外では蝉の鳴き声が鬱陶しいくらいに鳴り響き、空いた窓からは外の熱気が入り込み、サウナのように暑くなった一部屋
「うぅ〜!」
そんな部屋の中では持ち主である女子高生:アイリが、半袖短パン姿であぐらをかき、必死に背中を掻きむしっていた
「かゆい!」
痒みが朝から止まらず苦しんでいた
「かゆいかゆいかゆいかゆい!」
掻きながら連呼し、気を紛らわそうとするが、それでも手は止まらず掻き続ける
「あ〜もぅ…うざい…」
疲れて手を休ませ、ため息混じりに愚痴を吐くアイリ
「ホントこの時期イヤだ……」
止まらず愚痴を吐き、ふとを視線を手に向けると、何かが大量に付いていた
「・・・え?」
何かをちぎったような細かい破片、それはアイリの皮膚だった
「な…何これ…」
自分の手に付着したものが何なのか理解できず、アイリはただ呆然とする
ビリッジジジジジジジッ
「えっ…えっ…?」
すると、背中から何かが破れる音が聞こえてきた
音が鳴るとともにアイリは勝手に前傾姿勢になり、猫背になる
「なに…なに…?」
訳もわからず、ただ困惑するアイリ
そうして理解できないまま体を曲げていき、それに合わせて背中が背骨に沿って破れていき、下からは肉では無く黒い毛の生えた別の皮膚が顔を見せていた
「やっ…やだ…なんか…怖い…」
アイリは得体の知れない恐怖に襲われ、冷や汗と涙を流す
今度は指先から腕にかけて違和感を覚える
皮膚の下で骨が形を変え、人ではない別の何かになっていくのが不気味に蠢く肌から読み取れてしまう
「うあっ…あっ…」
そんな腕を見て、アイリは絶望する
グキッミキッミキキキッ
「ぐぎっ…?!」
次に足から痛みを感じ、アイリは倒れ込み、不気味に膨らむ腕で体を支える
足も腕同様に骨が形を変えていき、爪先が異常に伸び、肌を無理やり引っ張る
「ぐっ…ぐぇっ…ごぉっ…?!」
次第に体も膨らんでいき、苦しそうにうめき始める
ジジジジジジジッビリリリッビリッ
体の膨張によって入りきらなくなった服も破れていき、次第に背中の裂け目も大きくなっていく
「やっ…だ…だれが…だずげ……!」
必死に出す声も太く低くなっていく
ボコッゴポッ
「お"っ…お"お"……」
喉も太く膨らみ声が漏れる
ミチミチミチミチミチッ
「げっ…がっ…あ"あ"あ"っ!」
やがて顔も歪に形を変えながら膨らんでいく
まるでマスクを被っているように皮膚が弛み、目の周りの皮膚の隙間から黒い毛の生えた別の肌がちらちらと見える
顔の変化に伴って目も黄色く変色し、やがて人の言葉も忘れたように出なくなる
アイリは牙へと生え変わった歯と、伸びた舌を見せながら苦しそうに口を開き、この先どうなるかわからない自分の体の行く末を共にするしかなかった
ミチッ…ギチギチッ…
気づけばアイリは身につけていた最低限の衣服も無くなって裸になり、大きく背中の開いた皮膚が痛々しく広がっていく
「はぁ…はぁ…はぁ…」
アイリはそのまま動かなくなり、しばらく四つん這いの姿勢を維持する
ニュチッ…
やがて、水音のような生々しい音が彼女の全身から鳴り始める
「うっ…ううっ…!」
アイリは何かを振り解くように全身を左右に揺らし始める
ニュチッミチッニュルルッ
揺れによって背中の裂け目から見えた黒い毛で覆われた背中が盛り上がっていく
いや、盛り上がるというよりも、新しい彼女が古い皮を捨てて出てこようとしていた
ズニュルルルルッ
次第に皮膚の下から分泌された粘着性の液体が皮を脱ぐのを助け、濡れた毛で覆われた体が姿を見せ始める
「おっ…おおっ……」
アイリは古い皮が脱げていく感覚に気持ちよさを感じ、声を漏らしながら少しずつ体を出していく
ビリッバリッ
まだ狭かったのか無理やりこじ開けようとし、皮膚がさらに裂けていく
「うぅっ…うあうぅ……」
獣の呻き声のような声をあげながら、アイリは徐々に皮を脱ぐ
ズルリッ
やがて全身が古い皮を脱ぎ終わった時には、全身黒い毛で覆われた、犬に近い姿をしたアイリが堂々と仁王立ちしていた
「はぁ…はぁ…はぁ…があっ!」
パキパキッミキミキミキッ
再び苦しそうにうめくと、仕上げと言わんばかりに全身が細かく変化していく
足は踵が上に伸び爪先立ちの状態に
手は指が太く伸びて犬の足のように
背中はさらに盛り上がり猫背に
皮を脱いで抑えるものが無くなった耳は頭頂部に向かって伸び、三角に形を伸ばしていく
「あおぉ…オッ…オオッ…アアアッ…」
そして顔も、鼻は黒ずみ、口は前に伸びていき、人の形も捨てていく
「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…」
両腕を前にだらんと垂らしながら、アイリだった獣はホカホカと湯気を立てる全身を冷ますように息を整える
「フウウゥゥ……ルァウ…ウァウン…」
整え終わり大きく息を吐くと、口をもがもがと動かしながら鳴き声を上げ、何かの準備をしているようだった
「ルァ……」
準備が整うと、体を大きく仰け反らせ、伸びた口を天井に向けると…
「ウァオオオオオオオオォォォォォ…」
アイリは大きく吠えた
外で鳴り響く蝉の鳴き声に負けないように、皮を脱ぎ捨てた事への喜びを声で表現する
元々身につけていた人だった頃の皮を踏みつけ、獣は吠える
たまたま女子高生の血を吸いに来た蚊は、自分の管に付着した別の獣の血の吸い残しごと彼女の皮膚に管を通した事で、残りの血がアイリの体の中に僅かながらに流れ込んでしまった
その僅かな血が彼女の体を駆け巡り、アイリの血液に影響を与え、このような変化を起こしたのだった
「ゥルルルルルル…」
果たして今の彼女に人としての理性は残っているのか…
それとも血にのまれ、心までも獣へと変わり果てたのか…
それは彼女自身も分かっていない…