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夕方のトレーニングルームは、汗と消毒液とゴム床の匂いが混じる。男の体温が、まだ空気に残っている。俺はこの匂いが好きだ。筋肉が擦れ、息が荒れ、誰かの努力が湯気みたいに漂っている空間。健全で、だからこそ、少しだけ不健全なことを紛れ込ませやすい。
窓の外は、もう薄暗い。部活終わりの校舎は静かだった。遠くの階段から、誰かの笑い声が一瞬だけ響いて、すぐに消える。そんな時間帯が一番いい。人の気配が薄くなる。
俺はラックにプレートを戻しながら、床に伸びる長い影を見た。でかい。肩幅が広い。脚も長い。振り返るまでもない。
「先輩。まだやってたんすか」
低い声。少し掠れてる。喉を酷使した犬みたいな声だ。俺は笑って、タオルで首筋を拭いた。
「お前こそ。自主練、今日も長いな」
「先輩いるなら、やるっすよ」
そう言って笑う顔は、体格に似合わず素直だ。いや、体格に似合わないわけじゃないか。でかくて、強くて、男っぽい。だけど俺に向ける目だけが妙にまっすぐで、疑いがない。その無防備さが、いつも俺の奥を熱くさせる。
後輩の名は、真壁。二年。高身長。筋肉質。地肩も強い。背中も厚い。狼みたいな目つきなのに、俺の前だと尾を振る。そんな男だ。
「今日、腰の入り悪かったろ」
俺が何気なく言うと、真壁は一瞬だけ止まった。図星を刺された顔。すぐに眉を寄せて、照れくさそうに首の後ろを掻く。
「……分かるんすか」
「分かるよ。踏み込みのとき、下腹が詰まってた」
「下腹?」
「うん。股関節の手前。腸腰筋と、恥骨まわり。あそこが固まると腰が死ぬ」
俺は淡々と言った。なるべく、いつもの指導の声で。
真壁はすぐ信じる。そういう男だ。俺が口にしたことを、まず疑わない。そこに甘えがある。信頼とも言う。俺にとっては、都合のいい盲信だ。
「マジで最近、突っ張る感じあるっす」
「だろ。見れば分かる」
「ほぐせます?」
「体重かけて踏むのが一番早い」
言いながら、俺は床の隅にある厚手のストレッチマットを引いた。黒い合皮が、消毒液で少し湿って光る。真壁は迷いなく寄ってくる。大きい。近い。汗の匂いが濃い。トレ後の雄臭さ。首筋の塩気。Tシャツの中で蒸れた胸板の熱。鼻の奥がじんとする。
「靴脱いで、仰向け」
「はい」
返事が短い。素直だ。
こいつ、たぶん少し嬉しいんだろうなと思う。俺に見てもらえるのが。触ってもらえるのが。犬みたいに分かりやすい。いや、狼か。でかくて強いくせに、懐に入れた相手には腹を見せる。そういう危うさがある。
真壁はベンチ横に座ってシューズを脱ぎ、ソックスも脱いだ。裸足の足裏が床につく。男の足だ。大きくて、指も太いで、土踏まずまで分厚い。踏ん張るために育った足だ。そういう細部を見るだけで、こいつの体がどれだけ真面目に使われてきたか分かる。俺はそれが好きだった。鍛えられた男の体には、素直さが残る。鍛えた分だけ、触れれば反応する。嘘がつけない。
「上、脱いどけ。腹の動き見たい」
「はい」
真壁はTシャツの裾を掴んで、汗で張りついた布を一気に剥いだ。持ち上がる腹筋。肋骨の下で収縮する呼吸。広い胸。乳首のまわりにうっすら汗が光ってる。脇も濃い。若い雄の匂いが立つ。トレーニングルームの残り香に混じって、こいつ個人の体臭がはっきり浮く。獣じみた温度。鼻の奥が痺れる。
マットに仰向けになった真壁は、両腕を少し開いて、素直に俺を見上げた。でかい体が従順に寝ている。危険で、ひどく都合がいい。
「下腹、触るぞ」
「お願いします」
俺は膝をついた。硬い腹。皮膚の下で筋肉が細かく震えてる。疲労が抜けきってない。下腹にいくほど熱い。中心に近づくほど、緊張が濃い。俺は指先で恥骨の上をなぞった。真壁の腹がぴくっと跳ねた。
「ここ、張ってるだろ」
「あっ……はい。そこ、なんか……変な感じします」
変な感じ。そう言うだろうと思った。そこはそういう場所だ。理屈をつければいくらでも誤魔化せる。
「奥の筋が詰まってる証拠」
俺は静かに言って、ジャージのウエストに指をかけた。
「少し下げる。圧入れるとき、布が噛むと逆に痛むから」
「分かりました」
盲信。信頼。たぶん本人の中では、その二つに差はない。俺はその隙間に、躊躇なく指を差し込む。
ジャージとパンツを、恥骨が見えるところまで下げる。濃い陰毛。汗でしっとりしてる。根元に熱がたまってる。中心には、すでに分かりやすい膨らみ。でかい。布越しでも隠しきれない存在感が、薄い生地を押し上げていた。
やっぱりな、と思う。
練習中から、たぶんそうだった。踏み込みが浅かったんじゃない。下腹が詰まってたわけでもない。単純に勃ってたんだ。若い男が、尊敬する先輩と二人きりで、汗だくで、張りつめた空気の中にいた。しかも俺は最初から、そうなるように言葉を置いていた。
でも真壁は、自分の体の反応より俺の説明を優先する。そういう男だ。
「……すみません、先輩。なんか、勝手に」
「気にすんな。ここが固まると、反射で立つことある」
平然と嘘をつく。真壁は本気で安心した顔をした。眉がゆるむ。喉が鳴る。かわいい、と思ってしまう。でかいくせに。
「マジっすか」
「あるある。男は神経太いから」
「へえ……」
納得してる。完全に。笑いそうになるのを、息だけで抑えた。
俺は自分のシューズを脱いで、ソックスも脱いだ。床の冷たさが足裏に移る。次にマットへ片足を乗せる。真壁の目が、俺の足に落ちた。たぶん、踏むんだな、くらいの認識だ。何を、どこまで、なんて考えてない。俺が正しい前提で受け入れている。
「力抜け。最初は浅くいく」
「はい……っ」
足裏で、下腹の横をゆっくり踏む。腹斜筋の下。体重の一割。二割。真壁の息が細く漏れた。
「あ、っ……は、はい……そこ、効くっす」
「だろ」
もう片方の足もマットに乗せる。バランスを取りながら、じわじわ中心へ寄る。俺の土踏まずが恥骨の際をかする。パンツの中の膨らみが、ぬるい圧で押し潰される。真壁の腹筋がびくっと硬直した。
「んぐっ……!」
「力むな。ほぐれない」
「す、すみません……っ」
謝る声が震えてる。顔も赤い。耳まで熱い。自分で変だと思ってるんだろう。でも俺が当然みたいな顔をしているせいで、疑い切れない。きっと今、真壁の中ではこうだ。効く場所だから、感じる。感じるのは仕方ない。先輩は分かってやってる。なら、耐えるのが正しい。そういう思考だ。
かわいそうなくらい従順だ。
俺は片足の踵を、膨らみの真上にそっと置いた。布一枚越しに、輪郭が分かる。太い。長い。まだ半勃ちなのに、すでに存在感がある。汗と熱で柔らかく蒸れていて、押すたびにじわっと芯が返ってくる。
「ここが特に詰まってる」
「そ、そこ……?」
「恥骨筋膜のライン。響くだろ」
「は、ぁ……っ、はい……なんか、奥まで……」
「正常」
便利な言葉だ。真壁は歯を食いしばって頷いた。
俺は足裏でゆっくり圧をかけた。ぐに、と布の中で肉棒が潰れて、すぐに硬さを増して返してくる。真壁の喉から低い声が漏れた。
「ん、ぅ……あっ……」
「呼吸」
「はぁっ、は……い……」
そのまま、踵で円を描くみたいに擦る。電気按摩の前の慣らし。布越しなのに熱がすごい。先走りで少し湿ってきたのか、滑りが変わる。俺の足裏にぬるい粘りがうつる。
真壁は目を閉じた。唇が開く。胸が大きく上下する。たぶん混乱してる。気持ちいい。だけどマッサージだと思いたい。いや、思わなきゃいけない。俺に触られて、踏まれて、それで勃って喘いでるなんて、自分の中で処理しきれないんだろう。
俺はその顔を見下ろしながら、踵の位置を少しずらした。今度は竿の根元から先へ、土踏まずで押し流す。布の中の輪郭がぬるりと転がる。
「ぁ、あっ♡ せ、先輩、それ……っ」
「流れてるだけ。滞留した血を散らしてる」
「んぐ……ぅ、っ、すご……」
すごい、で止まった。何がすごいのか、自分で言葉にしたくないんだろう。俺には分かる。すごいほど気持ちいいんだ。
俺はジャージの裾をもう少し下ろした。先端はまだ包まれているのに、傘のその先が、布の縁にきつく押し込まれていた。亀頭の形がくっきり出る。先走りで濃く濡れて、色の変わった布が張りついている。
俺はそこを、親指の付け根でゆっくり押した。
「っ、あぁっ……!」
腰が浮く。腹筋が硬くなる。大きい体が、ひどく正直に跳ねた。いい反応だと思う。たぶん真壁は、もう限界に近い。けど、まだ壊れていない。理屈にすがれる程度には、頭が残ってる。
「先端、神経密度高いからな」
「は、はい……っ、そこ、めちゃくちゃ……響き、ます……」
「効いてる証拠」
またそれを言う。真壁は苦しそうに頷いた。かわいい。完全に気持ちよくされてるのに、必死に治療だと思おうとしてる。その健気さごと、踏み潰したくなる。
俺は足を少し持ち上げた。真壁がほっと息を漏らす。すぐ次の瞬間、踵を小刻みに震わせた。根元から先端まで、ぶるぶると連続で刺激を入れる。
「んぐっ、ぁ、あっ、あっ、あっ♡」
「抜くなよ。呼吸、続けろ」
「む、むり、っ♡ はぁっ、はぁっ、先輩、それ、やば……っ」
やばい。そう言った。もう誤魔化しきれないんだろう。俺の足の下で、肉棒は完全に硬くなっていた。布の中でびくびく脈打つ。熱い。太い。若い血が詰まっている。踏むたびに先走りがにじみ、足裏に粘ついてくる。男の汁の匂いが、汗臭さに混じって生々しく立つ。
俺はわざと、ソックスを脱いだ裸足の指で亀頭の輪郭を挟むようにした。布越しにこすり上げる。ぐちゅ、という湿った音がした。真壁がびくんと全身を震わせる。
「せ、先輩、布……もう、邪魔かも……っ」
「そうだな。圧が逃げる」
「じゃ、じゃあ……」
「外すぞ」
「……はい」
その返事は、ほとんど懇願だった。
俺はパンツごと引き下ろした。跳ねるように肉棒が解放される。太い。長い。根元まで血が詰まって、表面に筋が浮いてる。亀頭は赤黒く、先端から透明な先走りが糸を引いていた。思ってた以上だ。でかい。しかもいやらしい形をしてる。
真壁は自分のを見て、顔を真っ赤にした。恥ずかしいんだろう。でも隠さない。隠せない。俺が必要だと言えば、そのまま差し出す。そういう男だ。
「立派だな」
「っ、すみません……」
「謝ることじゃない」
「でも、先輩にこんなの……」
「治すためだろ」
「……はい」
言い聞かせるみたいに、真壁自身も頷いた。もう自分で自分をそう納得させるしかない。俺はその心理が手に取るように分かる。尊敬してる相手に、無防備なところを全部見られてる。恥ずかしい。でも、その相手が正しいと言うなら受け入れたい。気持ちよさより先に、従いたい気持ちがある。そこがいい。
俺は足裏を、むき出しの竿に直接乗せた。
熱い。ぬめる。皮膚の柔らかさの下に、異様な硬さがある。生きた男の肉棒だ。しかもでかい。土踏まずにぴたりと収まらない。少し余る。その感じがたまらない。
「っ、あああっ♡」
「そんなにか」
「だ、だって、直接……っ、はぁっ、やば……♡」
俺は根元から先へゆっくり滑らせた。足コキだ。けど本人の中では、まだマッサージだ。そう思い込んでる。思い込もうとしてる。その境目で喘いでる。たまらない。
先端に達したところで、足指で亀頭を挟んで軽く捻る。
「ぁっ♡ んぅっ、ぅあっ……!」
「ここ、詰まりやすい」
「うそ、ほんとに……っ、そこ、だめ……♡」
だめ、の意味は分かる。効きすぎるってことだ。俺は止めない。何度も根元から先まで擦り上げる。ぬちゅ、ぬる、ぬち、という音が、静かな部屋に小さく響く。真壁の汗の匂い。先走りの青臭さ。ゴム床と消毒液。その全部が混ざる。健全な場所で、男の性だけがむき出しになる。その背徳感が、腹の奥を熱くする。
真壁は腕で目を隠した。たぶん、見られたくないんだろう。気持ちよくなってる顔を。俺に踏まれて、でかいチンポをしごかれて、声を上げてる自分を。だけど隠した腕の下から、口だけは開いてる。喘ぎは漏れる。腹は震える。脚は勝手に開く。体は全部、俺の足を歓迎してる。
「イきそうか」
「っ、わか、んない……でも、なんか……っ」
「出していいぞ。溜めたままだと余計張る」
「マッサージで、出して……いいんすか……?」
「必要ならな」
真壁はその言葉で、完全に許された顔をした。
ああ、そうか。こいつにとって大事なのは、俺が許すかどうかなんだ。自分の欲じゃない。俺の指示に従うこと。それなら気持ちよさも正当化できる。ほんとに都合がいい。
俺は足首を細かく震わせた。肉棒全体がぶるぶる揺れる。亀頭が跳ねる。鈴口から透明な汁が飛ぶ。
「ぁ、あっ、あっ、あっ♡ 先輩、むり、っ、でる、でるっ♡」
「出せ」
「んぁあっ♡ は、はぁっ、あ、あぁああっ♡」
腹が引きつる。腰が跳ねる。肉棒が俺の足裏に押しつけられたまま、どくどく脈打った。白い精液が勢いよく飛ぶ。腹にかかる。胸にかかる。一本は俺の足首まで伸びて、ぬるく絡んだ。濃い匂いが一気に立つ。生臭い。若い。雄の匂いだ。
真壁は喉の奥で、泣くみたいな声を出していた。
「ん、ぅ……♡ はぁっ、はぁっ……」
「よく出たな」
「す、すみません……いっぱい……」
「溜まってたんだろ」
俺は足をどけず、射精後の敏感な竿を軽く撫でた。真壁がびくんびくん跳ねる。
「ひぁっ♡ ま、まだ、だめっ……」
「残りがある」
「のこり……?」
「奥の張り。ここから抜く」
真壁は半泣きのまま頷いた。ここまでされてなお、完全に俺を信じている。もうここまで来ると、信仰に近い。俺が何をしても、意味があると思って受け入れる。だから俺は、遠慮しない。
俺はしゃがみ込んで、精液で濡れた足裏を自分の手で拭い、そのまま真壁の腹に塗った。ぬるい白濁が腹筋の溝に伸びる。真壁が息を呑む。自分の精液を先輩に触られ、塗られ、その匂いを間近で嗅がされる。羞恥と興奮で、頭がくらくらしてるはずだ。
「起きろ、真壁」
「……はい」
上体を起こさせる。唇が震えてる。目が潤んでる。まだ息も荒い。その顔を見た瞬間、俺はもう我慢しなかった。顎を掴んで、口を塞ぐ。
深く。いきなり。舌をねじ込む。
「ん、ぅっ……!」
「……っ、は」
抵抗はない。驚いてるだけだ。俺が唇を押しつけ、舌を絡め、口内の唾液を奪っても、真壁は受け入れる。最初の硬直のあと、恐る恐る舌を返してきた。かわいい。従順で、でかくて、男臭くて、キスだけで震える。
俺は息継ぎもさせずに、何度も角度を変えて貪った。唾液が糸を引く。鼻先が触れる。汗の匂いが濃い。真壁の喉がごくごく動く。飲み込んでる。俺の唾液も、自分のも。
離すと、真壁は呆けた目で俺を見た。
「先輩……これ、も……治療、すか……」
「そう思いたいなら、それでいい」
「……っ」
その返事で、こいつは分かったはずだ。これはただのマッサージじゃない。俺が自分を欲しがってる。
それでも逃げない。むしろ、嬉しそうに喉が鳴った。そういう顔をする。ああ、やっぱりそうだ。こいつ、たぶんずっと俺に触れられたかったんだ。
「立て」
「はい」
立ち上がった真壁の胸を押して、鏡の前に向ける。大きい背中。汗で光る肩。うなじの太い筋。腰に手をかけると、びくっと反応した。さっき出したばかりなのに、竿はもう半分戻っている。回復が早い。若い雄はこれだからいい。
「脚、開け」
「……こう、すか」
「もっと」
締まった、でかい尻だ。筋肉質で、持ち上がっていて、割れ目が深い。男の尻の匂いがする。汗と下着の蒸れが混じった、むっとする匂い。鼻が喜ぶ。
俺は指にさっきの精液を塗って、尻穴のまわりを撫でた。真壁が声を噛み殺す。
「っ、ぅあ……」
「ここも張ってる」
「ここも……?」
「下腹と繋がってる」
もう何でも通る。こいつは受け入れる。俺は穴の皺を指先で押し広げた。ひくひくしてる。未経験の穴の緊張。けど、嫌がってはいない。体が驚いてるだけだ。指を少し潜らせると、内側がきゅっと締まった。
「んぐっ♡」
「力抜け」
「む、むりっ……でも、先輩……っ」
「大丈夫だ」
優しく言う。実際、優しくしてる。ただ、きっちり開いて、気持ちよくして、最後まで俺のものにしたいだけだ。
指を一本。次に二本。精液だけじゃ足りなくて、唾液も足した。ぬるぬるになった穴は、それでもきつい。腸壁がいやらしく絡みつく。
「お前、こんな顔するんだな」
「や、っ……はず……っ」
「なのに嬉しそうだ」
「ちが、っ……でも、っ♡」
違わない。声で分かる。穴で分かる。俺が指を曲げるたび、奥がびくっと痙攣する。気持ちいい場所に当たってる。男の体は分かりやすい。
俺は自分のジャージを下ろした。勃起はとっくに完成してる。真壁の首筋に唇を当てる。汗を舐める。塩辛い。若い体臭が舌に乗る。
「先輩、まって……それ、入る……?」
「入れる」
「俺、男っすよ」
「知ってる」
「でも……」
「嫌か?」
「……嫌、じゃないっす」
その答えに、胸が熱くなった。こいつはほんとにまっすぐだ。怖いはずなのに、俺を優先する。俺に抱かれることを、拒まない。むしろ期待してる。尊敬だけじゃない。たぶんもっと前から、こいつの中にも熱があった。
俺は亀頭で尻肉を軽く叩いた。ぺち、ぺち、と音がする。真壁が肩を震わせる。割れ目に沿って先端を滑らせ、穴に押し当てた。
「入れるぞ」
「……はいっ」
押す。きつい。熱い。皺が押し開かれる。真壁が鏡に手をついて、喉を反らした。
「ぁあっ♡ んぐ、ぅっ、は、はいっ、はいっ……!」
「抜くな。飲め」
「んぅうっ♡ ふと、いっ……!」
最後まで沈める。腰が密着する。尻が俺の下腹を受け止める。中、すごい。ぎちぎちだ。腸壁が脈打って、根元にまで絡んでくる。男の穴特有の、熱くて生々しい締まり。腹の底がじんと痺れる。
俺はしばらく動かなかった。真壁に慣れさせるためでもあるし、このきつさを味わいたかったのもある。鏡の中で、でかい男が涙目で俺に貫かれている。背中は広い。腕も太い。どう見ても雄だ。その雄の穴に自分の肉棒が収まっている。背徳というより、征服に近い興奮だった。
「動くぞ」
「っ、はい……♡」
最初は浅く。すぐ深く。ぬちゅ、ぐちゅ、と湿った音が立つ。さっきの精液と唾液が混ざっている。汗も落ちる。尻肉がぶつかるたび、いやらしい音が増える。
「ぁっ♡ あっ、あっ、先輩っ、そこ、だめ、っ♡」
「ここか」
「んぁあっ♡ そこ、奥、っ……!」
分かりやすい。俺は同じ角度で何度も突いた。真壁の脚が震える。穴が締まる。腰が勝手に後ろへ逃げる。逃げながら、また求めて戻ってくる。男の本能だ。快感に逆らえない。
真壁の顔は、もう完全に雄の顔だった。口を開けて、涎を垂らして、涙を溜めて、でも嬉しそうに俺を見てる。
「先輩、俺……っ、こんなの、しらな……♡」
「教えてやってる」
「は、ぁっ♡ やさし……っ」
「そうか?」
「やさし、いっ♡ 先輩の、ちんぽ……っ、やさし、いっ……♡」
体位を変えた。ベンチに片脚を乗せさせて、立ちバックで深く抉る。次はマットに倒して、脚を持ち上げて種付けプレス。汗だくの胸同士をぶつけ、息を混ぜる。途中でまた唇を奪う。舌を絡める。口の端から唾液が垂れて、顎に落ちる。真壁は息もできないほどキスされながら、中を突かれてひくひくしてる。
「っ、ん、んぅっ♡」
「飲め」
「んぐ、っ、は……♡」
対面座位にもした。向かい合って抱かせると、真壁は俺の首に腕を回してきた。重い。でかい体が全部預けられる。そのまま腰を突き上げると、穴の奥がじかに絡みつく。腹と腹の間で、真壁の肉棒もまた蘇っていた。俺たちの汗で擦れ、ぬらぬら光っている。
「また立ってる」
「す、すみません……っ」
「いい子だな」
「ぅ、ぁっ♡」
褒めると締まる。ほんとに犬みたいだ。懐いた相手の一言で、体の反応まで変わる。
最後はまた後ろからだった。壁に手をつかせ、腰を掴んで、逃がさず打ち込む。もう加減しなかった。ぐちゅ、ばちゅ、ぐっ、という音が響く。遠くで誰かが廊下を走る音がした気がした。でももうどうでもよかった。ここには俺たちの息と、肉のぶつかる音しかない。
「でる」
「っ、なか、ください……♡」
「欲しいのか」
「ほし、いっ♡ 先輩の、くださいっ♡」
その言葉で、完全に決まった。俺は真壁の腰を引き寄せ、いちばん奥に押し込んだまま射精した。熱い精液がどくどく流れ込む。真壁の穴が痙攣する。締めつけがひどい。腹の奥まで吸われる感じがした。
「んぁああっ♡ あ、あっ、熱、ぃ……っ♡」
「受け取れ」
「はいっ♡ はいっ……!」
真壁も同時にイった。腹に、床に、白い精液を撒き散らす。膝が崩れる。俺は抱えるようにして支えた。二人とも汗と精液でべちゃべちゃだった。トレーニングルームの消毒液の匂いなんて、もうほとんど分からない。雄臭さが全部を塗りつぶしていた。
しばらくそのまま、荒い息だけが続いた。
やがて、真壁が小さく言った。
「先輩」
「ん」
「これも……体、整えるため、っすか」
まだそんなことを聞くのか。いや、違うな。確認したいんだろう。自分が何をされたのか。何を受け入れたのか。それを、俺の言葉で定義してほしいんだ。こいつはそういう男だ。
俺は汗で張りついた前髪を払ってやって、耳元で言った。
「最初はな」
「最初は……」
「今は違う」
「……はい」
真壁は少しだけ黙った。たぶん、胸の奥で何かが落ち着くのを待ってる。納得かもしれない。覚悟かもしれない。
「俺、先輩なら」
「ああ」
「何されても、たぶん嬉しいっす」
「知ってる」
そう返すと、真壁はくしゃっと笑った。泣きそうな顔のまま。でかくて男らしいのに、俺の前だと本当に素直だ。
窓の外は、もう完全に夜だった。校舎の灯りが、ガラスに薄く反射している。鏡の中には、乱れ切った俺たちが映っていた。健全な場所に似合わない姿だ。でも、不思議としっくりきた。
俺は落ちたタオルを拾って、真壁の腹を拭いた。自分のも軽くぬぐう。後片付けまでやってやると、真壁はそれだけでまた嬉しそうにする。ほんとに手がかかる。
「明日、歩けますかね」
「たぶん平気だろ」
「下腹の張り、取れた気します」
「だろ」
「じゃあ、また詰まったらお願いします」
「詰まらなくても呼べ」
真壁は一瞬だけ目を丸くして、それから、深く頷いた。
「はい。絶対、先輩にお願いします」
その返事は、まるで誓うみたいだった。
静かなトレーニングルームに、二人分の熱だけが残っていた。俺はその温度を確かめるみたいに、真壁の首筋を軽く叩く。こいつはすぐにこちらを見る。狼みたいな目で。なのに、俺に向けるときだけ従順だ。
たぶん、次も簡単だ。
理屈なんて、いくらでもつく。
けどもう、そんなものはなくてもいいのかもしれない。
真壁は靴下を履きながら、ちらちら俺を見る。その視線に、さっきまでとは違う意味が混じっている。信頼だけじゃない。欲情と期待だ。自分がどんな声を出したか、どんなふうに乱れたか、思い返してるんだろう。それでも離れない。むしろ、もっと近くに来る。
俺は笑った。
夜は長い。
これで終わりじゃない。けど、始まりとしては十分だった。
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