第十二章 革命の日―軍事同盟の締結― 3

  それからすぐにベルーガの新体制が始まった。

  新国王のザルガによる獣人と半獣人共生のための政策は、すぐさま国民たちに受け入れられ、獣人たちに対する差別も解消された。

  玉座に腰かけたザルガは、部下から差し出された書類に目を通しながら、

  「契約通り、この国はお前の味方だ。王都との戦闘の準備を進めておく。そちらの準備ができたら連絡してくれ。いつでも群を動かせるようにして置くからな」

  そうカイルに述べる。

  「あぁ、よろしく頼むよ、ザルガ」

  そう言ってカイルはザルガと硬く握手を交わし、そのまま玉座の間を後にした。

  王宮を出てカイルが向かったのは、中央広場。

  数日前、元女王ナハトの公開処刑が行われたその場所には、

  「ああっっ……ど、どうぞ、ボクをぉぉ……おつかいくだあぃ……んぐうううっ……国民の皆様の肉便器であるぅ、ボクをぉ……おおおおおっ、おごおおっ! たくさんお使いくださいまえぇぇぇ、いいいっ! あいいいいいひいいっ!」

  裸のまま首枷に括り付けられ、すっかり変わり果てたナハト姿があった。

  口から舌をぴんとつき出し、肉棒を入れてくれとばかりにいやらしく腰を振るその姿に、かつての女王の姿は微塵も感じられない。

  ザルガの政策に反対し、捉えられた半獣人たちと並ぶようにして、中央広場に性処理用便器として設置されたナハトは、獣人、半獣人たちのためにその肉穴を提供している。

  濡れそぼった肉穴を使用されていないときも、

  「あぁぁ……見られてるぅぅ、ボクの恥ずかしい姿、みんなに見られて……んあっ! あっ! んいぁぁぁぁ!」

  その場を通り過ぎる国民たちの忌避と嫌悪の視線を受け、幾度となく絶頂を迎えている。

  と、中央広場を通り過ぎようとしたゴリラの獣人が、ふと思い立ったかのように、近くにいたナハトのもとへと近づき、何の前戯もなしにその肉穴に太い肉棒をねじ込んだ。

  「んぎぃぃぃぃぃ! あはぁぁっ! 新しいおちんぽきたぁぁあ。さいこおおおぉおぉぉっ! ありがとうございますううううっ。ありがとうございますぅぅぅぅっ! どうぞボクのメス穴をぉぉ……たっぷりとご堪能くださいぃぃ! んいぃぃ!」」

  髪を振り乱し、唾液をまき散らしながら喘ぐナハトの姿を見ても、近くを歩いている国民たちは表情一つ変えず、平然と広場を通り過ぎていく。

  ナハトはもう国民たちにとっては『物』同然なのである。

  誰にどんなことをされていようが、どのように犯されていようが全く気にならない。

  「……国民に見限られた女王の末路。みじめだな、ナハト」

  「いいいいっ! いいっ! いいいいいいっ! いんぐうぅっ! いんぐうううっぅぅぅ!」

  身体中からありとあらゆる体液をまき散らし、衆人環視の中で絶頂するナハトの姿を一瞥したカイルは、そのまま広場を後にした。

  しばらく歩いたところで、

  「……ご主人様」

  脳内に、リンドの声が静かに響いた。

  まるで耳元で囁かれたかのように鮮明で、従順さを含んだ声音だった。カイルは歩みを止め薄く笑う。

  「リンドか……聖都の方の首尾はどうだ?」

  「はい、ご主人様。アニスと他三名の端末を聖都に侵入させることに成功しました。アニスの村を制圧した時と同じように……彼女たちは静かに、確実に動いております。周辺の農村も、すでに掌握しつつあります」

  「ふむ……実に優秀だな、アニスは」

  カイルは満足げに目を細めた。その瞳には、かつて王都で見せていた穏やかさは欠片もない。復讐に燃え、邪悪に染まりきった黒紫色の瞳。

  「聖都の方はアニスたちに任せよう。俺たちは、計画の最終段階に入る」

  「はっ。ご主人様の御心のままに」

  カイルの言葉に反応するリンドの声は、恍惚とした忠誠に満ちていた。その瞬間、精神の繋がりがふっと途切れ、静寂が戻る。カイルはしばらくその場に立ち尽くし、空を見上げた。

  「……クラリス」

  その名を呟く声は、冷たく、深い。

  「お前はあのとき、正しい判断をしたつもりだったんだろうな。俺を追放し、王家の名誉を守り、そして不穏な因子を排除した……自分の手を汚さずに済ませたつもりだったんだろう」

  カイルの口元がゆっくりと歪む。

  「だがな、クラリス。あの時、お前が俺に向けた言葉が、視線が、表情が……俺の中の因子を呼び起こした」

  風が吹き、木々がざわめく。その音に紛れるように、カイルは続けた。

  「理由を言わなかった。説明もしなかった。ただ王家の決定として俺を切り捨てた」

  彼の声は静かだが、底に燃えるものは激しい。

  「お前は知らないだろう。あの瞬間、俺の中で何が壊れたのかを」

  カイルは歩き出す。その足取りは迷いなく、まるで復讐の道をなぞるように。

  「……もうすぐだ。お前の元婚約者が、お前の前に立つ日が来る。くくく、楽しみにしていろよクラリス。お前が追放した男が、どれほどのものを積み上げて戻ってくるのか、その目で確かめるといい」

  人通りの少なくなった道に、カイルの笑い声だけが静かに響いていた。