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異文化コミュニケーション

  「……まで、シートベルトはそのままお締めください……」

  耳に届く音声に、ふとあなたは目を覚ます。どうやら気づかない間に眠っていたようだ。大きく伸びをして、体を起こす。薄く硬いシートにもたれていた背中が小さく悲鳴を上げた。その悲鳴を無視するようにあなたは大きく息を吐く。

  意識の覚醒と共に周囲の状況がはっきりとしてくる。ここは国際線の飛行機の中。フライト中はすっかり眠ってしまっていたようだ。既に先ほどあなたを起こした案内も終わっており、周囲を見渡すとほとんど人影は残っていない。残っているのは……すぐ近くにいる大柄な虎の顔をした男。ピッチリとしたシャツに短い短パンだけを穿いている。この国はあなたが住んでいるよりもずっと緯度が高い。飛行機の中にいるのでまだ肌で感じたわけではないが、それでもあの格好では寒いのではないかと心配になる。だがすぐに思いなおす。人間種であるあなたと違い、ふさふさとした毛皮に包まれている彼なら、あの格好でも平気なのだろう。

  「よう」

  そんなことを考えていると、彼がにやにやした笑いを浮かべながらこちらに声をかけてきた。まさか声をかけられると思っていなかったあなたは、驚きから声を出すことも叶わない。

  「もしかして一人で来たのか? ここがどこか知ってるんだろ?」

  そう言いながら彼は突然肩を組んできた。身長差はかなり大きく、彼の方が頭二つは大きい。そんな相手から肩を組まれては、ほとんど抱きかかえられるような状態である。虎の黒い縞模様が入った毛皮が、あなたの頬をくすぐった。そのままあなたが何も答えられないでいると、肩を抱く腕にぐっと力が入ってくる。

  「戦争が終わったとはいえ、人間が獣人の国に来るってことがどういうことか、わかってるよな」

  虎の遠慮会釈ない力に、あなたの肩はギシギシときしんだ音を立て始める。このまま力を込められると肩が壊れるのではないだろうか。だが恐怖で貴方の肺は動きを止めている。声はおろか、呼吸すらまともにできないでいる。

  「お客様」

  このままここで関節をバラバラにされるのではないか。そんな不安を感じ始めたタイミングで、突然後ろから声をかけられた。その言葉を待っていたかのように、肩から力がスッと抜ける。

  「飛行機の中でナンパ行為はお控えください」

  振り返れば、キャビンアテンダントの制服を着た背の高いユキヒョウの男性。鮮やかな白い毛皮に黒いジャケットがよく似合っていた。

  「まさか、ちょっと注意しただけさ。この国に、人間が来るなんてめったにないことだからな」

  虎はあなたの肩にまわしていた手を離すと、おどけたように肩をすくめて見せた。

  「降り口は、あちらでございます」

  だが虎の言葉に耳を貸さず、ユキヒョウは淡々とそれだけを伝える。虎は露骨にむっとした表情をして見せるが、自分の荷物を抱えるとそのまま何も言わずに飛行機を降りて行った。

  「お客様、お気を付けください」

  その後ろ姿を眺めていたあなたに、ユキヒョウが先ほどと変わらぬ調子で口を開いた。あなたはその真意がつかめず、視線で問いかける。

  「この国……獣人連王国は未だ貴方達人間を嫌っています。特にこの島は肉食動物が多く暮らしています」

  彼の言葉にあなたは戸惑いながらも頷いた。

  確かに、人間と獣人の戦争は終わったばかり。人間の中にも獣人に対してよくない思いを抱えているものも多いと聞く。もちろんあなたはそうではないからこそ、ここにいるのだが。

  「ただ嫌っているだけなら、まだいいでしょう。ですが、この島の獣人たちは知っています。人間の……味を」

  表情を変えなかったユキヒョウの目が、すっと細められた。口の端も小さく吊り上がっている。獲物を、食材を見ているかのような顔だ。彼の視線はあなたの顔から首筋、腹。そしてその下へと降りていく。

  「特に――」

  「おーい、まだかかるのか!」

  ユキヒョウの言葉を遮って、昇降口から声が響いた。どうやら彼の同僚が様子を見に来たようだ。

  「すみません、仕事があるのでこれで」

  ユキヒョウは小さくため息をついて、その場で踵を返した。話の続きは気になるが、仕事で呼ばれたところを呼び止めるわけにもいかない。なにより、彼が仕事でここから立ち去るということは、あなたも早く飛行機を降りねばならないということだ。あなたは慌てて荷物を抱えると降り口へと小走りで駆けた。

  飛行機を降りても、やはり人影はほとんどない。同じ飛行機に乗っていたヒトたちがどこへいったのかわからないが、どうやらすっかり遅れてしまったようだと、あなたは急いで入国審査場へと足を向けた。

  入国審査場には二つあり、それぞれに列ができている。一つはどう見ても肉食獣のみが並んでいるところ。こちらはスムーズに進んでいる。もう一つは、ほとんどヒトがいない。にもかかわらず、進みはずいぶんと遅いようだ。

  「おい、お前はこっちだ!」

  どちらに並ぶべきかと考えていたら、審査官から声がかけられた。列が短い側の審査官である。あなたは慌ててそちらに駆け寄った。正面にいた草食動物は審査が終わったようでゲートの向こうへと通される。

  「よし、よく来たな人間」

  そう言ってこちらに手を伸ばしてきたのは、空港の制服を着た黒豹の雄。先ほどのユキヒョウと違い、ずいぶんと下品な笑みを浮かべている。近づいてみれば、やはりあなたよりもずっと上背があるのがわかる。制服越しにも見てとれる、大きく盛り上がった胸板。雑にまくられた袖から出る腕はワイヤーのような筋肉が絡みついていた。

  その大きな手に、あなたはパスポートを渡す。彼は満足そうににやりと笑うと、ページをめくって中を確認する。だがその目はほとんどパスポートなど見ていない。ちらちらと盗み見るようにあなたのことを見ていた。

  「……身体検査だ」

  やがて彼はそれだけをつぶやいた。そのままカウンターの向こうからこちらへと姿を現す。背が高いと思っていたが、目の前に立たれるとさらに大きい。首を大きく反らさないと、彼の顔が見えないほどだった。

  「じっとしてろよ」

  遠慮なく、彼はあなたの身体に手を伸ばす。肩を、首を、腕を。服の下を探る様に手を這わせる。

  「黙ってろ」

  何か言おうとするあなたに、彼は先に口を開く。彼の手はさらにあなたの身体をまさぐっていく。危険なものを持っているかどうか……のハズだ。身体検査という言葉を信じるならそれ以上の意味はない。

  そう信じているあなたの胸に彼の右手が触れる。そのまま撫でるように動き。不意に胸をもまれた、気がした。気のせいかと思ったが、次の瞬間には黒豹の太い指が器用にシャツの上からあなたの乳首をつまみ、転がしてくる。

  左手は腹から腰に回り、尻を撫でる。そのまま股の間に入ったかと思えば、ポケットを確認するように太ももを撫で。

  「お……」

  指先がするりとあなたの股間のふくらみに触れた。ごくり、と唾を飲み込む音が響く。それがあなたのものか、あるいは彼のモノか。

  「ここもちゃんと調べねえとな」

  彼は嬉しそうに指を動かしながら、あなたのふくらみを弄び始める。はぁっ、とあなたの口から吐息が漏れた。

  「へぇ……人間にしては旨そうなモノ持ってるじゃねえか」

  彼の嬉しそうな声が頭上から降ってくる。このまま脱がされるのか、それとも服の中に手が滑り込んでくるのか。この後に起こるだろうことを想像するだけで自身の股間に熱が宿るのがわかった。徐々に硬く熱くなるそれを、彼はさらに服の上から撫ですさる。

  だが、それだけだ。服の中に手が入り込んでくることも、服の外に引きずりだされることもない。本当にただの身体検査なのかもしれない。いや、乳首や股間を重点的に触っているのだからそんなはずはない。あなたの中でぐるぐると考えが巡る。

  「こうしてると、喰いたくなってくるなぁ……」

  じゅる、と音が聞こえた。それと共に大きな水滴が頭の上に落ちてくる。おそるおそる首を反らし視線を向ければ、黒豹の口元からよだれが垂れているのが見えた。先ほどのユキヒョウの言葉が不意に思い出される。

  『この島の獣人たちは知っています。人間の……味を』

  戦争が終結するよりも昔の話。戦いに負けた人間は獣人にさらわれ、そのまま帰ることはなかったという。奴隷として扱われていたのか、あるいは処刑されていたのか。人間の国へ詳しい情報が入ることはなかった。だが様々なうわさがあり、一説には――食われていた、という。

  ユキヒョウの言葉が本当であるとするなら、彼らはあなたのことを食料として見ているということになる。この涎は、つまりそう言うことなのだろうと理解できた。

  「なあ……ちょっとだけ、喰わせてくれよ……」

  黒豹の口があなたの耳元に添えられ、小さく呟いた。ぞくり、とあなたの背中を冷たい感覚が駆け上がる。やはり、自分はここでは非捕食者。ただのエサなのだと思い知る。彼の言葉はどう聞いても冗談ではないのだと本能でわかる。であれば、ここで頷くわけにはいかない。

  「知ってるか? 人間の肉ってすげぇ旨いんだぜ」

  彼のその口ぶりは、人間の味を知っている者の言葉だ。だが彼の手は、あなたの股間の上を這いまわる。

  「特にな、チンポが一番うめぇんだよぉ……」

  うっとりとした声が、あなたの耳元から聞こえてきた。首をひねり、再び彼の顔を見上げる。彼の視線はあなたの股間に注がれていた。

  「戦争終わって、条約を結んだからむやみやたらに喰うなってお上は言ってるのさ。だけどさ……本人がOKなら別だろ。なあ、先っちょだけかじらせてくれよ」

  黒豹の目がとろんとしている。よっぽど彼らにとってあなたの肉は――肉棒はごちそうなのだろう。

  ふと周りを見れば、向こうの列に並んでいた他の肉食獣たちもじっとこちらを見つめている。黒豹の言葉が本当なら、向こうの肉食獣の列は全員同じように考えているはずだ。そう思って少し観察してみると、確かに彼らはあなたに、あなたの股間にくぎ付けである。中には必死に涎を拭いているものまでいた。

  「じゃあ、齧らねぇからさ。舐めるだけ……な、舐めるだけならいいだろ」

  痛みがないのであれば、欠損が起こらないのであれば一考の余地はある。特にここは入国審査場、いつまでもここで足止めをされるわけにはいかない。そう考えて舐めるだけなら、とあなたは思わずうなずいた。それを受けて、黒豹が喜んであなたの身体を開放した。正面にまわり、腰にしがみつき、股間に顔をうずめ匂いを嗅ぐ。

  「ああ~人間のチンポのニオイ、たまんね……」

  先ほどまでどこか遠慮がちだったはずの黒豹の手は貴方のズボンのファスナーを下ろすと、その中へと忍び込んでくる。

  「へへ、久しぶりの人間の肉……ザーメン……」

  うっとりとした顔で黒豹はあなたの股間を下着越しに揉みしだく。そのまま楽しむのかと思ったが、すぐに手を離した。流れるように手早くベルトを緩めズボンの前をくつろげると、下着ごと勢いよく引きずりおろした。そこそこ大きいと自負していたあなたのモノが、ぼろんと飛び出してくる。あなたにとって予想外の行動だった。てっきり別室にでも連れていかれ、そこで舐められるのかと思っていたからだ。突然引きずり出され、慌てたあなたはそれを手で隠そうとする。だが黒豹の手がその動きを抑え込んだ。

  「いいじゃねえか、見せてやれよ。みんなオメェが見てんだって……な?」

  黒豹の視線を追って、あなたは周囲を見渡した。すぐ隣で行列を作っていた肉食の獣人たちが先ほどよりもこちらに近づいていた。すべての視線が、たったいままろび出たあなたの股間に向けられていた。獣人たちの視線が集まっていると自覚するだけで、思わず熱がこもる。先端だけが露出していた亀頭が大きく膨らみ、仮性の竿が半分ほど剥けあがる。

  「見られて興奮してるのか、エロいヤツだな」

  責めるように、だが嬉しそうにそういうと、黒豹は貴方のむき出しになった股間に顔を寄せた。湿った鼻先をあなたの陰毛に埋め、舌先で竿と玉を避けるようにしながら鼠径部を舐め上げる。

  「ああ、うめぇ……」

  黒豹は恍惚の表情でそのまま舌を這わせた。目の前にぶら下がる――そそり立つ大きな仮性包茎がメインディッシュなら、この周りの蒸れたニオイは前菜のようなものなのだろう。長く分厚い舌をべろべろと動かしながらその香りと味をしっかりと楽しんでいた。ゆっくり、ねっとりと唾液にまみれた舌が動きあなたの竿の根本に絡みつく。どろりとした感覚があなたの背筋を駆けのぼった。

  「ああ、ダメだ、我慢できねぇ。喰っちまうぞ」

  そう宣言すると黒豹は大きく口を開けた。口の中でギラリと鈍く光る黒豹の牙。「喰っちまう」という言葉に一瞬身体を硬くするが、先ほどの言葉を信じてあなたはぐっと体が動きそうになるのを抑え込んだ。やがて、あなたの竿はずるりと黒豹の口に飲み込まれる。

  「んんんん~~~~!」

  あなたのイチモツを咥えこむのと同時に、黒豹が歓喜の声をあげた。うっとりとした、この世の快楽をすべてむさぼっているかのような表情。白目をむきそうになっているのは、飛びそうになる意識を必死でつなぎとめているのだろう。

  「うんめぇ……」

  ぽつりと黒豹はそうもらした。心の底からそう思っていることを、自然とこぼしてしまうように。牙に当たらないように器用に竿をしゃぶりながらあなたの尻に片手を回し、もう片方の手で自分の股間を揉みしだいている。どうやら黒豹本人も快感を得ているらしい。

  「ああ、このチンポの香り……先走りの味……たまらねえな」

  ざらざらとした舌をあなたの竿に絡みつけ、舌と唇で器用にしごきあげる。普段は皮に包まれた亀頭を重点的に舌で責め上げられ、貴方を強い快感が襲う。

  「へへ、先走りがどぷどぷ溢れてくるな。感じてくれてるんだろ、いいぜ、さっさと出しちまいな。ザーメン大量に出した直後の、ザーメン塗れのチンポが一番うめえからな」

  あなたの手が黒豹の頭に添えられる。強い快感がもっと欲しくて、思わずその手に力をこめた。彼の頭を掴みそのまま腰を鼻先に押し付ける。

  「~~~~ッ!」

  黒豹は歓喜の悲鳴を上げていた。

  射精が近くなるが、快感を手放すのが惜しくてあなたは必死に射精をこらえる。そんな折にふと周りを見れば、肉食の獣人たちはほとんどあなたに触れられるほどの距離まで迫ってきていた。中には屈みこみ、黒豹の口元を、あなたの股間をじろじろと覗き込んでくる獣人もいた。先ほど飛行機で一緒になった虎獣人が、スーツを着た獅子獣人が、ピチピチのボディスーツのような服を着た犬獣人も。皆が目を見開き、鼻をひくつかせ、あるいは涎を垂らしながらあなたたちを見つめている。あなたが気づいたことで遠慮しなくていいと思ったのだろう、中には手を伸ばしあなたに触れようとする者までいた。迫る手と絡みついてくる視線に、あなたはさらなる快楽の予感を覚える。

  「おい、お前らはダメなんだぜ。こいつのチンポもザーメンも、今は俺のごちそうだからな」

  だがその手があなたに届くよりも早く。黒豹は周りの獣人たちを威嚇した。そのまま見せつけるように、彼は一度口からあなたの肉竿を吐き出す。手に唾液を絡ませ、唾液でてらてらと妖しく光るあなたの竿をゆるゆると扱いて見せた。

  「さあ、早く頼むぜ……たっぷり出してくれよ」

  そう言って黒豹は口大きく開けると、もう一度あなたの竿を飲み込んだ。猫科の短いマズルを越えて、あなたの先端は彼の喉まで届く。そこでぐいと強く締め付けられる感覚。かつて使った玩具よりも強い締め付け感。あなたが快感に震えるのに気が付いたのか、彼は嬉しそうにぎゅっと口の中を狭めてくる。そのままゆったりと頭を前後にゆすりはじめた。竿の裏にべたりと舌を張り付け、根元からゆったりと先端へと動かしてくる。口唇をぐっと締め付けながら口全体であなたの竿をしごきあげてくる。黒豹の頭に置かれたあなたの手がぶるぶると震え、指先にぐっと力が込められる。いったんはこらえた射精であったが、もはや耐えられそうにない。

  「いいぜ、そのまま俺の口に出しちまいな」

  あなたの肉棒を口の中に収め、片手で根元を扱きあげながら、黒豹は器用にそう言った。上目遣いで尻尾をパタパタと振りながら、再びあなたを強く吸い上げる。どうしようもなく気持ちよく、なんとか長引かせたいと思ってしまう。男であるからこそ、もっとこの快感を受け止めたい。だがその願いもむなしく。

  「ンッ!」

  口の中にあふれる熱い液体に、黒豹が嬉しそうな声を上げた。どくどくと脈動する感覚と、自分の中から生命が失われていくような感覚。ごく、ごく、とゆっくりと音を立てて黒豹はそれを飲み干していく。あなたが吐き出した、精液を。

  「うっっっめえぇぇぇ…………」

  口の端から白い筋を垂らしながら、黒豹はその目に涙すらたたえながらつぶやいた。ぼろり、と力を失ったあなたの肉棒が垂れさがる。むわりと立ち上る湯気と、鼻につく青臭いニオイ。今自分は射精したのだと、そのニオイに思い知らされる。

  「うまそう……」

  「めちゃめちゃいいニオイするな」

  「くっそ、俺も食いてえ」

  舌を伸ばせばそのまま、あなたの竿に届くのではないかという距離に獣人たちの顔は集まっていた。

  「なあ、もう一発くらいいけるだろ、今度は俺にくれよ」

  「ズルいぞ、俺だって欲しいんだ!」

  「オナニーしてみせてくれよぉ、バラまけば公平だろぉ?」

  獣人たちがあなたに触れないギリギリのところに殺到しながら、あなたの肉に視線をそそぐ。虎が、獅子が、犬が、狼が、熊が、ハイエナが。たくさんの獣人たちが思い思いの言葉を発しながらあなたに迫る。このまま押し倒され喰われるのではないかという恐怖。おもわず黒豹に視線を向けると、彼は未だ恍惚とした表情で、あなたの先端から垂れる精液に舌を伸ばしていた。

  「ん、ああ……いいぜ、通っても……」

  あなたの視線の意味を理解して、彼は振り返ることなく自らの後方を指さした。先ほど彼が出てきた入国審査場のゲートがある。そこを通ればこの国の中に入れるはずだ。あなたは急ぎズボンを引き上げながら、ゲートに向かって駆けだした。

  「あ、逃げたぞ!」

  「捕まえろ!」

  「搾り取れ!」

  獣人たちが口々に叫ぶのを背中に聞きながら、あなたはゲートを走り抜ける。

  [newpage]

  なんとか入国したあなたは、ひとまず自分の身なりを整えるためにトイレへと飛び込んだ。射精直後の尿意を感じて小便器へと向かう。おもむろに陰茎を取り出すと、大きく息を吐きながら小用を済ませた。だがそこでも、周りの獣人たちはあなたに遠慮することもなくこちらの股間を覗き込んでくる。

  「うまそうじゃん……」

  「久しぶりに味わいてえなぁ、人間の肉……」

  左右に立った猫と熊が、こちらに聞こえるようにつぶやいた。ちらりとみればスレンダーなネコはあなたにウィンクを飛ばしてくる。反対側の熊はサングラスを持ち上げ、こちらを見ながらあなたの尻を撫で始めた。どちらの男たちも魅力的で、これだけ誘われることに正直悪い気はしないのだが、今は射精直後である。とてもではないがもう一度ができるとは思えない。

  「すまない、もしよかったら一緒にそこの個室に入ってくれないか?」

  今度は真後ろから声がした。ネクタイを締めた、タテガミが立派な獅子が真後ろに立っている。

  「先ほどの黒豹を忘れてしまうくらいの快感を、お約束するよ」

  そう言って紳士的にかつ直接的にそう言ってくる獅子。おそらく先ほど入国審査場にいた一人なのだろう。これだけきちんと正面から誘ってくれるのであれば、と思わなくもない。だがあなたはそれを丁重に断った。まだここは空港、これから街にでてホテルを探す必要があるのだ。

  いつまでもここにいてはいけないと判断し、あなたは荷物を抱えて空港を飛び出した。ひとまず近くのタクシー乗り場に足を向ける。幸いすぐ近くに扉を開いて待っているてタクシーがあった。周りの視線を避けながら、なんとかその車へと飛び乗る。行列も何も確認していなかったが大丈夫だろうか、と心配して振り返ったが、幸い誰かが並んでいたわけではなさそうだ。そう考えて胸を撫でおろすと、タクシーは突然動き出した。まだ行先も告げていないというのに、である。

  「……近くの街でいいんだろ」

  運転手からの言葉にあなたはうなずく。どうやら空港からの客というのに慣れているらしい。ひとまず道は任せて大丈夫だとあなたは判断した。

  改めてまじまじとその運転手を見る。垂れた耳にふさふさの毛皮をもった犬の獣性を持つ獣人。おそらくマスチフだろう、大柄な男だった。あなたに獣人の年齢を判断するのは難しいが、声の響きから察するに高齢の男性のようだ。少しだけ、タバコのにおいが漂ってくる。嗅いだことのあるその香りが心地よくて、あなたはようやくそこで全身の緊張を解いた。

  そこで少しだけ外に視線を向ける。車は空港から離れ、広い田園地帯へと向かっていた。視線を先に向ければ、確かに離れたところに街が見える。これからあそこに向かってくれるのだろう。広々とした風景を眺めながら、あなたは小さく息を吐いた。

  まさかいきなりあんなことが起こると思っていなかった。入国審査場で黒豹に仮性を向き上げられ、他の獣人たちに囲まれ、あまつさえ射精しているところまでまじまじと見られてしまった。思い返すだけで恥ずかしく。そして同時に興奮を覚えていた。獣人たちが人間にそんな視線を向けるとは、来るまでは考えてもいなかった。獣人という逞しい種族にあこがれを抱いていたあなたにとっては、それは僥倖ともいえたが。

  そっと運転手を盗み見る。もし。もし、この運転手にも迫られたら。ごくり、とあなたの喉がなる。

  やがて車は街に向かい――その手前で、森に向かう道へと入る。正面に見える街に向かってくれると思っていたのだが、あの街ではなかったのだろうか。そんなふうに思っていると、やがて車は森の中で動きを止めた。どう見てもこの先に道はない、ただの小さな広場である。

  「よう、兄ちゃん。ちょっと話さねえか」

  そう言ってマスチフはポケットから煙草を取り出した。一本を口にくわえて火をつける。窓を開け車の外に大きく煙を吐いた。運転手がタバコを吸うのは少し意外だ。窓を開けてくれたのは最低限の気遣いだろうか。

  「ん、なに。この国にいると人間にはそうは出会えねぇからな」

  ルームミラー越しに、マスチフと目が合った。どうして話したいか、というあなたの心の中を読み取ったかのように。

  「俺ぁ、人間と会うのは初めてでな」

  あなたが何も言わないでいると、彼はゆっくりと口を開いた。視線は彼自身が咥えているタバコの先端に向けられている。

  「他の奴らは人間が好きだの喰いたいだの言ってるがな、俺にはその気持ちはわからねぇ」

  再び彼の目がルームミラー越しにこちらにむけられる。今度は先ほどよりも敵意のようなものが向けられていた。

  「だからまあ、安心しな。俺はあんたを襲うつもりはねぇよ」

  ひょっとして先ほどの空港のように、と思っていたあなた。だがそれは勘違いだったようだ。少しだけ興奮していた自分を恥じる。

  「人間の味を知ってるのは、この間の戦争に出た奴らさ。俺はもう歳だからな、この間の戦争にも駆り出されなかった。……代わりに息子が戦争に出たがね」

  嫌な予感がした。戦争に出た息子はどうなったのだろう。人間の味を知って帰ってきたのか、それとも――。

  「ああ、お察しの通りだ。俺の息子は帰ってこなかったよ。未だに死体も見つかっていねぇ」

  咥えていたタバコをぐりぐりと灰皿に押し付けた。感情のすべてをそこにぶつけるように。

  「戦争は終わった、互いに憎しみを捨て、手を取り合い発展していこう。

  政府はそんなことを言ってるがな」

  彼は言葉を切ると、こちらにぐいと身体を乗り出した。

  「……人間は、ぶち殺してやりてえって今でも思ってるよ」

  彼の敵意にあふれた視線がまっすぐにあなたを射抜く。このまま目で殺されてしまうのではないかと思うほどに鋭い視線。

  ごくり、と唾液を飲み込む音。あなたがこうやって唾液を飲むのは今日だけでも既に片手では数え切れない程度である。それだけ緊張を強いられているということではあるが。

  このままではあなたは本当に殺されてしまうかもしれない。少なくとも、自分なら息子を奪われた相手と仲良くはできない。もちろんあなた自身は戦いに参加したわけではないのだが、それはこのマスチフには関係ないだろう。

  何かの手を打たなければならない。わずかに逡巡したのち、あなたは意を決して自分のズボンに手を伸ばした。そのままズボンの前をくつろげ下着をさらけ出す。

  「おま……!」

  それに気づいたマスチフはあなたの腕をつかんでその動きを止めようとする。だが、既に遅かった。あなたの目論見通り、彼は何度も鼻をならしていた。すんすんと、小さく空気を吸うような音。

  「この……ニオイ……ッ!」

  彼は悔しそうに、耐えるように言葉を絞り出す。だがそれと同時に、彼の口からはボタボタとよだれが垂れおちていた。息が荒くなり、その視線はあなたの顔から股間に映っている。あなたの手を握っている手は強く、強く握りしめられた。手首から先が痺れてくる。

  「テメェ、ふざけてんじゃ……」

  そう言いながらも、マスチフの視線はあなたの股間から全く動かない。あなたは改めて、腰を浮かすと空いた片手でズボンを引き下げた。自分の鼻でもわかるほどに青臭いニオイが広がる。先ほど射精した後の、あとから漏れた精液が下着にしみ込んでいるのだ。人間のあなたでもわかるほどのニオイである。犬獣人である彼にはたまったものではないだろう。

  「くそ、喰ってやる、喰い殺してやる……!」

  マスチフは必死で叫びながら運転席を越え後部座席へと乗り出してきた。そのまま首筋に噛みつかれるのではと一瞬怯えるあなた。だがマスチフの頭はそのまま下へと降りていき、股間に埋められる。彼の牙は下着越しにあなたのカリ首に突き付けられる。

  「……なんで、こんなッ……!」

  彼は思い切り、あなたの下着に牙を立てた。肉ごと噛みちぎられるのかと思ったがそう言うわけではないらしい。ただあなたの下着をビリビリに破り捨てていた。もはや意味をなさなくなった下着だったものを彼は乱暴につかんで助手席へと投げ捨てる。精液と、黒豹の唾液にまみれたあなたの肉棒が露出した。一度萎えたことで再び先端まで皮を被ったあなたの肉棒。それは先ほど射精したばかりだというのに、マスチフの熱い視線と吐息に再び熱を持ち始めていた。

  マスチフの舌がそっと伸びてくる。怯えるように、抵抗するように震えながらも、その舌は先端までかぶった皮と亀頭の間にゆっくりと差し込まれていった。熱い、というのが最初の印象だった。先ほどの黒豹よりも柔らかく大きな舌。

  「これは……」

  悔しそうなマスチフの声。今彼の舌にはあなたの精液と肉棒の味が広がっているはずだ。彼が知らなかった、人間の肉棒と精液の味が。

  「くそ、息子が……お前ら人間に……」

  彼は悔しそうにつぶやく。だが彼の本能がその続きを否定する。必死であなたへの殺意を取り戻そうとしている。だが今のあなたにはわかる。彼の本能は今、あなたの性器を咥えろと彼に語り掛けている。きっともう、しゃぶりたくてたまらないのだ。

  「……好奇心だ。ただ試すだけだ。おわったら、喰い殺す……」

  彼はそう言い訳をして大きく口を開けた。そのままゆっくりと自分の口の中へとあなたを迎え入れていく。大きく開けた上あごにも、舌にも触れないままであなたの性器は口の奥へと入っていく。生暖かい風があなたの肉棒をなぶり。だがそれだけだ。どこまで進んでも、舌も顎も、何も触れてはこない。先ほどは皮の間に舌を差し込んできたというのに、抵抗があるというのだろうか。せめて少しでも味わってもらおうと、あなたはぐっと下腹に力を込めた。肛門がすぼまるような感覚とともに、あなたの剛直が大きく動く。その結果、あなた自身がマスチフの上あごへと触れた。

  「~~~~~~~ッ!!」

  マスチフが目を見開いて声にならない叫びをあげ。そして一気にあなたに吸い付いた。

  「うめぇ、くそ、人間のチンポってこんなうめぇのかよ! 人間のくせに! こんな、くそ!」

  彼の目には悔し涙が浮かんでいる。だがもう動きは止められない。口の中に、何よりも旨いごちそうがあるのだ。そこから出る最高のソースを、人生で味わった何よりもうまい肉を、彼は味わわずにはいられない。あなたの手を掴んだまま、勢いよく頭を前後させる。人間のモノを咥えるが初めてだと言っても、男同士どこが気持ちいいかくらいはわかっているのだろう。舌を竿に絡みつけ、カリを刺激し、片手で玉を弄びながら、それでもしっかりと吸い上げて竿自身に刺激を入れていく。

  先ほど射精した精液の残りだけでもおそらく相当な味がしているのだろう。だが今は刺激をいれられ、再び先走りもあふれているはずだ。そしてそれもまた、彼にとっては相当な甘露なのである。先ほどの黒豹の言葉を思い出さずとも、それはわかる。それだけ目の前のマスチフが、あなたの肉棒を強く吸い上げているのだから。

  「ハァッ、くそ、くそッ!」

  必死で抵抗しようと、こんなことはもうやめようと、そう考えているのだろう。だが彼の身体は、口はそれを許さない。あなたの肉棒に舌を絡めたまま頭をゆっくりと揺さぶり始める。

  「嫁に、これをされるのが……好きなんだよ!」

  そういいながら、彼は犬歯で軽くあなたのカリ首をなぞる。話や口ぶりからそこそこの高齢であるのは間違いないようだが、どうやらまだまだ現役であるらしい。そんな男が、戦争に行くほど大きな息子をもった既婚のノンケが、あなたの股間にむしゃぶりついている。自分がされたいはずのことを自ら行ってくる。少しでも快感を与えて、搾り取ろうとしているのだろう。

  あなたは素直に目を閉じて、その快感を受け入れる。マスチフの頭に手を乗せて、左右に垂れおちた耳を優しく持ち上げながら撫でてやる。あなたの股間でマスチフが怒ったように鼻息を荒くしているが、それでも動作としてはあなたの肉棒を一心不乱に舐め上げ、すすっている。

  「ああ……」

  とうとううっとりとした快感の声をあげるマスチフ。だが、唐突に。

  「おい、大丈夫か?」

  声と共に、運転席の扉が開いた。ひょいと顔を覗かせたのは長いマズルをもった狼の顔だった。誰かが来ないような森のはずれであったはずなのに。

  「ン……」

  マスチフも驚いたのだろう、あなたの肉を咥えたまま小さくうめく。

  「返事が返ってこないからどうしたかと思ったら、こりゃあ……」

  ニヤニヤと笑いながら狼がこちらを覗き込んでくる。どうやら直前までマスチフと何かでやり取りをしていたらしい。だが返事が来なくなったから心配して探しに来た、ということだろうか。彼の同僚か友人か、それはわからないが。

  「お前人間嫌いだったんじゃねえのかよ」

  彼は改めて後部座席の扉を開けるとマスチフの口元を、つまりあなたの股間を覗き込んだ。あからさまに舌なめずりをしながらそこをじっと見つめている。

  わかるのは、彼が人間の味を知っているだろうということだ。

  「うるせぇ、まさかこんな旨いと思わねえだろ……」

  マスチフが視線を逸らしながら答える。さすがにあなたの肉棒を口から吐き出しているが、その手はあなたの根元を握ったままだ。

  「まあいいから、二人とも出て来いよ」

  狼はそう言うとあなたの腕をつかむとぐいと引いた。あなたは抵抗らしい抵抗もできず、車の外へと引きずり出される。なんとか転ばないように、ひかれるまま着いていくので精いっぱいだ。脱ぎかけていたズボンをそのままその辺りに脱ぎ散らかす。やがてあなたはタクシーのボンネットに投げ出された。股間を丸出しにしたまま、車のボンネットの上に乗る経験をするとは、この国に来る前は考えなかったことである。

  「へへ、人間の中ではけっこうデカいほうじゃねえか」

  狼が嬉しそうにあなたの股間を覗き込んだ。

  「おい、俺の獲物だぞ!」

  マスチフが慌てて運転席から飛び出してくる。ボンネットにいるあなたに、あなたの股間に再び飛びついた。

  「あれだけ人間なんてって言ってたくせに、こんだけ執着するんだもんなあ。やっぱ人間の肉――チンポはたまんねえよ」

  牙をむいて威嚇するマスチフの頭を軽く撫でながら、狼もあなたの股間に顔を寄せてきた。

  「ザーメンの旨そうなニオイがするな。今日で何発目だ?」

  そう聞くが、返事を期待していたものではないようだ。狼はマスチフと顔を寄せ合うようにしてあなたの股間に鼻先をうずめる。

  「へへ、俺もちょっといただくぜ? いいよな?」

  舌を伸ばし、鼠径部をゆったりと舐め上げてくる。あなたが許可を出さないときっといつまでもこうしているのだろう。

  改めて狼の顔をじっと見つめる。マスチフと違い、毛の艶が良くおそらく若いのだろうと思わせる。いかにも獣人といった顔つきの彼があなたの股間を求めている。そのことに、再び興奮してしまうあなた。マスチフと、狼の頭を掴んで自分の方へと引き寄せた。

  「じゃ、遠慮なく」

  苦々しい顔をしたマスチフと狼が舌を伸ばし、あなたの肉棒に巻き付けてくる。舌と鼻先で奪い合うように肉を求め左右から二人でしゃぶりあげる。犬の口が、狼の鼻が。あなたの肉を、精液を求めて我先にと群がってくる。直接的な陰茎への刺激。そして人を食うことすらある肉食獣たちがあなたの性器を求めているという優越感。思わず天を仰ぐようにして、あなたは快感をこらえた。

  「ああ、くそ、くそ……」

  いまだ悪態をつきながらも、あなたの肉のうまさに抗うことができないマスチフ。鈍く光る指輪を付けた左手が、あなたの股間の根元をしっかりと握っていた。

  「やっぱ人間のチンポは格別だな」

  長い舌を巻きつけ、皮を剥いたりかぶせたりして楽しむ狼。優しく玉を揉んでくるのは、あなたの性感を刺激して射精量が多くなるようにしているのだろう。

  やがて彼らはあなたの肉竿越しに舌を絡めあう。ただの仕事仲間か、あるいは友人か。少なくともマスチフが既婚者であったのなら恋人というわけではないだろう。だがそんな二人が、あなたの肉棒をはさんで濃厚なキスを始めた。右からマスチフが、左から狼が口の先端を押し付けて口づけながら竿を上下に扱きだす。

  ぐちゅぐちゅと卑猥な音が周囲に響いた。ここが街中だったら、きっとたくさんの獣人が集まっただろう。空港でも、トイレでもあなたの肉を求めた肉食獣がたくさん寄ってきた。たとえば、ホテルだったら? 温泉だったら? そしてそこであなたが誰でもいいと声をかけていたら。きっと数人、十数人の肉食獣があなたに群がっていたのだ。

  「おい、ここ感じるみたいだぞ」

  狼が嬉しそうにあなたの竿の裏筋を舐め上げた。先ほどまで皮を被せられていたはずだが、いつの間にかマスチフの手でその皮は綺麗に剥きあげられ、根元を抑えられたいた。

  「すぐ出したらもったいないだろうが」

  マスチフはそう言いながらも、狼と舌をそろえるようにして裏筋を舐め上げる。

  「こういうのはさ、気持ちいいところ刺激して、でもイかねえように寸止めしてやるんだよ。そうすりゃ人間はたくさん射精するからな」

  裏筋をマスチフに譲り、先端を、特に鈴口を舐めてくる狼。

  「詳しいじゃねえか」

  「は、戦争中に何本咥えたと思ってんだ。愛国心にあふれた兵士を寸止めして、『イかせてください』っておねだりさせた後のザーメンは最高に旨かったぜ」

  そういう狼の顔は、これからあなたにもそうすると言わんばかりの表情をしていた。

  「ふん、悪趣味だな。何度でも搾り取ればいいだろう」

  だがマスチフはそんなプレイには興味がないようだ。質よりも量、ということなのかもしれない。だがどちらにせあなたにとっては快楽地獄が待っているようだった。それが予想できてももはや逃げられない状況だ。

  「まあお前は初めて食うんだしな。いいぜ、好きにしてやれ」

  その言葉を受けてマスチフは口を大きく開けると、狼を押しのけてあなたの肉竿を一気に口の中に取り込んだ。じゅる、と音を立てて先端から一気に根元まで飲み込んでいく。

  人間としては大きな肉棒である。だがマズルのある獣人は、やすやすと根元まで飲み込んでしまえるのだ。口の中に唾液をため、前後するたびに大きな音を立てる。

  「みろよ、コイツ感じてるぜ」

  快感に抗えず、腰を突き上げ自分のモノをマスチフの口にねじ込もうとするあなた。つま先までピンと伸ばした足を見て、狼が笑いながらそれを指さした。恥ずかしさも覚えるが、それもまたあなたにとっては興奮材料である。

  マスチフもまたそれが正解だと理解したのだろう。あなたの腰を掴むと、その口で激しく扱き始めた。

  「いいぜ、そのまま続けてやれよ」

  狼が嬉しそうに言う。しゃぶっている場所を覗き込み、片手であなたの胸を、もう片手で玉を弄ぶ。ただ味わうだけではない、刺激してあなたを興奮させることに慣れている手つきだった。あなたの口から嬌声が漏れる。

  「ほら、気持ちいいだろ? お前ら人間は淫乱だもんな。俺たちの口で、マズルで扱きあげればどんな雄でもチンポの快楽に負けちまうんだぜ」

  狼が耳元でささやく。先ほどの話が本当なら、彼は戦争中に軍人ですら落としてきた男だ。いま改めて、自分は食われる側なのだとあなたの中に自覚が芽生える。

  空港で、トイレで、たくさんの獣人たちがあなたを求めた。どこか自分が与える側なのだと思っていた。だけど彼の口ぶりは違う。今されていることも、そうではないのだ。あなたはどこまで行っても喰われる側で、襲われる側だ。搾り取られ、場合によってはこのまま喰い殺されることすらありうるのだ。

  それが恐ろしく――魅力的だった。

  「ほら、イっちまえよ。オッサンの口で情けなく果てちまいな!」

  狼の言葉に、マスチフの舌技に、内側で燃え滾るあなたの情欲に。いずれにも抗うことができず、あなたはマスチフの口の中にすべてを吐き出した。

  びくびくと震えるたびに、尿道を精液が走り抜けていくのを感じる。腰がとろけるほどの快感、脳が壊れてしまうのではないかというほどの衝撃。マスチフの口で行う射精は、あるいは狼に支配され搾り取られる体験は。今までの人生で味わったことのないほどの快感だった。

  やがて、マスチフがその場で崩れ落ちるようにしてうずくまる。それを見た狼はすこし心配したように顔を覗き込んだ。

  「おい、大丈夫か?」

  狼の言葉にマスチフがとろんとした目を向ける。

  「なんだよ……これ……」

  マスチフにとっては初めての経験であったはずだ。獣人にとって何よりも美味いはずの人間の精液を味わったのである。

  「はは、すっかり虜になっちまったな」

  狼は笑いながらマスチフの背中をポンポンと叩くとあなたに向き直った。未だ小さく震えているあなたの性器を見た狼は、そこに口を寄せる。長いマズルであなたの大きな肉を飲み込むと、隅々まで丁寧に舐め上げてくる。残った精液を一滴残さず味わうように。射精直後を刺激され、思わず震える身体を、あなたは必死で抑え込んだ。

  そうして丁寧に掃除されること数分。狼はゆっくりあなたの肉を吐き出した。

  「さて、旅行者だよな」

  狼の言葉にあなたはうなずく。

  「じゃあ、ちょっとこのまま付き合ってもらうか」

  何を言われているのかわからないあなた。不思議そうな顔で狼を見上げると、彼は笑って答えた。

  「旅行者が行方不明になることなんて珍しい話じゃあないだろ。まあひとまず喰い殺したりはしねえよ」

  狼はあなたの腕をつかみ無理やり立たせると、タクシーの後部座席にあなたを放り込んだ。

  「ただちょーっと、俺にも『ごちそう』してくれりゃいいさ」

  いつの間にかマスチフも立ち上がり、狼の隣に立っている。

  「そうだな、こんな旨いもん一度だけってわけにはいかないな……」

  マスチフも渋い顔で頷いている。

  どうやら、まだあなたは解放されないらしい。彼らの笑いを見ていると、射精したばかりのあなたの股間は再びその硬さを取り戻し始めていた。

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