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「それでは、お世話になりました……」
「おう、御苦労だった」
館の主人に見送られてメイドだった老いた女性は涙を流して彼の執務室から出ていった。傍らの老執事が溜息をつく。
「彼女が最後の奉公人ですぞ、アルフレッド坊ちゃま」
「じいや、坊ちゃまはやめろ、もう酒も煙草も合法だ」
「わたくしにとっては御奉公させて頂いて以来何も変わってはおりません」
「解った解った、それにアニーには相場の三倍の退職金を払ったぞ」
「ですが、使用人を全員を雇い止めするのは如何なものかと……」
「俺はもう隠遁すると決めたんだ、財産だって生前贈与したし、後は清算迄にお前を楽にさせるだけ遺せるかだ」
坊ちゃまと呼ばれた男性――アルフレッドが椅子から立ち窓の外を見る。背丈は小さい。自身で成年であることを強調したが顔立ちも幼く見た目ではまるで子供だ。しかし、彼は既に妻を娶り子を成し孫まで居る。アルフレッドが大きく欠伸をする。その歯は鋭い、いや、犬歯が牙になっている。雲間から漏れた太陽に眼を細め一瞬、瞳孔が縦になった。人間では、ない。
視線の先、雲間の隙間に霊獣であるドラゴンが飛んでいく。もうすぐ、彼らの祭りが東方の国で行われるそうだ。アルフレッドが振返る。
「じいや、次の、最後のメイドが来なければまだしばらく続けてくれ、食事は店屋物になるが……」
「いえ、もう次の方の面接が決まっております、今から一時間後に」
「はぁ?」
アルフレッドが妙な声を上げる。執事が笑う。その手に光る液晶画面の携帯端末。
「便利ですよ」
「長生きするもんじゃあないなぁ、機械は嫌いだ」
一時間後、館の車止めに爆音が響いた。アルフレッドが驚愕する。
「何だアレは! 愚連隊か!?」
「約束の方ですよ。大型バイクでいらっしゃったようですね」
「人間に常識はないのか……」
「いえ、今回は人間ではなく坊ちゃまと同じ亜人、しかも獣人ですよ」
「獣人かぁ、人狼じゃないだろうな」
「いえ、それでは迎えに行きますので」
数分後、彼は面接相手を見上げて眩暈を感じていた。身の丈は八フィート程ある大女だ。しかし、権威たるものを象徴せねばとも覚えた。はち切れんばかりのむちむちの身体を覆うレザーのライダースーツに臀部から伸びる長い縞模様の白い尻尾。豊満な胸に張った尻、白く長い髪の中に白虎の顔がある。表情は読めない。アルフレッドが頬を引き攣らせながら問いかける。
「名前は……」
「……オーガスタ・レインバック」
「……何故、バイク乗りの、何だ、全身革服なんだ」
「……一張羅、メイド服はあるけどそれだと乗る時に危ない」
「帰っ」
「坊ちゃま、先ずは試しに一週間雇ってみては如何でしょうか」
執事の説得にアルフレッドは言葉を呑み込んだ。
◇ ◇ ◇
期限よりも長く一ヶ月、二ヶ月、三ヶ月とオーガスタはよく働いた。炊事、洗濯、身の回りの世話、客人のもてなし。特注の大きなメイド服はいつも綺麗でほこりもつかずほつれもなく分身でもしているかのように館のあちらこちらできびきびと動いている。
今日は応接室に二人、アルフレッドと彼の友人で金商人のイワノフ、里から下りて俗世に染まったエルフだ。オーガスタが紅茶を注いで茶菓子を置いて恭しく頭を下げる。
「……失礼致します」
それを見送ってイワノフが紅茶を啜る。
「よく気の利く子じゃないか」
「まあな、俺の眼の届かないところも素早く対応する。言葉の前に行動をしている。完璧だが……」
「美味いタルトだ」
「聞け」
「お前も食えよ」
イワノフのすすめにアルフレッドがタルトを頬張る。
「あむ、美味いな……それで、メイドとしては完璧だが前職が殺し屋だったのかと思う時がある」
「たとえば?」
「風呂場から出た瞬間、気配も感じさせず前に居て黙って身体をタオルで拭いてきた」
「フハッ! じじいかよ、ざまあないな」
思わず長い耳をぴこぴこと動かしてイワノフが笑う。
「お前だって、年齢だけ言えばよぼよぼの古エルフだろう。若造ぶりやがって」
不機嫌な顔で紅茶を啜るアルフレッド。
「いやあ、すまんすまん、それで夜伽は?」
アルフレッドが思わず噎せる。
「手前ぇ、いい加減にしやがれ」
「いや、前の奥さんと別れて五十年は経つだろう」
「人狼相手は辛かったんだよ、満月に毎回発情するし……」
遠い眼をする友人に対してタルトを食べ終えたイワノフが紙巻を取り出し火をつけて煙を吸う。紫煙を吐き出し紅茶を啜る。
「でも、あの子は白虎じゃないか」
「うーん」
「幾ら不老の吸血鬼でも性欲はあるんだろう、自分で扱いてるのか?」
「いや、まぁ、成りがこんなんだからな。娼館は断られるし、って何を言わせてる」
「すまんすまん」
◇ ◇ ◇
イワノフが帰り、館にはアルフレッドとオーガスタの二人。執事はぎっくり腰を起こし街の骨接ぎに向かった。食卓の長テーブルで分厚いステーキを食べるアルフレッド。傍らでオーガスタが待機している。
食べ終えてワインを傾ける。オーガスタが素手と鋭い爪でコルクを開けていたのには閉口したが執事がオープナーを渡してからは素直にそれを使っている。
「……旦那様」
「どうした」
オーガスタが呟いた。食事の時に口を挟むのは初めての事だ。
「……旦那様は吸血鬼、でございますね」
「そうだ」
「……血はお飲みにならないのですか?」
「いや、飲むぞ。お前は知らないだろうが寝室の鍵のかかったところに保冷庫がある。そこに冷蔵血液があって腹が減れば飲んでいる。飲まなくても肉を食えば代わりになるがな」
「……私の」
「うん?」
「……新鮮な血液をご所望であれば、私の血をどうぞ」
そう言ってオーガスタはメイド服の襟を少しあけて首元を見せた。
「……あほか、主従関係にかこつけて無理矢理吸うのは下衆中の下衆だ」
「……じゃあ、私から襲いますので今夜、御覚悟して下さいね」
「は」
「……失礼致します」
後に残されたアルフレッドは呆然とするしかなかった。
◇ ◇ ◇
アルフレッドが寝室の椅子に座り普段は喫わない煙草をふかしている。机に向かい事務作業。襲いに来ると言ったオーガスタに犯されるのだろうか、と年甲斐もなく不安になった。
正直なところ、とんでもない事を言ってきたのだからクビにすれば良い話なのだがそろそろ隠遁したいと思ったところに現れた有能メイドだった。最後の仕事が捗り携わっている会社も精算が近い。
「どうしたもんかな」
「……旦那様、お夜食をお持ち致しました」
「うわあっ!」
気が付けばオーガスタが背後に立ちこちらを覗き込んでいる。心臓が飛び出ていないかと口を押えた。
「……ベッドに行きますか?」
「お、お前な、夜伽は主人からも女中からも駄目なんだよ。それ以外は完璧なのに何でそこだけ抜けているんだよ!」
「……いいえ、夜伽ではありません」
「いやいや、もう聞かん、お前の話は」
オーガスタがアルフレッドのベッドに倒れ込む。大きな身体が沈み込み姿勢を変えて仰向けになる。メイド服をはだけさせて豊満な白い毛と縞模様の胸を晒す。その胸の先はツンと桃色の乳首が立っていた。スカートをたくし上げて黒のガーターベルトと黒い下着を見せる。太腿が眩しい。
「……夜食は私です。どうぞ、召し上がれ」
ごくり、と生唾を飲むアルフレッド。ぷつんと彼の中で何かが切れた。それは理性だ。
彼がオーガスタに覆い被さる。一気に服を脱いで裸になる。年齢だけは老齢なのだが身体も小さく見た目は若々しい、そしてその分身は包皮は剥けているものの勃起しても少々、劣等感を持った小ぶりの一物だった。
アルフレッドが大きな胸の上に跨る。そして反り返った一物を彼女の口の前に突き出す。
「しゃぶれるか」
「……はい、あむぅん、ちゅぱっ、ちゅるっ、ずぞっ、じゅずっ」
「おおぉっ」
何の躊躇もなく一物をしゃぶっていく。大きく分厚い舌が巧みに動きざらざらとしたネコ科の獣人特有の舌の感覚が痛痒くそして快楽に変わる。オーガスタが前屈みになりアルフレッドを抱きかかえる。まるで大人と子供だ。
「……れろおっ、ぴちゃ、じゅるぅんっ、ぷは、ちゅっ、れろれろ」
「ああっ、オーガスタ……お前、駄目だって、そんな、ああっ!」
「……じゅぞっ、じゅぞっ、じゅぞっ、ずずずずじゅるじゅるじゅるじゅる」
オーガスタがアルフレッドの尻を抱え上げて咽喉奥まで男根を呑み込む。やわらかな咽喉の肉と吸い上げる息でよりいっそう快楽が高まっていく。耐え切れない刺激に腰を引くにもがっしりと掴まれ身動きが取れないアルフレッドには早くも主導権はない。現在の主従関係は逆転し文字通り虎というネコのオーガスタが獲物をいたぶっている状態だ。
「あ、あぁ、イク……あ」
「……ん、んむ」
口内で暴発するように射精した一物から舌の上、口の奥へと精液が溢れて流れていく。ちゅうちゅうとオーガスタが頬を窄ませて吸う度にアルフレッドはびくびくと震えて痙攣する。オーガスタが上半身を起こす。転げ落ちないようにアルフレッドを抱き締める。視線を合わせてそして大きく口を開けた。牙の間に黄味がかった粘り気のある精液が垂れて舌と口の窪みには零れないように精液の池を作っている。それをじっくりと見せつけて口を閉じる。ごくり、と大きく咽喉を鳴らして呑み込む。そして、汚く息を吐いた。
「……げえっぷ。お見苦しいものを、失礼致しました」
「はぁあぁぁ、お前、凄いな……」
「……次は胸をお使い下さい、何の取柄もないものですが」
「いや、今はもう俺も訳が解らんからな、魅力的だ」
「……お褒めに預かり光栄です」
その豊満な胸は彼の顔よりも大きく巨大な魔石がそこに存在しているかのようだった。アルフレッドが顔を埋めると弾力があって毛に覆われた感触が非常に心地良い。最上級のもてなしであってもここ迄のものは味わえないであろう。あたたかでやわらかで遠い昔に忘れた母のぬくもりを思い出させる。思わず意識が遠くなった。
「……旦那様、しますよ?」
「え、ああ」
アルフレッドが身体を預けてその胸に一物が挟まる。先程、感じていたやわらかさに加えて両手からの圧力が足された事により敏感なそれは耐え難い快楽の波にもまれることになった。オーガスタが胸を擦って間の男の象徴に快楽の波を与えていく。固く膨張したそれがびくんびくんと脈打ち女性のあたたかさを感じ取っていく。このまま溶けて蕩けていきそうな錯覚も覚えさせるものだ。鼻息も荒くオーガスタが問い掛ける。
「……ふん、ふん、如何ですか旦那様」
「あ、あああ、すごい、すごいよぉ……」
最早、涎を垂らし威厳もへったくれもない状態の主だが、ただ快楽に身を任せる事がこれ程までに心地の良い事だったかと思考を放棄させていた。
そして、ゆっくりと玉から子種が生成され尿道を通り上がっていく、気が付けば彼は足を伸ばし背を弓なりにして己を放出していた。
胸の中で青臭い体液が溢れていく。珍しくオーガスタが微笑んだ。胸からアルフレッドを離してベッドにやさしく横たわらせると、最早、ぼろ雑巾のようになっている主人に覆い被さった。彼はもう視界に映る乱れた姿のオーガスタのなすがままになっていった。下着を脱いだ蜜壺は既に濡れそぼっておりたらりたらりと愛液を垂れ流している。大きな割れ目は中心の蜜壺がそこに収まる事が確定している男性器を今か今かと待ち構えているようだった。オーガスタが見下ろして口角を少しだけ上げた。
「……旦那様」
「あぁ……もうすきにしろ」
「……いけない事とは解っていますが」
「うん……」
「……好き、です」
姿勢を落として一気に一物が蜜壺の中に入っていった。
「……あぁぁぁあぁんっ」
オーガスタが首を反らせて甘い声を上げた。すぐに下を向いて荒い息で自身の胸を揉む。そして、前後に腰を動かした後、上下に腰を振る。肉襞が一物を逃がすまいと締め付けてくる。ざらざらとした秘所の突起から繰出される刺激にアルフレッドはただ顔を歪ませて涙を流して快楽を享受していた。
「……あぁんっ、あっ、ひゃうっ、旦那、さまぁっ、好き、すきですぅっ」
「あっ、あっ、ああっ」
互いに快楽を貪るだけの獣めいた雄と雌がこの空間を淫靡に濃密なものに変えていった。蒸れたまぐわいのにおいが鼻につくだろう。しかし、二人はその中心に居る。オーガスタが姿勢を低くして前屈みになる。そして大きな口からアルフレッドを舐めていく。ざらついた舌が普段の無表情の彼女からは想像も付かない乱れた動きを見せる。唾液に塗れ不快なにおいの筈なのにアルフレッドは笑っている。快楽の歯車は一気に回る。
「……ああっ! あっ! ああああぁああああああああああっ!!!!!」
獣の咆哮を上げてオーガスタが絶頂を迎える。同時に秘所の奥に精液が放出された。
◇ ◇ ◇
オーガスタが後から効果のある避妊薬を飲んだのを見てもう一度、興奮したアルフレッドはやり返そうとしたが、逆にからからになるまで搾り尽くされ犯された。冷蔵血液を飲みベッドに倒れた。
吸血鬼は汗をかかないというが、涎と愛液と精液でべとべとのアルフレッドはぼんやりと天井をみつめていた。それから脇で寝息を立てていた裸のオーガスタを振返った。彼女が眼を覚ます。
「……旦那様、眠たくはないですか」
「……まだ、夜食を食べてない」
「……どうぞ」
「……」
「……どうかしましたか」
「……眷属にもしないし、ただの夜食だからな」
「……どうぞ」
「……あむぅ」
◇ ◇ ◇
海に向かう道を大型バイクは爆音を立てて疾走していた。風を切り運転するのはライダースーツに身を包んだオーガスタだ。その大きな身体に合うように誂えたフルフェイスのヘルメットも特注品だ。後ろにはバンドで縛ったアルフレッドがヘルメットをがくがくと揺らせながら必死に掴まっていた。
「し、し、し、しぬ、しぬ……」
「……」
岬に着いた時にはアルフレッドは草むらに蹲り吐いていた。オーガスタが背中を摩る。
「……大丈夫ですか?」
「はぁ……はぁ……寿命が縮んだ……」
「……水筒の水です」
「すまんな」
落ち着いた二人が岬に建つ老舗のホテルに入る。アルフレッドは支配人が洟垂れ坊主からの馴染みだ。世話になった相手に隠遁生活前の最後の挨拶巡りの最終地としてここを選んだ。既に汽車で行けるところは済ませたがここで見る夕陽を旅の最後に見たかったというロマンチックな理由があった。オーガスタを雇ったタイミングと彼女がバイクで連れていくと言わなければもう少しマシにはなっただろうが。
従業員一同がお辞儀をし、すっかり老いた支配人が杖をついて出迎える。
「アルフレッド様、お久しゅうございます。新しい奥様……ですかね?」
「いや、最後のメイドだ。オーガスタという。ジョージ、お前も老けたな」
「あたくしも隠居ですよ、今日は飛びっきりの良い肉を仕入れましたので」
「血の滴るレアで、な。オーガスタの分も頼む。こいつは俺より喰うぞ」
「おやおや、アルフレッド様も変わりましたな」
楽な格好に着替えた二人が散策する。ホテルはさる著名な彫刻家がアトリエとして使い彼の諸作品が様々なところに並べられている。初期の生命の躍動感のある神話の神々の像から、スランプに陥っていた時の陰鬱な印象の邪悪な悪魔の像、晩年の抽象性に回帰した古の時代の偶像のような女性を象った像。
アルフレッドが時折、感嘆の溜息を洩らしながらじっくりと眺めていく。何度も見た筈だが新しい発見がある。傍らのオーガスタはぼんやりと見ている。アルフレッドが振返る。
「どうだ、お前はどう感じる?」
「……正直、よく解らないです。私は無学です、出来るのは家事ですから」
「うーん、そうかぁ」
「……でも、この像は素敵です」
「これか」
オーガスタの指差す先にあるのは磔刑にされた聖人が処刑台から外され聖母に抱かれる像だ。
「どう思う?」
「……私は宗教とか、解りませんが、この聖母様は悲哀に満ちたお顔ではなくて、よく耐えたね、頑張ったね、って慈愛に満ちた母親のお顔に見えます」
「ほぉ……聖母像はたいてい生命体を超越したものと捉えられるが……」
「……この、横に飾られている像も同じ構図」
「そうだな、彼の遺作だ。この宗教に帰依し、絶望し、最後に一筋の希望を見付けた頃のものだ。まるで土塊の人形だが一番評価されている。無垢なる魂の具現化だ」
「……抽象化された抱かれる人と微笑む人」
「屋上へ上ろう、そろそろ夕陽が沈む」
「……はい」
二人が屋上に出ると雲の合間から夕陽が水平線に沈んでいくところだった。それを目当てに他の宿泊客も愛を語りに集まっている。風は少し強い。他のカップルが一瞬、オーガスタを見上げた。しかし、彼らはすぐに自分たちの世界に入り口付けを交わす。
「ロマンチックじゃないなあ」
「……私たちもその一組では」
「そうだな」
二人は無言で明日に向かい眠りに就く夕陽をいつまでも眺めていた。
◇ ◇ ◇
牛一頭分の肉を喰らったかのような印象のディナーだったが、流石にそうでもなかった。
このホテルのスイートルームを貸切、二人はワインを傾ける。先日、アルフレッドがプレゼントした特注の大きなネグリジェ姿のオーガスタも上機嫌だ。バスローブ姿の彼が隣に座る。二人がグラスをテーブルに置く。オーガスタが膝の上にアルフレッドを寝そべらせてはだけた胸を揉ませる。オーガスタが微笑む。そして、ゆっくりと抱き上げて仰向けに寝かせた。彼が苦笑いをする。
「これから先の主導権はずっとお前になりそうだな」
「……御不満ですか?」
「いや、悪くはない」
薄い服を脱いだ二人がゆっくりと繋がる。濡れた膣内に肉棒が入っていく。慣れた筈の感覚だったがオーガスタは瞳を潤ませて舌を突き出す。舌先から涎が垂れる。
「……あ、あぁ、すごいです」
「俺の、粗末な、一物で感じてくれて、嬉しいよっ」
「……ああっ!」
突き上げられた彼女が一瞬、跳ねる。しかし、にやりと笑う。
「……私は、旦那様、アルフレッド様を満足させたい、です」
「初めて、名前で呼んだな」
「……好き、ですから」
ゆっくりと腰を回して上下させていく。膣内の肉襞がそこに挿入された男性を逃がすまいと意志を持つように締め付けて抜かれる動きに引き締めて押される動きに絡んでいく。そこに伝わるのは熱量を伴った遺伝子の螺旋に刻まれた快楽だ。
「……あぁぁんっ、ああ、ひゃうっ、んあっ、おっ、おっ」
「ああっ! く、すっごい、今日は、いち、だんっ、と……」
いつもと違うオーガスタの乱れっぷりにアルフレッドは暴発しないように耐えるのが精一杯だった。結合部だけではない、上から降る吐息のにおい、肌に触れる白虎の毛のやわらかさ、この空間に存在する濃密な男と女が作り出す性の狂気。
オーガスタが胸を揺らす、既に顔は普段の静かな佇まいが吹き飛んだ獣である。
「……アルフレッド様、好きです、すきです、すきれしゅ、らいしゅき……」
「俺もだよ……」
「……あぁぁあぁあああぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
雄叫びを上げたオーガスタが絶頂を迎え、それと同時にアルフレッドも精を放出した。
◇ ◇ ◇
応接室には二人、館の主人の吸血鬼アルフレッドと金商人のエルフのイワノフだ。
「美味いロールケーキだ」
「美味い筈だ、俺とオーガスタが一緒に作った」
「フハッ! アルフレッド、お前もとうとう菓子屋に転職か」
「それも良いかも知れんな」
「……冗談のつもりだったんだがな、お前も変わったな」
「まあ、近い内に隠遁生活さ、そしたらオーガスタとのんびり暮らしたい、貯えがなくなりゃその時さ」
「……有難いお言葉です」
「うわあっ! 居るなら声をかけろ」
「……じいや様からの御葉書です」
「お前の元の傳役か、リタイアしたんだったな」
「そうだ。何々、『ラーメン屋を始めました』、そうか……腰が悪い筈なんだがな」
「オーガスタ、キミはアルフレッドの事をどう思う」
「……いつかは本当の旦那様」
「照れるな」
「はあ……お幸せに、だな」
「……ぶい」
ピースサインをして恭しく頭を下げてオーガスタが応接室から出ていった。
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