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らいくど うるぶす

  「ひぐっ、あぐぅっ、やっ、あぁ”っ!」

  顔を涙と鼻水でぐちゃぐちゃにしながら細身で頼りない人の青年は地面に両肘をつき、爪がはがれてしまうほどの強さで土を握りしめた。

  身に着けていた衣服はボロボロに。そしていくつもそこに血痕が付いている。周りに立ち込めるのは鉄の臭い。死の臭い。

  グゥゥゥゥ!!!

  そして聞こえる歓喜の唸り声。それを上げているのは異形のモノ。人の姿に似ている。しかし、人ではない。

  狼の頭。強靭な肉体にせり出たマズル。大きく伸びた尻尾。鋭い牙、爪。大きな三角形の耳。

  茶色の毛並み。それは今、深紅に汚れて。その表情は残酷に、残忍に。そして嬉しそうに。

  青年の体を抑えつけながら怒張を青年の中に押し入れながら腰をかくかくと動かす。

  「あ”っ、がっ、いぎぃっ…!むっ…あがぁっ!」

  青年は何とか苦痛と…その苦痛から逃れるために、脳が出している脳内麻薬から逃れようと必死に体をよじらせるが…異形のモノ、人狼の力に拒まれた。

  乗せられた体重は人の比ではない。逃れる術はない。

  グゥゥゥゥゥゥ!!

  人狼の唸り声は更に大きくなる。がぱぁ、と口を開くとドロドロと唾液と血が混ざった液体が青年の体を汚した。

  青年の肩に顔を近付ける。血生臭い吐息。獣臭い。死の臭いがする。恐怖に、青年は情けなく失禁した。しかしそれは仕方が無い事だろう。

  がぶ、と牙が食い込む。激痛が全身を駆け抜ける。このまま食い千切られるのか。周りに転がっている肉塊のように。

  しかし、牙はそれ以上食い込むことは無い。ただ血をにじませる程度に。それを何度も何度も繰り返され…全身に牙の痕が付く。

  人狼の腰の動きはどんどんと速まる。怒張が半分ほど抜かれたと思えば、更に奥へ。青年の奥深くへ。腹を膨らませるほどに。奥へ捻じ込まれる。

  もはや声にならない。ただただ声帯を震わせる事しか出来ず。声帯を抜けてきた空気は歪な悲鳴となる。

  ずぢゅんずちゅん、と雄を知らない雄穴が捲れ上がる。人狼の凶悪な逸物に耐え切れず裂けてしまったのだろうか。

  血が溢れ、粘液と混ざり、逸物によってかき混ぜられ、ピンク色の泡が青年と人狼の尻や股間を汚した。

  人狼は嬉しそうに何度も何度も腰を打ち付け、青年の体に噛みつく。

  青年は白目を剥き、全身を激しく痙攣させた。痛みから逃れるための脳内麻薬が、快楽物質を伴い。苦痛が快楽とすげ代わり始める。

  青年の失禁した肉棒が、徐々に勃起し始める。とろとろと粘液が溢れて。

  「ぉ”っ、ぉ”ぁ”っ、あ”ひぃ”っ!ひぎぃっ!むっ、あがっ、んぁぁぁ!」

  青年のその姿に、人狼は気を良くしたのだろう、青年の体を余計に強く。犯し始める。

  尻尾を青年の太腿に伸ばし、さわさわと撫で回す。また肩に噛みついて。

  ずどん、ずどん、と。地面を揺らしているのではないか、と思うほどに強くなる。肉の音。

  青年の耳に顔を近付け、舌で舐る。一方的な蹂躙に。

  「あ”っ、んぁ”っ、あ”あ”あ”あ”っ!!!!」

  青年は限界を迎えた。

  びゅるっ、びゅるっ、びゅぅぅっ!

  生命の危機に瀕した事で、限界まで濃くなった精液が青年の肉棒から溢れ出した。

  ぎゅっ、ぎゅぅっ、と雄穴が自然と締まり、腸内が蠢く。その感触に。

  グォォォォォ!!!

  人狼も限界を迎えた。無理矢理奥底まで捻じ込まれた逸物。その根元が膨らみ。

  びゅぐっ、びゅるるるっ、ぼびゅぅっ、びゅぅぅっ、どぼぶびゅぅぅぅっ!

  「~~~~~ッ!!!!」

  青年の腹を一気に膨らませる。それはまるで孕んでしまったのように。

  そして。青年の腹を膨らませてもなお射精は止まらず。開いた口から舌がはみ出て。青年の顔にだらり、と垂れる。

  雄穴から入り切ることの出来なかった、泥かと思うほど濃い。青年のモノよりもずっとずっと濃い精液が溢れ出す。

  腹を圧迫されて。押し込められて。青年の脳はショートする。正常な判断が出来ない。物を考えられない。

  しかし、終わらない。人狼の逸物がビクビクと震え。ぼごんっ、と根元が膨らむ。

  せり出した瘤は…青年の中へ。押し込まれていく。そう、相手を孕ませる。その為に、精液を零さないように。

  「ぉ”っ…♥」

  体内に入り込んだ瘤。その異常に。圧迫感に。青年の脳は。意識は。シャットダウンされた。

  [newpage]

  目を覚ます。

  そこは自分の家だった。見慣れた天井。見慣れた部屋。誰もいない。

  家族は。いつもなら穏やかに笑っていた家族は。いない。外に出かけているのだろうか。

  現実逃避だ。目を覚ます前の情景。それが夢であったら。ここに家族はいるはずだ。いない。それは。

  意味しているのは。

  一人になった。一人になってしまった。人狼に家族を殺された。一人生き残ってしまった。

  悲しい筈だ。悔しい筈だ。憎しみが湧く筈だ。だが。それらの感情は湧かない。

  代わりに来るのは。

  「ぐぅっ、あぐぁっ、うぐぅぅっ…!」

  夜になる。夜が来るたび。体が痛みに苛まれる。あの苦痛を。あの快楽を思い出してしまう。

  涙があふれる。体中についた牙の痕がどうしようもなく疼く。床に爪を突き立て。唾液を零してしまう。

  自身の体が変わりつつあった。

  全身の筋肉が隆起し始めた。うっすらと獣毛が全身を覆い始めていた。耳が大きくなった。

  犬歯を始めとする歯が、牙のように変わっていった。爪も鋭さ、丈夫さを増していた。

  その変化は、確実に青年を蝕む。

  まるで夜空に浮かぶ月と同じだ。三日月が、半月に変わるように。

  半月が、満月に変わるように。

  彼を取り巻く人々も。変わる。

  いや、変わっていないのかもしれない。もともと、そういうものだったのかもしれない。

  青年への視線が、態度が。冷たく、忌むべきものを見るように。

  青年を遠ざけようとする。

  昼の間は、人でいられた。…はたして人、なのだろうか。

  分からない。

  阻害される事も、拒絶される事も。きっと悲しく、苦しい筈だ。

  それなのに、何も感じない。ただ、そう思われているんだ、と。そう考えるだけ。

  それ以上何も湧いてこない。

  水面に映る、大きな三角形の耳と。歪に生えた牙と。鋭い瞳と。獣毛の生えかけた皮膚と。

  それに問いかけても。

  答えは出ない。

  月が満ちていく。優しく、冷たく、暖かく、心地よく、冷酷に。ただただ。

  満ちていく。

  [newpage]

  満月が煌々と輝く。

  青年は、体の奥底にマグマが燃えているような感覚を覚えていた。

  動かなくてはいけない程に熱く。燃え滾る。両足で走っていた。草原を。しかしいつしか、四つ脚で走っていた。

  何かに呼ばれるように。呼ばれている。求められている。

  半人半獣。さらにその半分。青年の体は、まだ人でも人狼でもない。そんな状態になっていた。唾液を飲み込む事すら煩わしい。

  満月に照らされるとその部分が燃えるようで。

  ちりちりと脳が焦げていく。

  訪れたのは、自分の家族が。大切な人が殺された。そして自分を壊された。あの場所。そこに居たのは

  グゥ『来てくれたか』ゥゥ

  人狼はただ唸っただけだ。だが、その意味が理解出来た。そうか。唸り声に意味があったのか。

  青年はそう思いながら。

  「…はい…」グゥ『来ました』ゥゥ…

  言葉と唸り声を同時に発した。

  あぁ。もう。いや、気が付いていた。

  あの時から、もう、戻れなくなっていた事。人ではいられなくなった事。

  人狼に犯された。精液を飲み干し。唾液を注ぎ込まれ。人としての組織が壊された。

  人狼は悲しそうな表情を浮かべながら…しかし嬉しそうに青年に近付く。

  グゥ『殺してしまうかと思った。』ゥゥ

  そして青年を抱きしめた。それは優しく。初めて出会った時。血塗れになっていた時からは考えられないほど。

  この手が家族を、大切な人を。人としての自分を殺したというのに。憎しみも、悲しみも湧かない。

  涙がこぼれた。それは、きっと。人として、最期の。

  ガゥ『すまなかった。』ゥゥ

  「何故…」ガゥ『謝るの』ゥ?

  クゥ『あの時、自分を抑えられなくて。壊してしまったと思ったから…』ゥン

  人狼の瞳は。鋭く、妖しく。青年を…半人狼を捉えて離さない。

  ガウ『俺は…お前が…好きになったんだ。』ガウ

  人と人狼。それは決して結ばれる事の無い恋。だから、人狼は。

  人狼は分かっている。自分が身勝手である事。餌である相手を好きになってしまった事。餌―人にも意志がある事。人を人狼に変える事。それが、好きになってしまった人の意に沿わない事。

  分かっている。

  それでも。激情が。抑えきれなかった。

  『謝っても、許されない。人には戻せない。俺を憎んでもいい。人狼になってから、俺を殺してもいい。だから…最期に…抱かせてくれないか?』

  人狼のまっすぐな言葉。唸り声。寂し気で、切なくて。

  半人狼は。人狼を抱きしめた。

  『いいよ、もう。あの時、人としての僕は死んだんだよ。死人は、誰も憎めないし、恨めない。貴方を憎む事、僕には出来ない。』

  『…俺の身勝手で…そうしたのに…?』

  『うん。だから…さ。』

  どくんどくんと、どうしようもなく熱く、早く、強い鼓動。それはきっと人狼のもの。これから自分を抱く雄の鼓動。

  そして、自分がこれから近付き、同じ存在になる、《人狼》の鼓動。

  『ほら、早く。僕を、殺して、愛して。』

  かぷ、と。囁き、人狼の肩に。半人狼は噛み付いた。うっすらと血が滲んで。舌に落ちる。

  甘い。あぁ、甘い。こんなにも、甘い。ごきごき、と。骨格が悲鳴を上げた。

  全身がどうしようもなく疼いて。視界が歪んでいく。けれど、それに対して、違和感を覚えない。自然に慣れていく。

  ぶちぶちと筋肉が千切れる音。

  『痛くないか?』

  その音が人狼の耳に届いたのだろう。人狼は半人狼の頭を撫でながら囁き。しかし怒張した逸物を擦りつける。

  半人狼はこくり、と頷いた。

  『大丈夫。』

  嘘をついた。痛い。本当は、痛い。けれど、その痛みは彼が人狼になるためのもの。産まれる痛み。なら。

  人狼に撫でられた頭。その後に、獣毛が生えそろっていく。草花が息吹くように。地面を覆い尽くすように。

  きっと僅かに生きている、人としての自分を。

  『さぁ。』

  『あぁ。』

  半人狼はその体から力を抜くと、人狼にもたれかかった。人狼はそれを受け止め、体を持ち上げる。

  がっしりと尻を掴み。撫で回す。

  半人狼は口を開き、人狼の首に噛みついた。血が噴き出して。二人を汚す。暖かい。熱い。甘い。

  人としての自分が、死んでいく。それなのに、こんなに。

  『はぁ…あっ…』

  どうしようもない幸福感が頭を満たしていく。理性も、知性も溶けていく。ただ体を流れる熱い血が心地よくて。

  尻ではない部分を撫でられた。それは、今まで生えていなかった。尻尾。

  まだ人狼のモノよりずっと、ずっと小さい。けれど、確実にそこにある。

  『可愛い。』

  人狼の言葉が染み込んでいく。

  半人狼は耳を動かして。笑う。

  『ありがとう。』

  ゆったりと。うっとりと。淫靡に、妖しく。満月が照らすこの場所で。

  人狼は。半人狼の雄穴へ。ゆっくりと。怒張した逸物を突き入れた。それは人であった彼を壊してしまった時と違い。

  酷く、優しい。酷く、もどかしい。

  爪が心臓へ突き立てられるように。完全に、死んでいく。

  産まれていく。

  『あっ、んぁっ、んぐぅっ…!』

  雄穴を割り拡げ、直腸を圧迫する逸物の感触に、半人狼は艶っぽい嬌声を上げた。

  目じりが下がって。とろとろとグロテスクに膨らんだ逸物から先走りが溢れ出し、血と混ざる。

  抱き着いた人狼の背中に爪を立てる。ぶしゅっ、と肉の裂ける感触が、爪を伝い、脳に届く。

  痺れるような快楽だ。肉を裂く。血管が千切れる。

  逸物がずぶずぶと突き進んで。あっという間に。腹を膨らませるほどの逸物が入りきる。

  『あっ…あはっ…はぁっ…』

  耳をくた、と畳み半人狼は震える声を上げた。全身の筋肉の隆起が止まらない。体が膨れ上がる。

  獣毛が更に増えていって。半人狼の体を包み込む。

  『ぐぅっ…!』

  人狼は腰を痙攣させながら顔をしかめる。しかしそれは苦痛から来るものでは決してない。

  行き過ぎた悦びが、人狼の全身を駆け巡っているせいだ。目の前の半人狼が。人だったものが。

  自分と同じ存在になることを受け入れ、自分と同じ存在に近付いているせいで。

  心地よく締め付けてくる雄穴が。直腸の感触が。全てが心地よいせいだ。

  睾丸が跳ねる度に半人狼の尻にぶつかり、べちべちと肉の音を響かせる。

  『入った…入っちゃった…ふふっ…』

  『動いて、いいか?』

  『うん。…前と違うね。あんなに激しくしたのに。あれのせいで死んじゃったのに。』

  半人狼の嘲るような。冗談めかしたような。そんな声に、人狼はうぅ、と尻尾を縮こまらせた。

  耳もしゅん、と切なそうに畳まれて。

  半人狼は人狼の背中にまた、爪を立てて。

  『だから…最期まで。ちゃんとして?貴方と同じ…人狼にしてよ。』

  『あぁ。』

  見つめ合う。血塗れの顔。マズル。舌。重ねて。

  絡ませる。互いの味を確かめ合う。びちょ、びちょ、と。泥のような唾液が垂れるほどに。

  人としての叫び声が。断末魔が遠く聞こえた。

  人狼としての叫び声が。産声が近く聞こえた。

  人狼はやがて。ゆるりと。腰を動かし始めた。

  ずるずる、とグロテスクな逸物が粘液でてらりと妖しく光る。

  ずぶずぶと抜き取った逸物を再び挿入していく。挿入された分だけ、押し出されるように半人狼は恍惚の息を吐いた。

  グゥゥゥゥ、と獣の唸り声。悦びの。歓喜の声。

  重なり合う。それは人狼の声?半人狼の声?

  混ざり合う。坩堝へ、高みへ、堕ちていく。

  尻尾を絡ませ合う。マズルを重ね、口腔内の粘膜を貪る。

  時折噛み合う。血が滴るほどに。粘液と混ざり合い、体へ入り込んでいく。吸収され、擦り込まれ。

  『あっ、ぐぁっ、あんっ、んぁっ、あっ、ぁ”っ…んぅぐぅっ…!』

  人狼のピストン運動に合わせ、半人狼はひたすらに喘ぐ。

  どぢゅんどぢゅんと肉同士がぶつかり合い、激しく粘液が飛び散った。

  前立腺を、腸壁を抉り上げる人狼の逸物は大きさを増していくばかりで。それに対応するように。

  腸壁は拡がり、蠢き。竿を、根元を締め付け、亀頭を撫で回す。

  グルグルと竿に絡みついた血管。そこに血液が流れる度に得も言われぬ幸福感が押し寄せ、人狼の腰を震わせる。

  腸液と先走りの混ざった液体が泡立ち、淫靡な臭いを立てる。

  密着した肉体。半人狼の体付きも、もはや人狼とほぼ大差なく。膨らんだ胸。太い腕。絡ませ。

  半人狼の逸物が互いの腹に挟まれ、擦れ。膨らみ。液体が溢れ、二人の毛並みを濡らして。

  我武者羅に互いを求めあい、貪り合い、喰い合う。

  肉の音と、呼吸と、唸り声が響き渡り。地面を揺らすかのような勢いで。

  『ぁっ、ぐぁっ、あぶぅっ、ぐぁっ、あぐぅぁぁぁ!』

  びくんっ、びくんっ、と。半人狼の体が跳ねた。

  口を大きく開き、唾液を大量に溢れさせ。そして。

  ォォォォォォォォンッ!!

  勇壮で。淫らで。畏怖を与えるに相応しい。そんな遠吠えが響く。

  びゅるっ、びゅぅぅっ、びゅるるっ、どぶっ、どぼぼっ!

  半人狼の逸物から大量の白濁液が溢れ出し、互いを白と赤のマーブル模様で彩り。そして。

  グォォォォォンッ!!!

  人狼も限界を迎え。半人狼の最奥まで逸物を捻じ込み、吼えた。

  体内に注ぎ込まれる、熱い種。液体。

  半人狼は、溺れていく。堕ちていく。高みへ。どこまでも。

  自分の体が、変質していくのが分かる。そう、彼と同じ。人狼へ。

  変わっていく。それが、嬉しい。

  涙がこぼれた。

  ぜぇ、ぜぇ、と呼吸を荒げ。しかし整え。

  互いをまっすぐに見つめ合い。どちらともなく笑うと。

  ゆっくりと。唇を重ねた。

  [newpage]

  「ねぇ。」

  血だまり。自分が作ったんだ。亡骸。自分が切り裂いた、人。餌。

  それを前に、唾液をだらだらと零しながら、しかし彼は彼に尋ねる。

  「なんだ?」

  「…僕、孕めるの?」

  ぽい、と腕を口に放り込む。あぁ、甘い。体に力が漲るようだ。罪悪感?なんだろう、それは。

  彼の言葉に、彼は顔を真っ赤にする。あー、と言葉を濁しながら…彼は頬を掻いた。

  「もし孕めるなら…さ。孕ませてよ。君の仔。」

  にっこりと笑顔を浮かべる。子供のように、無邪気に。

  全身を真っ赤に染めて。穢れを知らない。そんな笑顔で。

  だから。彼は、頷いた。自分が堕とした。そして、一緒に居てくれる。そんな彼が愛おしくて。狂おしくて。

  こんなにも、狂おしい。

  「…あぁ。」

  ぎゅう、と抱きしめて。唇を重ねて。

  甘いのは、人の血と、肉だけじゃない。彼が。彼が。

  甘い、甘い。

  いつまでも、こうして居られるように。

  二人は。満月の下で。

  ゆるり、と。尻尾を絡ませ合った。

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