世界救ってから10万年、死ぬほど頑張って世界救ったのに眠りから覚めたら知り合いみんな死んでて10万年経っていた件 ~魔王倒したのに報酬が未だに払われない

  現代日本、大阪万博が行われる年の夏。この俺、村田優希17歳は学校帰りにトラックに轢かれて異世界へというテンプレートな方法で異世界転移した。

  それからのことはテンプレ通り。ヨーロッパ風の城の中にある豪華な大広間に描かれた魔法陣の上に気が付いたら立っており、目の前には国王らしきお爺さんとお姫様らしき女、魔法使いのコスプレにしか見えないお爺さんがそこにいて、魔王を倒し世界を救って欲しいと言われ。石に刺さった聖剣エクスカリバーとやらを抜かさせられ。

  王国騎士団の騎士団長に半年仕込まれた後に魔王討伐の旅に出て、魔法使いのエルフと重戦士のドワーフと弓兵の獣人を仲間にして、魔王幹部を倒しながら世直しをし。

  なんやかんやあって旅立ってから数年後、魔王を討伐。異世界転移してからの人生はよくあるRPGのような使い古されたストーリーが展開された。

  あとはエンディングを迎えるだけ。国王と約束した魔王討伐の報酬である金銀財宝と爵位と姫様を貰って万々歳の日々を夢見て床に付いたのだが・・・。

  「いやどんだけ寝てんねんワレェェェエエエーーーーーーーー!!!!」

  魔王討伐した日の夜。馬車で仮眠を取り、眠気が収まって目を覚ましたら十万年経っていた。お寝坊さんなんてレベルではもうない。寝坊どころか永眠レベルである。

  「どうされましたかメシア様!?」

  「あー、なんでもないです。突然叫んですいませんでした。」

  今、マンションの一室で俺とハンバーグを食べているのは十万年続く世界的な宗教のニンホア教の法皇であるジングさん。ニンホア教の法皇とは地球で言うローマ法王くらい偉い。そして、ニンホア教のニンホアとは、日本のことである。

  つまり、魔王討伐から十万年経った今。日本は異世界で神の世界であると崇められ、この俺は現人神として扱われているのだ。

  目が覚めてからの話をしよう。

  魔王討伐後に一眠りして十万年。目を覚ますとそこは真っ暗な空間、石の棺の中にいて、知らない天井どころか知っている場所なんてひとつもない世界の中で棺の蓋を開けると丁度教皇のジングさんが自分のいる棺に向けてお祈りをしていた。

  元いた世界で例えるのなら釈迦やキリストが突然復活したようなものだ。自分が聖職者だったらショック死しかねないだろう。

  「そうです、か。まぁ何事もないのであればそれで良いのですが。ところでメシア様。明日から高校ですが何か不足はございましたでしょうか?」

  「特にないですね。強いて言うなら勉強について行けるか不安なことくらいです。2度目の高校生だから大丈夫だと思いますけど。」

  「それは良うございました。改めてもう一度忠告させて頂きますが、決して貴方様が転生者だとか10万年前の世界を救ったメシア様ご本人であるだとかは悟られてはいけません。もしバレてしまっては世界が大混乱となってしまいます。宜しいですね?」

  なんやかんやあり目覚めてから1年が経った末に、明日から俺は2度目の高校生となることになった。戸籍管理の上で高校生となった実績は重要らしく、この今の世界で生きていくのに必要らしい。

  高校の入学、そもそも戸籍などについてはジングさんの養子として登録してもらった。

  幼少期、宗教的に穢れていると言われている魔の森に捨てられていた子供をジングさんがたまたま発見。標高の高い山の奥にある教会にて修行をし、穢れを浄化。教皇自ら俗世の知識を学ばせた後、高校入学へと至った。なんて胡散臭いカバーストーリーが俺の表向きの人生となっている。

  戸籍を管理する市役所らしき組織からは疑いの目を向けられたが、そこは教皇の権力でゴリ押ししたそうだ。教皇恐ろしやである。

  高校生を名乗るために1番重要な見た目については問題ない。何故かはわからないが10万年の眠りの末に俺の体は若返っており、ちょうど15歳ぐらいになっていたからだ。そして戸籍上でも15歳になっている。

  ちなみに高校の勉強内容についてはどうやらこの世界にもピタゴラスやニュートンはいたらしく勉強の内容自体は元の世界の高校と参考書を見る限りそう変わらなかった。国語、社会、理科、数学がベースであり、そのベースに魔法やモンスター、ダンジョンに関する知識が乗っかっている。

  「わかってますよ。ジングさんの言い付けはしっかり守ります。自分の正体は悟らせない、魔法補助具無しに魔法は使わない、彼女が出来たらジングさんにすぐ紹介する、ですよね?」

  魔法補助具とはその名の通り魔法を使うのを補助する物だ。今の人類はエルフなどの地球にいない人種も含め補助具を使わないと魔法を使えないほど魔法に対しては不器用らしく、補助具なしに魔法を使うのは神の所業らしい。故に魔法補助具、略して魔法具なしに魔法を使ってはいけないのだ。

  彼女が出来たら紹介しろというのは、勇者の血が訳の分からない女に結びついたら困るとのことだ。勇者の子供となればかなりの才能を持ち得ることになるそうで、反社会勢力に繋がっている女に勇者の血が渡ればえらい事になるだとか。要は身元の調査をさせて欲しいらしい。

  ちなみに子供を作ることに関しては大賛成で、その気があるのであれば信者から選んで宛てがうとのことらしい。流石に知らない女との子供を作ることには恐怖を覚えるため、躊躇っている。

  「理解しているなら結構。では私はもう帰りますのでくれぐれも寝坊することのないように。おやすみなさい、貴方様に祝福があらんことを。」

  そう言って俺の家を出て、黒塗りの防弾加工された高級車にジングさんは乗り込む。明日からは夢にまで見た2度目の高校生。トラックに轢かれて異世界転移したせいで中途半端に終わってしまった高校生活をやり直す、強くてニューゲーム(物理)が始まったのだった。

  [newpage]

  世界を救って10万年。この世界の文明は転生前の日本と同程度にまで成長していた。街には車が走り、ビル群が地面から生えている。誰しもが片手にスマホを持ち、ペットボトルに入ったジュースを飲む。馬車に揺られながら鉄の水筒を飲んでいた時とは大違いだ。

  この世界の技術的進歩についてだが、元いた世界に比べるとかなり遅い。おそらく魔物の影響だろう。地震や雷などと同じノリでモンスターが大量発生するとなれば科学どころではなく、空を飛ぶにも地を走るにもモンスターの驚異が迫る。文明の進化においてモンスターの存在はあまりにも邪魔なのだ

  まぁ、遅すぎる気もするが今はそんなことより青春を謳歌するほうが重要だろう。

  歯磨きをし、パジャマから制服に着替え、教会住みの習慣として行っている朝の祈りを済ませ、朝食のパンを食べてから家を出る。

  この世界の神は実質俺なので一体何に祈っているのかわからないが、とりあえず祈るのは大事だ。きっと八百万のどこかしらの神が見てくれるに違いない。いつか地球の神に祈りが届くかもしれないのでとりあえず、祈るのだ。

  ダラダラとイヤホンで音楽を聞きながら今日から通う高校に向かう。通学路はアスファルトの道をバスが走り、コンビニなどの店舗が建ち並ぶ日本の風景に近いものだ。本当に10万年が経ったんだと染み染みと感じさせられる。

  果たして、俺が眠っている間に仲間たちは何をしていたのだろうか。もう二度と会えないであろう仲間を思うと少し寂しい。そう足を進めながら感傷に浸っていると、胸を騒がせる緊迫したアラート音と共に音声が街を騒がせた。

  『緊急魔獣速報。緊急魔獣速報。川岡市大田町帝都国際高校の付近にダンジョンホールが現れました。屋外に出ている方はお近くの建物内へ。屋内の方は決して外には出ないでください。繰り返します……。』

  ここ百年で常にモンスターのいる洞窟の形をしたダンジョンと呼ばれる魔境の他に、ブラックホールのような形をした攻略すると消える突発的ダンジョン、通称ダンジョンホールが頻繁に発生するようになった。ダンジョンホールなんてものは魔王がいた時代にはなかったものだ。世界に異常が起きていると言っていいだろう。

  是非遠くから見てみたいと思いダンジョンホールの場所を検索しようとしたが、その必要はなかったようだ。何故ならまさに目の前にダンジョンホールがあるのだから。色は暗い緑と青、形はよくゲームで見るワープホールに近く、真ん中に虚空を覗かせる黒い穴が空いている。

  「そこの帝都生!ここは危険です。今すぐ逃げなさい。はい、こちら二条結衣です。現場にたまたま居合わせていたので。はい、はい、ゴブリンが5匹です。承知いたしました。これより行動を開始します。」

  黒を基調とした赤いリボンの日本でよく見る制服を着た高校生らしき女が魔石の付いている少しメカニックな日本刀を片手に俺へ忠告をする。話を聞いている限り彼女はダンジョンホールを対処する組織か何かの一員らしく、今日は非番らしい。

  彼女に言われた通り逃げる、フリをして壁の後ろから彼女の様子を覗き見ることにした。

  帝都生とは帝都国際高校の生徒の略で、俺がこれから三年間通うであろう学校の生徒のことだ。そしておそらく彼女も同じ帝都生。襟付近のバッジを見るに学年はふたつ上。学生なのにダンジョンホールを任されるとは実力があるのだろう。

  ただ……。

  「こりゃ負けるな。」

  ダンジョンホールから現れたのはよくライトノベルで見る緑色の耳が尖った小鬼、鉈のような小刀を持ったゴブリンが5匹。俺が魔王討伐の旅に出かけていた時にもよく見た雑魚モンスターである。

  モンスターを狩ることを専門とする冒険者であれば容易に倒せる初心者用のモンスターだ。

  ただし、普通のゴブリンであったならの話。ゴブリン5匹の中の最奥にいる2匹、黒みがかったゴブリンがいる。この黒いゴブリンは魔王討伐の旅の終盤に現れるモンスターで、かなり強い。黒いだけでデカイ鬼の姿をしたオーガと呼ばれるモンスターと同じくらい強く、賢い。

  地面を片足で彼女は蹴り、緑のゴブリンの首に刀を添わせて断つ。勢いに任せて2匹目も斬り、3匹目も胴体を真っ二つにする。彼女の強さは冒険者のランクで表すとB級は固いだろう。だが、その強さでは黒いゴブリンに勝てない。

  手前の黒いゴブリン(以後、黒ゴブリンAとする)が彼女の背後に周り小刀を振るが、それを間一髪回避。カウンターとして後ろに回った黒いゴブリンを斬ろうとするが小刀で防がれ、その隙を最奥にいた黒いゴブリン(黒ゴブリンB)が迫り、襲う。

  黒ゴブリンBの振り下ろした小刀に対し身を転がして避け、刀を構え直す。見事な回避だが、黒いゴブリン達の立ち回りを見るに彼女の方が状況は劣勢。通常のゴブリンではしない巧みな連携が彼女を追い詰め続ける。

  今は間一髪の連続で回避を続けながら何とか攻撃できているが、いずれスタミナが切れ、間違いなく死ぬだろう。この場においての彼女の取れる唯一の解決策は応援が来るまで粘ることだけだ。

  彼女もそれを狙っているのだろうが来る気配は無い。例え来たとしても先程通話していた相手の認識はただのゴブリン。ただのゴブリンに対する応援なんてものはたかが知れてる。ようやく来た味方は所詮自らの足枷にしかならない。

  ただのゴブリンではないことを報告すれば良いだけの話ではあるが、報告する暇をゴブリンは与えてくれない。報告しようとスマホに気を取られている間に死ぬのは目に見えている。

  よって、この打開策は期待できない。このまま彼女は力尽きて死ぬだろう。

  俺が加勢しなければの話だが。

  魔王討伐の旅終盤。魔王直属領には沢山の黒いゴブリンがいた。魔王城まで行くためには当然黒いゴブリンを倒す必要がある。俺から言わせてもらえば黒いゴブリンなんかは雑魚にすぎない。黒いオーガや黒いドラゴンに比べれば、所詮はゴブリン。何匹いようと関係はなく、瞬殺出来なければ魔王討伐なんぞ話にならない。

  じゃあお前が黒いゴブリン倒せばいいじゃーん、って話ではあるのだが、そうはいかない。何故なら俺が倒してしまうと今後動き辛くなるから。間違いなくダンジョンホールを対処する組織に目を付けられる。そうでなくても自らの正体を晒す1歩になりかねない。所詮俺は人の命より自分の人生なのだ。

  だから、動かない。ただ見ているだけ。面倒事にはなるべく関わらない。絶対に、関わらない。

  ……あのゴブリン、素材を売ったらいくらだろうか。討伐したらいくら貰えるだろうか。

  よく考えたら俺は今金欠だ。ジングさんから毎月貰えるお金に生活費を引いたら5千円程度。高校生にしては少し少ないかなーくらいのお小遣いとしての金額だが、欲を言えばもっとお金は欲しい。

  でも、バイトをして稼ぐのはめんどくさい。勇者をやっていた俺がファミレスで今更働けるとは思えない。お金を稼ぐためにモンスターの素材を取りに行って、モンスターを倒したまま何も拾わずに帰るような男が注文を忘れずにお客様へご飯を届けられるとは到底思えない。

  だから、この黒いゴブリンを倒した恩で彼女に仕事を紹介して貰おう。モンスターを倒すのは得意だ。それしか取り柄がないまである。まぁ少し力を使うくらいならバレないだろう。

  右手を腰に添えてエクスカリバー、を召喚して使う訳にもいかないので、全力から半分くらいのスピードで走り死んだゴブリンの小刀を取る。

  「援護する!そのまま横に移れ!」

  丁度ピンチそうな彼女に指示をし、彼女が横に移ったことで空いた隙間に入り込み、黒ゴブリンAの首を跳ねる。

  首を跳ねるために重心を移動したことにより浮いた自分の体を気にしつつ、勢いを遠心力として活かすために体を捻って半回転した後、手に持っていた小刀を黒ゴブリンBに向けて投げる。

  首は避けられたが、小刀を持っている方の腕を切り落とすことには成功。アイコンタクトをし、彼女が刀で黒ゴブリンの首を切り落とした。

  モンスターを吐き出し終わったのかダンジョンホールが閉じ、何も無いただの空間に早変わりした。どうやらモンスターホールとはモンスターが出てくるだけのもので、ダンジョンホールの中には入れないらしい。ダンジョンの中にある罠の1種であるモンスタートラップに近いと思われる。

  「……助太刀感謝します。ただ、助けてもらったのに苦情を言うのは失礼な話なのだけど、何故最初から戦わなかったのかしら?そもそも貴方、一般人では無いでしょう。しかも歳は私とそう変わらない。貴方は一体何者なの?未成年の一般人はモンスターとの戦闘行為を授業以外では禁止されてる筈よ。」

  「えっとー、ただの一般人、帝都高の後輩ですよ。ほら1年生のバッジ。戦闘経験はあまりありませんが、父に多少のことは教えてもらいました。なのでちゃんと戦えたってわけです。」

  襟元に付いたバッジを見せる。ギリシャ数字でⅠと書かれたバッジ。これが学年を示す物だ。反対側の襟元には自分の配属された教室であるBの文字が書かれたバッジが付いてある。

  ちなみに、帝都高にはAからDの英文字のうちのひとつが付与された普通科に分類される4つの教室と、入試の成績が優秀だった者が配属されるSの文字がトレードマークの特進組の教室がある。つまり俺はB組、またはBクラスの1年生な訳だ。

  そして彼女はSクラスの3年生らしい。

  「そう。怪しいとはいえ命の恩人なのだから今回は特に詮索するのはやめておきましょう。」

  「いや全然詮索してくださって大丈夫ですよ。俺の名前は村田優希。生まれはわからなくて、聖職者をしている父に養子として育てられました。それ以上の身の上話はありません。」

  「随分ペラペラと話してくれるのね。次は私の番かしら?私は二条結衣。名前の通り二条流剣術の二条家に生まれ、旧都で育った後に帝都国際高校に入学。今は生徒会に所属しているわ。貴方のふたつ上の先輩ね。この場で出会ったのはきっと何かの縁。何か分からない事、困ったことがあれば何でも聞いて頂戴。」

  何でも聞いて良いのならバストサイズを聞いても良いのだろうか。いや、良くない。間違いなく二度とセクハラの出来ない身体にされてしまうだろう。

  彼女の容姿を改めてじっくり見る。顔は絵に書いたような和風美人。目元は鋭いが可愛げがあり、鼻筋が立っている。濡れ羽色の髪は腰ほどまで流しており、ワンポイントで和風の髪留めをしている。赤い瞳はまるで沈みかけた夕焼けのようだ。

  身長は俺の肩くらいだろうか。スラッとした体付きは折れてしまいそうで、脚は長くて細い。そして、何とは言わないがかなり良い物をお持ちだ。こんなモデル体型の女の子が戦っていた事実に転移前の俺なら驚きを隠せなかっただろう。

  異世界人の女というのは筋繊維の作りが違うせいか見た目以上の腕力を持ち、容姿が大変良い。個人差はあるが、顔面偏差値が基本的に高く、また筋肉ムキムキな女性はあまり存在しない。脇腹に脂肪分が多い女性はちゃんと存在する。

  「急に黙ってどうかしたかしら?先程の戦闘の影響で体調が悪いとか?私が代わりに先生に言って早退させて貰う?」

  「考え事をしてただけですのでお気になさらず。そうそう、このゴブリンなのですが、俺への報酬って銀行口座に振り込まれる感じです?」

  「残念なことにゴブリンの報酬は私に振り込まれるでしょうね。貴方はただの一般人で私はガーディアンだもの。貴方の扱いはガーディアンの仕事を手伝っただけの一般人になるはずよ。でも安心して?私が貴方の報酬を払ってあげるから。黒いゴブリンの報酬を7割貴方に渡す。それで良い?」

  街に現れたダンジョンホールを対処するのは人をガーディアンと言うらしい。そして、肝心の報酬はちゃんと払ってくれるみたいだ。キレイな年上の先輩から手渡しでお金をもらう。イケナイ気分になれそう良い。

  「7割も貰えるなら十分です。」

  「納得してくれたようでよかったわ。それでは早速連絡先交換しましょう?イソスタで良いかしら。このQRで登録して頂戴。」

  イソスタとは日本にあるあらゆるSNSアプリをひとつにまとめたようなもので、通話からチャット、タイムラインへの投稿はもちろんのこと、細かく設定出来るプロフィール画面まである。

  この世界の物は何故か地球にある物と名前が似ている。きっと人間の発想力には終着点があり、最善の解としてこちらの世界ではイソスタが選ばれたのだろう。

  「出来ました。この何も設定されていないアイコンのであってます?」

  「えぇ、その二条結衣と書かれたものであってるわ。改めてよろしくね?村田くん。」

  「よろしくお願いします、二条先輩。」

  味気ないアイコンが映るスマホを片手に微笑む二条さんを見られただけで助けた甲斐があったと思ったのは俺がちょろいからではないだろう。

  「私これから事情聴取があるの。だから先に登校してね。本来は帰宅して自宅療養か現場待機なのでしょうけど、入学初日にそれはまずいでしょう?だから、ここは私に任せて行きなさい。」

  俺も一緒に残ってサボりたいですなんて言える雰囲気ではなかったため、素直に登校するのであった。

  ・・・・・・・

  学校に着き、自分の教室に向かうと今日あった緊急魔獣警報の話で持ち切りだった。とりあえず自分の席に座り、前と後ろの席に座っている男と仲良くなっておく。スタートダッシュは順調だ。

  学校の始業時間を知らせるチャイムが鳴り、しばらく経つと先生らしき人物が体育館へ集まるよう指示する。ダラダラと前後に座っていた友人候補の2人と一緒に体育館へ向かい、校長等の話を聞き、教室に戻る。

  国際高校を名乗るだけあってエルフやドワーフ、獣人から魔族まで様々な種族が体育館に並んでいた。その姿は圧巻であり、10万年前では有り得ない光景だ。

  特に魔族は他種族と仲が悪く戦争を繰り返していた種族であったのだが、今ではその影も見えない。魔王の討伐により必然的に敗戦国となった魔族であるが、この時代では差別されることはあまりなく、笑顔で日常を過ごしている。

  長い始業式が終わり、教室に戻ってしばらくしてから担任と名乗るエルフの先生が軽く自己紹介をし、生徒も簡単な自己紹介をするレクリエーションをする。

  今日の課業が終わりに差しかかり、黒いゴブリンの報酬金はどのくらいだろうかと心がときめくことを考えていた、その時である。

  突然、勢いよく教室の扉が開く。

  「おはよう諸君!!我は最後にして最強の魔王、ジェヘラザード・G・ユグドラシルである!よろしく頼むぞ皆の衆。お!ソナタは勇者か!久しゅうな勇者よ!お互い殺し合った10万年前ぶりか?よろしく頼むぞ勇者よ!」

  その扉の音は、高校生活を終わりへと導く地獄へのファンファーレであった。

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