マッサージ師は"獣化のツボ"を知っている

  僕の名前は牛島ケンタ、TF大学に通っている大学生だ。

  今日は課題をするために、同じ学科のユウタとゼミ室に来ていた。課題を始めてしばらく経ち、僕たちはため息をついた。かれこれ1時間以上は作業をしているというのに、課題に終わりが見えないからだ。

  「はぁ、西村の課題ダルすぎるよぉ」

  「だよな、こっちもまだまだかかりそうだよ」

  西村教授は課題が多いことで有名だ。課題はというと論文を読んでA4用紙10枚分の感想文を書くというものだった。

  「期限明後日だよね?一昨日からやってるのに…まだ6枚だよ…ヤバすぎる…」

  「俺なんてまだ3枚だぞぉ、はぁ…」

  昨日から徹夜続きだったユウタの目の下には隈ができていた。テーブルにはさっき売店で買ってきたエナドリが何本も転がっている。

  「とりあえず、時間いっぱいやろう」

  「おう…」

  それから数時間後、窓の外を見るとすっかり日は沈み、外は真っ暗になっていた。自習室に残っている人もいつの間にか僕らだけになっていた。

  「よ、よし…やっと…終わったああああ」

  「お、まじ?」

  「うん、あとは見直しだけだね」

  「俺も結構進んだぜ、明後日までには何とかなりそう。っていうか外暗!?今何時だ?」

  「今は…9時半だね」

  「ってことは…課題始めて4時間くらい経ったのか?」

  「うん、そうみたい」

  「まったく、座りっぱなしで尻が痛いぜ…」

  ユウタはおじさんみたいに腰を擦っていた。

  「ユウタ、おじさんみたいだね」

  「うっせぇ、ケツが痺れて…痛てて…」

  「僕もぉ、足に力入らないや」

  そういえば課題を始めて休憩をほとんどしてない。

  「そろそろ消灯時間だし帰るか!」

  「うん、行こう行こう!」

  僕もユウタに合わせて立ち上がろうとした。

  その時だった。

  グギッ

  自分でも何が起きたか分からなかった。腰が雷に撃たれたみたいに硬直して動けなくなってしまった。

  「うっ…うぉぉ…」

  ユウタに助けを求めるが、口をパクパク動かしても、出てくるのは弱々しい呻き声だった。

  「ん?どうしたんだ?変な声出して…」

  「…こ…こし……」

  「腰?腰がどうしたんだ?」

  「こ、こしぃ…腰がぁ…」

  僕の身体はゆっくりと地面に倒れていく。

  「ま、まさか、ぎっくり腰?」

  僕の表情を見てユウタも察したのか、慌てて駆け寄る。

  「お、おいまじかよ…ちょっと待ってろ、助けを呼んでくるから!」

  それから数分後、僕はユウタが連れてきた大人たちに運ばれ保健室に連れていかれた。

  「まったく、人騒がせなやつだな」

  ベッドで横たわる僕をユウタはみて心配そうな顔をしながら笑っていた。

  「ご、ごめん…」

  「消灯時間までベッド使ってもいいって」

  「ユウタありがとう…」

  「まぁいいってことよ。腰の調子は?」

  「さっきよりはマシかな…」

  ゆっくりと右手で腰を擦るとまだ痛みが走る。これは今日中には治らなそうだ…。

  「立てそう?」

  ベッドから起き上がろうとするが、やはり激痛が走ってしまう。

  「うぅ…ダメみたい…」

  「ふむ…どうやって帰るかなぁ、タクシー呼んだとしても正門までは歩かないといけないし…」

  「歩くなんて…無理だよぉ」

  「だよなぁ」

  二人で帰宅方法を考えていると、ユウタが思い出したようにスマホの電話帳を開いた。

  「そういえば…」

  「ん?何してるの?」

  「俺のじいちゃんもよくぎっくり腰になるんだけど、その度に腕利きのマッサージ師に治してもらってるんだよ。そのマッサージ師ならぎっくり腰を治してくれるかもと思って…」

  ユウタは、そう言うとユウタのじいちゃんに電話をかけた。ざっくり用件を伝えるとユウタは電話番号をメモった。

  「…うん…そうそう、電話番号。うん、ありがとうじいちゃん、またね~」

  「はいこれ、じいちゃん行きつけのマッサージ店の電話番号。今じいちゃんがアポとってくれてるらしいから、しばらくして電話するといいよ」

  「助かるよ…」

  「あ、でもじいちゃんが言うには、ちょっと癖のあるマッサージ師らしいから気をつけろってさ」

  「癖?」

  「さぁ、俺は行ったことないから知らない。とりあえず電話してみたら?そろそろ電話していいんじゃないか?」

  「そうだね、えーと電話番号は…0…8、の…2…9…これでヨシッと」

  発信ボタンを押して数回のコール後、男性の声が聞こえてきた。

  「はい、虎の穴マッサージのタクロウです…」

  電話に出たタクロウと名乗る男の声は、耳の奥に優しく響くような低く心地よい声だった。

  「あ、えーと…」

  何から話せばいいか考えていると、タクロウさんは察したようで話始めた。

  「もしかして、じいさんが言ってたぎっくり腰の学生さん?」

  「あ、そうです…牛島ケンタっていいます。」

  「ケンタくんね、その年でぎっくり腰なんて可哀想に、ガハハ」

  今までの落ち着いた雰囲気から変わり、タクロウさんはフレンドリーに話し始めた。

  「あぁ、ごめんね、それで今日はどういったご用件で?」

  「その、ぎっくり腰が痛くて…動けなくなってしまって……」

  僕は今の状況を伝えた。するとタクロウさんは少し考えてからこんな提案を持ちかけた。

  「ふむふむ、それなら今からおじさんがマッサージしてあげるよ。今日はもうお客さん居ないから、うちまで来てくれるならゆっくり揉んであげられるよ」

  「いいんですか!?あ…でも、今痛くて動ける状況じゃないんです…」

  「重症だねぇ…ぎっくり腰に効くツボを教えてあげるからちょっとマッサージしてみてよ」

  「分かりました…」

  ユウタに手伝ってもらいながら、タクロウさんの指示に沿ってマッサージをすると、嘘みたいに腰の痛みが和らいでいった。

  「え、嘘っ…腰が軽い!」

  「ガハハ、おじさんプロだからね、どう歩けそうかな?」

  「はい…少しくらいなら、なんとか」

  「あくまで応急処置だから、無理はしないこと」

  「分かりました。あの、さっきの話…お願いしてもいいですか?」

  「マッサージだろ?いいよ!おじさんのお店TF大学から近いから歩いて来れるよ」

  「ありがとうございます!!」

  「じゃあ住所教えるね。えっと…」

  「…◯丁目の◯番の…103号室ですね!」

  伝えられた住所をスマホで調べると繁華街近くの雑居ビルだった。大学から歩いて10分くらいといったところか。

  「じゃあ待ってるよ!」

  「お願いします!」

  そう言うと電話は切れた。癖がある人って効いてたけど、優しそうな人でよかった。

  「今からマッサージしてもらえるんだって?ケンタ良かったな!」

  「うん!ユウタのおかげだよ」

  「俺はなにもしてないよ、お礼はじいちゃんに言ってくれ。お店までひとりでいけるか?付き添ってやりたいんだけどこの後バイトがあってよ…」

  「大丈夫だよ。遅くまで付き添ってくれてありがとね」

  「お、おう!じゃあ俺行くから!気をつけろよ!!」

  「うん、また明日!じゃあ、僕も行くか…」

  お年寄りみたいにゆっくり立ち上がり、できるだけ腰に負担がかからないよう歩き始めた。

  …

  マッサージ店にたどり着くと、そこは繁華街から外れた暗い路地裏の雑居ビルだった。ボロボロの案内板を見ると、103号室に『虎の穴』と書かれていた。しかし、廊下を見ても明かりはいない。

  「こ、怖…本当にお店あるのかな…」

  長い廊下を進むと103号室が見えてきた。入り口には消えかかったネオン看に『虎の穴』と書かれていた。

  「ここだよね…?」

  意を決して103号室の扉をノックする。

  「はいどうぞぉ~!」

  「お邪魔します…」

  恐る恐る扉を開くと、中からお香のような香りが溢れてきた。玄関はマッサージ店らしい綺麗な内装をしていて、カウンターにはかわいらしいお花が飾られていた。

  こんなきれいな内装のお店をしているんだから、タクロウさんは清潔感のある人に違いない。

  そんなことを考えていると、部屋の奥から足音が聞こえてきた。

  「はいはい、お待たせ」

  しきりの奥からドスドスと現れたのは、想像していたタクロウさんとは真逆の髭の生えた巨漢の男性だった。

  身長は2メートルくらいで首を上に向けないと目線が合わせられない。施術服の上からでもわかるほど、全身鍛え抜かれていて、腕や胸元それに太ももと筋肉が盛り上がっている。顔は眼鏡をかけているが、その下には引っ掻かれたような古傷があり、髭も相まってとても厳つい。

  「遅かったね、腰が痛くて時間がかかったのかな?」

  「で、デカ…」

  「ガハハ、びっくりさせちゃったかい?おじさん大きいし厳ついからいつも怖がられちゃうんだよね。よく職質されちゃうし」

  「す、すいません…」

  「いいよいいよ、いつものことだから。君が電話してくれたケンタ君だね?」

  「はい、今日はよろしくお願いします…」

  「うん、改めて自己紹介するけどおじさんがこのお店『虎の穴』の店主の尾野虎タクロウです。よろしく」

  「TF大学2年の牛島ケンタです。よろしくお願いします。」

  タクロウさんは大きな手で握手を求めてきた。タクロウさんのゴツゴツした手はとても包容力があって温かかった。袖から見える血管の浮き出た腕はさすがはマッサージ師といったところか…。

  「ふむふむ」

  タクロウさんは握手したまま僕の身体を観察していた。初対面の人に身体をじろじろ見られるのは恥ずかしかったが、タクロウさんは更に顔を近づけ、熱い視線を送ってきた。

  「な、なんでしょう?」

  恥ずかしくなって目線を外すと、タクロウさんはニヤリと笑った。

  「フフッ、ちょっとビビッときてね。君は"見込み"がありそうだ。」

  見込み?なんのことだろう…。

  「ケンタくんは何かスポーツしているのかい?」

  タクロウさんはもう片方の手で僕の肩を触り始めた。なんだか手つきがいやらしく感じる。

  「昔は色々してましたけど、今は何も…」

  するとタクロウさんの手は下に降りていき僕のお腹をムニッと揉んできた。

  「ヒャッ!?」

  「フフフ、確かにだらしないお腹だ」

  「むぅ…」

  「普段から運動してないから腰回りの筋力が衰えて腰痛になるんだぞ…ほら、ムニムニ」

  そういうタクロウさんも、お腹が太鼓のようにぽっこり膨らんでいる。せっかく筋肉があってかっこいいのに狸みたいなお腹のせいで台無しだ。

  「…タクロウさんだって…お腹出てるじゃないですか」

  「ガハハ、最近飯が旨くてな…。でも筋肉はあるぞ!ほらこことか触ると特に」

  タクロウさんは僕の手を引っ張ると自身のお腹を触らせた。タクロウさんの太鼓腹は見た目とは裏腹に筋肉質な感触で、ずっしりとしている。叩いたら良い音が鳴りそうだ…。

  「へへ、結構筋肉あるだろ?昔柔道やってたからね!どうしたんだいケンタ君。顔が赤いぞ?」

  そう言われてハッとしてタクロウさんのお腹から手を離した。

  「何でもないです…」

  なぜだろう、胸がドキドキして顔から火が出そうだ。そんな僕の顔を見つめてタクロウさんはまたニヤリと笑った。

  「立ち話もなんだ、マッサージに移ろっか」

  「お願いします…」

  「じゃあ服を脱いでそこに置いてる服に着替えてもらえるかな?」

  「はい」

  「あ、悪いんだけど下着も脱いでその上から着てね」

  「…分かりました」

  着替えとして用意された服は背中側にボタンがついていて後ろから脱げるようになっていた。何か理由でもあるんだろうか。

  僕が下着に指をかけようとした時、タクロウさんの視線に気がついた。こういう時普通視線を逸らしたりしないかなぁ…。

  「あのぉ…」

  「ごめんごめん!男同士だし気にしないかなって思ってさ」

  「まぁいいですけど…痛てて…」

  「腰が痛いと難しいだろう?着替え手伝おうか?」

  すかさずタクロウさんの手が僕の身体に伸びてくる。

  「い、いえ、大丈夫です!!」

  僕はさっとパンツを下ろすと急いで着替えた。

  「フフ…」

  「…何んですか?」

  「いや、何でもないよ。着替えたことだし、手前のベッドに寝てもらってもいいかな?」

  部屋にはベッドが2つあり、手前にはよく見るマッサージ用のベッドが、その奥には穴の空いたヘンテコなベッドが置かれていた。

  「さぁ、こっち側を頭にして俯せで寝転がってくれるかな?」

  「はい…」

  「じゃあ早速だけど身体の状態を見るために触診をするね。痛かったら言ってね」

  「はい…」

  タクロウさんの両手が優しく僕の背中に触れる。そして筋肉に沿って僕の身体を揉み始めた。

  「んぅ…」

  「どうした?痛かったかい?」

  「いや…なんでもないです。大丈夫です。」

  「そう?続けるよ」

  続いてタクロウさんの手は背中からゆっくり腰に向かって降りていく。タクロウさんの手が触れる度に僕の身体はピリピリとした感覚が駆け巡った。

  「んふ…」

  やばい…ただ体を触られてるだけなのになんだろこの感覚。

  「くすぐったいかもしれないけど、腰のあたり触るよ?」

  「は、はい…」

  タクロウさんの指が股関節をなでるように触りはじめた。その刺激に僕の身体は反応し始めていた。

  (やばい…タクロウさんの目の前なのに、なんか勃っちゃいそう…素数を数えて落ち着かないと…)

  「2…3…5…7…」

  「フフ、どうしたんだ?いきなり数字なんてつぶやいて」

  「…何でもないです!」

  しかし、一度そんなことを意識してしまうと、それはムクムクと大きくなってしまう。

  (…ほ、ほんとにやばい、ちんちんが熱くなってきたあああ)

  「あ、あのちょっとトイレ…!」

  僕は半勃ちになった股間を見られないよう手で隠しながら起き上がった。

  「わわっ、どうしたのいきなり」

  部屋を見回すと、部屋の角にトイレの看板が掛けられた扉があった。僕は急いでその扉に入ると鍵を閉めた。

  「えっと、大丈夫?」

  「大丈夫です。ちょっとお腹痛くって」

  下腹部を見ると、ズボンの上からでもわかるくらいギンギンになってしまっていた。

  (うわああ、見られてないよね??とりあえず落ち着いて、これが収まるまで待とう…)

  ジャーと水を流してトイレからでる。当然用は足していないが、怪しまれないようにお腹をさすりながらベットに戻ると、タクロウさんは心配そうな顔でこちらを見ていた。

  「お腹大丈夫?」

  「はい!今日お昼ご飯食べすぎちゃったみたいで…」

  照れ笑いする僕の様子を見て、タクロウさんは見透かしたようにニヤリと笑った。

  「ガハハそうかそうか、別におじさん気にしないよ、マッサージ中にちんちんが勃つなんてあるあるだし」

  「ひょっ!?バレ…てちがっ、ほんとにお腹が痛くてぇ」

  「ガハハハ、若いなぁケンタ君は、まあそういうことにしておいてあげるよ。」

  そういうとタクロウさんは僕の腰をポンと小突いた。

  「うぅ…」

  ベッドに戻るとタクロウさんが僕の腰をみてこういった。

  「ケンタ君、結構腰つきがいいね」

  「…そうですか?」

  「うん、安ざn…いや、男らしくて良いと思うよ」

  男らしいってカッコイイってことかな?そんなこと初めて言われた。ちょっとうれしいな。「太ももやふくらはぎもふっくらしてるし、それにお尻もぷりっとしてる!ガハハハ」

  そういうとタクロウさんは僕のお尻をつんっと指で突っついた。

  「な、なにしてるんですかぁ」

  「ガハハ、冗談だよ冗談!」

  「もう…」

  勃起がバレてから、何をされても恥ずかしくて仕方ない。それなのにタクロウさんはそれをいじってくるし…

  はぁ…ユウタのじいちょんが言ってた癖が強いってこの事だろうか…。

  「やっぱり"素質"がありそうだな…」

  「ん…素質?」

  「よし、大体わかった。首から背中、腰、それからお尻の筋肉まで全部ガチガチだね!最近デスクワークばかりだったでしょ?」

  「はい…大学の課題があって…それで毎日パソコンしてました」

  「変な姿勢で長時間無理したんでしょ。だからこの年でぎっくり腰なんかなっちゃうんだぞ?気をつけないと」

  「はい…」

  「ふふ、おじさんがしっかりカッチリ治してあげるから覚悟しとけよ」

  「…お願いします」

  「じゃあ施術に入るよ~」

  そう言うとタクロウさんがベッドにあがってきた。ただでさえ狭い施術用のベッドが僕とタクロウさんの巨体でギシギシと軋む。

  「え、ちょっ…」

  「このマッサージには力が必要だからね。体重かけるために…よっと、ちょっと失礼するよ」

  突然距離を詰められて僕の頭は困惑していた。

  するとタクロウさんは僕の両足に股がり両手を腰に置いた。おじさんの下半身からむわっとした熱が僕の太ももに伝わってくる。

  「わっ、ちょっと!」

  「じゃあ行くよ!最初は痛いと思うけど、我慢してね!」

  困惑する僕をよそに、タクロウさんは腰を浮かせて体重をかけてマッサージを始めた。

  タクロウさんの鉛のような重量が僕の背中にかかると、背中からメキメキと音がなった。

  「ぎゃああああ!!」

  痛いとかそういうレベルじゃない、身体の内側を直に触られているようなそんな感じだった。

  「良い声だねぇ!」

  僕の絶叫を聞いて、タクロウさんは楽しそうだ。タクロウさんの手つきはさらにエスカレートしていく。

  「骨ぇ!折れるぅ!折れてる!!」

  メキメキ!

  「ぎゃああああ!!」

  「折れてないよ!大丈夫!身体を解してるだけだから!ほら次、腰行くよ!」

  タクロウさんは興奮しているようで、どんどん息が荒くなっていく。まるで僕の反応を楽しんでいるみたいだった。

  ドSとはこういう人のことをいうのだろう。

  「ま、まってええええ!!!」

  メキメキ!!

  「ぎゃあああ!!」

  「もういっちょ!」

  「ぎゃああああああああ…」

  …

  マッサージが終わり、汗だくのタクロウさんはスッキリした表情でスポーツドリンクを飲んでいた。

  「ふぅ~疲れた」

  「ぐすん…」

  すっかり骨抜きにされた僕は枕を濡らしていた。

  「ガハハ、弱いなぁケンタくんは」

  「だってぇ…」

  「ほら、飲むかい?」

  タクロウさんは僕にスポーツドリンクの入った紙コップを渡した。

  「ありがとうございます…」

  コップを受け取るために起き上がろうとしたとき、身体の変化に気付いた。

  「あれ、痛くない…!?」

  さっきまでガチガチだった腰が不思議なくらい軽くなっていた。まるで魔法だ。

  「フフフ、おじさんのマッサージすごいだろ?」

  驚いている僕を見てタクロウさんは自信に満ちた表情で笑って見せた。

  「すごい治った…ありがとうございます!」

  「マッサージが効いてよかったよ。でもこれで完治じゃないよ。あくまで一時的に身体を解してるだけだからしばらくしたらまた固まって痛くなる。ケンタ君の場合は結構重症だったから完治まで2週間くらいかかるかなぁ」

  「そんなぁ…」

  「大丈夫、おじさんが毎日揉んであげるから」

  「で、でもそんな毎日マッサージお願いできるほど、お金ないですよ…?」

  そう、僕は大学生。アルバイトで多少お金はあるけど、それでも毎日マッサージを受けられるほどの余裕はない。さっきチラッと見た一番安いコースでも僕の財布には結構痛手だ。

  「そっかぁ学生だもんね…」

  「すいません…でも今日は本当にありがとうございました。タクロウさんに連絡できていなかったらどうなっていたことか…」

  「いいよいいよ…あっそうだ!良いこと思い付いた!」

  「良いこと?」

  「うちの店、今アルバイトが居なくてね。ケンタくんがここでアルバイトとして働いてくれるなら腰痛が治るまで無料でマッサージしてあげるよ?どうかなケンタ君」

  「え、本当ですか!?あ…でも、もう他にアルバイトやってるので…それはむずかしいです。」

  「そうかぁ…それは…残念だな…」

  タクロウさんはすごく残念そうだった。そんなに僕にアルバイトしてほしかったのだろうか。

  「ごめんなさい…」

  僕とタクロウさんとの間になんとも言えない雰囲気が漂う。

  「ごめんごめん、無理言っちゃったね。そうかぁ、なら今日は残りの時間で2週間分のマッサージしてあげないとね?」

  そう言うとタクロウさんは汗だくになった服を脱ぎ始めた。

  黒いインナー1枚になったタクロウさんは、筋肉の筋がハッキリ見えるほど鍛え抜かれていた。かといって筋肉だけというわけではなく脂肪も適度についていて、重量級レスラーのような体型だ。ポッコリしたお腹もなんだか可愛く思えてきた…。

  「すごい…」

  なぜだろう…タクロウさんから目が離せない…。

  タクロウさんの汗ばんだからだから放たれるニオイは、ツンとした男らしい香りで、その中に野性的な香りも混ざっている。このニオイを嗅いでいると、なんだか頭がボーっとしてくるようだった。

  「ガハハ!見惚れちゃったかな?」

  タクロウさんは照れながらそう言った。

  「…少し」

  僕は素直にそういった。すると、タクロウさんは僕の頭をワシワシとなでてくれた。

  「フフ、ケンタ君も鍛えたらすぐになれるよ?」

  「そう…ですかね…?」

  「触ってみる?」

  タクロウさんのその言葉に胸は高鳴っていた。

  男の身体に興味が湧くことなんて今までなかったのに、どうしてだろう。タクロウさんだからかな…。

  「…」

  僕は幼い頃から、習い事で色んなスポーツをしてきた。でも、中学生になってから僕の身体は成長が止まってしまった。それからというもの、身長や体格を理由にレギュラーを外されたり、試合で勝てなくなっていった。その頃から僕は自分の身体にコンプレックスを抱いていたのだろう。だからこそ、今目の前にある理想の身体に、憧れと興奮を抑えられないのかもしれない。

  タクロウさんの鍛え抜かれた胸筋にそっと触れる。体温が指先から伝わってくる。汗ばんだ胸元からは男らしい胸毛が生えている。インナーにぷっくりと浮き出ているのは乳首だろうか。身体を見られても堂々としているタクロウさんはとても魅力的に見えた。

  「かっこいい…」

  タクロウさんは表情ひとつ変えることなく僕を見つめていた。

  「ふーん、やっぱりそうか…」

  タクロウさんは再び僕を見透かしたようにニヤリと笑った。

  「ケンタくんお願いがあるんだけど…」

  「はい?」

  「おじさん今新しいマッサージを考えているんだけど、メニューに入れる前に、お客さんからのフィードバックが欲しくてね…」

  タクロウさんは真っ直ぐな眼差しで僕に顔を近づけた。真剣な表情、額に輝く汗、インナーからは放たれる汗の臭い、何だかこのままタクロウさんに飲み込まれてしまいそうだった。

  「もしよかったら今からそのマッサージ、体験してくれないかな?もちろんお代はいらないよ」

  「あ…はい!お願いします!」

  ぼーっとしていたせいか、あまり考えずに返事をしてしまった。まぁ無料ならいいか。それよりも…もう少しタクロウさんと一緒に居たい…

  「フフフ、ありがとう」

  タクロウさんはニヤリと笑った。その時のタクロウさんの瞳は獲物を狩る猛獣のようだった。

  「じゃあ準備するから、ちょっと待っててくれるかな?」

  そう言うとタクロウさんは奥の部屋に向かった。

  部屋に残された僕は、何となく部屋を見渡していた。

  まだ胸がドキドキしている。この気持ちは何なんだろう。

  そんなことを考えていると、部屋の隅にフワッとした毛玉のようなものが落ちていることに気が付いた。

  気になって手に取ってみるとそれは、オレンジ色っぽい毛玉だった。

  「動物の毛かな?オレンジと黒、それに白っぽい毛も混ざってる…動物でも飼ってるのかな?」

  その毛を見ていると何だか胸がざわめいた。見ては行けないものを見てしまったようなそんな気がしたからだ。

  「ケンタ君お待たせ」

  タクロウさんが戻ってきた。何故か僕は咄嗟にその毛玉を手のひらで握るように隠した。

  「ん?どうしたの?」

  「な、なんでもないです!!」

  「そう?じゃあ早速なんだけど、虎の穴スペシャルコースの体験始めてもいいかな?」

  「お願いします!」

  「じゃあ今度は奥のベッドに寝てもらってもいいかな?」

  「奥?」

  タクロウさんが指差したそのベッドは例の穴の空いた変なベッドだった。

  「そんで一応注意事項なんだけど…」

  「注意事項?」

  「今からするマッサージね、さっきのマッサージと比べ物にならないくらい刺激が強いから…覚悟してね?」

  「痛いってことですか?」

  「痛くはないよ」

  痛くないのに刺激が強いとはどういうことなんだろう…。

  「なら平気です」

  「そっか、安心した」

  僕は奥のベッドに寝ころんだ。ベッドの穴はちょうど顔と下腹部の辺りにくるようにできていた。

  「ちょっと位置を調整するよ」

  タクロウさんは両足を開くように動かした。

  股間を開いたままマッサージをするのか…少し恥ずかしい。それに下腹部はちょうど股間の部分に穴が空いていて、スースーして気持ちが悪い。

  「顔をその穴にハメるようにしてね」

  タクロウさんの言われた通りに、ベッドの穴に顔をうずめた。その穴からはベッドについているもうひとつの穴と、タクロウさんの下半身を覗くことができた。この穴はきっと呼吸しやすいようにと作られたのだろう。しかし、股間にある穴は何のためにあるんだろう?

  「あのタクロウさん、この穴って何のためにあるんですか?」

  「ん~この穴はね、生えた時に使うんだよ」

  「生えた時?」

  「よし、準備完了だね。じゃあ始めるよ」

  「はい…」

  タクロウさんは奥の棚にあったボトルを手に取り、中身の液体を手のひらに出した。それは橙色の半透明の液体で、油のようにトロトロとしていた。

  「それは?」

  「これは『虎の穴』特製のマッサージオイルだよ。血行促進や感度の向上、それから次に使うオイルの浸透性を上げる効果があるんだ。おじさんの手作りなんだ。」

  タクロウさんはそのオイルを手のひらで延ばすと、僕の足を持ち上げて足裏から揉み始めた。さっきのマッサージとは違い、筋肉を解すような揉みかたで、優しくじんわりと力が加わっていく。

  「んふぅ…気持ち…いい…」

  痛みとはまた違うジンジンとした感覚が、神経を伝って脳に響く感じが心地よい。その感覚で僕の身体を着実に支配していった。

  「んふぅ…癖になりそう…」

  「フフフ、おじさんのスペシャルマッサージすごいだろう?ほらこことか、もっとすごいよ」

  タクロウさんはニヤリと笑うとわざとらしく、ズボンの隙間から股に手をいれてきた。

  「ひゃあん!?」

  触られた瞬間、電流が流れたみたいに僕の身体はビクンと跳ねてしまった。頭の中が真っ白になるみたいだった。

  「どうだい?気持ちよかったかな?」

  クラクラしている僕に、タクロウさんは耳元で甘く誘うように呟いた。タクロウさんの落ち着いた声が頭の中奥深くに入り込んでくるみたいだ。

  「ふぅ…ふぅ…よく…分かりませんでした…も、もう一回…お願いします…」

  その時の僕は、既に戻れないラインに片足を入れていることに気づけなかった。僕はタクロウさんに甘えるように足を開いてマッサージを催促した。

  「フフフ、いいよもう一回ね」

  再び、タクロウさんは再び太ももの辺りから撫でるように僕の鼠径部に触れる。

  「ふにゃああっ!?」

  僕の頭はすっかり真っ白に染まっていた。

  タクロウさんの前なのに、ちんちんはすっかり元気になっていた。しかし、その状況に気づかないほど僕は酔いしれていた。

  「もういっかいぃ…」

  「いいよぉ?」

  マッサージの虜になってしまった僕はそれから何度もタクロウさんにお願いした。その度にタクロウさんは優しく耳元で「いいよ」と囁いた。タクロウさんの声は、僕の身体にぞわぞわと伝わり、欲望を掻き立てていった。

  「もっ…とぉ…」

  「フフ…いいよ」

  でもその感覚も慣れてくると物足りなくなってしまう。僕はつい、クロウさんにこんなことを言ってしまった。

  「タクロウさん…もっと…強く出来ますか?」

  「…強く?」

  「はい…」

  「そんなことしたら…戻れなくなるよ?」

  戻れなくなる…その意味を身体はなんとなく理解していた。でも抗えなかった。

  「…お願いします」

  「フフフ、いいよ…予定より早かったなぁ」

  「予定…?」

  「ケンタ君は気にしなくていいよ。ケンタ君は快感だけ感じていたらいいから…」

  タクロウさんはこうなることが分かっているみたいにニヤリと笑うと、慣れた手つきで僕のズボンをゆっくりと脱がした。ベッドの穴に僕の大きくなったチンチンが差し込まれ外気に晒される。

  (ベッドの穴はこのためにあったのか…)

  「フフ、ケンタ君はホントかわいいね、チンチンも皮被っててかわいい」

  タクロウさんは恥ずかしがる僕を見て嬉しそうに笑った。

  「恥ずかしい…」

  「本当にかわいいよ。喰べちゃいたいくらい…これからもっと可愛くなるって考えると…おじさん我慢できないかも」

  「可愛くなる…?」

  「そうだ…」

  タクロウは優しく僕の体を撫でる。それだけで期待で胸がいっぱいになった。この気持ちはタクロウさんも一緒なのかもしれない。タクロウさんの息遣いは徐々に荒くなっていた。

  こんなことには初心な僕でも感じ取れるくらい、僕とタクロウさんの間にはモンモンとした気持ちが沸き上がっていた。

  「タクロウさん…これはマッサージだよね…?」

  「フフ…面白いこと聞くね…おじさんにマッサージされるのは嫌かな?」

  「嫌じゃ…ない…です。でも…僕おかしくなりそうで…」

  「よし、オイルがしっかり馴染んだね。じゃあ始めよっか…"獣化マッサージ"」

  「え、今なんて?」

  タクロウさんは棚から白いオイルを取り出した。

  「それは…?」

  「これもおじさん特性の"獣化"オイルだよ。少し臭うけど、浸透性はピカイチなんだ。」

  白いオイルを手のひらに足して、ヌルリと両手を下半身に滑り込ませる。白いオイルは確かに甘酸っぱいようなクセのある臭いがしていた。でもどこかで嗅いだことがあるような…

  「体重かけるから、おじさんもベッドに上がるね」

  「わっ…」

  タクロウさんは、再びベッドに上がると両足で僕の身体を挟み込むように座った。タクロウの下半身を見ると股座が少し膨らんでいた。

  「いくよ…」

  タクロウさんは両手をお尻の辺りにおいて、ゆっくりと体重をかけてきた。

  「んあああああ…」

  思わず声が漏れてしまう。身体がトロけていくみたいだ。

  徐々にタクロウさんの手つきは荒々しくなっていく。

  「んっ…ふっ…あぁん!!」

  マッサージの影響かお尻の辺りが痺れてきた。次第にその感覚は麻酔のように全身に伝わっていく。

  「タク…ロウ…さんんん…お尻が熱いぃ…」

  「フフッ、もっと熱くしてあげるよ」

  そういうとタクロウさんは左手をお尻の割れ目に滑り込ませた。

  「ひゃんっ!?」

  「ここ、気持ちいいだろ?最初の"獣化のツボ"だ…我慢しろよ?」

  タクロウさんは指をぐっと押し込んだ。そして指先が尾てい骨に当たると、骨格を変えるようにグイッと引っ掻けた。

  その瞬間、まるでスイッチが押されたみたいに僕の心臓がドクンと高鳴った。そして頭から全身へ快感が駆け抜けた。

  「んぎぃいいいいい!??」

  僕が快感に悶える様子を見て、タクロウさんはニヤリと笑った。その表情からはさっきまでの優しさは残されていなかった。

  「ガハハ!気持ち良すぎて苦しいか!?そりゃそうだよな。身体を無理やり覚醒させてるんだから」

  タクロウさんは一呼吸置いて再び尾てい骨をグリグリと刺激した。

  「んああ!?も、もうやめてええええええ」

  ベッドを叩いてギブアップを示すもタクロウさんには見えていないようだった。今度は尾てい骨を引っ張り出すように指を鍵状にして動かし始めた。グイグイと尾てい骨を触られると身体が痺れて言うことを聞かなくなってしまう。

  「んおおおんんん!?」

  逃げ場のない快感から必死に逃げようとするが、タクロウさんが体重をかけてがっちりホールドしているせいで身動きが取れない。

  「やめでええええ゛おがじぐなるううう゛!!お尻が熱いいい!爆発するううう!」

  次第に僕のお尻からから熱を帯びた何かが意思もってムクムクと盛り上がってきた。

  「んおおおおおおおおお゛゛」

  僕の中を弄るタクロウさんの指が何かを掴んだ。

  「ガハハ!よし、ケンタの掴めたぜ!今からデカいのがくるから歯ぁ食いしばれよ!!」

  「うおおんんん゛゛」

  タクロウさんは指先に力を込めると、掴んでいた何かをググッと思いっきり引っ張った。

  「オラァ"獣化"開始だ!尻尾生えろっ!!」

  ビンッと何かが引っ張られると、お尻に衝撃が伝わった。それと同時に僕の中で塞き止めていたものが外れてしまったような感覚がした。

  「んおおおおんんんん゛!」

  メキメキッと音立てて、僕のお尻からタクロウさんによって何かが引き抜かれている。そしてこれ以上それが伸びてしまえば、僕の中の何かが大きく変わってしまうと思った。

  「んんんだめええええ゛生えちゃううううう」

  「始まるぞ!」

  お尻から生えたものが伸びきると僕の心臓が再びドクンッと大きく鼓動した。

  「んおお゛ッ?」

  「フフ、来るぞケンタ!」

  身体に訪れた一瞬の静寂に冷汗が止まらない。

  そして次の瞬間、ついにそれは始まった。

  ゴキッメキメキ…

  全身が硬直し、脳内に鈍い快感が駆け抜けた。

  メキッメキゴキッ

  その音は骨と肉が捻れ変形しているような、とても生々しい音だった。そしてそれは僕の身体からなっていたのだ。

  「なっ、ナニコレ!?いっ痛い!?」

  身体が悲鳴を上げているというのに、痛みはなく、変わりに脳には濁流のような快感が送り込まれた。

  「ンオオオオオオ!?」

  「始まったな!覚醒が!」

  タクロウさんが僕の身体に何かしたことは明白だった。僕を見つめ、タクロウさんは満足そうな笑みを浮かべていた。今すぐここから逃げなければ、取り返しのつかないことになるとそう感じた。

  「ウオオオ!」

  僕は最後の力を振り絞りタクロウさんの身体を突き飛ばそうとした。

  しかし、タクロウさんの身体は鉛のように重たくびくともしなかった。

  「暴れんなよ!おじさん手荒なことはしたくないんだ」

  そういうとタクロウさんは片手で僕の頭を掴み、ベットに押さえつけた。

  「ンンンンンン!」

  タクロウさんはとても人間のものとは思えない怪力だった。とても対抗できない。

  「へへ、そんな怖い顔するなよ。大丈夫だすぐおじさんと"一緒"になれるから!」

  一緒とは何だろう。いや、今はそれどころではない。早く逃げないと、取り返しのつかないことになる。

  メキメキッ!また、僕の身体から音が鳴った。

  「グアアアア!キモチイイ…違う!なんなんだよこれは!」

  「ガハハ、まだ気づいてないのか?これを見ろよ」

  タクロウさんが僕のお尻から伸びた何かを掴んでいる。

  「な、なんだよそれ…早く取れよ…」

  「…いいよ、引っ張って取ってあげよう」

  そういうとタクロウさんはニヤリと笑ってそれを軽く引っ張った。

  すると、鋭い快感が僕を貫いた。

  「ンヒィイ!?」

  「ほら、トン、トン、トン、トン♪」

  タクロウさんがリズムよく引っ張ると、あまりの快感に僕は辛抱たまらず体をブルブルと震わせた。

  「ああ!だめッでちゃうううう!!」

  ビュルルル

  「あーあ、出ちゃったねケンタ君の遺伝子」

  引っ張られる刺激だけで射精してしまった。僕の身体に何が起きてるんだ?

  ドクンッ

  射精した瞬間、また心臓が大きく鼓動した。すると、僕の身体がまた軋み始めた。

  「グッ、ガハッ、ハァ…ハァ…なにこれ…!?」

  「ガハハ、まだわかんない?これケンタ君の尻尾だよ?」

  「尻尾?」

  タクロウさんは尻尾から手を離した。すると、尻尾はひとりでにゆらゆら揺れている。

  恐る恐るそれを握ると鋭い快感を感じた。

  「んぎッ!?」

  「ガハハ、駄目だよ?獣化した身体はしばらく脳が慣れてなくて敏感になってるんだから、優しく触らないと」

  どうやら本当に僕の身体から生えてきたものらしい。

  しかも、さっき見たときよりも伸びている気がする。

  「伸びてる…?」

  「さっき"出しちゃった"からね。きっと"獣化"が進んだんだよ」

  「獣化?なんなんだよそれ…ちゃんと説明しろよ!」

  「獣化は獣化さ、獣に化けると書いて獣化。ケンタ君はこれから獣になるんだよ…」

  タクロウさんはニタリと笑ってそういった。

  「い、いい加減にしてよ…そんな、獣化なんで非現実的なこと起こるわけない…」

  「ガハハ、この状況でもまだ信じれられないのか?」

  そういうと、タクロウさんは僕の尻尾をクリクリと弄った。

  「クゥ…ンンン!」

  「気持ちいいよね。おじさんも尻尾攻めには弱いからわかるよ…」

  「ン…やめ、ろぉ…」

  「おじさんね…ホントは人間じゃないんだ。わかりやすく言うと元人間…かな」

  「どういうことだ…?」

  タクロウさんはそういうとベットの上で服を脱ぎ始めた。

  「え、ちょっと…」

  タクロウさんの上半身があらわになる。分厚く重たい筋肉を身にまとったその体は、彫刻のような美しさだった。まさに誰もが憧れる理想の雄だ。こんな状況なのに思わず見惚れてしまう。

  「…」

  思わず息を飲んでその体を見つめていると、タクロウさんが僕の顎を掴んで顔を引き寄せた。

  少し顔を前に出せばキスができそうな距離だった。タクロウさんの瞳は黄金色で、猛獣のような鋭いまなざしをしていた。

  「どうした?俺とキスしたいのか?フフ」

  タクロウさんは見透かしたようにそういった。

  「ち、ちがう!離せよ!」

  「やっぱり俺の勘は正しかったな」

  「…勘?」

  僕はタクロウさんのさんの身体から離れようとする。しかし、僕を掴む手はピクリとも動かなかった。

  「ずっと探していたんだ。俺のフェロモンを感じ取ってくれる人間を…」

  タクロウさんの様子が変わった。優しそうな雰囲気から威圧感を放ち始めた。

  「フェロモン…?」

  「あぁ、さっきマッサージ中にケンタ君に塗っていたオイルさ。あれは俺の一番濃い"体液"を混ぜて作っている。」

  体液と聞いて気づいた。この白いオイルのニオイを嗅いだことがあるような気がしていたが、このニオイは完全に…。

  「これ、精液…!?な、なんでこんなものを…」

  「ケンタ君は"獣人"を知ってるか?」

  「獣人?ゲームとかに出てくるあの…?」

  「そうだ、俺はその獣人なんだよ。」

  そう言うとタクロウさんは、手のひらで握っていたオレンジ色の毛玉を奪い取った。

  「あっ…」

  「毎日掃除をしていても取り切れないものだな。これだから獣人の毛は不便だ」

  「僕に何をした…いったい何が目的なんだよ…」

  「俺たち獣人は個体数が減少している。獣人同士で繁殖できるが、人間社会の中で獣人同士出会うのは難しい。妊娠や産卵は時間がかかるし、相性や種族の適正が必要だ。」

  「何言ってる…?」

  「繁殖の話だよ。獣人の繁殖で一番簡単で効率的なのは人間を仲間にすることだ。」

  タクロウさんは舌舐めをしながら話を続ける。

  「獣人の遺伝子と人間の遺伝子はよく似ているが、生物的に獣人の遺伝子のほうが強いらしい。もし、人間の身体に獣人の遺伝子を含んだ体液を接種すれば、その身体は次第に獣人の特性を帯びていくんだ。さらにそこに遺伝子の融合を促す『獣化のツボ』の刺激が合わされば…後はもうわかるだろう?オマエは今から俺の遺伝子で獣人になるんだよ…」

  「ヒッ…」

  「人間を同族にするのはいいぞ?怯えたその顔が俺の遺伝子で変化していくのを想像するだけでゾクゾクして…タマラナイ…」

  タクロウさんの息が荒くなっている。タクロウさんのズボンを見ると、凶器のような大きさのそれがくっきりと浮かび上がっていた。

  「い、嫌だ…」

  「大丈夫さ、数分後にはおじさんのことしか考えられなくなるんだから…」

  「やめ…」

  タクロウさんが僕の身体を荒っぽく押さえつける。

  「フフフ、こういうのは久々だな。俺も興奮してるんだ、荒っぽいが続けるぞ?」

  そういうとタクロウさんは大きく息を吸い込んだ。

  「俺が獣化のリードをしてやる…ケンタ君は快感に身を委ねていればいい…」

  瞬間、タクロウさんの身体がブルンと震えた。タクロウさんの髪や髭が逆立ち、一瞬身体が大きくなったように感じた。

  「ン、グゥ…」

  タクロウさんが苦しそうに小さく唸る。

  「タ、タクロウさん…?」

  「…見ていろぉ…これが獣化だ…グオオオオオオ゛!!」

  タクロウさんは雄叫びを上げた。それに応じるようにタクロウさんの身体は膨張し始めた。

  ゴキッメキメキ

  タクロウさんの身体から骨が折れるような鈍い音が鳴っている。身体の膨張が止まらない。その大きさはあっという間に倍以上になり、施術用ベッドはギシギシと軋み始めた。

  「…な、なにが起きてるんだ…!?」

  タクロウさんの変化は大きさだけではなかった。全身の皮膚の色が黒っぽい色へと変わっていき、全身の骨格は巨体を支えるように太く変化していった。

  胸部がドラム缶のように膨らみ、それに合わせ背筋が曲がり猫背になった。腰はさらに太くなり、耐えきれなくなったズボンとパンツが千切れると、凶器のような半勃ちの陰茎がボロンと露になった。

  「ぅ、嘘だろ…」

  変わっていくタクロウさんがギラリと僕を見つめる。いや、このバケモノは本当にタクロウさんなのだろうか。

  その異形な姿に僕は恐怖で凍り付いた。

  タクロウさんは鋭く変化した前足を僕に向かって振りかざした。

  (こ、殺される…)

  身構えた瞬間、タクロウさんはあろうことか僕を抱きしめた。

  助かったと安堵したのも束の間、タクロウさんは舌舐めずりをして僕のお尻に熱を帯びた棒状の何かを押し当てた。

  「これは、まさか…」

  「ケンタ…オマエモ、カワレ、仲間ニ、ナレ!グオオオオオオオオオオオオオオ!」

  タクロウさんが雄叫びを上げながら、腰を深く落として僕のお尻に圧力をかける。するとタクロウさんの熱が徐々に侵入してきた。

  「嘘?や、やめ、やめろおお」

  ズプリッ!

  「グオオオオオオオオ!」

  タクロウさんの口には鋭い牙が生え始めた。鼻先はググッと伸び、頬を見ると黄色と黒の毛が生え始めていた。鼻の周りには長い髭まで生え始めている。

  「アッ…僕の中に…入って…る…」

  お尻からタクロウさんの熱と圧迫感を感じる。苦しくて呼吸ができない。

  「やめ、てっ…抜いて…」

  「ケンタの中、キモチイイぞぉおお!」

  タクロウさんの進行は止まらなかった。ねじ込むように根元までチンポを入れると、気持ち良さそうにチンポをビクビクと震わせていた。そこにはさっきまでの優しいタクロウさんはいなかった。快感を貪り、本能のまま交尾を行う獣そのものだった。

  「俺の、熱を、受取ってくれ…グオオオオオ゛!!」

  「や、やめっ、てぇ…」

  僕の中でバケモノが一段と大きくなると、バケモノは腰を落とし奥深くに狙いを定めた。

  「上澄みをぶっぱなすぞ!イグゥウウウウ゛!!グルルオオオオ!!」

  ドプッドプッ…

  喉を鳴らしながら、タクロウさんはドクッドクッと何度も僕の中に熱いものを吐き出した。

  「あっ、あ、あぁ…熱…い…」

  お腹が熱いもので満たされると、僕の身体はゾクゾクとした幸福感で満たされた。グルルルと腹から音が鳴ると、お腹に溜まったはずのタクロウさんの精液がみるみる僕の身体に吸収されてた。

  「"俺"を吸収したな?」

  バケモノがそう言ったと同時に、僕の心臓が再び大きく鼓動した。

  「…んあっ!?」

  「グルルル…イイゾ…モット…俺を…吸収シロ…!」

  心臓がバクバクして、身体が熱くなってきた。全身が敏感になってるのに、意識は朦朧としている。身体を動かそうにも力が入らなくなっていた。

  「い、嫌だ…もう…いらないのに…」

  バケモノの遺伝子が血管に流れ込んでくるのを感じる。その感覚は、身体を弄くられているみたいで気持ち悪い…。気持ち悪いはずなのに、僕の身体は渇きを抑えられなくなっていた。

  「あぁ…いらない…いらないのに!!身体が熱いぃ!!欲しくないのに!欲しい!欲しい!!もっと欲しい!!」

  猛烈な渇きと共に全身の裸がゾワゾワし始めた。身体を見ると、胸元からうっすら黄色い毛が生え始めていた。

  「うわぁああ!!バケモノになんかなりたくない!」

  「変身は気持ちいいだろ??モット欲シイダロ?」

  タクロウさんは僕をそそのかすようにチンポをグリグリと押し込んだ。

  「ぁあキモチイイ!!…違っ…気持ち良くない!欲しくない!!早く抜けよぉ!抜けってぇ!!」

  するとタクロウさんはニヤリと笑った。

  「そうか…、いらないのか…」

  そう言うとタクロウさんはチンポを引き抜こうとする。それが堪らなく悲しくて、僕はチンポが抜けないように必死にお尻を締める。チンポが欲しい、欲しくて堪らない。

  「ん?そんなにケツを締めてどうした?欲しく無いんだろ?」

  「グスッ…欲しく…ない…欲しくない…」

  「フフ、なにも言わないなら…抜いてしまうぞぉ?」

  「あ、あぁ…嫌だ!!抜かないで!!もっと奥まで入れてぇぇ!我慢できないぃ!」

  我慢できなくなった僕は、自らのタクロウさんのチンポを押し込んだ。その瞬間、僕の身体はボコッと膨らみ、更に尻尾が伸びてしまった。

  「ガハハ、そんなに尻尾伸びちゃって、そんなに俺のチンポが良かったか?」

  「グスッ…良く…ないっ…、けど…抜かないで…ください…」

  「グルルル…それなら、絶対に抜けない虎のトゲチンポでオマエを犯してやろう。」

  僕の身体を固定するように、ベッド穴に僕の生えたての尻尾を通した。そして僕の身体を包み込むように身体を倒すと、僕の身体に爪を立ててがっしりと掴んだ。

  「これなら俺が本気で腰を振っても動かないな。じゃあ、イクゾ?」

  タクロウさんは大きくなった腰を引くと、振り子のように大きく腰を打ち付けた。

  逃げ場を失った僕の身体はタクロウさんの衝撃を余すことなく全身で味わった。

  「グオオオオオオン!!」

  「んあああああ!!!」

  腰を振る度に、タクロウさんの表情は獣に近づいていった。瞳の色はよりハッキリした金色に変わり、顔全体が黄色と白と黒の毛に覆われ始めた。耳は尖り、舌は長く伸びた。背中には虎特有の縞模様が浮き出てきていた。

  「グルルル…!獣化、キタ…!キモチイイ…!チカラ漲ル…!見テイロ、コレガ、虎獣人ダアアア!ガオオオオオオオオオ!!!」

  タクロウさんは見せつけるように身体を反らせると、全身が獣毛に覆われた。僕の中でタクロウさんのチンポは形を変えながら成長している。

  「ああ!すっごい…奥まで当たるぅ…!僕も…我慢できないぃ!!にゃぁ!ニャオオオオオン!!」

  タクロウさんの変身に共鳴して、僕の身体も更に変身してしまった。鼻先に痛みが走り、動物のマズルのように前に伸びてしまった。尻尾は更に伸び、黄色と黒のシマシマが浮き出てきた。

  「マズルが出来たな、カワイイ」

  「うるさいニャ!!ニャア!?」

  「ガハハ、声帯も変わり始めたな?その言葉使いもカワイイぞ」

  タクロウさんは僕の唇を無理やり奪うと、長い舌を喉の奥までねじ込んできた。虎の舌はトゲトゲしていて刺激が強すぎる。タクロウさんはそれをわかっていてわざと喉の奥を舐めてきた。

  「んんんんんんんん!!ゴロゴロ…」

  上も下もぐちゃぐちゃにされて身体がブルブルと震えた。

  「ぷはぁ…もっとだ!完璧な虎になるために人間の遺伝子を吐き出すんだ!」

  タクロウさんは猛獣の交尾のように本能のまま腰を振った。すると、いままで、スムーズに出入りしていたはずのお尻から鋭い刺激が走った。

  「に゛ゃあ!!?」

  それもそのはず、タクロウさんのチンポは虎のチンポに変わっていたからだ。虎のチンポには、雌の排卵を促すためにいくつものトゲが形成されている。その為、一度チンポが挿入されてしまうとチンポが腸壁に引っ掛かって抜けなくなってしまうのだ。

  「どうだ、俺のトゲチンポは?」

  タクロウさんは、わざと腰を引くと僕のお尻はタクロウさんに引っ張られて直腸がめくれてしまう。

  「にゃあああ!?めくれるぅう!お尻壊れちゃうう!」

  「ガハハ、すごいめくれてるぞ?きれいなお尻が台無しだなぁ?でも安心しろ、これからは俺専用の肉壺にしてやるからな?」

  「やめて、抜かないでえええ壊れるううう!」

  「抜くのが駄目なら押し込んでみるか?」

  タクロウさんは腰を打ち付けると、そのままプレスするように体重をかけてきた。虎チンポはまっすぐ僕の中に侵入し、お尻の奥にあるコリコリした所を圧し潰した。すると、お尻に電気が流されたみたいに身体が痙攣し、チンポから透明な液体がトプッと溢れてきた。

  「にゃ、おおおおお゛、奥゛に来゛て゛るぅぅ!」

  「グオオオ、締まるぅ…S字も突破したなぁ…前立腺にもよく当たる…」

  「前立腺…?」

  「そうだ、ここが"獣化のツボ"だ。どんな男でもここを弄られると雌になっちまうんだぜ。こんなふうになっ!」

  タクロウさんが向きを変え、僕の前立腺に虎チンポをグリグリと押し付けると、僕の身体が瞬く間に痙攣した。

  「にゃ゛っ!?にゃ゛あああああ!?」

  「おらおら!虎チンポの味はどうだ?」

  タクロウさんは僕の前立腺を執拗に攻める。その度に快感が衝撃となって脳天にまで届いた。すると、僕のチンポは勝手に精液を漏らし始めた。

  「にゃああぁ!?イクッ!でてる!でてるからぁ!でてるからぁもうやめてぇぇ」

  メキメキ…

  また、僕の身体から音が鳴り出した。射精したことで、僕の"人間性"が抜け、身体が再びタクロウさんを取り込み始めたのだ。

  「もっと出せ!人間の精子全部出して、俺の獣遺伝子、全部受け入れろ!」

  「嫌だにゃあああああああ…!」

  ビュルルル…!

  身体の主導権は完全にタクロウさんのものだった。どんなに我慢しようとしても前立腺を突かれれば、僕の身体は勝手に絶頂してしまう。

  「誰かあああだずげでえええ゛」

  ビュルルッビュルルル

  また射精してしまった…。するとチンチンにタクロウさんと同じトゲトゲが生え始めた。

  「ケンタのチンポも変わり始めてんな!俺とお揃いの虎チンポだ!」

  タクロウさんは嬉しそうに腰を更に激しく振る。その様子はセックスではなく交尾というほうが正しい。

  「ケンタ、オマエが気に入った!俺の店で一緒に働け!そして"俺のツガイ"になってくれ…!」

  「にゃあ…にゃあああああ…」

  「げ、限界だ!イクゾ!一番濃いヤツを出すぞ!俺の全部、受け取ってくれえええ!グオオオオオ!」

  タクロウさんの渾身の一撃が僕を貫くと、僕の中がタクロウさんで満たされた。

  「イッちゃう!にゃおおおお!」

  ビュルルルル…

  体内に注入された獣の遺伝子は、すぐに身体に吸収され、細胞に浸透していった。

  「あ、ああ…いっちゃった…」

  「ゴロゴロ…」

  ドクンッ…

  ついに、最後の変身が始まった。喉はカラカラで、目の奥はチリチリと点滅していた。全身に鳥肌が立ち、身体がブルブルと震える。人間の"僕"が終ろうとしていた、

  タクロウさんが優しく僕を撫でると身体がドクンと鼓動した。全身の骨と肉が小さな身体を広げるように膨らみ始めた。

  「感じるか…これが獣の鼓動だ…」

  「にゃぁ…」

  心臓の音がどんどん大きくなり、それにつれて身体が沸騰していった。全身の筋肉がその熱を解放するように成長を始めると、成長した筋肉を支えるように骨格が変形した。胴体が伸び、猫背になると、大きく広がった胸元からモサモサした獣毛が広がり始めた。

  「にゃおぉ…にゃあああ…」

  獣毛が足先まで届くと、ネコ科の鋭い爪が生えてきた。膝やふくらはぎに激痛が走ると、足が大きく曲がり獣らしい後ろ足に変わった。

  「いいぞ、本能に身を委ねろ…力を解放するんだ…」

  身体の奥から力が湧いてくる。それなのに僕はその力の解放の仕方がわからない。全身がムズムズする。早くこの力を解放したい。

  「ぐおぉ…ゴロゴロ…」

  慣れない身体を覚醒させながらゆっくりと喉を開くと、腹の奥から猛獣のような声が溢れてきた。

  「さあ、ケンタ君の雄叫びを聞かせてくれ!!」

  僕は四つ足で立ち上がり、胸いっぱいに空気を吸い込むと全身を力ませた。そして、僕の中の獣を解放するように、精一杯の雄叫びを上げた。

  「グオオオオオオオオオオオオ!!」

  僕の身体は尻尾の先まで獣毛に覆われた。人間の僕は完全に上書きされ、完璧な虎に変身してしまったのだ。もう普通の人間には戻れないというのに、僕の心は満たされていた。

  (キモチイイ…キモチイイ…キモチイイ!!)

  ビュルルル…

  全細胞が喜ぶのを感じて、獣として初めての射精をした。僕のヒトとしての情報は完全に失われてしまった。でも、とにかく今はせめてこの快感を味わっていたい…。

  「グオオオオオオオオ!!」

  「グルル…おめでとう…ケンタ…」

  …

  目を覚ますと、僕はベッドに横たわっていた。

  身体を動かそうとすると、酷い頭痛に襲われた。

  「ん、ぐう…」

  頭を抑えた手を見てハッとした。

  慌てて、部屋におかれていた鏡で自分の身体を確認する。

  すると、そこにはいつも通りヒトの姿をした"牛島ケンタ"が映っていた。

  「はぁ…」

  安堵なのか、落胆なのかわからない溜息をついて、僕はベッドに座り込んだ。

  さっきまでのことは夢だったんだろうか…。それにしては鮮明に頭に焼き付いている。

  「どうしたんだい?」

  部屋の奥からタクロウさんが顔をのぞかせた。タクロウさんはちゃんと人間をしていた。

  「い、いえ…なんでもありません。」

  「ん?嫌な夢でも見たのかい?」

  そういうと、タクロウさんはトーストと目玉焼きの乗った皿を僕の前に出した。とてもおいしそうだ。

  「ケンタ君が気持ちよさそうに寝てたから起こさなかったんだ。よかったら朝ごはん食べてよ。簡単なものしかないけど…」

  「ごめんなさい…朝まで寝てしまった上にごはんまで…」

  「いいよ、おじさんも楽しかったから」

  「楽しかった…?」

  「ほら、ごはん冷めちゃうよ。」

  「あぁ、いただきます」

  「そういえば、今日は学校ないのかい?」

  「あ、忘れてた!い、今何時ですか!?」

  「いまは…8時20分だね」

  「やっば、今日朝から講義あるのに…」

  僕は朝食を慌てて頬張ると荷物を持って玄関に向かった。

  「ガハハ、急げ大学生~」

  「い、いってきます~」

  「いってらっしゃいケンタ君」

  「あ、忘れてた…タクロウさん、マッサージ代を…」」

  「お代はいいよ!それよりまた遊びに来てよ。おじさんケンタ君のこと気に入ったから」

  「いいんですか…じゃあお言葉に甘えて…マッサージと朝ごはん、ありがとうございました。後日、お礼させてください!ごはんとか行きましょう!」

  「うん、楽しみにしてるね」

  「じゃあ、いってきます!」

  「うん、いってらっしゃい…また後で」

  大学に到着すると、ユウタが待っていた。

  「おっす!腰の調子はどう?」

  「おはよ~、タクロウさんのおかげですっかり元気だよ」

  「そっか、よかったな…あれ、ケンタ…」

  「ん?」

  「ケンタって『動物』飼ってたっけ?」

  『動物』と聞いてドキッとした。

  「にゃっ!?えっ!?」

  咄嗟に口元を手で隠す。

  「なにが『にゃ』だよ」

  「か、飼ってるわけないだろ?うちペット禁止だし…」

  「だよな…なんか…ケンタから動物っぽいニオイがしたから…」

  「き、気のせいだろ?」

  慌てて服を嗅ぐが、自分ではわからない。

  「ま、いいや。そろそろ講義始まるし教室行こうぜ」

  講義が始まっても、僕は集中できなかった。

  (どうして?あれは夢だったんじゃ…)

  不安な気持ちはどんどん膨らんでいく。

  その度に自分の身体を何度も確かめるが、特に変わったところはない。

  (人が獣になるわけない…やっぱり夢だったんだよ…)

  そう自分に言い聞かせていると、服の胸ポケットに何かが入っていることに気が付いた。

  「ん?なんだこれ…」

  普段、胸ポケットなんて使わない。一体何が入っているんだろう。

  ポケットの中の物を取り出すと、それは黄色と黒の毛玉だった。

  (この毛玉…まさか!?)

  背筋がゾクッとした。だが、感じたのは恐怖だけではなかった。

  ドクンッ

  心臓が大きく鼓動した。

  「まずい…」

  「ん?ケンタどうした?」

  「ご、ごめん、僕用事を思い出したんだ…行かなきゃいけない…」

  「え、授業中だけど?」

  ユウタは不思議そうに僕を見つめる。

  その最中も、服の中で僕の身体がムズムズとしている。きっと、僕のズボンは生えてきた尻尾で不自然に膨らみ始めていることだろう。

  「ご、ごめん、後のことお願い!」

  「ちょ、ちょっとケンタ!?」

  僕は教室を飛び出すと、一目散にタクロウさんのもとに向かった。

  ふと見えた服の袖口からは見覚えのある黄色い毛が生えている。ズボンは尻尾と毛皮でパンパンに膨れ、今にも飛び出してしまいそうだ。

  「や、やばいにゃああ!」

  僕は何とか二足歩行を保ち、タクロウさんの家の玄関前までたどり着くと、獣化をこらえきれず変身してしまう。

  「にゃあああああああ゛!!」

  メキメキッ

  服がチリチリに破れ、尻尾がググッと伸びると、黄色と黒の縞模様が露になった。

  「夢じゃなかった…」

  その時、タクロウさんの家の扉がゆっくりと開いた。

  「おかえり、ケンタ君」

  …

  それから、僕は『虎の穴』のアルバイトとして泊まり込みで働くことになった。ヒトに変身するのが苦手な僕は、毎日人目に触れない裏方の仕事をしている。

  獣人がヒトに変身できる時間は限られているらしい。タクロウさんでも人間に戻るのは1日8時間が限界だと言っていた。獣人に成りたての僕は頑張っても1日1時間が限界だ。

  当然、大学には行けていない。早く長時間変身できるようにならないと、今期の単位を落としてしまう。ユウタには、家族が入院して大学に行けなくなったと嘘をついているが、それもいつまで使えるかわからない。

  夕方、"虎の穴"の営業が終わると、タクロウさんが施術室に僕を呼ぶ。

  「ケンタ、服を脱げ…」

  「…はい」

  何が始まるのかわかっていた。

  …

  「この程度でへばってちゃ、"人間"としては暮らせないなあ?」

  「にゃ、にゃあああ!イッちゃうぅ!にゃあああ!」

  ビュルルル…

  「いっぱい出たな、だが変身が解け始めたぞ?尻尾が生えてきてる」

  「にゃあああああ゛」

  これは長時間変身を保つための『修行』らしい。獣人になったあの日から毎晩僕はタクロウさんに犯されている。

  「オラァ、中に出してやるからケツ締めろや!」

  「にゃ、にゃああああ゛あ゛!」

  「グオオオオオオ!!」

  タクロウさんのことは嫌いだ。僕の人生を無茶苦茶にしたから…。でも、こうして大きな虎の身体に抱きしめられていると、胸がいっぱいになってしまう。

  「ケンタ、愛してる…チュッ」

  「にゃああん…ゴロゴロ…」

  いつか必ず、人間に戻ってやる…そう心に誓い僕は眠りについた。

  この大きな虎のぬくもりを感じながら…。