クモ獣人がこれまでを回想する

  ※『 』部分以外はモノローグ。

  クモ獣人は他種族から怖がられ、蔑まれてきた。迫害の対象として命を奪われた時代もあったらしい。

  そんな境遇の中でも両親は負けずに努力し続け、資産家として一定の力を得た。

  両親は私に自分たちと同じ目に遭ってほしくないと思ったのか、私には他種族と結婚することを望み、婚約者となる相手を探した。

  そして、私は彼と出会った。

  彼は、彼の両親が負った多額の借金と引き換えに私の婚約者になった。

  私の両親は人間の婚約者ができたことをとても喜んでいたけど、私は「彼に怖がられたり蔑まれることはあっても、愛してもらうことなく一生を終えるのだろう」と複雑な気持ちだった。

  でも、彼は初めて会ったときから一度も私のことを怖がったり蔑んだりはしなかった。

  同棲を始めてケンカすることもあったけど、彼は絶対にクモ獣人のことを悪く言わなかった。

  そんな日々を過ごす中で、「彼と結婚すれば私のことを愛してくれるかもしれない」という思いが芽生え、大きくなっていった。

  そして、私は彼と結婚するために行動した。

  まずは彼に他の女性が近寄らないようにした。大抵は話をしたら離れてくれたけど、それでも近寄る相手には力で思い知らせた。

  でも、いくら他の女性を遠ざけても彼は結婚に否定的だった。そうして我慢できなくなった私は、彼を襲って自分のものにしようとした。

  最初は「これで彼と結婚できる」という喜びがあったけど、すぐに気づいてしまった。

  「本当に愛してもらうチャンスを自ら手放してしまった。私は本当の愛を知らずに一生を終えるのだろう」と。

  私は自分の軽率さを悔やんだ。

  それでも、運命は私を見捨てなかった。

  彼は本当は私のことを好きだった。そして、私の行動でその思いに気づき、私を受け入れてくれた。それが嬉しくて、恥ずかしいくらい泣いたことは今でもよく覚えてる。

  それからは、今まで以上に幸せな日々を過ごした。

  彼の希望で彼氏彼女の関係から始めたけど、いつか必ず結婚してくれると信じていたから不満はなかった。

  そして、数年前に彼からプロポーズを受けて結婚し、今は・・・

  『

  (子どもに向かって)

  2人とも、危ないからちゃんと前を見てね!

  』

  子どもが2人生まれ、家族4人で楽しい日々を送っている。

  子育ては大変だけど、彼が私以上に頑張ってくれたから辛いと思うことはなかった。

  あと、クモ獣人の血を引くことで子どもたちが周りから怖がられたり蔑まれたりしないか心配だったけど、今のところそんなことは何も起きていない。

  子どもたちには他種族の友だちもできたし、おかげで私もママ友ができた。

  今、私はとても幸せだ。

  幸せすぎて、時々この幸せな生活が壊れてしまったら私はどうなるのか考えてしまうことがある。

  子どもたちが酷い目に遭ったら,子どもたちや彼が亡くなってしまったら・・・

  『

  (主人公が話しかける)

  っ!?ごめん、ボーっとしてた。

  ・・・また嫌なことを想像してたんじゃないか?ふふっ、あなたには全部お見通しみたい。

  考えても仕方ないのはわかってるよ。でも、どうしても考えてしまうの。

  (主人公が手を繋ぎ、「大丈夫」と伝える)

  うん、あなたと一緒ならきっと大丈夫だよね。

  そういえば、もうすぐ結婚記念日だね。

  もう結婚して10年か。あっという間だったな。

  あなたのおかげで、私はいつも笑顔でいられるよ。本当にありがとう。

  (主人公が欲しいもの、お願いしたいことはないか聞く)

  ・・・欲しいものはもうあなたが全部くれたから、特にないかな。

  お願いか・・・2つ言っていい?

  一つは子どもたちがずっと笑顔でいられるように、2人で頑張ろうね。

  もう一つは・・・

  これからも末永くよろしくね。あなた。

  』