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天が風邪をひいた日

  「けほっ…けほっ…」

  収録が終わり楽屋に戻ると天が急に咳き込む。今日は朝から体調が悪そうで収録の間も我慢している様子だった。楽も龍も気が付いていたが天の性格を知っているためあえて何も言わなかった。

  「天!大丈夫??やっぱり体調悪かったんだね」

  「天!大丈夫か?」

  楽と龍が近寄ると天は体調不良を隠すように背を向けるが、さすった背中からは熱があるのが伝わってくる。何とかソファーに寝かせるがずっと苦しそうに息をしている。幸い今日の仕事はもう終わって明日も夕方からの仕事だ。

  「天…大丈夫?今日はもう上がりだし姉鷺さんに頼んで病院連れていってもらおうか」

  「そうだな。だいぶ辛そうだし」

  「…行かない」

  さっそく姉鷺に連絡を取ろうとしていた龍が天の言葉に手を止める。天は超がつくほど頑固で、特に体調不良の時は一人で抱え込むことも多かった。一緒に住んでいる九条は来週まで海外でレッスンの付き添いと聞いているため、一人で家に帰す訳にはいかない。

  「んなこと言って放っておいても良くならないだろ?子供みたいな抵抗するなよ」

  「行かない。子供じゃないし…。もう帰る」

  明らかにムスっとした表情で楽を睨みつける。苦しそうな声を出しながらソファーから起き上がろうとする天を龍が慌てて制す。

  「急に起き上がったら危ないよ。とりあえず俺、明日オフだし俺んちおいで?楽も来るだろ?」

  「ああ。俺は姉鷺に連絡した後買い物してから行くから先行っててくれ」

  そう言うと楽は楽屋を出ていった。

  「よし俺たちも行こうか」

  天に頭からタオルを被せて抱き上げる。天は体をよじって抵抗するが、がたいが良い龍には叶わない。これ以上は無駄だと思ったのか大人しくなった。廊下を移動中、スタッフに声をかけられたが天が疲れて寝てしまったと嘘をつきやり過ごす。タクシーが動き出すと天はすぐに寝てしまった。

  天はTRIGGERのセンターで常にファンのことを第一に考えている。プロ意識が高いのは事実だが、まだ18歳。楽や龍から見ればまだまだ子どもな部分もある。もっと頼ってくれていいのに。龍は天の寝顔を眺めながらそんなことを思っていた。家に到着し、再び天を抱き上げて寝室まで運ぶが起きる気配はない。布団をかけ楽が来るのを待つ。

  「ただいま。お邪魔します。天どうだ?」

  「おかえり。買い物ありがとう。今はぐっすり寝てるよ」

  「じゃあ今のうちにお粥でも作っておくか。薬も飲まねーといけないし」

  「そうだね」

  「ん…」

  天は目を覚ますとあたりを見回した。自分の家でも楽屋でもない。そういえば…龍の家に…。

  「楽、目を覚ましたみたいだよ。天、大丈夫?お粥作ったから食べて薬飲もうか」

  そう言うと天の体を起こして小分けにしたお粥を渡す。食べている隙に体温計を挟む。相変わらずだるそうではあるが、苦しそうな様子はない。お粥も全部とはいかないが八割食べ薬も飲みこんだ。

  「今日はもう寝た方がいいな。明日もこのままなら病院だからな」

  お椀を龍に渡すと天は何も言わずに寝てしまった。

  だが翌日、天の状態は悪化していた。熱も39度を超え苦しそうに呼吸をしている。朝ごはんも食べられそうにない。昨日飲んだ薬もあまり効いていないようだった。

  「病院行こうか。これじゃあ夕方の仕事も無理だろうし」

  天自身もこの体調では無理だと思ったのかベッドで不貞腐れている。龍の言葉もさっきから聞こえていないかのように無視している。

  「ったく、いつまで意地張ってんだよ。いいから病院行くぞ」

  痺れを切らした楽が天を抱き上げる。

  「ちょっと何するの。離してよ」

  天も負けじと言い返すが楽は相手にしていない。

  「俺はタクシー呼ぶから龍は姉鷺に説明して天のスケジュール調整してもらってくれ」

  「ああ、分かった。天、大人しくしてるんだよ」

  病院には予め事情を説明して裏口から入らせてもらった。医師が来るまで空いている診察室で待たせてもらう。さっきまで反抗的だった天は、相当しんどいのか楽に体を預けて眠ってしまった。無理に起こす必要はないとのことで、そのまま診察と点滴を済ませてもらった。ベッドに寝かせた天は普段ステージで見せる姿とはかけ離れていて儚く感じる。

  「こうやって見るとまだまだ子どもだよね」

  「もって頼ってくれてもいいのにな」

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