お嬢様部活動報告記録~お馬さんになってその後~

  ☆☆☆

  花山院華音の自室は、以前は簡素な和室であったのだが今は違う。

  可愛らしいパステルカラーを基調とした家具が配置されており、彼女の今の外見通りの乙女チックな雰囲気となっていた。

  ベッドに置かれたクッションの上で寛いでいる彼女の視線の先には大きな姿見があり、そこには自分の姿が映し出されていた。

  美しいブロンドヘアを靡かせながら優雅に足を組むその姿は、まるで一枚の絵画のように美しく、生命を吹き入れられた象牙の彫刻のようでもあった。

  しかしじっとして居られず脚を組み換え、腕を頭の後ろで組んでみたりする度に揺れる髪が気になるのか時折手で押さえたり梳いたりを繰り返している。

  そんな仕草をしているうちに、隣にちょこんと腰かける少年と視線が交差してしまいそうになり、慌てて視線を逸らすことになった。

  (はぁ……なんでこんなに緊張しちゃうんだろ……)

  心臓はバクバクと音を立てており身体中を流れる血液の音さえも聞こえてくるようだった。

  横目でちらりと見ると彼もどこか落ち着きのない様子だった。視線もキョロキョロとしており、明らかに挙動不審である。

  この、何とも言えない間。

  しかしこれは、もしかしたら良い兆候なのではないかと華音は思いさえしていた。

  まるで『普通の』初々しい男女のようなやり取りではないか。

  このまま何もしなければ進展しない事は明白だった。だからここは自分がリードしなければならないのだと考え、意を決して口を開いた。

  「あの、薫くん……」

  「……なに?」

  緊張した面持ちで返事をする彼に微笑みながら続ける。

  「この部屋で昔よく遊んだよね。和室から模様替えしちゃったけど……どう思う?」

  思えば幼い頃はこの部屋にもよく遊びに来ていたものだ。その頃の思い出話に花を咲かせるのも悪くないと思ったのである。

  それに何より、今の自分を見て欲しいという気持ちが強かったのだ。だからこそこうして誘ってみたわけだが、果たして彼はどんな反応をしてくれるのだろうか?期待半分不安半分と言った気持ちで返事を待った。

  「……うん、とっても可愛いと思うよ」

  少し考えた後に返ってきた言葉は、想像していたよりもずっとストレートなものだった。

  その言葉に嬉しくなってつい口元を緩めてしまったが、すぐに気を引き締め直して言葉を続ける事にした。

  「サリーになってた時にね、ロクサーヌの幽霊に会ったの。薫くんのこと心配してたよ?」

  その言葉に、彼の肩がぴくりと震えたのが分かった。

  「ロクサーヌは……もう居ないんだね」

  寂しそうに呟く彼を見て胸が締め付けられる思いがしたが、それでも話を続けることにした。ここで言わなければきっと後悔することになるだろうと思ったのだ。

  「私ね、本当はあの日、サリーじゃなくてロクサーヌとしてあなたに会えればよかったんじゃないかって今でも想ってしまうの……だってそうすれば──」

  そこまで言って口を噤むと、彼が不思議そうに顔を覗き込んできたので思わず顔を逸らしてしまった。そしてそのまま言葉を紡ぐことにする。

  「──そうしたらきっと、いや、絶対愛してくれるんじゃないかなって……そう思った」

  妖しい後輩の魔女に縋ってまで手に入れたかったものは、『花山院華音』として許婚の愛を独占することではなく、全く別な何かに成り代わってまでも『藤平薫』に愛される事だったのかもしれない。

  「で、でも。でもね!ぺとらに恋のおまじないの薬を飲んだらまさか。お馬さんになっちゃうだなんて私も思いもしなかったなあ~!あはは……」

  誤魔化すようにそう言って笑うと、彼も釣られたように微笑んだように見えた。しかしその表情からは複雑な感情が見て取れるような気がした。

  「……異常だと思いますよね。ぼく自身そう思ってますから……」

  そう言うと黙り込んでしまった彼を前に、私は言うべきかどうか迷っていた言葉を口にすることにした。このままではいけない気がしたからだ。

  「……ううん、そんなことないよ。私が『サリー』になっても、私は薫くんのこと好きなままだったもん……」

  そう言って微笑む私に、彼もまた微笑んでくれたもののその表情はやはりどこかぎこちないものであった。

  (やっぱり、このままじゃダメ……!)

  そう思うと居ても立ってもいられなくなり、思わず立ち上がって彼の手を取った。突然のことに驚いたのか目を丸くしてこちらを見つめてくる彼と目が合い恥ずかしくなるが、勇気を出して口を開く。

  「あのね?私の名前を言って」

  突然の質問に困惑した様子を見せたが、やがてゆっくりと頷いた。それを見てホッと胸を撫で下ろすと、改めて名乗った後で質問を重ねた。

  「それじゃあ、教えて?あなたの口から聞きたいの」

  上目遣いで見つめるその瞳に映る彼の顔は困惑の色を隠しきれていないように思えた。しかしそれも無理はない事だろう。いきなりそんな事を言われても困ってしまうのは当然だろうと思う。

  しばらく逡巡した後で、彼はおずおずと答えてくれたのだった。

  「えっと……んっと……うん、華音ちゃん?」

  華音は、その名前を聞いた瞬間に喜びに打ち震えていた。その嬉しさたるや筆舌に尽くし難いほどであったが、彼女はそれをぐっと堪えて言葉を続けた。

  「……そっちじゃなくて、ね?ほら……」

  華音はそこで言葉を区切ると彼の耳元に顔を寄せて囁いた。その距離が近い事にどぎまぎしながらも何とか平静を装っていると、今度は逆に耳元で囁かれてしまいビクッと震えてしまう羽目になった。

  彼女はそんな彼の反応を楽しむかのようにクスクスと笑うと、再び耳元で囁くように言った。

  「ねぇ、呼んでみて……?」

  その言葉に応えるかのように彼はゴクリと唾を飲み込むと小さく深呼吸をしてから答えた。

  「さ、サリー……!」

  全身が打ち震えるような興奮と共に胸の奥底から湧き上がってくる衝動に駆られるかのような小さな叫びだったが、華音にはしっかりと伝わったようだ。

  途端に心臓が熱く脈打つような感覚に襲われたかと思うと、身体の奥底から何かが込み上げてきて来るのを感じた──瞬間、身体が熱くなり始めたかと思うと変化が始まった。

  全身から真っ白な毛が生い茂り始め、骨格も変化し始めているのが分かる。筋肉組織も変質しているようで力が入らない上に思うように動かせない。

  指先などはもはや完全に蹄になっており、鏡に映った自分の姿を見るとまさに馬のそれであった。

  (あぁ……ついにこの時が来た……)

  自分の身体の変化に戸惑いながらも、同時に言いようのない高揚感に包まれていることにも気付いていた。

  今この瞬間こそが待ち望んでいた時なのだと思うと心が躍るのを抑えられなかった。

  一方、隣にいる少年はと言うと呆然としながらも、変化し始めた私をまじまじと見つめていた。その視線はまるで珍しいものを見るかのようでもあり、またどこか懐かしいものでも見るかのようでもあった。

  「すごい……本当にサリーだ……」

  首が長く伸びていく感覚に違和感を感じつつも、それを悟られないように平然とした態度を保ったまま会話を続けた。

  「ふふ、そうですのよ?私は正真正銘、薫くんが愛してくれたサリーなんですのよっ!」

  思わずオフの時にまでお嬢様口調が出てしまった、というより馬の姿にも関わらず声が出た事に驚きつつ、そんな事はどうでもよかった。

  めきめきと身体が大きくなっていく感覚はあるが、痛みは全くと言っていいほど感じないし苦しさもない。むしろ快感に近いものがあるくらいだ。

  彼が人間でなく馬に恋したのも無理はないと思える位、この四足の姿は美しさを秘めていた。

  「やっぱり綺麗だ……」

  不意に彼が呟いた一言にドキリとすると同時に、嬉しい気持ちでいっぱいになった。それはまるで自分自身が褒められたような気分だったせいかもしれない。

  (あぁ……なんて幸せな気分なんでしょう……!)

  今まで感じたことのない幸福感が全身を駆け巡っているようだった。

  遥か眼下の彼の瞳を見つめながら思う。

  (もっともっと私を見て欲しいですわ……もっと、もっと……)

  そんな想いを込めて見つめ返すと、彼もそれに応えるようにじっと見つめ返してきた。

  「そんなに熱い眼差しで見られると照れてしまいますわ」

  そんな軽口を叩きながらも身体にも心にも何処にも余裕はなかった。

  「サリーはその口調でいいの?それとも、『華音ちゃん』恥ずかしかったり……?」

  彼の言葉を受けてハッと我に帰ると、慌てて咳払いをして誤魔化してから答える事にした。

  「……コホンッ!そ、そうですわねっ!……恥ずかしいから、お嬢様モードのままでいきますわっ!」

  馬と化した華音の巨体が小さな少年を押し潰さないように慎重に跨ると、キングサイズのベッドがギシッと音を立てて軋んだ。その音を聞いてこれから行われるであろう行為を想像してしまい、心臓の音がより一層高鳴るのを感じた。

  (いよいよ……なのね……!)

  期待と緊張が入り混じった不思議な気持ちになりながら待っていると、やがて彼が口を開いた。

  「ねえ、サリー……?ぼくのこと、好きって言って欲しいな……」

  その言葉を聞いた途端、顔が熱くなるのが分かった。心臓の鼓動が激しくなり呼吸が荒くなるのを感じる。頭が真っ白になり何も考えられない状態だったが、それでも必死に言葉を紡いだ。

  「ええ、好きですわよ!」

  その瞬間、自分でも信じられない程にすんなりと答えることが出来たのは恐らく本能のせいだったのだろうと思う。

  もう我慢出来ないとばかりに身体を摺り寄せると、鼻にかかった甘い吐息を漏らしながら首筋に顔を埋めた。すると何とも言えない良い香りが鼻腔を通り抜けていき、それだけで絶頂を迎えてしまいそうな程の心地良さにうっとりとしてしまう程であった。

  人間の数百倍も鋭敏な嗅覚は相手の感情の変化さえも感じ取ることが出来るため、今の状態では特に強く感じてしまうのだ。

  (ああ……いい匂いですわぁ……♡それにとっても柔らかい……)

  首筋をぺろりと舐めるとしょっぱい味が口の中に広がり、それがまた堪らないくらいに興奮する要因となった。夢中になって何度も繰り返していると、彼がくすぐったそうに身を捩ったのが見えたので一旦止めることにした。

  名残惜しかったが仕方がないと思い顔を上げると、そこには顔を真っ赤に染め上げた少年が恥ずかしそうに俯いている姿があった。

  か細く華奢で頼りないその姿を見ていると守ってあげたくなるような気持ちになる反面、滅茶苦茶にしてやりたいという嗜虐的な欲求に駆られる自分が居たことに驚くしかなかった。

  人間の姿の華音にさえ軽く組み敷かれてもおかしくはないと言うのに、この絶対的な体格差では抵抗すら出来るはずもない。

  牛馬は人間が簡単に壊れてしまう弱い動物であると理解しているが故に、加減して接しなければならないという枷が働くのだろう。

  だが今の私にとってはそんな理性は存在しないも同然だった。

  体重差で言えば十倍以上、サリーが少しでも重心を崩せばそのまま押し潰されて死んでしまうだろうと思われる程の差があるのだ。

  (あぁ……食べてしまいたいくらい……!)

  食欲にも似た欲望に支配されつつあったその時、彼が何かを言おうとしていることに気付いた華音は慌てて耳を傾けることにした。

  気持ちを落ち着かせるために深呼吸をしてからもう一度向き直ると、意を決して口を開く彼の姿があった。

  「ぼくも好きだよ!だから……その……」

  そこまで言うと顔を真っ赤にして黙り込んでしまったのを見てピンときた私は、彼の言わんとしていることを察して微笑んだ。そしてゆっくりと顔を近づけると耳元で囁いたのだった。

  「分かっておりますわよ?キスして欲しいんですわよね?」

  そう言うと彼は耳まで真っ赤になってしまったが、こくりと小さく首を縦に振ってくれたのを確認すると早速行動に移す事にした。

  まずは唇を重ねるだけの軽い口づけを交わした後で、舌先を伸ばして唇の間をこじ開けるようにして侵入させると歯茎や上顎を舐め回していく。

  長く太い舌は器用に動き回り、あっという間に口内を征服してしまっていた。舌を絡ませたり吸い上げたりする度にぴちゃぴちゃと卑猥な音が響き渡る中、彼はされるがままになっていたのだがやがて息が苦しくなったのか顔を背けようとしたところでようやく解放した。

  ぷはっと息を吐き出した彼の顔はすっかり蕩け、口の端からはだらしなく涎を垂らしている有様だった。それを見ただけで背筋がゾクゾクしてくるほどの興奮を覚えずにはいられない。

  (可愛いですわ……とっても美味しそう♡)

  それに彼の股間の膨らみが華音の鼠径部に出来た乳房に喰いこむかのように当たっており、その存在を主張しているのが感じられた。

  身体を前後に揺すれば擦れる感触が気持ちいいらしく、時折ビクッと震えているのが分かる。その様子を見ているうちに自然と笑みが溢れてきた。

  「薫くんの、ズボン越しでもわかるくらいとっても熱くて硬いんですわね♡ぴくぴくわたくしのお胸に当たってますわよ♡」

  そう言ってわざと押し付けるように腰を動かしてやると、それに合わせてビクビクと反応するのが伝わってきた。

  その度にくぐもった声が聞こえてくるのでとても楽しい気分になる。

  このままでは弾けてしまいそうだ。いつの間にか身体に回された腕が必死にしがみ付いてきて離れられない状態にさせられてしまっていることに気付くと、ますます気分が高揚してきたのがわかった。

  「履物が無ければ直接触れて愛して差し上げられるのですけれど……残念ですわねっ♡」

  そう言いながら動きをゆっくりと止めに掛かると、途端に寂しそうな表情を浮かべ始めたのが分かった。そんな彼の様子を見てクスリと笑うと耳元に口を寄せて囁くように言った。

  「大丈夫、すぐに続きをしてあげますわ」

  それを聞いた瞬間、期待に満ちた目で見つめられたので思わず笑みをこぼしてしまった。どうやらこの少年は虐められると喜ぶタイプらしい。

  唇でシャツのボタンを一つずつ外していき胸元を開くと、露わになったピンク色の乳首を口に含んで舌で転がしてやると甘い声が漏れ聞こえてきた。

  無駄な脂肪の一切ない、ほっそりとした胸板にはうっすらと肋骨が浮き出ている。その華奢な身体つきとは裏腹に、ズボン越しに存在を主張するペニスは目を見張るものがあった。

  (あらあら……こんなに大きくしてしまって……いけない子ですわね♡)

  そんな事を考えるだけで下腹部の奥の方がキュンとしてきてしまうのだから不思議だ。無意識のうちに内腿を擦り合わせてしまい、愛液が溢れ出てくるのを感じた。

  人間の発情期は一年中であるが、姿が馬になってもそれは変わらないらしい。

  ぺとらの薬の仕様か、華音に耐性が付いてきているかは不明であったが、どちらにせよ好都合であった。

  「自分で脱いで、見せてくださいまし♪」

  そう言うと彼はおずおずといった様子でベルトを外し始めたので、その様子をじっと眺めていた。カチャカチャという金属音だけが響き渡り、やけに大きく感じられるその音を聞きながら待つこと数分、ついに待ち望んでいた時が訪れたのである。

  下着ごと一気にずり下ろすとぷるんと飛び出してきたソレを見た瞬間、身体中を駆け巡る衝動を抑えることが出来なかった。

  今すぐむしゃぶりついてしまいたくなる気持ちを抑えつつ、なんとか平静を装って声を掛けることにした。

  「ふふっ、ちゃんと脱げましたわね♪偉いですわ」

  褒められて嬉しかったのか、頬を赤らめながら俯く仕草はとても可愛らしく思えた。しかし次の瞬間には何かを決意したような表情に変わり、こちらをじっと見つめ返してきたかと思うとおもむろに手を伸ばしてきたのだ。

  (えっ!?)

  予想外の出来事に驚きつつも黙って見ていると、そっと優しく頭を撫でられた後にぎゅっと抱きしめられた。

  突然の事に動揺していると耳元で囁かれたのだ。

  「ありがとう、サリー。大好き……」

  その言葉を聞いた途端、胸の奥底から熱いものが込み上げてくるような感覚に襲われた。それと同時に全身の力が抜けていくような錯覚を覚えたが何とか踏みとどまる。

  しばらくそうしていたが不意に我に帰ると慌てて彼を引き離してから言った。

  「つっ続きをいたしますわよっ!」

  慌てて彼にのしかかりつつ、再び胸の谷間に挟み込む形で肉棒を挟み込んだ。今度は最初から激しく動いていくことにする。上下に動かすたびに包皮から亀頭の先っぽが見え隠れするのがなんともいやらしい光景だった。

  興味深々といった様子の華音は鼻息荒くしながら一心不乱に奉仕を続ける。最初はぎこちなかった動きも次第にスムーズになっていき、リズミカルな音が響き渡るようになっていった。

  人間の姿の華音の胸も豊かなものであったが、サリーの肉体のそれは乳牛のそれに近いものがある。

  走ればゆさゆさと揺れ、跳ねればばるんばるんと揺れる程の大きさを誇る二つの膨らみは、まさに圧巻としか言いようがない代物であった。

  馬の肉体に似つかわしくないそれに華音自身も困惑を隠せなかったが、ああ成程。この為に変化したのかと納得すると同時に納得してしまった自分に呆れ果てたものだ。

  そんな巨大な乳房によって押し潰された少年のモノはまるで虫ピンで止められた昆虫のように身動きが取れなくなっていたのだ。

  もはや完全に固定されてしまっており逃げることは叶わない状況に陥っていたとも言えるかもしれない。

  「こんなにおっきなおっぱいが好きなのでしたらわたくし、牝牛にでもなった方が薫くんを喜ばせることができたかもしれませんわね♪」

  冗談交じりにそんなことを言ってみると、彼は慌てた様子で否定の言葉を口にした。

  「そ、そんなことないよ!ぼくは……その、華音ちゃ……サリーがどんな姿でも好きだし……えっと、とにかくサリーが大好きだよっ!!」

  その言葉を聞いた瞬間、全身がかぁっと熱くなるのを感じた。心臓がバクバクと音を立てているのがはっきりと分かる程に緊張しているのが分かった。子宮が熱くなってくる感覚に襲われると共に身体が疼いてきて仕方がないといった状態だったのだ。

  彼の視点からでは見えない彼女の陰部は物欲しげにヒクついていて、今にも溢れ出しそうな程の蜜を湛えていた。

  蹄と化した自分の手足では慰める事も出来ない。

  あるとすれば鼠径の谷間に埋まったままになっている彼のオスの象徴でしか鎮められる方法は無い。

  それでも尚胸での愛撫を止めることなど出来なかった。

  乳房全体で彼の下半身を圧し潰すたびに乳頭の先端からはぴゅっ、ぴゅっと母乳が飛び散り、辺り一面に飛び散っていくのが見えた。

  これが魔法の薬による効果なのか、彼の願望なのか、華音の溢れた母性

  本能が引き起こしたものなのかは分からなかったが、そんなことはどうでも良かったのだ。

  今はただ目の前の少年を愛したいという気持ちでいっぱいだった。

  気を抜いて少しでも加減を誤れば潰してしまいかねない状況だと言うのに、彼女は夢中で奉仕を続けていた。

  下敷きになりそうな彼も限界が近いようで、その表情には余裕がなくなってきているように見える。

  息づかいも荒くなり、時折艶っぽい吐息を漏らしている様子からも絶頂が近い事は明らかであった。そしてそれはサリーも同じ事であり、いつ果ててもおかしくはない状態であったのだが何故かお互いにそれを気にしていなかった。

  ただひたすらお互いを求め合い、愛し合うことだけしか考えられなかったのだ。

  「薫く……んっ……もう……出ますわよね?」

  荒い呼吸の合間に問い掛けると彼はこくりと小さく首を縦に振ったのを見て取るとラストスパートをかけるべく動きを加速させていく。

  張りと柔らかさを持った双丘がぐにゃりと形を変えていき、その度に快感を覚えるのか彼の口から小さな喘ぎ声が漏れ出てきた。

  その赤子の甘えるような可愛らしい声に背筋がゾクゾクしてくるのを感じ、ぴゅうぴゅうと噴き出し続けているミルクにも勢いが増していく。

  やがてその時が訪れるまであと僅かとなったところで華音もまた絶頂を迎えようとしていたのだった。

  乳房の中で一際大きくなったソレがビクンッと跳ねた瞬間、熱い迸りを感じた。

  下腹に勢いよく叩き付けられる精液の感触を感じながら彼女もまた達してしまう。

  (あぁ……♡出てますわ……♡いっぱい♡)

  うっとりとした表情を浮かべながら身体を震わせていると、ようやく収まったようだ。

  しかしまだ足りないとばかりにピクッビクッと痙攣を続けているそれを見ているうちに自然と首が動いていた。

  ちゅっと口付けをするとそのまま口内へと迎え入れるようにして咥え込んでいく。舌の上で転がすようにして味わっていると何とも言えない味が口の中に広がっていった。

  喉奥まで使って飲み込むようにして飲み込んでいく度に自分の身体の中に入っていくような感覚を覚え、それがとても心地良く感じられた。

  ごくっごくっという嚥下の音と共に喉が動く度に胃の中へと流れ落ちていくのが分かる。まるで自分が彼を吸収しているような錯覚に陥ってしまうほどだった。

  そうして満足感に浸りながらゆっくりと口を離すと唾液まみれになったものが姿を現した。

  先程までと変わらぬ姿のまま硬さを失っておらず、ビクビクと脈打っているのがわかる。先端からは透明な液体が流れ出ていて何とも卑猥に映った。

  それを見ただけで身体の奥底から熱が込み上げてくるような感覚に襲われ、頭がクラクラする。

  (もっと欲しいですわ……もっともっとわたくしの事を愛して欲しいですわ……)

  そう思いながら見つめているうちに我慢できなくなってしまったのだろう。

  既にそこは洪水のようになっていてベッドに大きな染みを作っているほどになっていた。

  無意識のうちに開閉する陰唇からはぐぽっという粘着質ないやらしい音が響いている。

  否応なしでも突き刺さるような視線を向けられるそこに、血液がどんどん集まってくるのがわかった。

  鼓動が激しくなり呼吸が荒くなるにつれて心臓の音が大きくなるような気がしてならない。

  以前のように壁に追い立てて求愛でもしてみようかと思う反面、今の状態でそんな真似をすれば本当に壊してしまいかねないという思いもあった。

  それならばとベッドに全体重を預けるかのように寝転がれば、天蓋ごとベッド全体が大きく揺れ動く。

  後ろ肢の片方を天高く持ち上げながら前足を折り曲げて股を開く姿勢を取る事で秘所がよく見えるようになった。

  もう我慢できないと言わんばかりに腰を浮かせると自らの意思とは関係なく割れ目が開く。

  すると中からどろりとした白く濁った愛液が溢れ出た。その量は尋常ではなく、ぼたぼたと音を立ててこぼれ落ちてくるほどで辺り一面を淫猥な匂いで満たしていく。

  (はぁ……♡こんなところまで薫くんに見られてしまっていますわ……)

  羞恥心に苛まれながらも見られているという事実に興奮を覚えている自分に呆れてしまうものの、それ以上に興奮してしまっているのも事実であった。

  早く挿れて欲しいと思っているのか膣口がぱくぱくと収縮を繰り返しており、そこから溢れる蜜液はまるで涎を垂らしている。

  その光景をのめり込むかのように見つめる彼の顔を見ているとますます恥ずかしくなってきてしまったが、同時に嬉しくもあるというのが正直な気持ちでもあった。

  恥ずかしさに耐えつつ腰を振ってアピールをしていると彼がごくりと唾を飲み込んだのが分かった。

  初夜の時のような獣じみた交り合いから少し離れた、ヒトともケモノともつかない交尾が始まる予感。

  だってここは干草の匂い立つ馬房ではなく、豪華絢爛な宮殿かのような寝室。

  だと言うのにそこに居るのは一匹の白馬と化した少女と、あどけない少年だけ。

  これから行われるであろう行為を想像してしまい、互いがぶるりと身震いをし、どちらが先に動くのかじっと待っている状態だ。

  どちらから仕掛けるのか迷っているようにも見えるが、実際は違うだろう。

  どちらも相手を欲してしまっているのだ。

  だからこそこうして膠着状態に陥っているのだという事を理解しているのだろう。

  そうしてしばらく見つめ合っていた2人だったが不意に彼女が行動に出たことで均衡が崩れ去った。

  「こんなに乙女に痴態を晒させておいて何もしてくれないなんてあんまりですわっ!」

  ひとりでに開いたピンク色の粘膜がひくひくと蠢いて少年を誘うようにして誘っているのだ。

  むせ返るような雌の香りを放つそれはさながら淫魔のようですらあった。

  今すぐにでも挿入したい衝動に駆られた彼がそこに指を伸ばしたのは、当然の反応だったと言えるだろう。

  指先で触れるだけでもわかるほどの熱さを感じてしまってはもう我慢などできるはずもなかった。

  くちゅりという音を立てて沈み込んで行く指先を見つめながら彼女は恍惚とした表情を浮かべたまま熱い吐息を漏らすばかりであった。

  (あぁっ♡入ってきましたわっ♡♡)

  待ち望んでいたものを与えられた悦びに打ち震えるかのように膣内がきゅっと締まるのが分かった。

  それだけで軽く達してしまったようで頭の中が真っ白になり何も考えられなくなる程の快楽に襲われる事となった彼女であったが、それでも貪欲に求め続ける姿はまさに発情期を迎えた牝そのものと言っても過言ではなかったことだろう。

  そんな状態の彼女を目の前にして自制心を保つことなど出来るはずもなく、彼は欲望のままに突き入れた指を動かし始めた。

  最初は浅い所を擦るように抜き差しを繰り返すだけだったのだが次第にその動きが大きくなっていくにつれ激しさを増し、指の数も深さも増していく。

  それに伴って彼女の口から漏れる声も大きくなっていき、それに合わせて動きも激しくなっていった。

  激しいピストン運動によって掻き出された蜜液が飛び散ってシーツに大きな染みを作っていく様はなんとも淫靡なものを感じさせる光景であった。

  いやらしい水音が響き渡る中、時折空気を含んだ破裂音が聞こえてくる事からその度に大量の愛液を吹き出している事が分かる。

  「あんっ!あっ、ああっ!!すごっ、すごいですわぁぁっ!!」

  もはや言葉を発することすら出来ない程に感じ入ってり、口の端からはだらしなく涎を垂らしていた。

  瞳は焦点が定まらず虚空を掠めるばかり。

  そんな状態にもかかわらず身体の方は更なる刺激を求めており、無意識のうちに腰が動いてしまう。

  無意識下での行動であるというのに淫らなダンスを披露するその姿は実に官能的であり、見ているだけで劣情を抱かせる。

  その証拠に少年の下半身は既に限界まで膨張しており、痛々しいほどに張り詰めてしまっていた。

  小さな拳をすんなりと受け入れてしまう頃には降参と言わんばかりに充血した子宮口が降りてきて、彼の手に吸い付いてくる始末だ。

  その感触を楽しむかのようにぐりっと押し付けてやると声にならない悲鳴を上げながら背中を仰け反らせて反応を示した。

  「そこぉ♡一番奥ぅ♡グリグリされるの好きぃ♡♡♡」

  すっかり開発されきったポルチオへの責め立てを受けて完全に理性を失ってしまったらしく、彼女は自ら進んで腰を振り始めていた。

  それに応えるようにして彼もまた突き上げるようにして動かすものだから堪らないといった様子だ。

  (あぁんっ♡これぇ、これですわぁぁっ♡♡♡)

  馬としての性感を萎える事を知らない人の器用な手による愛撫で容赦なく攻めたてられていく内に絶頂へと上り詰めていく感覚を覚え始める。

  それと同時に込み上げてくる排尿感にも似た何かを感じ取り、それが何なのかを理解するよりも先に身体が動いていた。

  「イクッ♡イキますわぁっ♡♡」

  その言葉と共に勢い良く噴き出したのは潮吹きの如き尿だった。

  ぷしゃっぷしゃぁぁぁっっ!!!という派手な音と共に辺りに撒き散らされた透明な液体が彼の身体にかかっていく。

  その瞬間、全身が弛緩したのかへにゃりとその場に崩れ落ちてしまいそうになるのだが、寸前に彼の腕が片脚を掴んでいた。

  倒れこむことすら許されず、甘い絶頂の余韻に浸りながら呼吸を整えていると彼はそのままの姿勢を維持したまま次の段階へと移ろうとしていた。

  未だに硬く屹立したままの剛直は今にも爆発しそうな程であり、血管が浮き出ている様子からも限界が近いのだと見て取れる。

  発情した牝馬の尿を浴びて、盛りの付いた牡馬のように興奮した彼も例外ではないらしい。

  先程よりも大きさを増したように見えるソレの先端からは先走り汁のようなものが垂れており、まるでお漏らしでもしているかのようだ。

  (あぁ……♡わたくしのせいで薫くんが……♡こんなにも苦しそうにしていますわ……♡)

  そう思うと愛おしさが込み上げてきたのか自然と笑みが溢れ出してきた。

  精一杯首を伸ばして顔を近付けると優しく額に口づけをしてやり、それから頬ずりをするようにして甘える仕草を見せると彼も応えるように顔を寄せてくれたので嬉しくなってしまって何度も繰り返してしまった。

  ちゅっ、ちゅっと音を立てながら愛情表現を行う度に心が満たされていくのが分かる。

  幸せすぎてどうにかなってしまいそうだ。

  (わたくしの事だけを見て欲しいだなんてわがままでしょうか……?いいえ、きっとそうじゃない……これはもっと……)

  そう自分に言い聞かせながらゆっくりと腰を上げていき、狙いを定めるかのようにして亀頭の先っぽを入り口に擦り付けるような体勢を取る事にした。

  突然の刺激に彼が腰を引こうとしたのも束の間、陰唇が咥え込むかのようにして包み込んだ。

  その感覚に驚いたのか彼はびくりと身体を震わせたもののすぐに落ち着きを取り戻してこちらの様子をじっと窺っているようだ。

  「……サリー、ぼくのより、腕の方が気持ちいいんじゃないの?」

  拗ねたように言う彼に思わず苦笑してしまうがそれも仕方のないことだろう。

  「そんなことありませんわよ?わたくしはただ、この体位だと薫くんの可愛い顔が見えなくて寂しいだけですわ♡」

  自分の掲げた肢にしがみついた小さな彼の可愛らしい顔が見えないことが不満なのだと告げると恥ずかしそうに目を逸らされてしまった。

  「じゃ、じゃあ……『お馬さん』にとってきもちいい所はいっぱい触って貰ったから、今度は『私』の気持ちいいところ、さわってほしいな……」

  サリーと華音を使い分けるだなんて、卑怯かもしれないけど仕方ないよね。

  だって今の私はお馬さんでもあるけれど、人間でもあるのだから。

  実際この身体になってから感じていた人間『花山院華音』と馬の『サリー』の身体、感覚、考え方の違い。

  魔法が解けかかっているのか、馬にとっての性感を強く刺激されたからか、人間『花山院華音』としての自我が靄の中から出てきたようだった。

  だから今のうちに言っておかないと後悔すると思って勇気を出してみたけど上手く言えたかな?

  恐る恐る様子を窺うと顔を真っ赤にして俯いてしまっている彼の姿があった。

  やっぱりちょっと恥ずかしかったかも……。うぅ……恥ずかしい……。

  「うん、わかった」

  私の長い顔の額にそっと彼のおでこがくっつくくらいに近付くと耳元で囁くようにして返事をしてくれた。

  ただそれだけの事なのに嬉しくなってしまう自分がいる事に気が付いた。

  私のアソコはそれだけで彼の生殖器を嬉しそうにきゅっと締め付けているのがわかる。

  すると彼が少し苦しそうな表情を浮かべながらも、それでも頑張って耐えようとしてくれているのが分かった。

  (かわいいなぁ……♡)

  そう思うと自然と頬が緩んでしまう。

  私が笑うと彼も釣られて笑ってくれたので更に幸せな気分になった。

  このままずっとこうしていたいと思ってしまう程に心地良い時間だったが、いつまでもこうしている訳にはいかないのだ。

  私は意を決して口を開いた。

  「それじゃあお願いしてもいい……?」

  その言葉にこくりと頷くと彼は松葉崩しのような姿勢の状態の私の片足にしがみ付いて腰を動かし始めた。

  熱い肉棒が出入りするたびに内壁を擦り上げられ、強烈な快感に襲われてしまう。

  腕が入っていた奥の方よりも入り口を抉られる方が感じてしまうというのは不思議な感じがした。

  だがそれ以上に気持ちがいいのは確かだった。

  降りてきた子宮口を突かれる度に意識が飛びそうになるのを必死に堪えながら彼を抱き締めようとするが、今は両腕が使えないため叶わない。

  せめてもの思いで両の蹄を使って挟み込むようにしてやると嬉しそうな表情を浮かべたのが見えたので安心することが出来た。

  そして同時に嬉しくもあった。

  自分の身体で気持ち良くなってくれているという事実がとても嬉しかったからだ。

  それに、今の状態だと彼の顔がよく見えるというのも大きいかもしれない。

  「はっ♡はぁぁっ♡♡んあぁっ♡♡♡」

  ぱちゅんぱちゅんと肌同士がぶつかり合う音が響き渡る中でお互いの息遣いだけが聞こえてくる空間はとても淫靡な雰囲気を漂わせている。

  最初はゆっくりだった動きが段々と早くなり始め、それに合わせて私も快楽に溺れていった。

  薫くんも必死に我慢しているようで動きもぎこちないものになっている。

  もうそろそろ限界が近いのかもしれないと思ったその時、不意に彼の口から言葉が漏れた。

  「華音ちゃん、ぼくもう……!」

  その言葉を聞いた瞬間心臓が大きく跳ね上がるような感覚に襲われた。

  それと同時に膣内が激しく収縮を繰り返し、射精を促すかのような動きで彼自身を締め上げる。

  名前で呼んで貰えた、それだけで私の心は喜びに打ち震えたのだった。

  子宮頸が降りきって亀頭に吸い付いている状態でそんなことをされて耐えられるはずもなく、とうとう決壊の時が訪れた。

  勢いよく放たれた白濁液は私の胎内を満たしていき、収まりきらなかった分が逆流してくる感覚が伝わってくる。

  それと同時に絶頂を迎えてしまい、目の前が真っ白になる程の衝撃が走った。

  「ああぁぁあぁぁあっっっっ♡♡♡♡♡」

  絶叫にも似た嬌声を上げながら全身を痙攣させるようにして果てた後、ぐったりと脱力してしまう。

  そんな私を労うように頭を撫でてくれる彼の手の感触を感じながらゆっくりと意識を手放していくのであった。

  ☆☆☆

  どれくらいの間気を失っていたのだろうか。目が覚めると目の前には彼の寝顔があった。

  どうやらまだ夢の中にいるらしく、規則正しい寝息を立てているのが聞こえる。

  (ふふっ♪かわいいなぁ)

  起こさないように気を付けつつ、その顔を眺めることにした。

  やはり年相応の幼くも整った顔立ちをしていて見ているだけでドキドキしてしまう。

  そう思いながら見つめているとふとあることに気付いた。

  (ありゃ、まだお馬さんのままなんだ……)

  その事実に驚きつつも納得してしまった辺り、慣れというものは恐ろしいものだなと思うと同時になんだかおかしくなってしまった。

  それにしてもどうしたものかと考えるが答えは出ないままだ。

  人間『花山院華音』として彼に愛して貰うという前途多難な道のりに多少の光明は見えたものの、まだまだ先は長そうだと思いながら溜め息を吐く。

  また名張さんに薬を作って貰わなきゃ、だとか寂しがった小鳥がまた奇行に走らないか、だとか。

  考えなければならない事は沢山あった。

  けれど、この身体はとにかく自由だ。

  野原を駆け、愛する人に背中を預け、好きなように食べ好きなだけ寝て、好きな人と愛し合える。

  私、花山院華音もまた、『馬のサリー』の事が好きだった。

  二重生活が三重生活に変わったくらいでへこたれるほど軟な私ではない。

  そう思いながら鼻をぶるると鳴らし、愛しい彼を起こす事にした。

  まずは朝の挨拶から始めようじゃないか!

  「おはよう、薫くん」

  昨日の疲れからか、ぐっすり眠っていたらしい彼は寝ぼけ眼でこちらを見ていたが、やがてぱっちりと目を覚まして未だ『魅力的な』姿のままの許婚の姿をまじまじと見つめたかと思うと慌てた様子でこう言った。

  「ご、ごめん!!ぼくの方が長く寝ちゃってたみたいで……。……まだ、その姿のままなんだね」

  しゅんとした様子の彼が可愛くてつい意地悪をしたくなってしまうがぐっと堪えることにする。

  「うん。あともう少ししたら元に戻りそうな気がするんだけどね、それより薫くんの方こそ大丈夫?疲れてない?」

  そう言うと彼は恥ずかしそうに顔を赤らめて俯いたまま黙り込んでしまう。

  (うーん、やっぱり可愛いなぁ)

  その様子を見ていると何だかいじめたくなってくるのだが、これ以上やると拗ねてしまいそうだったので、自重。

  「疲れてないのでしたら、朝駆けに付き合ってくれませんこと?わたくし、昨日は結局一度も走れませんでしたからっ!」

  やはりこの躰は野を駆けるのが一番楽しいのだ。

  だから、ね?いいでしょう?と上目遣い気味に見つめると渋々といった様子ではあったが承諾してくれたようだ。

  「い、いいけど鐙も鞍もないし、ぼくはだかだよ……?」

  そう言いつつもじもじする姿は何とも愛らしいものがある。

  思わず圧し掛かりたい衝動に駆られるがグッと堪えて笑顔で答えた。

  「構いませんわ、私も裸馬ですし♪屋敷も昨日から人払いしてありますから誰も居りませんのよっ♪」

  そう言って私はベッドから降りると蹲って背中を差し出す。

  そうするとおずおずといった感じで跨ってくる姿がとても愛おしく思えた。

  部屋の扉をあけ放ち、廊下を駆け、屋敷を抜けて広い庭園を駆けて往く。

  朝日を浴びながら風を切るように走るその感覚は非常に心地良く、心が晴れやかになるのを感じた。

  人間の姿に戻ったら使用人が戻ってくる前に服を用意しなければと思いつつ、今はこのままでいいかと思ったりもする。

  何故なら、今この瞬間は私が『サリー』なのだから。

  薫くんだって、混乱するだろうから好きに呼ばせてあげるつもりだしね。

  「ねぇ、薫くん」

  走りながら呼びかけると彼もこちらに視線を向けてきたのがわかった。

  「なんだい?サリー」

  お互いの名前を呼び合いながら笑いあうとより一層気分が高揚していくのが分かる。

  そのまましばらく走り続けた後、頃合いを見て速度を緩めた。

  そしてゆっくりと立ち止まり呼吸を整えてから話しかける。

  「髪の毛、黒に戻そうかなって考えてるんだけど……どう思う?」

  突然の問いかけに驚いた様子だったがすぐに答えてくれた。

  「……そうだね、ぼくもそれがいいと思うよ。やっぱり華音ちゃん。そっちの方が似合っているからね」

  その言葉を聞き届けたところで私は振り返って彼の顔をまじまじと見た。

  「似合わないって思ってましたのっ!?ひどいですわっ!!」

  そう言いながら頭で叩いていると笑いながら謝ってきたので許してあげた。

  (でもそっかぁ……黒髪の方が似合うのか……嬉しいかも♪)

  「……まあでも、黒髪にしてお馬さんなってみるのも面白そうかもねえ」

  冗談めかして言うと彼がもじもじとするのと同時に、背中越しに少し硬いものが当たる感触があったのでくすりと笑ってしまう。

  「あらあらあ~?もしかして興奮しちゃったんですのお~??」

  ニヤニヤしながら問いかけると顔を真っ赤に染め上げて俯いてしまう様子が可愛らしい。

  まだ魔法が解けるまでには時間があるだろうし、もう一回くらいしてあげてもいいかなと思ったところで彼の方に向き直った。

  そして耳元で囁くようにして告げる。

  「それじゃあ今度は私の番ですわね♡」

  そうして彼の返事を待たずに再び走り出したのだった。