第二章:街道の異変 ―堕ちゆく白銀のプライド― 2

  カイルのその言葉を聞いたリンドの顔が、一瞬で凍りついた。

  「き、貴様! な、何を、馬鹿なことを……貴様のようなゴミに、いや、私が……私が男に虐げられたいなど! そんなことあるわけ!」

  しどろもどろになるリンドにカイルは続けて述べる。

  「隠さなくてもいいぞ、リンド。俺には全部『視えている』んだ。君が今、喉元を裂かれるよりももっと『酷いこと』を俺にされるのを期待して、足の指先まで震わせているのが、な」

  「黙れ……黙れっ!」

  カイルの言葉に逆上したリンドが、ダガーの柄の部分でカイルの頬を激しく殴りつけた。

  「ぐっ!」

  しかし、その一撃には間違いなく迷いがあった。

  カイルに自らの内に秘めていた「本性」を指摘された恐怖と、それ以上に、蔑んでいた相手に心の内を暴かれたことによる未知の昂ぶりが、彼女の心の壁にひびを入れた。

  [b:『心触(クラック)』]

  対象の隠していた本音に触れることで、精神的な防御壁を破壊する高等魔術。

  本来、魔族、特に淫魔の種族にしかできないその魔術をカイルは無意識に実行していた。

  リンドの心の壁にひびが入ったことを『視た』カイルは、

  (今だ!)

  右目に意識を集中させる。

  「……我が血に流れる穢れた因子よ。この者の『本音』を現実にしろ!」

  そうカイルが叫んだ瞬間、その右目から不可視の紅い波動が放たれた。

  それはひびの入ったリンドの心の防壁を容易く食い破り、彼女の右内腿に刻まれた紋章へと到達する。

  「あ、が……っ!?  ああああああああああああっ!」

  リンドの口から、悲鳴とも喘ぎともつかない絶叫が漏れる。

  先ほどまで黄金色に輝いていたリンドの内腿の紋章は、瞬時に『鮮やかな濃ピンク』へと染め上げられ、彼女の身体に刻まれていた魔力回路が強制的に書き換えられていく。

  「な、に……これ……熱い、熱いっ! わ、私の、身体の中を……何かが……何かがドロドロに、かき回して……あ、だめ、なんで、あぁぁあっ! イクっ! イっちゃ、ダメなのにぃ! んいぃっ! いやあぁぁぁぁっ! イクっ!」

  何もしていないにもかかわらず、リンドは絶頂に達していた。手にしていた小剣をぽとりと落とす。がくがくと両足を震わせながら、その場に膝から崩れ落ちていく。

  「あ、熱いっ! 身体が、熱い! 身体の中から何かが、何かがこみあげてくる! だめ、なんで? いぁぁあっ!」

  ピンク色へと書き換えられた紋章が「虐げられる快感」を彼女の脳に送り続ける。

  「あ、あぁぁぁ……あぁぁぁぁ! どうして? なんで?」

  リンドの束縛から自由の身になったカイルが、うずくまって悶えるリンドへとゆっくりと近づいていく。

  「どうしたんだ? リンド。近衛騎士団の団長ともあろうお方が、俺のような『無能』の前でそんなに無様な姿をさらして……あぁ、股間までぐっちょりと濡らしているようじゃないか」

  「あ、あぁぁぁっ!……そ、そんな、私は、そんな……濡らしてなんか」

  カイルの言葉に、ぴくりと身体が反応するリンド。

  「嘘をついても無駄だ、リンド。俺にはすべて『視える』んだ。君の身体の内側に隠した淫らな欲望が……ぐちょぐちょに濡れそぼった君の女裂が……全て視える。ほら、違うなら何か言ってみろよ、淫乱女騎士のリンド」

  「ひうっ!」

  リンドを侮辱するようなカイルのその言葉。

  本来なら怒りがこみあげてくるはずのその言葉は、リンドに刻まれたピンク色の紋章の力により、快楽へと変換されリンドの脳に到達していく。

  「あ、あぁぁ……あぁぁ」

  とろとろと女裂からしみ出した愛液が、自分の内股を伝わっていくのがわかる。

  身体の内側からあふれ出す熱が、リンドを再び快楽の絶頂に導こうとしている。

  「ほら、何か言い返してみろ。それとも侮蔑の言葉を聞いて興奮しているのか? この変態女騎士めっ!」

  「ひやぅあぁぁぁっ!」

  カイルから言葉を浴びせられるたびに、リンドの身体がびくびくと反応する。

  (ふふふ。いいぞ、リンド。ちゃんと感じているようじゃないか)

  そんな彼女を映すカイルの目には、彼女を守る白銀の鎧が透けて見えていた。

  赤い陰毛の下に見えるリンドの秘密の割れ目は、すでにじっとりと潤んでおり、紋章の浮かび上がっている内股に白い愛液が流れ落ちていく。

  「おいおい、そんなにマンコを濡らして……俺の言葉ですっかり気持ちよくなっているようじゃないか……やはりお前は変態騎士だ……さぁ、リンド。自分の気持ちに正直になれ」

  カイルは膝をつき、動けなくなったリンドの耳元で残酷に囁く。

  「わ、私は……私は、名誉ある騎士団の、騎士団の……団長、だ」

  「おぉ、まだ抵抗するのか? いいぜ、そのほうが教育し甲斐がある」

  「きょ、ういく?」

  「あぁ、そうだ。これからたっぷり『教育』してやる。俺に蔑まれ、虐げられることが気持ちよくて気持ちよくて、一生俺から離れられなくなるくらいに、たっぷり……なっ!」

  そう述べたカイルが、リンドの鎧の上からリンドの紋章に触れた。

  「あっ! あぁぁぁっ! あぁぁぁぁっ!」

  その瞬間、リンドは白目を剥き、激しく痙攣し始めた。

  「いぎぉっ、これ、だめっ! たすけ……あがっ!」

  「ほら、俺を……俺の魔力を受け入れろ。俺を崇拝し、俺に虐げられることを至上の喜びにしろ、リンド!」

  「あっ! あぁぁぁぁぁっ! いぎぃぃっ! ……カ、カイル……様……ちが、カイル、この、ゲス、が……やめ、ろ……いや……助けて……壊れる……脳が、溶けちゃう……あ、あああああっ! 私の、中、カイルの、魔力……が、流れ込んで……んいぁぁぁっ! いやっ! カイル様、私を、いじめてくだ……ちがうっ! カイル! いやぁぁ! 虐められるのが、うれしい、ちがうぅぅ! そんなの私じゃな……んいぃぃっ! こんなのっ! だめっ! だめぇぇぇぇっ! い、や……いやぁぁぁぁぁ!」

  誰もいない街道にリンドのあられもない声が響く。

  街道を照らす夕日は、今や彼女の「敗北」と「堕落」の色に染まっていた。