねぢみねーたんいないから、ぼくがらびっぴねーたんをたすけたいの!だめ?」

  「子モグラさん……っ。分かりました、一緒に行きましょう……!」

  「うん!」

  「「「がんばれー!」」」

  こうしてわたしは他の子モグラさん達の声援を受けながら、水色モグラさんを連れてスパナマンさんの待つお部屋へと入っていきました。

  のですが……。

  ──────

  「あれ、誰も居ない……?」

  スパナマンさんが居るはずのお部屋へ入ったわたし達。

  しかし、そこにスパナマンさんの姿はなく、ただエルボが周りに置かれているだけでした。

  「えっと……。」

  「あ!らびっぴねーたん!」

  戸惑うわたしの横で、何か見つけたのか水色モグラさんが呼びます。

  すると、足元には何やらスイッチらしきものがあり。

  「なんかあったー!えいっ!」

  「あれ?これって一体……あ!ダメですよ……っ!」

  ふと足元に目をやった瞬間、水色モグラさんがスイッチを押してしまいました。

  その瞬間、奥から物音が聞こえてきたので慌てて耳を塞ぐと……。

  「キャっ!?」

  すると、突然白い煙が上がり目の前がたちまち見えなくなってしまいました。

  何が起きたか分からず声を上げるわたし。

  ただ、そんな反応を物ともせずにスパナマンさんが姿を見せてきました。

  [newpage]

  「来たっスね!では早速行くっス!」

  「えっ?ちょ、キャアっ……!!」

  そう言って、いきなりスパナを投げつけてくるスパナマンさん。

  いきなりの攻撃だったので、つい避け切れずに当たってしまいました。

  「いたた……っ、ひどいです……。」

  「らびっぴねーたんだいじょぶー?」

  「ごめんなさい、大丈夫ですよ……っ。」

  スパナが当たり、少しクラクラしているわたしへと心配そうに駆け寄る水色モグラさん。

  でも、これくらいなら全然平気です!

  「むー!」

  「おや、元気な子供のモグラさんスね。でも、ボクにはそんなの関係ねぇーっス!」

  「む?」「子モグラさん危ない……っ!」

  スパナマンさんに向かって両手を広げてわたしを守ろうとした水色モグラさんですが、スパナマンさんの投げつけてきたスパナが視界に入ると、咄嗟に水色モグラさんを守り返すようにして離れました。

  「いたた……、無茶はダメですよ……っ。」

  「ぅ、らびっぴねーたんごめんね。」

  ただ、このままではどうする事も出来ません。

  スパナマンさんへの攻撃手段もないですし……って、この周りのエルボはなんでしょうか?

  「よそ見してる場合っスか?」

  「えっ……?って、それ……。」

  ふとエルボが気になる中、スパナマンさんはスパナを投げるのをやめると、どこからか大きな爆弾らしきものを持ち出してきました。

  「はい、爆弾っスよ?ボク、こう見えてスパナ以外も使えるんス!えいっ!」

  得意げな顔でそう言うと、爆弾を転がしてきたスパナマンさん。

  よく見ると何やら光りだしていて。

  「わわわっ、隠れる場所……っ。」

  「らびっぴねーたん!こっち!」

  慌てて隠れ場所を探そうとするわたしですが、いつの間にか水色モグラさんが隅の方へ穴を開けていました。

  「ぁ、ありがとうございます……!子モグラさん……っ。」

  「えへへー!」

  ≪ドカーンッ!!≫

  急いで水色モグラさんの掘った穴へ一緒に身を隠すと、ちょうど大爆発を起こし辺り一面閃光に包まれました。

  あとちょっと遅れていたらわたし達、ここで終わりでしたね……。

  「……さすがっス!でもまだボクから一本も取れてないっスよ!」

  「キャア……っ!」

  安心したように顔を出した途端、この間どこに居たのか分かりませんがスパナマンが姿を見せると、隙を突いたようにスパナを投げてきました。

  [[rb:咄嗟 > とっさ]]の判断で屈んだので危うく避けられましたが、もう少しで耳を持っていかれる所でした……。

  「っ、えっと……そうだ、エルボが使えるかも……。」

  ふと遠くへ目を向けると、ちょうどスパナマンさんの方を向いているエルボがあるのを見つけました。

  もしかしたら、あれで……。

  「子モグラさん……っ。」

  「んー?なーに?」

  「子モグラさんはあちらのエルボを動かしてください……っ。わたしはこっちを動かします……!」

  「えるぼー!あ!あっちにもあったー!」

  「はい、あれを今スパナマンさんの居る所へずらしてほしいです……っ。えっと、こんな感じで……。」

  水色モグラさんと手分けしてエルボを動かし、スパナを投げ入れさせる作戦が思い浮かぶと、水色モグラさんへ身振り手振りで教えてあげます。

  すると、何度か繰り返すうちに分かったようで。

  「わかったー!ぼくあっちいくね!」

  「よろしくお願いします……!」

  「やっと気づいたみたいっスね!さすがはモグラーニャさんの息子さんっス!」

  結局、スパナマンさんもフンドーンさん達と同じなんですね……。

  確かにそうでなかったら、こんなお部屋の造りしてないと思いますし……。

  「とりあえず、こっちは動きを見ないとですね……。」

  場所を変えてスパナを投げ続けるスパナマンさん。

  当たり前ですが、決してエルボの位置へは投げてきませんね。

  「ぁ、今です……!」

  と、ちょうどエルボに手をかけた途端、たまたまスパナマンさんが目の前に向かってスパナを投げているのが見えたので、前へと押し出しました。

  すると、スパナはそのままエルボへと入り込み。

  「おー。」

  周りを回って水色モグラさんのもとにあるエルボへ入ると、そのままスパナマンさんへ向かって飛んでいきました。

  スパナマンさんは気づいていないのか、そのまま投げ続けていたので……。

  「ぐはぁっ!!」

  「スパナマンさ……ひっ!」

  勢いよく飛んできたスパナが当たり、声を上げながら吹っ飛ぶスパナマンさん。

  心配そうに近づこうとしましたが、すぐに起き上がり。

  「なかなかやるっスね!でも、まだまだ行くっス!」

  「わわわっ……!」

  「らびっぴねーたん!」

  平気な顔でそう言うと、いきなり爆弾をこちらへ向かって転がしてきたので、慌てて穴へと隠れました。

  何処が暴力反対なんですか、寧ろ暴力以上のことしかしてないです!

  「危なかった……、ぁ、えっと……っ。」

  爆発音が鳴り響いた後は、再びスパナを投げ始めたので、急いでエルボを動かします。

  すると、今回はちょうど上手くエルボへ入れさせることが出来ました。

  「いい感じです……!……あ、あれ……?」

  しかし、いつの間にかスパナマンさんの立つ場所が変わっていたため、せっかくのスパナもそのまま壁へと飛んでいってしまいました。

  「ふふんっ、何してるんスか?ボクはこっちっスよ♪」

  「そ、そんなの聞いてないです……!あ、子モグラさん……っ」

  ただ、同じ事を繰り返すだけだろうと思って油断していたみたいです……。

  わたしは水色モグラさんの方を向くと、スパナマンさんの立つ位置へエルボを動かしてもらおうと合図を送りました。

  「んー?わかった!」

  なんとか伝わったみたいで、水色モグラさんはわたしの指示通りスパナマンさんが今立っている位置へと動かしていました。

  「今度こそ……っ。」

  スパナが上手く目の前に飛んでくるのを見計らって、エルボを動かします。

  しかし、この後予想もしなかった事態が起きてしまいました……。

  [newpage]

  ≪パーンッ!!≫

  「入ってくださ……キャアっ!?」

  スパナがエルボへと入った途端、何故かエルボが破裂しました。

  すぐ目の前だったため、避ける間もなくその衝撃で吹っ飛ばされるわたし。

  「らびっぴねーたん!」

  「っっ……。な、なんですか、これは……。」

  突然の事態に戸惑うわたし。

  今まで黒い球はもちろんのこと、スパナが入ってもそんな事はなかったはずです。

  なのに、どうして急に……。

  「おや、長い事使っていたせいか壊れちゃったみたいっスね?」

  水色モグラさんが心配して駆け寄る中、スパナマンさんは特に動じる様子もなくわたし達の方へと歩いてきて。

  「そ、そんな……。じゃぁ、どうすればいいんですか……?」

  エルボを使って投げつけてきたスパナを返す以外、スパナマンさんを攻撃する手段はなさそうに思えます。

  と、そんな事を考えていると目の前で立ち止まったスパナマンさんが突拍子もない提案をしてきました。

  「仕方ないっスね、こうなったら……クイズっス!」

  「ずこっ!」

  [newpage]

  「体が使えないならば頭で勝負っス!これならウサギでも楽勝っスよ♪」

  むっ、なんだか癪に障る発言ですが、クイズならばわたしでもいけます!

  と言っても、知識は浅い方ですが大丈夫でしょうか……。

  「問題は全部で3問!これをクリアーしたら子供はお返しするっス!では、クイズタイムスタートっ!」

  スパナマンさんがそう言うと、何故か周りにあったエルボや穴が消えて、代わりに大きな◯と×の書かれた幕が現れました。

  なるほど、○×クイズですね。望むところです!

  「らびっぴねーたん!ぼくもやる!」

  「良いですよ……っ、一緒に頑張りましょう……!」

  側に居た水色モグラさんも加わり、協力してクイズに挑む事にしました。

  「準備はいいっスか?では第一問!」

  『キャビッジは穴に落ちると消えますが、黒い球も穴に落ちると消えてしまう。』

  「これは……こっちです!えいっ!」

  「うん!」

  わたし達は即×の書かれた幕へと走っていって飛び込みました。

  結果はもちろん……。

  ≪ピンポーン!≫

  「せいかーい!」

  「これは簡単です……っ。」「やったー!」

  無事、正解だったのでわたし達はクッションの上へと着地しました。

  ところでこれ、不正解だったらどうなるんでしょうか……?

  気になったわたしは起き上がると、恐る恐る不正解の方を覗き込みました。

  ─────

  「えっと……ひっ!?」

  不正解の方を覗き込むと、そこにはさっきのような巨大爆弾が仕掛けられていました。

  と、いうことはもしかして……間違えたらわたし達は……。

  「はい、間違えたら即アウトーっス!その方が面白いじゃないっスか。」

  な、何だか今のでスパナマンさんに対するイメージが変わった気がします。

  やっぱり、噂に聞いた程度ですがあの人の息子さんなだけはありますね……って!

  「何が面白いんですか……!わたし達は子モグラさんを助けに来たのn……っ。」

  「ではー、第2問っス!」「ち、ちょっと……っ!」

  わたしの反論を遮るように言うと、目の前の画面には次の問題文が現れました。

  『スパナマンの好きなものはスパナですが、スパナマンの好きな色は赤である。』

  「は、はい……?」

  そ、そんなの知らないです!というか、そんなの全然クイズじゃないですよっ。

  でも、どっちか選ばないといけないんですよね……。そうは言っても、意味が分からないです。

  「んー?あ、まってー!」

  「大体好きなものがスパナって……って、子モグラさん……!?」

  ツッコミどころしかない問題について零していると、水色モグラさんが何かを追いかけて幕の方へと駆け出すのが見えたので、慌てて連れ戻しに行こうとしました。

  「ちょーちょまってー!」

  「わわわ子モグラさん、ダメー……ッ!!」

  気付かず、目の前の蝶々を追いかけて×の幕の方へと走っていく水色モグラさん。

  何とか追いついてきて、あとちょっとで届くと思い手を差し出そうとしましたが……。

  「わぁ!」

  間に合わず、水色モグラさんは×の幕へと飛び込んでしまいました。

  

  「こ、子モグラさん……っ。」

  「そ、そんな、い、いやです……っ、こんな所で……っ。」

  わたしは子ネヂミちゃんだけでなく、子モグラさんまで失う事になった絶望で胸が張り裂けそうな思いです。

  そんな……あんまりです。こんなの、絶対……。

  「こんなの絶対おかしいでs……?」「らびっぴねーたーん!」

  今にも涙が零れ落ちそうになっていると、突然水色モグラさんの声が聞こえてきました。

  わたしのことを呼んでいるのが分かって、顔を上げると目の前では何事もなく手を振っている水色モグラさんの姿がありました。

  [newpage]

  「あれ、子モグラさん……?って……。」

  ≪ピンポーン!≫

  「えぇっ!?ま、まさかの正解っスか?」

  「へ……?」「えへへー!」

  戸惑うスパナマンさんと共に状況を把握出来ずにいるわたし。

  というかこの問題、×が正解ってどういう事なんでしょうか?

  なんて考えていると、スパナマンさんは我に返った様子で「こほんっ」と咳ばらいをすると……。

  「あー、はい。ボクが好きなのはズバリ、スパナ色っス!なんつって。」

  「ずこーっ!」

  おどけた様子で答えを言い、帽子をくるくると回していました。

  あの、さっきの絶望感返してもらえますか……?

  「そもそもスパナ色ってなんですか……っ。」

  「スパナ色はスパナ色っス。それ以外にないっス!」

  これは、真面目に聞かない方が良いかもしれませんね……。

  そう思うと、元の位置へと戻りました。

  「さてさて、いよいよ最後の問題っス!」

  『黒い球やタルはエルボに入りますが、キャビッジはエルボに入らない。』

  「ぁっ、これは簡単です……っ。」

  さっき、試しにと思ってキャビッジをエルボに向かって投げ入れようとしたら、つっかえて入りませんでしたし。

  やはり、「ものは試しよう」なんでしょうか。

  「いきますよ……?」

  「うん!」

  「「せーのっ!」」

  わたし達は迷うことなく、◯の幕へと飛び込みました。

  結果はもちろん……。

  ≪ピンポーン!≫

  「やったー!」

  「や、やりました……っ。きゃふっ……。」

  「らびっぴねーたん?」

  無事に最後の問題を正解すると、わたしは突然全身の力が抜けたようにその場にぺたんとなってしまいました……。

  [newpage]

  ─────

  「それじゃー、お約束通りお子さんは返すっス!ポチっとな。」

  スパナマンさんがボタンを押すと、目の前には巨大なキャビッジがドサッと音を立てて落ちてきました。

  わたしがキャビッジに触れると、中からは青モグラさんが飛び出してきたので、すかさず抱き留めます。

  「らびねー!」

  「良かったです、無事で……っ。」

  「わーい!」「うんー。」

  よしよしと青モグラさんの頭を撫でてあげ、その場に下ろすとスパナマンさんの方を向きます。

  「いやいやぁ羨ましーっスねぇ。あっ、そうだ!今ここでボクのお嫁さんにならないっスか?お嫁さん募集中っスよ。人間じゃなくてもかまわないっs……。」

  「ごめんなさい、結構です……っ!!」

  「そ、そんなぁ~!……ん?」

  ごめんなさい、スパナマンさん。

  わたしには大切な人達と親友が居るので、お気持ちには応えられないです……。

  なんて申し訳なさそうに断り、背を向けていると黄色モグラさんが何やら拾い物を渡していて。

  「わすれものだよ?すぱなのおじちゃん!」

  「はっ……!ぼ、ボクの大切なスパナ……あ、ありがとっス!なんて優しいモグラさんなんスか、うぅぅ~ぐすっ……。」

  「よしよしー。」

  「ふふっ、子モグラさんったら……。」

  やっぱり、モグラーニャさんとモグリーナさんの子供ですよね。

  わたしも、そんな優しい人達の家族に迎え入れてもらえて幸せ者です。

  きっと、スパナマンさんにもご縁はあるはずですよ♪

  「じゃ、負けたボクは大人しく帰るっス。」

  「はい、お元気で……っ。」「ばいばーい!」

  「またいつか、改めて勝負したいっスね。じゃ、お疲れーっス!」

  わたし達が手を振ってお別れすると、スパナマンさんはその場から消えてしまいました。

  フンドーンさん達と違って平和なお別れでしたが、もうこんな機会は二度となさそうです……。

  「らびっぴねーたん?」

  「っ、あ、はい……っ。皆さんの元へ戻りましょうか……♪」

  「うん!」「はーい!」

  こうして、わたし達は助け出した青モグラさんを連れて、部屋の向こうへと戻っていきました。

  [newpage]

  「ただいまです……!無事に4人目を助け出せました……っ。」

  「あ!おね~ちゃん!」「おかえりー!」

  部屋へと戻ると、赤モグラさんと黄色モグラさんが駆け寄ってきました。

  今回はちょっと長引いてしまったので、お待たせしてしまいましたね……。

  「はい……♪これで、あと4人ですね……っ。」

  気が付けば、あっという間にもう半分過ぎた感じでしょうか。

  さっきは子ネヂミちゃんが連れ去られてしまって、一時はどうなるかと思っていましたがすっかりわたし達だけでも何とかなるような気がしてきました。

  ただきっと子ネヂミちゃんも、今頃あの人のもとから隙をついて逃げてたり、なんて……。

  子ネヂミちゃん、そしてモグラーニャさん。

  わたし、今子モグラさん達と共に頑張ってます……っ。

  絶対助けに行くので待っててくださいね……?

  「さてっ、休んでる暇はないです……っ。行きましょう……!」

  「「「「はーい!」」」」

  青モグラさんを加え5人になったわたし達は、子ネヂミちゃんを待たせる訳にはいかないと思い次の場所へと向かいました。

  [newpage]

  次はどうやら雪山……わたしにとっては思い出の場所かもしれないです。

  「ねぢみねーたんだいじょぶかなー?」

  「子ネヂミちゃんならきっと大丈夫ですよ……♪」

  子ネヂミちゃんの安否を気にする水色モグラさんへ、そう安心させるように言うわたし。

  やがて雪山のエリアへと着くと、辺り一面が銀世界でした。

  「着きましたね……。」

  入口の部屋へ入ると、何やら滑りそうな氷の床がありますが、これは……。

  「んー?これすべんないー。」

  「ほんとだー!でもつめたーい!」

  なるほど、見せかけの床ってことなんでしょうか。

  それはそうと、すぐ横に看板があったので読んでみます。

  ただ、そこには……。

  ─────

  『こネヂミでチュ!

  あたちはぶじでチュ。

  でも、おかあさんが、たいへんなんでチュ!

  たすけにきてほしいでチュ!

  まってるでチュ!ラビッピ!』

  「子ネヂミ、ちゃん……!?」

  わたしは看板の文面と横にある慌てたような子ネヂミちゃんの顔写真で、あの後何かあったのだと分かりました。

  でも、親ネヂミさんが大変ってどういう事なんでしょうか。

  「ねぢみねーたん?」

  子モグラさんもどこか心配そうに看板を見上げています。

  きっと、どういう状況なのかが分かるくらいになったみたいです。

  「とりあえず、子ネヂミちゃんは大丈夫みたいですね……っ。」

  「よかったー!」「ねぢみおね~ちゃんいないとさびしーもん。」

  ふふっ、すっかり子モグラさん達にも慕われてますねっ。

  となれば、残りの子モグラさんと共に子ネヂミちゃん達も助けないとです!

  「じゃ、行きましょう……!」

  「「「「うん!」」」」

  そう言って、早速最初のステージへと入っていくわたし達。

  ただ、その先に待っているのが、わたしの想像していた光景とは全く違う事に気付いていませんでした……。

  [newpage]

  最初のステージへ入ると地上には誰もおらず、静けさが漂っていました。

  ゴールとなる壁の前には穴が開いていて、タルが一つ置いてある以外には何もありません。

  「えっと……?」

  これまでと違う雰囲気に、いきなり戸惑うわたし。

  もしかしてこのエリアには誰も居ない感じなのかな……?

  「わー!ゆきがいっぱい!」

  「えへへー!それー!」

  「わわわ、子モグラさん……!きゃふっ!」

  辺り一面に降り積もっている雪に興奮して遊び始める子モグラさん達。

  しかし、そんな中でわたしの後ろから何やら物音が聴こえてきました。

  「っ、誰か居ます……。」

  恐る恐る音がした方へと歩み寄ると、近くの穴から何かが姿を現しました。

  でも、その姿には見覚えがあり……。

  「ぇっ……こ、子ネヂミ、ちゃん……?」

  その正体は、さっきまでわたし達と一緒に居た子ネヂミちゃんと思われるハリネズミさんでした。

  ─────

  「あれ?ねぢみねーたん?」

  「ほんとだ!ねぢみおね~ちゃ」「子ネヂミちゃん……っ!」

  わたしはその姿を見ると、子モグラさん達を差し置いて子ネヂミちゃんのもとへ駆け寄りました。

  しかし、子ネヂミちゃんは……。

  [newpage]

  「良かったです……!無事d……!?」

  思わず抱き着こうとしたわたしへ、突然体当たりをしてきました。

  [[rb:理由 > わけ]]もわからず、子ネヂミちゃんの攻撃を受けその場に倒れるわたし。

  ≪ばたっ……≫

  「らびっぴねーたん!」

  「おね~ちゃん!」

  子モグラさん達が駆け寄ってきますが、突然の事に何が起きたか理解出来ず。

  そして、戸惑うわたしのもとへ、何時しか聞き覚えのある声が近づいてくると、そこにはじんべえがわたしを嘲笑うかのように見下ろしていました。

  ──────

  「イッヒッヒ、バカなウサギめ。まんまと掛かったな!」

  「っ……、じん、べえ……。」

  「フンッ、あの看板はオラがコイツになり切って書いたやつだ。そしてコイツを使えば簡単に釣れると思ったからな!」

  そんな、あれはあなたの仕業だったんですね……。

  てっきり、子ネヂミちゃんがわたしに向けて書いたものだとばかり思っていました。

  「残念だがコイツはもうコイツの仲間と共にオラの[[rb:下僕 > しもべ]]だ。感動の再会になると思っただろうが、そうはいかねぇぞ!じゃあな!」

  そう言って、高笑いをしながらその場を後にしようとするじんべえ。

  その様子を見たわたしは、あまりの悔しさと俯きながらも声を震わせて。

  「どう、して……。」

  「……あ?」

  「どうして、そんなことばかりするんですか……。」

  ただただ頭の中に浮かんだ言葉ばかりですが、

  「なんだ?ウサギ語なんかオラには分かんねぇな~。」

  しかし、じんべえは何処かからかうような口調でそう言うと、まるでウサギの耳を模した仕草を取りました。

  それを見たわたしは、ウサギであるわたしへの侮辱のように思えてくると、これまでわたしに対してじんべえがしてきた事を思い出して。

  「あなたには……、あなたには人の心がないんですかっ!!」

  普段は滅多に感じることのない、怒りを覚えたわたしは顔を上げるとじんべえを睨み付けながら声を上げました。

  「らびっぴ、ねーたん……。」

  「らびねー、おこってる?」

  普段とは違うわたしの様子に、子モグラさん達が怯えていますが、今のわたしはただじんべえへの怒りでいっぱいでした。

  「わたしへの仕打ちは……今はどうでもいいですっ。でもっ、わたしの大切な家族と、そして親友を使ってこんな事をしたあなたをっ、わたしは許しませんっ!!」

  わたしはそう叫ぶように言うと、側にあった黒い球のもとへと走り、それをじんべえへ投げつけようとしました。

  さすがのじんべえもしばらく黙っていたので、そんなわたしの様子に動揺したのかと思いましたが……。

  「くっ……。こ、このっ、ウサギ如きが生意気なぁ!!ええい!おめえ等このウサギをやっちまえー!!」

  じんべえの掛け声と共に、穴からは何人もの子ネヂミちゃん……いえ、ハリネズミさんが出てきて、あっという間にわたし達を取り囲んできました。

  そして、じんべえはそのまま子ネヂミちゃんをゲージらしきカゴに入れて何処かへと消えてしまいました。

  [newpage]

  「らびっぴねーたん……。」

  「……っっ……。」

  子ネヂミちゃんの仲間に囲まれ、じんべえに気持ちが伝わらなかったわたしは、しばらくの間大切な親友、もとい妹のような存在を失ったショックでその場に泣き崩れていました……。