空高く私を抱えたまま一瞬で飛んでしまって、あまり高いところが得意ではないからかまた少しちびった気がする。
「まずは君の支度だね。家までの道のりを少し想像してもらえるかな。」
「え…?あ、はい。」
私は少し引っ掛かりを感じるも言われた通り想像した途端、ナインはすぐさま反応し、寒空の中突っ切って飛んでいった。寒い。
ガチガチと歯を鳴らして、鼻水だらけの顔になるも空を飛んでいるからか、あっという間に着いてしまった。
ごく平凡なマンションの扉を開くと朝出かけた時と変わらないこれまた平凡な部屋があった。
「それじゃ、お邪魔するよ。」
「どうぞ、宜しかったらここは畳なので靴を脱いでから入ってください。」
土足のまま家にあがろうとする龍に軽く注意した。が、
「これは靴に見えているだけで実は私の実の足なので脱ぐ動作はできても、畳は汚れてしまうな。」
「わかりました、今、濡れたタオル持ってくるので、軽く拭いてそのまま浴室で足洗ってください。」
「もう、戻ってくるかわからん部屋にそこまで気を使わなくてもいいんでない?面倒。」
っと、何やらぶつくさ行っているが無視をした。
文句を言いながらもタオルを受け取り足を拭いて部屋に上がりそのまま浴槽にて足を洗うのだった。
このまま帰ってこない旅に出るのだ、大きなカバンにたくさん積み込みたいがどうやって運ぶかが問題だ。たとえドラゴンに乗っていくのだとしても重量は何キロまでなのだろうか。
「そう、あまり重くない方が良いだろうね。長旅になるのでずっと私の背中に乗って移動することは叶わないからね。」
私の思考を読んだの如く急に返事が返ってきた。
「あの、ついさっきから気になっていたのですが、思考を読むのはお互いよろしくないのではないでしょうか?もしかして私の趣向通りの格好なども、思考を読んでのことでしょ?」
「なんで?会話など少しでも省いて無駄を無くした方がたくさん会話ができていいでは?」
「いや、ナインさんは退屈なのでしょ。なら、先読みして全部分かっちゃったらすぐ退屈になりますよ。」
「む、それは…、クセでなかなかやめれないものなのだが、それもそうだ。検討しよう。」
そうしてもらえると助かる。
何せ大した思考ではないかもしれないがなかなか好みとかプライベートな事まで読まれると気まずいものだ。
「私に載せるだけならば何キロでも大丈夫!君が移動に耐えれる重さにしてくれ。」
それならば大学時代に何を気迷ったか登山サークルに入ろうとして色々買ったはいいが、インドアで根暗な自分には無理だと気が付かされてわずか一ヶ月で幽霊部員になった時の記念品でも使うか。用品だけはいっちょまえである。
ランタン、携帯食、トレッキングシューズ、レインコート、ザイル、小型の斧、十特ナイフもろもろ。
「様になってきたねー!わくわくするよ!」
「なんであなたの物ではないのにわくわくするんですか?」
「いやね、私の場合、金さえあればこの身一つで何でもできてしまう物だから、この人間ならではの不自由さ…侘び寂びを感じるよ。いい!!今から、キャンプ用品も見にいこう!あれだ、火打ち石とか必要だろ?寝袋とか?私も欲しくなってきてしまった。」
「あ、はぁ。」
「善は急げだよ!君!」
ナインは私が用意したカバンを引っ掴むと走り出し私を抱いてそのまま空絵と飛んでいってしまった。