願望

  インターネットで見つけたあるサイト。

  

  ”新開発獣人スウツのモニター募集!

  今までに無い密着感とリアル感。抜群の伸縮性と強靭さはあなたを満足させます!

  この究極のアニマルスウツのモニターを募集しています。

  内容は簡単!感想を書いて、3ヶ月間当社に送るだけ!無償でスウツは差し上げます。

  

  下記フォームからお申し込みください。

  ※個人情報は保護されます。当落については発送をもって代えさせていただきます”

  

  へぇ。俺はそれに興味を引かれた。

  俺はいわゆるケモナーってやつだな。みんなには内緒にしてるけど。

  俺はモニターに申し込んだ。

  そして、1週間後。箱がやって来た。

  その箱の中身は、ビニールのような虎の・・・スウツが入っていた。

  俺はまず、その箱の中の手紙と取扱説明書を手にした。

  「えーと・・・手紙は...」

  『モニターにご当選おめでとう御座います。こちらのスーツをモニター用にご提供します。ご返品の場合は裏面の連絡先に着払いでお送りください。

  使用に当たっては、取扱説明書の内容をよくお読みになってご使用ください。万が一の場合は、当社で保証いたしますが、取扱説明書の注意を守らず起きた事故については当社は一切の責任を負いません。悪しからず』

  そして表には「(株)P○○○v・トランスファー」と、住所と電話番号、メールアドレスとWebサイトのアドレスが書かれていた。

  何も知らず・・・偶然たどり着いたサイトで、申し込んだスウツ・・・。

  俺は小躍りして、説明書を読んだ。

  内容は簡単で、着用の仕方と、注意事項が一つ書かれていた。

  『絶対に全裸で着用しないでください。』

  「しねーよ」

  俺は下着姿になってそのスウツを着た。

  [newpage]

  「すげぇ・・・」

  背中のジッパーを完全に閉じると、ピッタリと俺の体にフィットして、平面のプリント柄だった獣毛が浮き上がってくる・・・。

  「・・・本物か?これ」

  そこそこ柔らかく、触った事は無いけど、猫とか・・・のそれに近い感触がした。

  「肉球?すごい!」

  ぷにぷにとした感触は間違いなくそうだ!

  それに、ほとばしる力・・・。

  俺はぶかぶかの短パンを穿いて・・・いや。見えてないけどさ、やっぱり拙いから・・・表に出た。月の綺麗な夜の町に。

  ほとばしる力は、俺に『跳べ』と命じる。流石に道を歩いてたら明らかに人に見られて大騒ぎだもんな。

  俺は跳躍した。信じられない・・・屋根まで簡単に飛び上がってほぼ無音で着地した。

  俺はさらに跳躍し、屋根を駆けた。すごい勢いで。それこそ獣のように。

  

  「きゃぁーっ!」

  暴漢に襲われている女の人を発見!よし・・・勝てる!自信が湧いてきた。

  「このーっ!」

  屋根から飛び降り、暴漢にパンチを見舞ってやった。俺の一撃で吹き飛んで気絶した。やった!

  「あ・・・あの。あなたは?」

  拙い!

  「秘密・・・です!じゃっ!」

  俺は目いっぱい跳躍し、屋根伝いに逃げた。

  逃げに逃げて、やっと自宅の部屋に戻った。

  [newpage]

  俺は毎夜、パトロールに出るようになった。安いサングラスを改造し、服とズボンも専用のを用意した。

  「ここ最近虎の格好をした人が人助けをしてる」と言う噂が近所に広まりだした。照れるな。知られたくないけど、俺が・・・役に立ってるなんて...。

  

  でも・・・もっと力が欲しい。

  パンツ一枚でスウツを着てみた。

  もっと力が出た。俺の運動神経じゃ考えられないような動きと力...。

  ・・・ヤバイ。力に・・・溺れる・・・

  

  ついに俺は、説明書の唯一の注意書きを破った。

  全裸でスウツを着たんだ。

  「うがっ・・・あっ!!」

  おかしい!?いつもと違う!

  体が音を立てて変化してゆく。骨の変化する音・・・肉が変化してゆく・・・。

  涙目の俺が最後に見たのは説明書の注意書きだった。続きがあった。今になって・・・何故?

  

  『絶対に全裸で着用しないでください。完全融合し、獣になります。この場合は元には戻せませんので悪しからずご了承ください。なお、この注意書きは融合後にしか見えません』

  

  「グルルルッ...」

  声が出せない。人の声が・・・。考えは間違いなく人間なのに。四つん這いで俺は・・・。

  「グワオゥッー!」

  駄目だ・・・叫んでも遠吠えにしかならない・・・俺は・・・俺は・・・!

  「何なんですか!・・・ひっ・・・いやぁぁぁっ!」

  大家さん・・・助けてくれ俺・・・俺・・・。

  「とっ、虎がぁっ!」

  俺は身動きも出来ず、部屋で丸まった。もう・・・そうするより他に無かった。

  下手に動いて・・・死ぬのはいやだった。

  

  何処かの団体が来て俺を撃った。麻酔銃だろう。

  俺は・・・眠り・・・に...。

  [newpage]

  俺が目を覚ますとそこは、動物園だった。

  「グルル・・・」

  別の虎だ。雌だ。

  「俺は・・・」

  「何?新入りさん。私と・・・夫婦になりましょ」

  「え?」

  「私、あなたの事を気に入ったの」

  「でも・・・俺は...」

  「私も他の動物園から来たばかり・・・。他の虎とは仲良くなれなくて」

  「いや・・・俺は・・・」

  

  ・・・でも、結局俺は彼女と夫婦になった。結局恋仲になって...。

  子供にも恵まれ・・・飼育員さんにも「人の言うことを良く聞いて良い子だね」と褒められた...。

  「パパ・・・あそぼぉ~」

  可愛い俺たちの子供...。そしてよき妻。

  

  今日もこの動物園は人が沢山だ。

  俺は・・・彼女と子供達と、この檻の中で幸せに・・・暮らしている。

  

  END