龍神と蛇神の正月にまぐはひ契りたる話

  辰年から巳年への移り変わりとなるこの日、十二年に一度の祭事が行われる。

  龍神と蛇神の、交わいの儀だ。

  山裾の大きな洞穴の前。集まった村人衆。

  雅楽師たちが神楽を奏でると、まずは蛇神様が姿をお見せになった。

  白磁のうろこと、宝玉のような真紅の目。

  蛇神様は女神でいらっしゃる。そのたおやかな蛇身は古い杉の幹ほどの太さを持ち、豊かなる稔りを象徴する。

  蛇神様は神楽の音色と多くの衆目の中、村人達が檜で拵えた大きな舞台に身体を横たえた。

  今から蛇神様が舞をお見せになる。

  それは、龍神様を天上からお迎えする、誘いの舞。蛇神様は艶やかな美しい身体を舞台の上でくねらせる。

  ああ龍神様、わたくしのもとに御影向あそばせ。

  蛇神様はうっとりと想い遣る。

  十二年待ち侘びた、龍神様からの御寵愛。

  ああ、やっと…。

  蛇神様にとって村人衆に姿をお見せになるのも十二年ぶりのこと。衆目の中にその玉肌を晒し、舞う。蛇神様の女の性根が昂る。

  ああ、はぁっ…

  しめやかに始まった蛇神様の舞は、しだいに艶気を帯びる。時折漏れる吐息には熱がこもり、身体が擦れる音に粘り気が増す。情欲に焦がれる白い蛇身は交接中の女のごとくうねる。

  そしていよいよ下の穴からは水気がしとどに溢れ、身体が波打つたびに水跡が檜の床に文様を為す。男神を求めて湧き立つ蛇の女香が、祭祀を包み込む。蛇神様はもう口を開けて息をついている。

  ああ、はやく、はやく…

  そのとき、遠くで遠雷が鳴る。

  すると見る見るうちに暗雲が立ち込め、ついに龍神様がお見えになった。

  松葉緑の長い身体に、銀の鬣。

  隆々とした二本の角。

  蛇神様の美しい舞に応え、今年一年を担った龍神が舞台に降り立ったのだ。

  二柱がようやく相見える時が来た。

  蛇神様はぱあっと御顔を花開かせたかと思うと、すぐに居住まいを正し、目上の龍神様に首を垂れる。龍神様はそんな蛇神様の愛らしいご様子に目を細め、身体を寄せる。そのごつごつとした手が肌に優しく触れたとき、ようやく蛇神様は御顔をお上げになり、見つめ合った。

  御身体を触れ合わせなさるうちに、龍神様の恋慕の情が、二本の突起物となってそそり立つ。棘ばった男根。一筋縄では行かない龍蛇の男に相応しい象(かたち)だ。

  蛇神様はそんな龍神様の一年の労をいたわるのが御役目。

  片一本に長くすらっとした首を巻き付け、もう片一本をしっかりと御口でくわえ込む。そして、たっぷりと情念を込めてねぶり上げる。二股の舌を隙なく竿に巻き付け、喉で頭を締め上げる。単なる前後運動とは程遠い、殿方を愉悦せしめるための所作。

  もう一方には、きめ細やかな鱗の肌がしっとりと巻きつき、柔らかい筋肉が締め上げる。

  これが蛇神様のもてなし。敬愛する龍神様のモノを、尻尾で扱うなどといった無礼は、間違ってもなさらないのだ。

  どんな荒神も昇天させると謂れる女蛇の口技。蛇神様もその例に漏れないということだ。龍神様は堪らず身体を捩る。一年の労に余りある慰撫。

  これは、堪らんっ…!!

  たちまち、龍神様は絶頂しなさった。

  舞台の上で身体を震わせると、蛇神様の喉奥に思い切り精を注ぎ込み、同時にもう一本で高々と宙に噴き上げた。

  村の男衆はおおっと声を上げ、女衆は密やかに前を濡らした。

  龍神様は堪えきれず、最後は子犬のように股を開いて腰をついた。

  蛇神様は猛烈に脈動する益荒男を口内で鎮めた後、尻尾で可憐に口元をお隠しになりつつ、ちゅっと音をたてて彼を御赦免なさった。これほどまでに雄々しい精の迸りを、すべて御口でお受けになったということだ。

  ぷはあっ…

  したたかな蛇神様はさらに、腰砕けになった龍神様を追い立てる。

  さあ龍神様、こちらにも…

  蛇神様の下の御口は、檜の床に水溜まりを作るほど潤い、龍神様の御寵愛を心待ちにしておられたのだ。

  はやく…わたくしめのここ、いと物寂しう御座ります…

  蛇神様はふっくらとした下腹を差し出す。その高雅な誘い仕草とは裏腹に、紅梅色をしたワレメの方は、くっぱぁ、くぱくぱあっ…♡と端なく物乞いをしているではないか。

  精を放ったばかりの男神をたちまち勃起せしめるに充分な嬌態。

  ぐるるるっ…!

  龍神様は混濁した眼で再び男根をいきり立たせ、喉を鳴らしながら蛇神様に覆い被さる。そして。

  蛇神様の瑞々しい女肉を貫く。

  嗚呼あっ。

  蛇神様は大きな声を漏らしてしまう。

  まるで太い注連縄のごとく、二柱は絡み合う。

  龍神様の凄まじき男根は蛇神様のナカを掻き乱し、抜き差しの度に水滴が飛び散る。骨張った鉤爪が、白い蛇身を掴んで離さない。太い下腹が、ぼっこ、ぼっこおっ、と無残に打ちのめされる。豊穣の象徴として崇められる清き蛇身が、龍神様のタマゴ袋に成り下がっていく。

  しかし蛇神様は龍神様の隆々たる御身体に組み敷かれ、大変お悦びの御様子である。

  ああ龍神様っ、たいへん、はげしう御座りまする…うれしゅう、ござりまする…

  一途な蛇神様は、この間どれほど待ち焦がれていたのだろうか。時には恋慕の情を自らでお慰めになり、村を大雨で湿らせた日も少なくはない。

  ああっ、あっ、この上なきしあわせ。龍神さまのっ、お身体に抱かれてっ、龍神さまの、おんまらで、突かれて…お先にっ、失礼、つかまつりまするっ、いっ、いくっ。

  龍神様の腰に幾重にも身体を巻き付け、尻尾の先までぴっとりと絡み合わせながら、達した。

  びっくん…

  雷に打たれたように身体を張らせ、思わず女陰で龍神様の玉茎を締め上げながら痙攣してしまう。

  はあ、はあ。龍神さまっ。

  しかし蛇神様は、自らの御役目を忘れない。

  おっ、お気になさらず、続けてくださいまし。

  はしたなく取り乱したわたくしめのここを…もっと…躾けてくださいまし。

  蕩け切った表情で尚、自らの御身体をお差し出しになる健気な様に、龍神様の腰の奥底で、むらむらと欲が込み上げる。

  ああ、愛いぞ。蛇神よ。

  龍神様は蛇神様のことをより慕わしく思し召したのであろうか、身体をぎゅっと抱きしめ、その御首元をちろちろと舌でお舐めになる。

  蛇神様は身体をよじってお悦びになる。

  ああ、天にも昇る思い。

  龍神様がわたくしめを、かようにも愛でてくださる。

  嗚呼、なんとうつくしい面持ちぞ、蛇神よ。

  この日が待ち遠しかった。其方の白い肌を、花のような艶態を、想う日もあったのじゃぞ。

  ああ、ああ、龍神様、そのようなことを、耳元で仰られては、また、いってしまいます。

  はあ、はあ、今度は、いっしょに、いきとうござりますっ。

  ああ、愛いっ、愛いぞ蛇神っ。

  我もそろそろじゃ。我の精を、受け止めてはくれぬか。

  ああっ、ああっ、いらしてっ、いらしてっ、ああっ、ああーーっ。

  出すっ、出すぞっ。

  二つの身体が激しく軋みながら結び合い、とうとう蛇神様の御宮の奥で、龍神様は全てを放った。

  ああああっ。

  龍神様は眉間に皺を寄せ歯を食いしばり、蛇神様は眼を見開き口を開ける。

  龍神様は寄せ打つ荒波の一つ一つを、想いを乗せてしっかりと蛇神様の奥にお残しになる。

  そして蛇神様の長らくの渇きがとうとう満たされたのであろう、御身体からふわあっと芳しい香りが匂い立つ。

  十二年に一度の逢瀬。二神は絡み合いながら轟き、咲き乱れたのであった。

  ◇

  龍蛇の契りがこれで終わる訳がない。

  御神酒の入った樽がいくつも用意され、夜になり焚き火が灯る。村人衆にも自由なまぐわいが許され、豊饒の祭は続く。

  とうとう舞台の床は抜け、その抜けた穴の中でなお龍神様は蛇神様に杭を打ちつけ続ける。

  蛇神様の女陰はもうすでに精で溢れて、ナカを突かれるたびに白濁が飛び散る。

  あああっ、ああああっ。

  快楽で気を失いそうになる蛇神様を叩き起こすかのように突き上げる。

  龍神様は御神酒の入った樽を口に咥える。

  ほれ、気付けじゃ。口を開けよ。

  蛇神様の口の上で、樽を噛み砕き、大量の酒を流し込む。

  ほあああっ。

  龍蛇を酔わせる妖しい酒に蛇神様はあてられてしまい、まるで退治される大蛇のように倒れ伏した。

  ほえ、りゅうじん、しゃま。

  とろとろになった蛇神様。

  それでも敬愛する龍神様をじいっと見つめるご様子は、誠に愛らしくあらせられる。

  ああしかし、ちかちかっ、と目に星が散って、かないませぬ。龍神様の御尊顔を、拝見しとうござりますのに。

  んん、目が眩んで辛いか。我が目を覚まさせてやろう。ほれ…

  龍神様は蛇神様のワレメに顔を近づけ、核(さね)を、舌で虐める。

  ああっ、あっ。

  雷のような強い性感に、目を見開く。

  龍神様はその一点を的確に舌で嬲り続け、着実に追い込んでいく。

  龍神さまっ、そのようにしつこくお舐めになられてはっ。

  蛇神様がどれほど身体をよじって御容赦を請うも、龍神様は決してお許しにはならない。

  なりませぬ、なりませぬ。

  蛇神様は悲鳴のような嬌声をお上げになる。

  堪えるでない、ここに出せ。

  蓋の開いた御神酒の樽。

  ああ、いく、いくいくっ。

  仰せのままに、樽の中に思い切り潮を吹いてしまった。

  はあっ、はあっ、龍神さま、なんといみじき仕打ち。あっ。あっ。

  ほほ、これこそ蛇酒じゃ。どれ…

  ああ龍神さまっ、なりませぬ。ああっ、たいへん、お恥ずかしう御座りまする…

  美しい女蛇が醸し出した、それはそれは馥郁たる淫酒。恥じらう蛇神様をよそに、龍神様はそれを口の中で転がすように楽しむ。

  それをずずずっ、と平らげると、やはり幾許かお昂りになられたようだ。

  蛇神よ、其方の住処で今少し致さぬか。

  ええ、いくらでも御付き添いいたします。

  蛇神様は再び硬くなり始めた龍神様のモノに、身体をするりと沿わせて微笑みなさる。

  龍神様は鼻息荒く、酒樽をいくつか尻尾で掻っさらい、乱れ交わる村人衆を差し置き、蛇神様を洞穴へと連れ込んで行かれたのであった。

  龍神様はその後三日三晩蛇神様と情を交わし、初春の朝日の中、天に帰っていったと言われる。

  龍神様の御寵愛に、身も心も潤した蛇神様のもと、穣り多き一年が始まった。