「そもそも人間さんの需要は今時の若い獣人さんにはないんですよ」
目の前のスーツを着た巨大なサモエド種の犬獣人の職員に苦言を言い渡される。
向かいの青年、旗崎 春(はたさき しゅん)は愕然と俯いてしまう。
職員のその言い方はまるで世間知らずに呆れ半分に諭されるかのようだった。
実際にそうである……。
「あるのは一昔前にあったヒューマンパートナーブームの影響が残っている3、40代のおじさんくらいしかいないんですよ」
今僕は何をしているかと言うと、ズバリ『婚活』だ。
いやまだ結婚を焦る年齢じゃないし、今直ぐってわけでもないけど、訳あって割と切羽詰まってる状況な訳でして……。
「そ、そんな〜。僕、学生時代は人間ってだけで獣人のみんなからちやほやされてたのに〜。僕の何が悪いって言うんですか〜」
「そりゃ旗崎さんを否定してる訳じゃないですよ。旗崎さんは家事は完璧だし、自立してるし、安定した収入もある。求められる側としては超優良物件なんですよ。ただ……」
「獣人の、若い人で、しかも男性限定って、本当に今時超マニアックな内容なんですよ?」
「そりゃ昔は異種間交流が盛んで、色々倫理観薄かったしで……って⁉︎」
「うぅ、ひっぐ、やっぱり、僕に獣人のお嫁さんなんて、無理だよぉ……」
僕は感極まって泣き出してしまう。いい歳した大人がボロボロと涙を流して泣いている姿を見てサモエドの職員さんは面食らっている。
「お、落ち着いてください!……訳をお聞きしても?」
「はい……ぐすん……」
******[newpage]
ことの発端は半年前。ある休日、一本の電話から始まった。相手は実家にいる母親からだ。内容はどこのご家庭も一度は耳にする、結婚の話だった。
両親曰く、そろそろ嫁の一つでも作らないのかとか、孫の顔が見たいとか、嫌味を混じりにぺちゃくちゃぺちゃくちゃ、言いまくられた。
僕だって恋人くらいはずっと欲しかった。でも僕の場合は異性じゃなくて。
獣人。それも同性の、できれば大きくていざという時に僕を守ってくれる格好いい人が良かった。
けれどもそんな僕の都合に両親は付き合ってもくれず、半年以内にお嫁さんが出来なかったら両親たちが決めた縁談をさせられることになっていた。
自分の人生の伴侶は自分で決めたくて、急遽僕は結婚相談所や合コンなどを転々とする所謂婚活に走り出した。
んで結果は、今でもこうして結婚相談所に通っている時点惨敗な訳で……気がつけば期限の半年が迫っていた。
「なるほど……だったら両親が縁談を持ってきてくれるのでしたらそれに越したことはないのでは?」
「そうじゃないんですよ〜!僕は!カッコよくて、若くて、頼り甲斐があって、僕のことをずっと愛してくれる獣人のお兄さんがいいんです!」
「あの、ですからね、先ほども申し上げましたが、そういうのを世間一般的には高望みって言うんですよ」
「どうしよう……このままじゃ親が決めた相手と付き合わなくちゃならないし……あ、そうだ!お兄さん、ちょっと耳貸してくれません?」
「はい……ええ……はい?」
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「……こちらが、僕の恋人の犬山さんです」
「犬山です。お義母さん本日はよろしお願いします」
「ええ、あなたが春ちゃんの恋人?あら〜なかなかいい男捕まえたじゃないの」
「しかも獣人。懐かしいなぁ、ちょうど人間と獣人の異種間恋愛が流行ってたよ。春もそうだったんだな」
「ていうか、こんな子がいるならいの一番に母さんに紹介しなさいよ」
「ハハハ……仕事が忙しくて中々話せる機会がなかったからさ……」
「じゃあそう言うことだから、例の縁談は無しだよね」
「ええ。こんないい人が春ちゃんのお嫁さん恋人だったら、私たちも安心だわ。ねえ父さん」
「ああ。こうなったら父さんからも何も言わないさ。二人ともお幸せに」
「うん。じゃあ犬山、さん。行こうか」
「あら〜もう行っちゃうの?せっかく遠いとこから帰ってきたんだし、2、3日くらいいないの?」
「えっと……ちょっと二人っきりで話し合いたいなぁって。ねえ犬山さん」
「ああ、少し席を外します。行こうか、春」
僕たちは立ち上がって、そそくさとその場を後にする。少しでも遠く離れたくて、犬山さんを連れてかつての自分の部屋まで誘導する。
部屋に入ると懐かしさよりも、うまく切り抜けられた安心感がやってくる。いつ急突貫で作った“嘘”がバレないかと終始ヒヤヒヤしていた。
一方僕の恋人の“フリ”をしてもらった犬山仁(いぬやま じん)さんは今の僕の姿を呆れ半分に見つめてくる。まるで結婚相談所の時を思い出す。
「……やれやれあなたと言う人は。実の親を騙していると言う自覚はないんですか」
「そりゃ……もちろん」
いやむしろ客と店員の関係がなくなったからこそ、当たりが強くなっている。若干怒りを込めた犬山さんはサモエド種という可愛らしい愛嬌のある顔を台無しにしている。まあ台無しにしてしまったのは僕が原因なわけで。
……一週間前。あの時犬山さんと話し合ったのはこうだ。犬山さんに僕の恋人という“体”で一緒に僕の実家に来てもらうというものだ。
『どうしてそうなるのですか⁉︎それに第一、結婚相談所の職員である以上、お客様との一線を超えた関係を持つのはなんと言いますか……』
『お願いじまず!もう一か八かにかけるしかないんですよ!』
『それにもう僕と犬山さんとは知らない仲じゃないし、本当に恋人同士になる必要ないからwin-winですよ!』
『いや、私にメリットがないような……』
『頼みますよぉ〜この通りです!』
『う〜ん。今回だけですよ……それに、上手くいかなくても私のせいにしないでくださいね』
『ありがとうございます!』
と、こんなやりとりがありまして。今に至る……。
「バレたらどうするつもりだったんですか。全くあなたと言う人は無計画だし、無鉄砲だしでよく今まで都会で暮らしていけたなと思いますよほんと」
その後もガミガミと今までの鬱憤を晴らす如く僕を叱りつけてくる。……でも犬山さんの起こってる姿ってって見てて可愛いな……♡
サモエド種だからなのか、まるで小さな子供が駄々を捏ねているみたいで。でも言われる言葉は棘たっぷりだけど。
「聞いているのですか?あなたは人の話を聞かないきらいがありますからね、ですから……」
でも、こうして人に叱ってもらうのは何年振りなんだろう。小さい頃から一人っ子で、田舎の故郷の数少ない子供だったから、両親も周りの大人も僕を厳しくすることは少なかった。
犬山さんを見ていると、全然叱られて悲しいって感じがしなくて……なんだか……。
「犬山さん……」
「なんですか……って、えっ⁉︎」
僕は犬山さんに腕を回して抱きつく。でも人間と獣人の体格差じゃ、僕からすれば巨大なぬいぐるみに抱きついているみたい。腕が全て周り切らないし、背丈も体格も犬山には及ばない。
服越しに感じるもふもふで気持ちよくて……急にどうしたんだろう、僕……。
「あの、その、すみません。少し言い過ぎでした……」
「いえ、いいんです。元はと言えば僕が言い出したことですし、犬山さんが気にすることはないです……」
「……」
「……」
そのままお互い何も言わず数分くらい抱き合ったままだった。なぜこんなことをしているのだとか、犬山さんの意外に分厚い胸板から香る汗やら香水なんかが混じった独特の臭いが漂ってきて、色々な思考が混ざり合って僕を困惑させる。胸だって不思議と昂ってきて、胸が苦しみだす……。
ひょっとしたら犬山さんも同じ気持ち……いや何を言ってるのだ僕は。犬山さんとは今回限りの偽物の恋人関係、ここから去れば明日から元の他人同士に戻る。そんな都合のいいことが起きるはずはないんだ。
「えっと……とりあえずこのままでいましょうか」
「はい……」
「いえあの、抱きしめ合ったままじゃなくて。このままご両親に誤魔化し続ける方向でいこうって意味だったんですけど……」
「えっ!?……あはは、そうですよね、うん。僕が言い出したんですよね、はい」
何を期待していたんだろう僕は。犬山さんとはなにも特別な感情はないんだ、両親からの縁談を回避できればそれでいい。犬山さんはそのためだけに僕に付き合ってもらっているだけ。僕がそれ以上を求めてはいけないんだ……。
[newpage]
そして、それからも両親からの質問攻めは終わらず僕らはとりあえず真実を織り交ぜながら空想上の恋人を演じる。
「……それで、犬山さんとはどこまでいったの?」
「え?」
「やだねぇ、恋人同士なら色々するでしょう?母さんそこのところ詳しく知りたいのよ」
「やめなよ母さん、食事中に」
「だって気になるじゃない。春がこんないいボーイフレンド連れてきたのだもの、二人がどんな関係を歩んできたか」
「まあそうだな。せめて春が迷惑かけてないといいが」
「いえいえ。春さんには僕も頼りにしてもらってます。とても家庭的で、気配りもできて、僕には勿体無いくらいで……」
「そうですか。まあせっかく来たんだ自分の家だと思ってくつろいでいてくれたまえ。ささ、もっと飲みなさい」
「……ああそうだ。今後しばらくは二人とも客間で寝てもらうぞ」
「え?」
「だって、これ以上二人の仲に踏み込むのは悪いと思ってね。今夜は二人でくんづほぐれつしちゃいなさいな」
果たして母さんらに遠慮があるのかないのかわからなくなってくる。
なんかここまであからさまだと逆に冷めるな、なんか。
まああまり看過しないのはこちらとしてはありがたいけど。
そうして宴もたけなわということで、寝る時間になったのはいいけれど……。
「……本当にこういう展開ってあるんですね」
犬山さんも引いている。先ほどまで僕たち二人が出入り禁止だった客間の中は、それはもう“そう言う行為”をする為だけに、両親らにベットメイキングされていた。
ムードを醸し出す洒落た音楽、いい香りのするアロマ、薄暗い部屋を唯一の照明はベットライトが一点。そして部屋の中央に敷かれた大きな布団が……1組。
どんなに恋に鈍感な人でも、こんな部屋に連れてこられたら嫌でも“そういう気”になってしまいそうだった。
「まあとにかくもう、寝ましょうか。ここで手をこまねいても仕方ありませんし」
犬山さんに促されて1組しかない布団へ赴き、仕方なく……そりゃあもうお互いの体格差とか置かれている状況を考えながらくっついて布団の中へ潜る。
目を瞑っても当然寝られるわけもなく、犬山さんに半ば抱きしめられるまま寝付くことになる。
こうなる事を想定していないから、犬山さんは両親側が着替えを用意してくれなかったおかげで今はパンイチだ。
お互いの寝息やふわふわの白い胸毛が当たって、気をかけて離れようにも布団からはみ出てしまいそんなのが何度も繰り返されて寝るに寝れなかった。
「あの、これってどう見てもあの人たちに嵌められてます、よね?」
「はい……すみません、ウチの両親色々とお節介過ぎて」
「まあそれはいいんですが、大丈夫ですか?よかったら私は他所で寝ますが」
「だ、大丈夫です!ほら、こうしてなんの問題もなく寝れますし」
根拠のない虚勢で見栄を張るも、実際は緊張で目が冴えて仕方がない。
「……あの、よかったら少し昔話をしてもいいですか?」
「……?いいですよ。僕でよければいくらでも」
真面目な顔をした犬山さんはゆっくりと語り出す。
私……実は両親とはあまり仲が良くなくて……こっちへは、半ば家出同然で上京してきたんです。
何故かって言うと……私、幼い頃は周囲からとても手のかからない子って評判だったんですよ。
ですがそんな話もすぐに変わります……将来について……父と揉めていました。
父は、地元では有名な大企業の社長でした。
私も将来父の会社で役に立って、ゆくゆくは自分のポジションを継いでくれるよう小さい頃から多くの習い事や礼儀作法を叩き込まれました。
今思えば、父は実の子である私を大企業の社長と言うイメージを飾る為の道具でしかなかった……と思っています。
もちろん育ててくれたことには感謝してますよ。ですが……僕は父の思い通りになる存在ではありませんから。
事が起きたのは3年ほど前。父が私に話があると言って聞かれ、当時父の会社と深い関係にあった社長のご令嬢との縁談でした。
しかしそれはただ若い男女が結ばれる。という話では終わりではなかった。
実はその縁談による大きな商談の成立によって生み出される双方の会社の莫大な利益。
従業員の皆さんは、お似合いの二人が結ばれると喜んでいましたし、向こうのお嬢さんも良い人でしたし悪い気はしませんでした。
しかしそれだけに、私はあまりに無力であると感じていました。このまま言われるがままの人生でいいのか、大きくなっても誰かの用意された道でしか歩けないかと。
私は我慢できなかった。小さい頃から社長の息子という肩書きのせいで周りから疎まれて、努力をしても親のおかげだの恵まれてるだの陰で好き勝手言われて。だったら誰の力も借りないで一人で生きてみせると、家を出たのが5年前。
大見得を張ったはいいものの、何の後ろ盾も無い私は一時は途方に暮れました。
ですがあの辺りは、以前私が手がけた企業が興した町で、そこの方達が一人になった私をなんとか色々な方のお世話になりながらここまで生きてこられました。
[newpage]
「そんなことが……あったんですね」
「旗崎さん?泣いているのですか……?」
言われて気がついた僕は、目に涙を浮かべて泣いていた。だって、そんな大変な人生だって思わなくて……?
「優しいのですね旗崎さんは。こんな自分勝手な私に涙をくれるのですから」
「ありがとうございます……あの、話してくれて」
「それは……あなただから……でしょうね。
あなたは、私からしたら……羨ましいくらいで……」
「あなたはどうしてそんなに恋愛に前向きになれるのですか?」
「前向き……か。実際、恋愛に前向きも後向きも無いと思います。相手のことが好きならハッキリと想いを伝えればいいと思いますし、当たって砕けろ、です」
「……そうですか。すごく、かっこいいです。貴方らしくて」
ドクンーー
面と向かってそう言われた時、体の奥底からふわりと急速に浮き上がる物を感じる。
胸の鼓動が早くなり、息も苦しくなる。
まただ。
度数の高い酒を飲んでいないにも関わらずこうなってしまうのは、これが初めてでは無い筈。
昼間、犬山さんに急に抱きついたことがあった。なぜあんなことをしてしまったか。
「春さん?」
犬山さんから、香る……微かな甘い匂いが僕を狂わせるんだ。
事前に焚かれていたアロマなんかよりも、濃厚な、ゾクゾクと僕自身の理性が薄れていくような匂いが。
「いけない!春さん、今すぐ私から離れてください!」
「ふぇ?どうして……」
犬山さんは急に布団を押し除けて僕から距離を置いた。
「あの、獣人にはフェロモンという発情した時に出る物質が出るんですけど……」
「普通は他人には効果はほぼ無いんですが、耐性のない人が嗅いじゃうと今の春さんみたいに……」
「すみません、もっと早くに気づくべきでした」
「まって。行かないで、犬山さん……」
僕はこの寂しい気持ちを鎮める為に犬山さんに詰め寄っていく。こんなことをして何を意味しているのかは理解が追いついていないけど、半ば本能のまま行動をしている
「だ、ダメです。今貴方は私のフェロモンのせいで軽く発情しているんです。今一度冷静になって堪えてください」
「やぁら、フェロモンのせいじゃらくれもいいから、犬山さんのことが大好きなんです……」
最早呂律が回らなくなった頭でなんとか犬山さんを逃がさない為に太ももにしがみつく。
「春さん……仕方ないヒトですね……」
「私も、貴方ことが……好き、なんですよ」
「え?」
「なんですかその顔は……///貴方と同じ気持ちなんですよ。ほっとけなくて、世間知らずで……優しくて、バカで、能天気で。そして何より……眩しくて……」
「私とは何もかもが正反対の貴方が大好きになってしまったんですよ!」
「こうしてフェロモンが無意識に出てしまってるのが証拠。私の本能が、貴方を娶りたいと訴えているんです。そして、貴方が私を大好きと言ってしまった瞬間」
すとんと一気に天地が逆になる感覚。犬山さんが僕を床へ押し倒していた。両腕を犬山さんのがっしりとした腕で押さえつけられている為逃げようとしても逃げられない。
「もう我慢が出来なくなっているんですよ。こいつを他の雄に取られる前にモノにしてしまえと」
ここで僕は自覚する。犬山さんの虎の尾を踏んでしまったのだと。可愛らしいサモエド種の犬獣人を、先祖のような狼に変えてしまった、と。
「たとえ気の迷いだったとしても。私に愛を語った責任は、取ってもらいます」
犬山さんは顔を僕の胸元へと近づけ、大ぶりに舐め回していく。湿った肉質な触感が体のあちこちに移動していく。
大型の肉食獣に味の値踏みされている状況に、僕は興奮していた。
「はぁっ、はぁっ!匂いを付けるだけでは生ぬるい!もっと、目に見えるカタチでこいつに私のモノだと言う証を刻まなければ……」
犬山さんは僕の体を抱え上げて自身の太ももの上に座らせて固定する。そのうえでマズルの口をがぱっと大きく開けて僕の首筋に当てがって、そのまま牙をゆっくりと突き進めていく。
刺された痛みと共に血がうっすら滲み、犬山さんに捕食されているのに僕は途方もない幸福感を感じて……。
「ーーーーーッ!!♡♡♡」
ジーンと長いような絶頂感。だが実際にしたわけではなく、下腹部のあたりからしょろしょろと生暖かい液体が僕のモノから漏れている。いい歳の大人が情けなくお漏らししているのに、止めようとしても力が抜け切って下腹部に力が入らない……。
「私にマーキングされただけで漏らしましたか。とんだ淫乱ですね。そんなに嬉しかったですか?」
「私の雌……」
「私の雌なら何をすべきか、わかるな?」
「っ!!は、はいぃ♡!」
解かれたおぼつかない自分の体をなんとか動かして、自分の“雌として”のやらなければならなければならない事を始める。
犬山さんの胡坐の上にある、圧倒的な大きさを持つペニス……チンポ♡
ペットボトルにも匹敵するソレは雌を孕ませようと息巻いてピクピクと脈動している。
今の僕の使命である犬山さんの滾った雄にご奉仕すべく顔を近づける。
むわっと強い雄の臭いが鼻を刺激する。お風呂に入ったばかりなのに、発情しただけでこんなに強い臭いを発するなんて♡
犬山さんの自分に足元にも及ばない雄の力に内心喚起に震えながら、その剛直を口に含ませる。
「そうだ、偉いぞ。もっと奥まで咥えてみろ」
男の逸物をしゃぶるなんて初めてのことだけれど、すっかり骨抜きになった僕にそんな事を気にする余裕はなかった。
亀頭部分を中心に舐めれば鈴口からえぐみのある液体が出てきて、それごと唾液と含ませて吸うように緩急をつけて奉仕をしていく。
犬山さんも僕の奉仕の快感に時折嬌声を挙げながら震えていて……。
「ぐっ、そろそろ射精すぞ……!離せ、今からご褒美をたっぷりとかけてやる♡」
言われた通り口から逸物を離す。そこからは
真っ赤に最大限に膨張した犬山さんのデカチンポ♡
犬山さんは立ち上がって、それの矛先を僕に向けながら高速に扱き出していき……。
「射精るっ♡!私の子種によって何もかも染まってしまうがいいっ!ぐぅっ!」
掛け声と共に犬山さんの逸物から勢いよく白濁の水柱が僕目掛けて降り注ぐ。一度だけでなく、何度も何度も顔やお腹、体全体に際限なく掛けられる。精液の栗の花のような匂いにも負けない犬山さんの濃い臭いが僕という存在を抹消し、目の前の獣のただの孕み袋として認識を変えようしている。
「いい顔になったなぁ?どうですか、身も心も私に包まれた感想は」
「はい……とってもとってもぉ♡幸せでしゅ……♡」
「そうか。さ、こっちこい。拭いてやるよ」
「ありがとう、ございます……」
“偶然”用意されていたバスタオルで精液で汚れた僕の体を拭いてくれる犬山さん。こんな仕打ちをされてなお、いっときの優しさに酔ってしまいそうだった。
「なにぼーっとしてるんだ?さっさと次いくぞ」
「ああそんな……まだ、やるんですか」
「ふっ当たり前だろ?獣人の精力を甘く見ないでください……♡」
犬山さんは最早抵抗できなくなった僕を再び押し倒す。しかし今度は密着しながら右腕を僕のお尻の辺りまで伸ばしていき……。
「あっ♡しゅごいっ♡犬山さんのっ指が出たり入ったりしてぇ♡!」
僕の尻穴に逞しくて太い指が侵入し、グニグニと狭い入り口を押し広げていく。指を動かされるたびに喩えようのない快楽が走る。
「発情しているおかげか穴がいい具合に広がっていくな。それとも、普段から開発していたのか?」
「ち、違う!こんなにお尻ほじくられるのっ♡こんなに気持ちいいはずがぁぁぁ♡」
口では否定しても実際に犬山さんの目の前でこんな痴態を晒しているのだから言い逃れは最早認めているようなものだった
「またイっちまうか?いやイけ!無様に雌らしくメスイキしちまえ♡!」
「ひゃいぃぃ♡!いきゅ、イキましゅぅぅぅ♡!」
ジーンと射精を伴うような絶頂感がいつもより長く続いている。しかし僕の逸物から出てきたのは見慣れた白濁液ではなく、むしろ透明な液体が間欠泉のようにバシャバシャと止めどなく吹き出し続けていく。
「まさか本当にメスイキしちまうとはな。いよいよ名実共ににメスになっちまったなぁ、春……」
メス……僕は犬山さんの、メス……♡
「こんなにエロいメスだったら、もっと早くにモノにしちまえばよかった」
耳元で低い声で囁きながら耳や首筋を舐める犬山さん。メスイキをして、自分よりも圧倒的な雄に屈服させられた僕に雄である矜持も、一欠片も残っていない。
「そろそろイイか……挿れるぞ」
頃合いを見て挿れていた指が抜かれて、ぽっかりと空いた穴の代わりを埋める熱を持ったモノがあてがわれる。
事前に広げられていても、その指以上に長大な逸物が自分の腸内に入ってくる痛みを伴いながら押し進められていく。
やがて異物感も収まっていき、中に入っている逸物が擦れる度に快楽を感じるようになった。
「全部入ったぞ。ああすっげぇ気持ちいい♡」
「い、犬山……さん」
「中でシッカリ掴んで離さねぇ♡もう我慢できねぇ、腹の奥まで俺の種をたんまり仕込んでやるよ!」
そこから啖呵を切ったように犬山さんは僕の腰を掴みながら腰のピストン運動を高速で繰り返す。
乱暴ながらも一回一回の僕の気持ちいいところを潰すように押すものだから、僕は犬山さんにされるがままだった。
「んっ♡あっ、あぁ♡気持ちいい!犬山しゃんのチンポ♡気持ちいい♡!」
「ハハハッ!もっと俺のことしか考えられないようにしてやるよ!嬉しいか!?」
「はぃい!もう僕は……犬山さんだけのめしゅだかりゃぁ♡!」
犬山さんがそれを聞いて、ニヤリと笑みを浮かべると腰の動きがさらに加速していく。
時折キスも交えたり、体位を変えたりと、この濃密な初夜は過ぎていく。
偽りの関係から始まったことなんて、忘れてしまうくらいに。
こうして体を交えて。
互いを知って。
傷を舐め合って。
犬山 仁
旗崎 春
という存在を刻んで。
「春、俺の下の名前を呼べ」
「っはぁ、はぁ……!へぇ?」
「俺の名前を呼べば種、出してやる。欲しいだろ?」
「欲しいぃ!犬山しゃん……仁のせーえき欲しいよぉ!」
「合格だ!一番奥に目一杯出してやる!」
「孕めぇぇぇ!!!」
昨日の今日の、子供地味た思いつきで出来た関係だけど。
「あぁ……!おおおあ。おっ、おっ、おっ……」
「熱いのが……♡仁のあちゅいのが奥まで〜♡」
後悔なんて………………………………
「もう絶対に離さねぇ。ずっとずっと、俺のそばに居てくれ、春……」
父さん、俺……ずっとこの人と苦楽を……
[newpage]
ゴトンゴトン。
長いようで短い一週間の一時帰省を終えて帰りの電車の中。
本数も人の出入りも少ない実家近くの駅から乗った電車の中は、車輪の線路を通る音以外はしない静かな車内の中で、僕と犬山さんの実質二人っきり。
行きの時も緊張しっぱなしだったけど、帰りの今は別の意味でお互い萎縮してしまっている。
視線も合わせず、互いに向き合って座り。窓の景色を見るという気分転換もままならないまま時だけが無情に過ぎていく。
「あの、ですね。春、さん」
なんとも言えない雰囲気に耐えきれなくなったのか、先に口を動かしたのは犬山さんの方。
果たして何を言われるのか、犬山さんには何も悪いことはしていないのに緊張してしまっている。
「その……なんて言えばいいのか。フェロモンを発してしまったとは言え、あなたを無理矢理襲うような真似をして、申し訳ありませんでした」
「え……」
意外。いや何を言われるのか予想はついていなかったが、まさか頭を下げて謝れられるとは。
「そ、そんなあなたが謝ることじゃありません。第一、僕が提案してここまでついて来てくれたんですし。それに……」
『もう絶対に離さねぇ。ずっとずっと、俺のそばに居てくれ、春……』
「あの言葉まで、嘘にしようっていうんですか」
「いえ、そのようなことは……そうですね。私としたことが、せっかく見つけた私の光を危よく手放すところでした」
「見つけたって?」
「それは……」 父さんとは違う……俺だけの……
「内緒です。……そんな顔しないでください、時が来たら話します」
犬山さんは微笑んで、ふと立ち上がって僕の隣まで座って……。
誰もいないことをいいことに俺は春の唇を合わせた。