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「ねぇねぇ、こっちこっち!」
明るい柴犬の少年の声に、朗らかな笑顔を浮かべながら狼は彼に近付いた。
静かな城の中庭。そこが彼らの居場所だ。
「マルク王子、そんなに慌てては転んでしまいますぞ。」
「大丈夫!転んでも、ガトーが助けてくれるでしょ?」
柴犬の少年―マルクは元気に笑い、狼―ガトーに向けて手を振る。
少々年季の入った鎧。そしてその下に隠れる精悍な顔。壮年の将軍。
まるで親子のような二人。走るマルクを歩いて追う。
と。マルクは足を地面に引っかけてしまい、その場にぼふっ、と倒れ込んでしまった。
「お、王子!?」
慌てて駆け寄るガトーだったが…マルクはすぐに立ち上がり、ぱんぱんと衣服に付いた汚れを払うとにっこりと笑った。
「大丈夫!全然痛くないよ!」
暖かな陽射しが彼の笑顔をより明るいものに変えて。
ガトーも微笑んだ。
「じぇねらる・おーだー。」
「ぐぁっ!!」
肉の千切れる音と、断末魔が部屋の中に響く。
隻眼の狼は血に塗れながら剣を振るう。
護衛を着けているという話は聞いていたが、大した腕前ではない。
「なっ…やめてくれっ…!」
大量に転がる死体を前に、男は腰を抜かし怯えた瞳で狼に声をあげた。
しかし、狼にはその声は届かない。
「恨みは無いんだが、仕事でな。…すまない。安心しろ、痛みを感じる前に殺してやる。」
剣を振りかぶる。何かを言おうとした男。
その言葉は肉塊となって叩き潰された。
頭を一撃。飛び散る脳漿と血液を全身で浴び。
狼は息を吐いた。依頼はこれで完了。
目の前に転がる死体に油を撒き、火を放つ。
肉の焼ける臭い。それを敏感な鼻で感じ取りながら狼は屋敷を後にした。
がやがやと賑やかな城下町。
そこを歩くのは賑やかさの中。狼は全身を血に染めたまま歩いていた。
目には大きな傷跡がつき、厳つい表情が更に恐ろしいものに変わっている。
身に着けた鎖帷子も、布で作られたブーツもぼろぼろ。
目の奥はひどく濁り、見る者を畏怖に貶める光を放っていた。
「…王子…」
しゃがれた声で彼は呟く。自分は、生かされているのだ。
酒場に入る。目的は飲むためではない。カウンターに真っ直ぐ向かうと、気のよさそうなマスターに彼は話しかけた。
「ウォッカを一杯。」
その一言に、マスターはぴくり、と眉を動かす。そして柔和な笑顔を浮かべたままワンショットグラスを狼の前に出した。
それを押しのけ、狼は続ける。
「グラスで。とびきりのをくれ。」
「…奥に入りな。」
笑顔を浮かべたまま、だが低い声でマスターは狼を店の奥へと招き入れた。
合言葉。狼の手は、汚れている。
あぁ、かくも簡単に世界は壊れてしまうものなのか。
業火に燃える城下町。悲鳴が聞こえる。断末魔が聞こえる。
「ぐぁぁぁぁぁっ!!」
右目に剣を突き立てられ、ガトーは苦悶の声をあげた。
「へへっ、将軍様もたいしたことねぇな。ま、奇襲には慣れてねぇってか?」
「ぐっ…!」
右目から溢れる血を抑えつけながらガトーは汚らしい笑みを浮かべるハイエナを睨みつけた。
剣に付いた液体をぺろり、と舐めとりハイエナはガトーの浮かべる表情にぞくぞくと背筋を震わせる。
「いいねぇ。そそるよその顔。たまんねぇなぁ。」
そしてハイエナは続けざまにガトーの身に着けていたボロボロの鎧を剥ぎ取る。
残されるのは簡素な鎖帷子に、ズボン。
「虐めたくなる。」
言い放ち、ハイエナはガトーの体に剣を突き立て…ずぶずぶと突き入れていく。
冷たく、熱い。鋭い痛みが剣の後に通り過ぎて行って。
「ガァァァァァァッ!!」
ガトーはやはり声を上げるしかなかった。
「はぁっ…はぁっ…!」
「おぉおぉ、血まみれだぜあんた。死んじまうかもなぁ。」
「…死ぬことなど、恐れる事ではない…!」
そう。この瞬間。まだ王子が生きている。他の王族たちも逃げ延びる事が出来たはずだ。
ならば、少しでも彼らが時間を稼げることが出来れば。自分がここで死ぬ意味も理由もある。
死よりも恐ろしいものは。
「だとよ。なぁ、どう思う?…王子様?」
その声にガトーは全身の毛を逆立てた。
まさか。いるはずがない。自分が、逃がした。真っ直ぐ、振り向かず逃げろと。何があっても生きてくれと。
そう告げたはずだ。
だが、現実というのは彼が思う以上に無残で、悲劇的で、残酷だ。
ハイエナが体を避けると、そこにいるのは。モズと、それに抱きかかえられるように―喉元にナイフを突き立てられた―マルク。
震える体で、視線で。ガトーを見つめる。
「貴様ぁ!!!」
立ち上がろうとするガトーにハイエナは静かにだが確実につぶやく。
「動くなよ。王子様、殺すぞ。」
「ッ…!」
「ガトー!」
声をあげるマルク。…ハイエナの言葉は恐らく本気。
ハイエナ達はあの王子を生かす事よりも。自分たちが楽しむことを優先している。
そうでなければわざわざここまで事を荒げないでも済んだはずだ。
「王子様ぁ。一つ俺と取り引きしねぇか?」
「と、取引…?」
「あぁ。とっても簡単だ。王子様が俺らの物になってくれよ。そうしたらこの将軍率いる他の連中の命だけは助けてやる。」
ハイエナの言葉にマルクは尻尾を縮めながらも、涙を堪えながらも真っ直ぐな瞳をハイエナに向けた。
「ほ、本当に?本当に、皆、助けてくれるの?僕が貴方達のところへ行けば…」
「勿論。」
「マルク王子!こいつらの言葉に耳を…ガァァァァァッ!!」
首筋に剣が沈んでいき、噴水のように血液が噴き出した。
地面を汚すその液体に。苦悶に歪むガトーの表情に。
「止めてッ!わかった!僕、行くから!それ以上、皆には何もしないで!!!」
「マルク…王子…やめっ…」
「いい子だ。」
少々乱暴に剣を抜き取ると、ハイエナはマルクの方へ近づいた。
王子が手に入れば、後は将軍たちがどうなろうと関係が無い。
「じゃあ王子様。いや、マルク。今からお前は俺達の物だ。」
「…はい。」
「ま、最後だ。将軍に言いたいことがあるなら言ってきな。」
どんっ、と背中を押され、マルクはふらふらとガトーに近付き…そして血だまりに転んだ。
びしゃ、と全身が真っ赤に汚れて。
「王子…私は…私は…!」
「ごめんね、ガトー。でも、絶対、生きてね。また、逢える。きっと。だから…ごめんね。痛いよね。」
「こんなの、痛くも何も…!王子、私は…!」
「はい、おしまい。いくぞ。」
手を引っ張り上げられるマルク。
連れていかれるその姿を見送る事しか出来ない。
ガトーの意識は血の沼に沈んでいった。
[newpage]
生き延びてしまった。いや、生かされてしまった。
今は、マルクに生かされた命を絶やさないように。マルクがどこかで生きていることを心のどこかで糧として。
泥水を啜ってでも生き延びる。それだけ。
それだけがガトーの生きる道だ。
酒場の裏に用意された《仕事場》は薄暗く、血の臭いと雄の臭いが立ち込めている。
依頼を終え、報酬を手に入れる。
金貨が大量に入った袋は、重たく、そして、血に塗れているように見えた。
「あっ…んっ…おにいさんっ…どう…一発…♪」
と、ガトーにすり寄ってくるのは獅子の少年だ。全裸に金貨の入った小さなバッグ。首輪。そして一発10Gと書かれた尻たぶ。
ガトーは何も応えず、少年の体を持ち上げると下着をずらし、勃起していた肉棒を露出させるとすぐさま獅子の少年の使い込まれ、今も精液を滴らせている雄穴へと肉棒を挿入した。
ずちゅずちゅと水の音を立てながら更に奥へと進んでいく。
「お”っ…おひぃっ…♪」
ぼこぼこと腹が凹凸を繰り返すほどに。獅子の少年が浮かべる笑みはいやらしく崩れていく。
片手で煙草を吸い、紫煙を吐き出す。そしてまた腰を動かし、少年の中をえぐる。
心地よく締め付ける腸壁。ごつごつと少年の前立腺を、そしてそこ以外に彼の好きな場所を責め立てて。
「あっ、おっ、ぉ”ぉ”♪おひぃっ、いくっ、いくぅっ♪めしゅいききひゃうぅぅ♪」
可愛らしい嬌声を上げ、獅子の少年は射精こそはしなかったもののびくんびくんと痙攣し、舌をはみ出させる。
びゅくびゅくと精液を注ぐと、ガトーは肉棒をずるっ、と抜き取った。
一度の射精でも満足しきっていない肉棒はいまだに硬さを保ち天を突いていた。
しかし、今欲しいのは快楽ではない。
「あむっ…んぶぅ…♪」
ガトーの股に顔を埋め、夢中で肉棒を啜る獅子の少年。
そんな彼の頭を撫でながらガトーは金貨をちらつかせた。
「…情報が欲しい。」
「あむっ…んぐっ…んっ…いいよ…♪今日はね、おにいさんに、耳寄りなお話。」
獅子の少年のバッグに金貨を入れて。
「毎度あり…♪」
聞いた話は一つ。あくまで噂だが、近々そのグループが行うであろう奴隷マーケットにレアな逸品が出される、というものだ。
レアな逸品。それはつまり、何かの血統や、そういったものの類だ。
もし、ありえるのなら。
ガトーはポケットに仕舞っていたロケットペンダントを取り出した。中には何も入っていない。
王子といつか写真を撮って。
そこに収めようとしていたその「いつか」は。来る前に、壊れてしまった。
ぎゅっ、と強く握りしめる。そしてガトーは顔を上げた。
現実を見つめる。奴隷マーケットは醜悪な笑みを浮かべ大金を準備する人々と、顔をしかめたくなる臭いに満たされていた。
「ぉっ…ぉひぃっ…♪」
そして呻き声にも似た嬌声と、にちょにちょという水の音。
それはこの薄暗く、しかしそれなりの広さの広場の至る処から聞こえてくる。
「ほほう、これはなかなか淫乱に育っておりますなぁ。」
腹がでっぷりと出た虎が満足気にそう言いながら、跪き虎の股間に顔を埋める猫の少年の頭をがっしりと掴んだ。
じゅぼじゅぼと乱雑に抜き差しされる肉棒からは先走りが溢れ、しかももう何度か射精しているのだろう、白く淫靡に光っていて。
そして猫の少年の喉を道具か何かのように扱う。
しかし猫の少年はそれに嫌がるようなそぶりを見せない。…いや、見せる事が出来ないのだろう。
虚ろな瞳で、口腔内に納まっている肉棒を反射的にしゃぶり、吸い上げ、扱きあげる。
何度も、何度もそうされたのだろう。
虎が腰を仰け反らせ。猫の少年の喉が膨らむ。ごぎゅごぎゅと音を立てて飲み込み。
「えへへへぇ…おちんぽじるぅ…んぐぅっ…」
「そうでしょう?元々淫売の素質はあったのでしょうね。少し育てたらこの通り。」
嘘をついている。ガトーはそう確信していた。
猫の少年。ぱっと見では分かりづらい箇所に大量の傷跡が遺っている。
反抗を重ね、傷つけられ、そしていつしか諦めてしまったのだろう。折れた心を取り戻すことは、一人では不可能に近い。
「気に入ったよ。いくらだ?私のペットにしてあげよう。」
「いつもお買い上げいただいているので…これぐらいで。」
指を数本折る商人。その額は、人としての価値には到底足らない金額。
露店に出された玩具のような値段。虎は頷き、懐から即座にその金額を出した。
「毎度ありがとうございます。…ところで、以前買っていかれたペット、いかがでしたか?」
「あぁ。飽きて家畜小屋に行かせたよ。今頃は他の奴隷の便器になっているのではないかな?」
「そうでしたか。」
吐き気のするような会話。一昔前の自分なら、この腰にぶら下げている剣で彼らを肉の塊に変えていたことだろう。
だが、今は出来ない。生きるために彼らと同じような人種から金を貰い、生きている今のガトーには。
何があっても生き延びる。
調教の果て、理性を失い壊れたように呻くだけの雄。誘うような恰好をし、尻を淫靡に振る雄。
穢れを知らない無垢な雄。共通しているのは彼らに、もう、人としての未来は無いという事。
右目が痛む。傷は治った。だが、痛みは消えない。
無意識のうちに右目を触っていたガトー。その耳に。醜悪な声が聞こえた。
「さぁさぁ、皆様、本日のサプライズ!…と、言いましてももうご存知の方もおらっしゃるかと思いますが…今日は特別な商品をご用意しております!」
それを皮切りに客たちはステージへと群がった。特別な商品。
手に入れる事が出来れば払った価値以上のものが得られるという事だ。
ガトーも同じようにそこに寄る。もしかしたら、いるのかもしれないと。
微かな期待。その後に訪れる虚無を知りながらも。
「それでは紹介させて頂きましょう!」
ステージに立つ狐がぱちん、と指を鳴らす。ステージを照らすスポットライトがふ、と消え。
ステージ袖から何かが出てくるのが気配で分かった。
熱い吐息とぴちょ、ぴちょ、と粘液の音。
消えていたスポットライトがつくと…ガトーは息を呑んだ。
ステージに立っていたのは狐と、全裸の柴犬。マルクに、よく似た。
耳には奴隷であることを示すタグ。
首輪をつけられ、ぶるぶると―おそらく快楽からだろうか―震える全身。
乳首やへそ、ペニスとあらゆるところにつけられたピアス。
虚ろな目付きではしたない表情を浮かべる柴犬。
「王…子…?」
ぽつり、と呟くガトーの声は客のがやがやとした声にかき消される。
何故これがレア物なのか。見た目にはおとなしく、従順な少年の性奴隷にしか見えない。
「こちらの商品、なんと亡国の王子となっております!名をマルク!もちろん調教済みですので、そのまま売春させてもよろしいですし、こちらを餌に他の王族への政治的プレッシャー、名声などのアピールも可能になるかと!」
狐の言葉に合点がいったようにおぉ、と客たちから声が上がって。
ガトーはぎりっ、と牙を食いしばる。
柴犬の少年―マルクはM字に脚を開き声を上げる観客たちに緩み切り黒ずんだ肛門を晒した。
ごぽっ、と腸液が溢れ、ペニスが可愛らしく天を突く。
「えへへぇ…僕の事、買ってくれたら、いっぱいいっぱいいいことしてあげるぅ…♪」
ひくひくと蠢く肛門。流れている涙は、果たして。
ガトーは血が出るほど強く強く手を握りしめ、目から紅い涙を流した。
少年の痴態が余りにも屈辱的で。
それに少しでも高揚してしまった自分自身が情けなくて。
「今回はオークション形式で販売させていただきます!まずは1000Gから!」
その声を皮切りに、観客たちは次々と値段を釣り上げていく。
4桁では収まらず。どんどん値段はつりあがって。
マルクは視線に犯されているように。表情をどんどんと崩していき、自らの肛門に自分の右手を捻じ込んだ。
難なく手首を飲み込んだ肛門。ぐぽぐぽと音を立てながら腸内を抉る。
更に左手で乳首についたピアスを少々乱暴にいじって。
「あっ、あんっ、あひゃっ♪まらぁ?んぁっ♪あひぃっ♪いくっ、いっちゃうぅぅ♪」
ぴゅるぴゅると薄い精液を吐き出し、マルクははぁはぁと舌をはみ出させ絶頂の余韻に浸る。
まざまざと見せつけられるその行為に。ガトーは紅い涙をぬぐった。
自分も汚れている。彼も汚れてしまった。しかし、生きているのだ。ならば。
5桁を超えた金額。ガトーは怒りや屈辱を堪え、声をあげる。
「俺が買う。20万だ。」
ざわざわっ、と観客たちにどよめきが広がる。
それだけの価値があの少年にはあるのだろうか。それも、あんな傭兵が?
ぽかん、とあっけに取られたような表情を浮かべる狐。
「どうした。まだ足りないか?他には居ないか?」
ガトーの凛とした声に、応える観客はおらず。
ずかずかとステージに上がりこむと、はしたなく自慰をしていたマルクを軽々と持ち上げた。
「ふぇ…?」
ふわり、と体が宙を浮く感覚に、マルクは首を傾げる。
「ちょ、ちょっとお客さん!」
「なんだ。いいだろう?私が王…いや、こいつを買ったんだ。金なら払う。信用ならないなら俺に見張りでもなんでもつければいい。」
威圧的にも思えるガトーの声と視線に、狐は身をすくませる。誰かと目配せをし、そしてはぁ、とため息を吐いた。
「分かりました。では支払いが終わるまで見張りをつけさせていただきます。」
「かまわん。」
そして足早にガトーはその場を後にした。
[newpage]
今すぐにでも泣き出してしまいそうだ。
情けない。そう思いながらガトーは家中の金品と現金を引っ張り出し、見張りに来ていた男達に渡した。
額面にして実に20万。出所は汚い。あぁ、汚れてしまったのだ。
「…確かに、確認した。」
「毎度あり。」
驚愕の表情を浮かべる彼らだが、渡すものは渡した。ガトーはきっ、と隻眼で睨みつける。
無言の圧。そそくさと立ち去っていく彼らの背中を見送ることもせず。
ガトーは家のドアを閉めた。
何が何だか分からない、というようなぽかんとした表情で椅子に座るマルク。その目は虚ろで、どこか遠くを、いや、どこも見ていないようだ。
「つぎのごしゅじんさま…あなた…?」
聞き覚えのある声なのに、全く違う声のようにも聞こえる。
ガトーは首を横に振り、マルクの前に膝を突いた。
「いや、違います。マルク王子。会いとうございました。」
「おう…じ…」
「はい。マルク王子、お迎えが遅くなってしまい、申し訳ありません。あの時生かしていただいた恩、私―ガトーの命に代えて、必ずお返しいたします。」
「ガ…トー…!」
少しずつ、マルクの目に光るが戻り始めた。
ガトーがマルクの手を取って、手の甲にキスをする。
ついばむように。瞬間。
「…ぁぁぁぁぁぁっ!!」
大声をあげて。大粒の涙を流して。マルクは少年のように。少年らしく。泣いた。
ガトーの胸元に跳び込んで。ガトーはそれを優しく受け入れた。
「王子…良くぞ…生きていてくださいました…!」
ぎゅう、と強く。離さないように強く。ガトーはマルクを抱きしめる。
その瞳に、熱い涙を浮かべて。
何も語らず。ただ抱きしめ合った。
二人は体を寄せ合いベッドに横になる。
ガトーの胸元でマルクは微笑む。
「ガトー…あったかい…」
ぎゅっ、とガトーを抱きしめると安心したような表情を浮かべマルクは呟いた。
ガトーもまた慈愛に満ちた表情でマルクの頭を撫でる。
こんなに安らいだ気持ちで横たわるのなんて、何年ぶりだろうか。
「私も暖かいです。」
「ん…ふぁ…」
小さな口を目いっぱいに開けて、マルクは欠伸をする。
移ってしまったのか、ガトーも同じようにあくびをして。笑い合った。
「…ありがとう…ガトー…」
「礼を言うのは私の方です。ありがとうございます…王子…」
静かな部屋の中で二人は。暗闇から訪れた微睡みに誘われた。
胸元に体温を確かに感じて。
[newpage]
じゅぽっ、じゅぽっ、とそれだけで卑猥だと判断できる音が響く。
下半身に走るのは確実な快楽。ぬくもり。
それは微睡みから元に戻るには十分すぎる刺激だった。
「はぁっ、はぁぁっ、あぶっ、じゅぶっ、んっ…」
ぐぽぐぽと肉の擦れる音。胸元に居たはずのマルクは居ない。
切なそうな鼻息と、布団の下で膨らみがびくびくと震えるのが見えた。
ガトーは布団をめくり上げる。ひんやりとした空気が露出した下半身を流れて。
夜目の利くガトーの目に映ったのは、淫らな光を瞳に宿し、しかし涙を流しながらガトーの肉棒をしっかりと咥え込むマルク。
口を離すと唾液と先走りの混じった液体がどろりと垂れる。
「やっ…やっ、見ないで…ッ!だめっ…あっ、おちんちん、ほひっ、あっ、ちがっ、やっ、ほしっ、おしりぐぽぐぽっ、やっ、嫌だッ、見ないでッ…違うのっ、欲しくなんて…あっ、せーえきっ、どびゅどびゅっ…!」
見せる表情は。言葉の節々から淫靡さを醸し出しているが、見られてはいけない物を見られてしまった子供のようで。
その一言で、ガトーはマルクの身に起きていた出来事を察する。
頭ではいけないと理解できていても、体が求めてしまうのだろう。熱く、白い欲望の塊を。
それだけ彼は奴隷として、道具として扱われ続けてきたのだろう。
「…王子、いや、マルク。大丈夫。何があっても、私…俺は、お前と一緒だ。」
この身も既に黒く染まっているのだ。堕ちるところまで、堕ちていこう。
何も恐れることなどない。何も。
ガトーはマルクが求めているであろう物を与える事にする。
ひょい、と軽々マルクを持ち上げるとガトーは彼の体を自分の腹部に乗せた。
上半身を起こし、マルクの顎を掴むとその唇を奪って。
「んっ…」
マルクの蕩けた声。息。ぴちゃぴちゃと唾液の交わる音。
縮こまっていたマルクの尻尾がやがてふるふると軽く振られ始め、ガトーの太腿を、肉棒を撫でた。
ぷぁ、と唇を離すとマルクははっはっ、と浅ましい呼吸をして、舌をはみ出させる。
「…欲しいッ…おちんちん、おしりにっ…!」
「あぁ。分かっている。」
ガトーは今までマルクの前では見せたことのない表情―欲望の色を混ぜた―でマルクの尻肉を掴み拡げた。
ごぽっ、と音が聞こえる。暖かい腸液がガトーの肉棒を更に濡らして。
天を突く肉棒をぴと、と雄穴に宛がい、にゅるにゅると鈴口で雄穴の感触を楽しむ。
蠢くそれは塞ぐものを求めるように。マルクの顔が更に淫らに歪んで。
「…ッ!」
ずぶぅっ!と一気に雄穴へと肉棒を挿入する。
それだけでマルクは遠吠えを上げ、びくんびくんと何度も体をびくつかせた。
ペニスからはどぶどぶと先走りが溢れガトーの腹部を汚す。
「ぉ”っ…ひぃっ…♪」
「どうだ?」
緩く腰を動かしながらガトーは優しく囁いた。
ごりゅっ、ごりゅっ、と腸壁を抉り。その度にマルクは声にならない喘ぎ声をあげる。
「少しずつがいい?一気にイきたい?」
肉棒を包み込む粘膜。じゅるじゅると液体を溢れさせ竿全体を心地よく扱きあげる。
腹が肉棒の形に膨れて。今までに抱いた雄や雌などと比べ物にもならない極上の…
心の奥底がズキリと痛んだ。腰が痺れるほどの快楽。
「一気に…イカせてっ…♪」
唾液がとろり、とマズルから垂れた。
ねだるような視線にガトーはただ一度、こくりと頷くとマルクの太腿へと指を這わせた。
そして。
ずるずると肉棒を抜き取ると、一気にマルクの前立腺を突き上げた。
どごっ、と音が鳴るほどの衝撃。それはマルクを絶頂に至らせるには十分すぎるほどのもので。
「~~~ッ!!!!」
天を仰ぎ、マルクはペニスから勢いよく精液を噴出させた。
量も濃さも、少年とは思えず。ゼリーにも近い。
ガトーの腹筋、胸部、マズルを汚して。それを舌で掬い上げ咀嚼する。
青臭い。雄の臭い。暗い部屋の中。淫靡な臭いが部屋を支配する。
脳の奥をチリチリと焦がして。何もかもが、どうでも良くなる。
マルクは脳内を満たす幸福感にただひたすら酔いしれる。
ガトーはマルクの為。そう自分に言い聞かせながら己の欲望をぶつける。
腸壁を抉り、前立腺を突き、脇腹を撫で回す。
その度にマルクは少年らしからぬ声で淫らに喘ぐ。
限界を超えてなお与えられる快楽に、尊厳を失う表情。
マルクは体をガトーに預け、ガトーの豊満な胸に舌を這わせた。
筋を。そしてその大きさに合わず小さな乳首を。ぺろぺろとまるでキャンディか何かを舐めるように。
ガトーは体を震わせながら、脇腹にやっていた手をマルクの胸へと伸ばす。
小さく、ほっそりとした胸。しかし大きく肥大化した乳首をこりこりと指先で弄り回した。
主従関係は逆転し。そう思っているのはガトーだけなのだろうか。
腰の動きはやがて激しさを増し、どちゅどちゅと肉のぶつかる音がどんどんと大きさを増していく。
その度に腸液が溢れ出し。
マルクは雌犬のように啼く。
肉棒が限界まで膨れ上がり、睾丸が持ち上がる。
解き放ちたい。この欲望を。根元に感じる熱を。この淫らな王子に。
しかしガトーはそれを限界まで堪え、腰を振りながらマルクの耳元で囁く。
「どうして欲しい?」
言葉が聞きたい。きっと、迷うことなく言うであろう言葉を。
堕ちていく。どこまでも。
マルクは崩れた表情のまま涙と唾液で顔をぐちゃぐちゃにしながら声をあげた。
「せーえき、全部っ、中にだしれぇっ!も、おがひぐなりゅぅぅぅ!!」
きゅうきゅうと肉棒を締め付ける雄穴が、更に強く締まった。
ガトーは待っていた、と言わんばかりに。肉棒を奥へ、奥へと突き入れ。
そして。
「うぉっ、ォォォォンッ!!」
遠吠えを上げた。
つぎの瞬間には。マルクは白目を剥き、陸に上がった魚のように体をガトーの上で跳ねさせた。
びゅぐびゅるるるっ、どぼぼっ、どぶびゅるるるっ!
巨砲とも言える肉棒から放たれる精液はやはりその見た目に違わず凄まじい勢いでマルクの中を満たしていく。
解放する快楽に酔いしれるガトー。その視線に映るのはもはや意識を失いかけている、マルク。
見た目で分かるほど腹が膨れ。しかしその表情は幸福に満たされているようだ。
長い射精が終わる。それでもまだガトーの肉棒は硬さを保ったままだ。
「…マルク。どうして欲しい?」
「もっろぉ…しゅるぅぅ…♪」
尻尾をぶんぶんと振り、壊れた言葉を放つ。
ガトーは精液に塗れたまま、再び腰を振り始めた。
歪んだ関係なのかもしれない。堕落した関係なのかもしれない。
それでも、二人は生きている。
「マルク。仕事の時間だ。」
大振りな剣を腰に収め、ガトーはマルクに告げた。
マルクはこく、と頷き小振りで細身なレイピアを手に持って。
「うん。今日は?」
「盗賊ギルドの討伐。生死を問わず。」
「分かった。」
「殺すことを躊躇うな。俺達は生きるぞ。」
「うん。分かってるよ。ガトー。いや…ご主人様。」
「ならいい。行くぞ。」
扉を開く。その先は暗闇。しかし、二人の目は輝いていて。
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