「本当にここに人間が現れるのか?」
俺はアルファ。
近くの街で暮らしている狼の獣人だ。
同僚から話を聞き、俺は野生の人間が現れるという山に来ていた。
人間は最近話題の愛玩動物で、食用だったり、メイドだったり、中にはパートナーにしたりもされている。
そしてペットショップで値段を見て仰天した俺は、直接人間を探しに来ていた。
山の中は暗かったが、幸いな事に俺は夜目が効く。
まぁいなかったらいなかったで帰るんだがー
ガサッ
「ん?」
なんか今横で音がしたな。
音がした方に振り向くと、そこには、、、
人間がいた。
黒い髪をしていて結構小さい。
人間は俺を見つけると、少し身構えた。
「、、、お前、人間だよな?」
一応話しかけてみたが、人間はただ首を傾げただけだった。
、、、とりあえず保護するか。
近づくと、その人間は不安そうに俺の顔を見上げてきた。
人間を抱き上げ、今日はもう帰る事にした。
人間を車に乗せ、エンジンをかける。
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎?」
なにか喋ってたが、俺にそいつの言葉は理解できなかった。
僕はクロウ。
依頼を受けて洞窟に来ていたはずなんだけど、、、
「、、、どこここ」
気づいたら知らない場所に立っていた。
森の中かな?
夜の森となると、迂闊に魔法を使ったら魔物に気付かれるかもしれない。
あまり視界は良くないけど、どこか安全な場所を探さないと。
、、、というか武器をどこかに落としちゃったみたいだ。
ベルトにつけてあるはずの剣がない。
魔法である程度戦えはするけど、敵に接近されたら終わりー
ガサッ
何かが動いた音!
急いで音のした方に振り向いた。
、、、人間?
割と大きい影が見えるけど、暗くてよく見えない。
「⬛︎⬛︎⬛︎、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎?」
、、、聞いた事のない言語で話しかけられた。
僕の言葉が伝わるかがわからないから、とりあえず首を傾げてみた。
敵意はないっぽいけど、ここからどうしよう、、、
そんな事を考えていたら、その人はいつの間にか結構近くまで来ていた。
見上げると、狼のような顔が見えた。
どうやら獣人のようだ。
怖い、、、
恐怖で動けないでいると、僕はその獣人に持ち上げられ、しばらく歩いた後に鉄の箱のようなものに運び入れられた。
「この箱は何?」
聞いてもチラッとこっちを見るだけで返事はない。
突然大きな音が出始め、鉄の箱が動き出した。
恐怖と不安で僕は動けなくなり、いつの間にか眠っていた。
車から降り、保護した人間の様子を確認した。
、、、どうやら、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
「というか、こいつを寝かせる場所考えなきゃだな。
さすがに同じベッドは狭いし、、、
ソファーにでも寝かしとくか」
まだ夜の11時だが、今日は早めに寝るか。
そう思った俺は、人間をリビングに寝かせたまま自室のベッドに向かった。
目が覚めると、ソファーで寝かされていた。
とりあえず座り直し、周囲を見回す。
、、、服は脱がされてない。
装備は元からないから実質的に異常なしかな。
「さーて、ここからどうしようかな」
一応あの獣人に敵意はないっぽい。
ちょっと怖いし違う言葉を使っていて会話はできない。
とりあえず狼とでも呼ぼうかな。
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎」
後ろから昨日の狼の声がした。
近づいてきたので、ソファーの後ろに隠れた。
顔が怖くてこっちに来てほしくないので睨む。
隠れていたら、目の前にスープの入った器が置かれた。
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎」
毒とか眠り薬とかが入ってるかもしれないから、ここは我慢、、、!
でもいい匂い、、、
でも我慢!
もっと近づいてきたので、裏を通ってソファーの反対側まで移動した。
、、、ドアに何かしてる?
何してるんだろう。
あっどっか行った。
なんか黒い服着てたけどなんだろうあれ。
、、、いい匂い。
お腹も空いてるしちょっとだけ、、、
器を取り、少しだけ口に含んだ。
「!
何これおいしい!!」
そのまま夢中で飲み干した。
「、、、はっ!
飲みきっちゃった!」
、、、でも、特に体に異常はない。
向こうからまだいい匂いがする。
でもこれ以上はー
グゥゥゥ、、、
お腹が「まだ足りない」と催促してきた。
「、、、もうちょっとだけ」
結局、僕は小鍋にあったスープを全部飲みきってしまった。
朝起きてリビングに行くと、人間がソファーに座っていた。
「おはよう」
挨拶しつつ近づくと、警戒しているようでソファーの後ろの隙間に隠れてしまった。
とりあえず朝飯を用意して、人間の前にスープを置いてみた。
「毒はないぞ」
、、、でも俺を睨みつけるだけで動かない。
近寄るとソファーの裏から逃げてしまった。
人間ってこんなに警戒心強いのか?
、、、とりあえず仕事行くか。
スーツを用意して、仕事の準備を始める。
そうだ、俺の部屋のドアを開かないようにしておこう。
あと玄関へのドアも。
、、、気を取り直して、狼が住んでいるこの家を探索してみよう。
まずは外に続いてそうな扉から。
、、、開かない。
押しても引いても横に動かそうとしても開かない。
本当にびくともしない。
「どうなってんのこれ、、、」
正面からは出れない、と。
じゃあ窓は、、、
、、、こっちも開かない。
というかこれ、人間が触れるとロックがかかるようになってる?
何その謎技術。
その後も調べてみたけど、開けられるドアはお風呂に繋がるドアだけだった。
キッチンはリビングと同じ空間にあるし、刃物なんかは見つからなかった。
フォークとバターナイフくらいしか武器になりそうなものはない。
何も入っていない戸棚があったから、そこなら何かあった時に隠れられるかも。
「先輩、人間飼い始めたんですよね」
仕事中に後輩に話しかけられた。
「昨日山で見つけて拾ってきたんだ。
それがどうかしたか?」
「先輩って人間についてどのくらい知ってます?」
「、、、大して知らないな。
俺たちより脆いってのと、結構賢いってことぐらいだな」
「なるほど、、、
じゃあ、色々と教えましょうか?」
「仕事と同時進行で頼む」
「わかりました。
まず人間は、時々他の世界から来るみたいです。
服装は様々ですが、私たちと同じような服を着ている場合が多いです。
そして野良の人間は大体は喰われてしまいますが、先輩がさっき言った通り知能が高いので、色々教えてペットや使用人にする人もいたりします。
人間が来るかどうかは完全に運次第なので、必然的に人肉は高級肉になります。
まぁ、先輩はあんまり人肉は好きじゃないらしいのでこの話は聞き流してもらって結構ですが。
大体8〜30歳くらいの年齢なら飼育が許可されていますが、あまり小さすぎたりすると違法になります。
でも愛玩用として育てるなら30を超えても育てることは許されてるそうですよ。
先輩のは愛玩用ですか?」
「まぁそうだな」
「どのくらいまで育てるつもりです?」
「うーむ、、、
その辺はまだ決めてないな」
「それに関しては後でもいいと思いますよ。
ただもう一つ注意して欲しいのが、人間の複数飼育と繁殖です。
両方とも禁止事項で、それを破ったせいで過去に革命のような事が起きかけたの知ってます?
獣人の方が圧倒的に強いので数日足らずで鎮圧、というか全滅しましたけど」
「それは知ってるぜ。
割と有名だからな」
「まぁ注意するべき決まりはこの辺りです。
あと人間の肌は柔らかいので、私たちの爪で簡単に傷がついてしまいます。
散歩とかの時は目を離さないでくださいね。
その隙に食われることがありますから」
「分かった。
ありがとな」
「、、、そういえば、先輩の飼ってる人間って雄雌どっちです?」
「雄、、、だと思う」
「ならもう一つの注意事項は言わなくていいですね」
「は?」
「世の中、様々な嗜好を持つ人がいますから」
キッチンを探索していたら、狼の声がした。
「やばい帰ってきた!」
急いでソファーの裏に隠れる。
今回は似たような、、、犬?も一緒だ。
同居でもしてるのかな?
2匹ともソファーに座ったので、なんとなく狼側に移動する。
何か話しているけど、やっぱりわからない。
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎」
少し様子を覗いてみよう。
机の上に紙が置かれていて、そこに読めない字で何か書かれている。
、、、もしかして、名前考えてる?
とりあえずあの知らないやつが帰るのを待とう。
「お邪魔しまーす」
今日は後輩を家に招いてみた。
「そういえば先輩、人間の名前って決めてます?」
「、、、決めてないな」
「特徴を名前にするのもありですよ」
扉のストッパーにしていた箒を外してリビングに戻ると、人間はキッチンを探索していた。
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎!」
何か言った後、またソファーの後ろに隠れてしまった。
「、、、警戒されてますね」
「保護してからずっとこうなんだよな。
とりあえず座ってくれ」
俺と後輩がソファーに座ると、人間は俺の後ろの方に移動した。
「、、、先輩、ニヤついた顔がちょっとキモいです」
「失礼だな。
それより、こいつの名前を考えようぜ」
「特徴は、、、黒髪のオスで子供で、、、」
「警戒心が強くて先輩にはあまり懐いていない」
後輩を睨む。
「じゃあクロなんてどうだ?」
「安直すぎません?」
「じゃあケイ」
「もうちょっとマシな名前ないんですか、、、」
その後もいくつか名前の案が出たが、全て後輩に却下された。
どうやら俺にはネーミングセンスがないらしい、、、
知らない獣人が帰った後も、狼はずっとあの紙と睨めっこしていた。
、、、一応名前言ってみよう。
「クロウ」
「?」
狼がこっちを向く。
「クロウ」
これで伝わるといいけど、、、
「「クロウ」?」
、、、若干発音が違うけど、どうやら伝わったらしい。
一応そっちを向いておく。
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎クロウ⬛︎⬛︎⬛︎?」
とりあえず、これで狼に呼ばれているか否か分かるね。
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎。
クロウ、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎」
、、、もしかして、狼も名前を教えようとしてる?
発音がちょっと違うけど、、、
「ウォルカ」
「⬛︎⬛︎⬛︎。
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎ウォルカ⬛︎⬛︎」
ウォルカ、が多分この狼の名前なんだろうね。
これからはそう呼ぼう。
後輩が帰った後も、俺はまだ名前を考えていた。
「うーむ、、、」
「⬛︎⬛︎⬛︎」
「?」
人間が何か喋ったな。
「⬛︎⬛︎⬛︎」
なんとなく聞き取れる気がするな。
人間の使う言語は俺たちと違うらしいが、この発音は、、、
「「レン」?」
そう呼ぶと、人間がこっちを向いた。
「もしかして、お前の名前はレンなのか?」
とりあえず、これからはレンと呼ぶことにした。
ついでに俺の名前も教えてみよう。
「アルファ。
レン、俺の名前はアルファだ」
そう繰り返すと、レンが拙いながら俺の名前を呼んだ。
「アルファ」
「そうだ。
俺の名前はアルファだぞ」
これで俺が蓮に呼ばれていればわ分かるな。
雑貨店で色々と人間用品を買ってきてみた。
ぬいぐるみに絵本、積み木、自由帳、クレヨン、、、
とりあえずレンの前に並べてみた。
レンが最初に手に取ったのは自由帳だった。
「絵でも描くのか?」
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎?」
そういえば描く道具がないことに気がついたので、クレヨンを差し出してみた。
レンはクレヨンを見たあと俺ごと通り過ぎ、机の上のペン縦にあるペンを取って、自由帳に何か書き始めた。
その日、無視されたショックで少しダウンした。
出かけて帰ってきたと思ったら、色々と抱えて帰ってきた。
ぬいぐるみ、絵本、積み木、、、
、、、この本の中身って白紙かな?
開くと、中には白紙の紙が何枚も挟まれていた。
とりあえずこれに色々と書き出してみよう。
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎?」
「ペンはない?」
伝わらないだろうなーと思っていたら案の定伝わらなくて、目の前にウォルカがクレヨンを差し出してきた。
でも僕はウォルカを無視して机の上にあったペンを取った。
ウォルカがいない時に試してみたけど、軽くて結構書きやすいから便利だ。
ウォルカに拾われて1週間ちょっとが経ったある日。
家でウォルカの用意したご飯を食べていたら、鍵が開く音がした。
なんか忘れ物でもしたのかな?
と思いつつ様子を見ると、そこには黒い服を着た知らない獣人がいた。
ナイフの刃先を僕に向けて、舌なめずりしている。
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎。
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎」
絶対碌でもないこと言ってる。
魔法、最近使ってないけどちゃんと発動するかな?
「「結界術」」
透明な壁を張り、自身の身を守る。
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎!
⬛︎⬛︎⬛︎!」
知らんやつ、、、というか泥棒っぽいやつが結界を殴ったりナイフを突き立てたりしているけど、全部弾かれている。
このまま暴れられても面倒なので、結界で泥棒を捕まえることにした。
結界に弾かれてバランスを崩しかけているところに結界を張り、四角い空間に閉じこめる。
中で暴れていてうるさいし、暴れられると魔力消費が嵩むんだけど、何か脅せるような手段ないかな、、、
あっそうだ。
炎魔法を並列起動し剣の形に魔力を練る。
それを泥棒の方に向け、結界を通り抜けさせると泥棒は炎の剣を恐れ始めた。
これ以上やったら面倒なことになりそうなので、ウォルカが帰ってくるまでこのまま待つことにした。
家に帰って来て早々、
〜帰ってきたら、ペットが泥棒らしきやつを変な壁で捕まえた上で手から炎出してました〜
というタイトルがつきそうな場面に遭遇した。
「、、、いやどういう状況だよ」
改めて状況を整理する。
まず、家に帰ってきたらドアの鍵が開いていた。
で、レンのことが心配になった俺は急いでリビングに向かった。
そして、泥棒が透明な箱みたいなのに閉じ込められていた。
その目の前には、手から炎を出しながら泥棒を見たことない表情で睨みつけるレンがいた。
、、、改めて整理してもわからん!
「おいあんた!
この人間はあんたのペットなんだろ⁉︎
頼むからなんとかしてくれ!
通報される方が燃やされるよりまだマシだ!」
、、、とりあえず通報することにした。
ウォルカがやっと帰ってきた。
何やら光る板に話しかけていたが、すぐに青い服を着た獣人たちが現れて泥棒を回収していった。
結界は解除したし、炎魔法も消した。
さーて、さっさと寝ますかー
ソファーに横になろうと思っていたら、ウォルカに持ち上げられ、またあの早い乗り物に乗せられた。
結構焦ってるみたいだけど、どこに行くつもりなんだろう?
動物病院に着き、手続きを済ませる。
、、、不安だ。
多分病気ではないだろうが、炎を出したりバリアみたいなのものを張れるのは結構危ないと思う。
最悪殺処分も、、、
「アルファさーん、レンちゃーん、診察室にお願いします」
ウォルカに連れて行かれたのは、診療所のような場所だった。
車から降ろされて建物の中に入ると、大小さまざまな魔物がいた。
でもみんなおとなしいから、きっと飼い慣らされているんだろう。
人間も見かけたけど、こっちに気づいていないようだ。
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎、クロウ⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎」
名前を呼ばれたらしく、ウォルカが立って僕の手を引いてきた。
ここはおとなしくついていこう。
「特に異常はありませんね。
レンくんは健康そのものです」
病院で医者に見てもらった結果がこれだった。
「でも手から炎出してたんですよ⁉︎
それに変なバリアみたいなもの張ってましたし!」
「おそらく他の人間とは違う特別な子なのでしょう。
時々そういう子は見かけますよ。
心を読んだり、物に触れずに動かしたりと、人間はそんな能力を持った子もいますから」
「、、、マジですか」
「マジです」
医者らしき獣人に手を重点的に調べられ、黒い板に人間の姿が映った。
黒い板の中の人間は、相手の動きに合わせて動いたり、相手に触れずに物を動かしたり、宙に浮いたりといろんなことをしていた。
一つ目は読心術、二つ目は魔力操作、三つ目は風魔法か浮遊術かな。
その後に大量の人影が映し出され、その中の一つだけが赤く光った。
、、、もしかしてこの世界、魔法がない?
次の日、俺はきょとんとしているレンの手を調べていた。
「この手から炎が、、、?」
いまだに信じられない。しつこく触っていたら、ついに距離を取られてしまった。
嫌われたかと思ったが、レンは少し離れてからこっちに振り向き、手の上に炎と氷を出した。
レンが手を握るとその二つは消え、室内なのに風が吹き始めた。
そしてバチバチと音が鳴り始め、レンの手と手の間に電気が走った。
「すごいな!」
思わず拍手する。
すると、レンが胸を張って両手を広げた。
ハグの催促か?と思った俺はレンに抱きつきー
顎にアッパーカットを喰らった。
、、、ご飯を食べ終わってから、ウォルカはずっと僕の手を調べている。
これ多分、魔法を見慣れていないんだろうね。
少し距離を取り、実演してみせることにした。
まずは炎、氷魔法。
火球と氷塊を出現させ、消し、風魔法で浮き、雷魔法で空気に雷を走らせる。
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎!」
拍手されたので、胸を張って両手を広げてみたら抱きつかれたので、思いっきり顎にアッパーカットを放つ。
調子に乗るな。
「人間は俺たちよりも体が弱い。
ちゃんと看病してやれよ」
上司に連絡したら、思いのほか優しい反応が返ってきた。
レンが体調を崩したんだ。
医者に行ったが、
「原因がわかりませんね。
症状は軽い風邪と似ているのですが、、、
咳止めと解熱剤を出しておくので、今日はちゃんと看病してあげてください」
と言われた。
額に濡らしたタオルを乗せられたレンは、少し苦しそうに息をするだけでほとんど動かない。
レンはいつもよりも弱っていて、すんなり薬を飲ませてくれた。
だが、薬を飲んでも一向に熱が下がらない。
人間の体温は俺たちよりも低いはずだが、今は俺たちと同じくらいの温度になっている。
「、、、レン、とりあえず飯作ってくるから、待っててくれ」
俺はレンから離れ、お粥を作り始めた。
あ゙ー、、、きっつい。
魔力切れってこんなに面倒なんだ、、、
二日前、泥棒の拘束と脅しにずっと魔法を使っていて魔力をかなり消費して、
その魔力がほぼない状態で昨日実演してトドメを刺したみたいだ。
要は自業自得。
診療所に行ったのもぼんやりとしか覚えてないし、
その後ウォルカに薬を飲まされたけど、一向に良くなる気配はない。
ウォルカは何かを作りにキッチンに向かっていった。
、、、喉乾いた。
なんとか起き上がり、コップに入ったお茶を飲み、またソファーに横になる。
明日には回復するといいけど、、、
思ったよりもお粥を作るのに時間がかかってしまった。
いつものクセで濃いめの味付けにしたり、別の料理になったりと大変だった。
完成したお粥をレンの元に持っていくと、レンは起き上がっていた。
「お粥作ったんだが、食べれそうか?」
お粥が入った器をレンの前に差し出すと、レンはお粥を食べ始めた。
飲んだであろうお茶を補充し、、、
、、、今ならいけるか?
そっとレンの頭を撫でる。
レンはこっちを向いたが、とろんとし始めてそのまま眠った。
毛布を掛け、俺は間違って作った料理を食べ始めた。
ウォルカがお粥を持って来た。
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎?」
目の前に差し出された器を取り、お粥を食べる。
相変わらず美味しいけど、結構時間かかったな、、、
食べ終わり、器を机に置いたタイミングで、ウォルカに頭を撫でられた。
でもいつもみたいなデレデレの表情じゃなく、本気で心配している表情をしていた。
僕はウォルカを殴り飛ばす気力も体力もなかったので、そのまま眠りについた。
次の日の朝、僕の魔力はちゃんと回復していた。
いつも通り動くことができる。
ちょっと体を動かしつつ時計を見たら、珍しくウォルカが寝坊していることに気づいた。
部屋のドアを調べたら普通に開いたので、ベッドでグースカ寝てるウォルカの顔に氷塊を押し付ける。
ウォルカの目が覚め、そのタイミングで嫌な予感を感じて離れた。
ウォルカが両手を広げて抱きつこうとしていたけど、うまく躱せたみたいだ。
とりあえずリビングに行こう。
朝、冷たい感触で目が覚めた。
目を開けると、レンが俺の顔に氷解を押し付けている。
起こしてくれたのが嬉しくて抱きつこうとしたら、綺麗に避けられた。
しょぼんとしつつレンについて行ってリビングへ。
レンの分の朝ごはんも用意して、、、今更時間がいつもより無いことに気づいた。
ささっと朝ごはんを済ませ、仕事の準備を始める。
リビングに戻ると、踏み台を使ってレンが洗い物をしてくれていた。
この家にもだいぶ慣れてきたらしい。
「じゃあレン、行ってくるぜ」
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎」
今日も一日頑張るか!
朝ごはんを食べ終わり、食器を片付ける。
最近簡単な家事を教えてもらったので、できることはやることにした。
踏み台を出し、洗い物を始める。
「⬛︎⬛︎⬛︎クロウ、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎」
多分これ「行ってきます」とかだろうね。
「行ってらっしゃい」
とりあえずクッキーでも食べようかな。
えーっと確かここにウォルカが隠してた小分けのクッキーが、、、
[newpage]
アルファ
一般企業に勤務する大人の狼の獣人。
人間が出る山でレン(クロウ)を見つけ、保護して買うことにした。
人間を探していた理由は家事を手伝ってくれる人が欲しかったから。
レンに時々お菓子を分けてあげたりするが、お菓子の隠し場所はバレている。
クロウ
依頼で洞窟に行ったら獣人の世界に迷い込んだ人間の少年。
山でウォルカ(アルファ)に見つかり、保護された。
使える魔法は基本四属性と結界魔法。
ウォルカのお菓子の隠し場所を知っており、時々盗み食いしている。